8月の湿地と溜池
2016/09/23 Fri. 17:11 [edit]
8月中に湿地や溜池で観察した湿生・水生植物と淡水藻類です。もっとも淡水藻類に関してはなかなか手が廻らず、よほど時間のある時でないと手が出せません。細かい作業を要する蘚苔類や淡水藻類はまだまだハードルが高いと感じます。
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Fig.1 溜池で開花したイヌタヌキモ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
有志の観察会でヤマトミクリの自生する溜池に立ち寄りましたが、岸辺に群生していたものがほとんど見られなくなっていました。農家の方によるとヌートリアが侵入したとのことで、ヤマトミクリの根茎を好んで食べていたとのこと。とうとうこんな田舎の棚田にも侵入したかと茫然とする中、ヌートリアの撹乱によって濁った溜池の水面では無数のイヌタヌキモが開花していました。
関連ページ 浮遊植物・イヌタヌキモ

Fig.2 群生するハタベカンガレイ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
兵庫県内では最も北にあるハタベカンガレイの自生地で、発見当初は数個体でしたが数年前にウェーダーを履いて撹乱したところ、池全体に生育領域が広がりました。
一般に湧水のある小河川での記録が多いのですが、近畿地方では溜池で発見される例がほとんどです。
関連ページ 抽水植物・ハタベカンガレイ

Fig.3 オトコゼリ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
兵庫県内でも比較的稀な種ですが、兵庫県東部には西宮市から篠山市にわたって自生地が点在しています。キツネノボタンなどの近縁種と比べて草丈が高く、花が咲いていればすぐに分かります。
ここでは休耕田内に多数の個体が群生していました。
関連ページ 湿生植物・オトコゼリ

Fig.4 オモダカ (兵庫県三田市 2016.8/10)
休耕田に異常なほどの高密度に群生するオモダカのコロニーがありました。
他の草本の侵入を許さずほとんど純群落を形成していて、その見事さに思わず撮影してしまいました。
関連ページ 湿生植物・オモダカ

Fig.5 キカシグサとシャジクモ (兵庫県三田市 2016.8/10)
なんてこともない水中の小さな風景・・・でもこの佇まいがいいのです。
関連ページ 湿生植物・キカシグサ
関連ページ 淡水藻類・シャジクモ

Fig.6 ウキアゼナ (兵庫県三田市 2016.8/10)
帰化植物で、もとは水草として入ってきたもの。
すでに近郊ではふつうに見られるようになっています。
関連ページ 湿生植物・ウキアゼナ

Fig.7 ミツモトソウ (兵庫県但馬地方 2016.8/16)
沢の源頭部にある湿地に1花だけ咲いていました。
関連ページ 湿生植物・ミツモトソウ

Fig.8 コウヤワラビ (兵庫県但馬地方 2016.8/16)
山間湿地で胞子葉を上げ始めていました。
関連ページ 湿生植物・コウヤワラビ

Fig.9 トリゲモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
兵庫県某所の溜池にあるトリゲモsp.がトリゲモではないかとの知らせを受け、確認しに行きました。
この池のものはオオトリゲモだろうくらいに思っていましたが、結果は全てトリゲモでした。
関連ページ 沈水植物・トリゲモ

Fig.10 トリゲモの雄花 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
雄花の全長は約1mm、葯室は1室で長さ0.5mmで、中の花粉粒が透けて見えます。
これに対してオオトリゲモは雄花の全長約2mm、葯室は4室で長さ約1.5mmと大型で肉眼でも確認できます。画像のマイクロメーターの1目盛は25μmです。

Fig.11 ヒシモドキ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
今年は昨年に比べてヒシモドキの生育領域が少し狭まっており、オニバスも発生していませんでした。
ウェーダーを履いての人力撹乱に効果があるかどうか分かりませんが、底を掻き回すように歩いておきました。
関連ページ 浮葉植物・ヒシモドキ

Fig.12 ヒルムシロ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
中栄養な溜池でよく見かける浮葉植物ですが、個体数はわずかでした。
関連ページ 浮葉植物・ヒルムシロ

