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Satoyama, Plants & Nature

冬の岩場に見るシダ 

長らく冬眠状態でしたが、画像や資料も溜まってきたので、そろそろ始動いたします。
冬場は水辺の草本もあまり見るべきものはありませんが、岩壁に付いたシダの風情が好きで、ヤブ漕ぎも夏に比べてはるかに楽なのでよく見に出掛けます。
着生するシダには常緑や冬緑のものも多く、一部のシダを除いて観察に適した時期だと思います。
画像:チャートの岩壁、シシラン、コウヤコケシノブ、ホソバコケシノブ、
   ヒメハイホラゴケ、オオフジシダ、フジシダ、ヌリトラノオ、シモツケヌリトラノオ、