Fig.13 クロモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
水面上で雌花が開花していないか注意して見ましたが、見当たりませんでした。
雌雄異株タイプの雄株なのでしょう。画像の底面を覆っているのはフラスコモの仲間です。
関連ページ 沈水植物・クロモ

Fig.14 フラスコモsp. (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
前出の溜池底面を覆っているフラスコモsp.を少し持ち帰って調べてみました。
ちなみに昨年は底面を覆い隠すほど繁茂していませんでした。
第1分射枝は4本、第2分射枝は5~7本、第3分射枝は4本程度です。

Fig.15 フラスコモsp.の細部 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
最終枝は2細胞。雌器は単生~群生し螺旋は5~6本。雄器は径240μ。
卵胞子は黄褐色で長さ250μ程度、螺旋は6本。卵胞子膜はほとんど平滑に見える。
この手のフラスコモの同定は自信ありませんが、ナガフラスコモではないかと思っています。

Fig.16 カミガモソウ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
シカの多い地域でヤマビルも多いと聞いていたので、太陽の照りつける最も暑い時間帯に現地に出掛けました。山中の休耕田はシカの食害によってハイチゴザサ、ハリイ、イヌノヒゲ、ミズユキノシタなどの草丈の低い草本で占められ、そこにカミガモソウが点在していました。
数日間降雨もなく、カンカン照りだったこともあり、ヤマビルに悩まされることなくゆっくり観察できました。

Fig.17 カミガモソウの花 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
花はかなり地味で、同じオオバコ科(旧ゴマノハグサ科)のシソクサやオオアブノメに似た感じです。
他の場所にもあってよさそうなものですが、この一帯でしか見られません。

Fig.18 タヌキモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
毎年様子を見にくる場所ですが、まだ1度も開花しているのが見られません。
山間の溜池でガガブタも生育していますが、栄養分が足りないのかもしれません。

Fig.19 ホッスモとイトシャジクモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
クログワイやカンガレイが生育する浅い溜池で生育していました。
ホッスモはふつうに見られますが、イトシャジクモが見られる場所はあまりありません。
関連ページ 沈水植物・ホッスモ
関連ページ 淡水藻類・イトシャジクモ
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Fig.1 溜池で開花したイヌタヌキモ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
有志の観察会でヤマトミクリの自生する溜池に立ち寄りましたが、岸辺に群生していたものがほとんど見られなくなっていました。農家の方によるとヌートリアが侵入したとのことで、ヤマトミクリの根茎を好んで食べていたとのこと。とうとうこんな田舎の棚田にも侵入したかと茫然とする中、ヌートリアの撹乱によって濁った溜池の水面では無数のイヌタヌキモが開花していました。
関連ページ 浮遊植物・イヌタヌキモ

Fig.2 群生するハタベカンガレイ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
兵庫県内では最も北にあるハタベカンガレイの自生地で、発見当初は数個体でしたが数年前にウェーダーを履いて撹乱したところ、池全体に生育領域が広がりました。
一般に湧水のある小河川での記録が多いのですが、近畿地方では溜池で発見される例がほとんどです。
関連ページ 抽水植物・ハタベカンガレイ

Fig.3 オトコゼリ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
兵庫県内でも比較的稀な種ですが、兵庫県東部には西宮市から篠山市にわたって自生地が点在しています。キツネノボタンなどの近縁種と比べて草丈が高く、花が咲いていればすぐに分かります。
ここでは休耕田内に多数の個体が群生していました。
関連ページ 湿生植物・オトコゼリ

Fig.4 オモダカ (兵庫県三田市 2016.8/10)
休耕田に異常なほどの高密度に群生するオモダカのコロニーがありました。
他の草本の侵入を許さずほとんど純群落を形成していて、その見事さに思わず撮影してしまいました。
関連ページ 湿生植物・オモダカ

Fig.5 キカシグサとシャジクモ (兵庫県三田市 2016.8/10)
なんてこともない水中の小さな風景・・・でもこの佇まいがいいのです。
関連ページ 湿生植物・キカシグサ
関連ページ 淡水藻類・シャジクモ

Fig.6 ウキアゼナ (兵庫県三田市 2016.8/10)
帰化植物で、もとは水草として入ってきたもの。
すでに近郊ではふつうに見られるようになっています。
関連ページ 湿生植物・ウキアゼナ

Fig.7 ミツモトソウ (兵庫県但馬地方 2016.8/16)
沢の源頭部にある湿地に1花だけ咲いていました。
関連ページ 湿生植物・ミツモトソウ

Fig.8 コウヤワラビ (兵庫県但馬地方 2016.8/16)
山間湿地で胞子葉を上げ始めていました。
関連ページ 湿生植物・コウヤワラビ

Fig.9 トリゲモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
兵庫県某所の溜池にあるトリゲモsp.がトリゲモではないかとの知らせを受け、確認しに行きました。
この池のものはオオトリゲモだろうくらいに思っていましたが、結果は全てトリゲモでした。
関連ページ 沈水植物・トリゲモ

Fig.10 トリゲモの雄花 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
雄花の全長は約1mm、葯室は1室で長さ0.5mmで、中の花粉粒が透けて見えます。
これに対してオオトリゲモは雄花の全長約2mm、葯室は4室で長さ約1.5mmと大型で肉眼でも確認できます。画像のマイクロメーターの1目盛は25μmです。

Fig.11 ヒシモドキ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
今年は昨年に比べてヒシモドキの生育領域が少し狭まっており、オニバスも発生していませんでした。
ウェーダーを履いての人力撹乱に効果があるかどうか分かりませんが、底を掻き回すように歩いておきました。
関連ページ 浮葉植物・ヒシモドキ

Fig.12 ヒルムシロ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
中栄養な溜池でよく見かける浮葉植物ですが、個体数はわずかでした。
関連ページ 浮葉植物・ヒルムシロ

Fig.13 クロモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
水面上で雌花が開花していないか注意して見ましたが、見当たりませんでした。
雌雄異株タイプの雄株なのでしょう。画像の底面を覆っているのはフラスコモの仲間です。
関連ページ 沈水植物・クロモ

Fig.14 フラスコモsp. (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
前出の溜池底面を覆っているフラスコモsp.を少し持ち帰って調べてみました。
ちなみに昨年は底面を覆い隠すほど繁茂していませんでした。
第1分射枝は4本、第2分射枝は5~7本、第3分射枝は4本程度です。

Fig.15 フラスコモsp.の細部 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
最終枝は2細胞。雌器は単生~群生し螺旋は5~6本。雄器は径240μ。
卵胞子は黄褐色で長さ250μ程度、螺旋は6本。卵胞子膜はほとんど平滑に見える。
この手のフラスコモの同定は自信ありませんが、ナガフラスコモではないかと思っています。

Fig.16 カミガモソウ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
シカの多い地域でヤマビルも多いと聞いていたので、太陽の照りつける最も暑い時間帯に現地に出掛けました。山中の休耕田はシカの食害によってハイチゴザサ、ハリイ、イヌノヒゲ、ミズユキノシタなどの草丈の低い草本で占められ、そこにカミガモソウが点在していました。
数日間降雨もなく、カンカン照りだったこともあり、ヤマビルに悩まされることなくゆっくり観察できました。

Fig.17 カミガモソウの花 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
花はかなり地味で、同じオオバコ科(旧ゴマノハグサ科)のシソクサやオオアブノメに似た感じです。
他の場所にもあってよさそうなものですが、この一帯でしか見られません。

Fig.18 タヌキモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
毎年様子を見にくる場所ですが、まだ1度も開花しているのが見られません。
山間の溜池でガガブタも生育していますが、栄養分が足りないのかもしれません。

Fig.19 ホッスモとイトシャジクモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
クログワイやカンガレイが生育する浅い溜池で生育していました。
ホッスモはふつうに見られますが、イトシャジクモが見られる場所はあまりありません。
関連ページ 沈水植物・ホッスモ
関連ページ 淡水藻類・イトシャジクモ
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category: 湿地・溜池
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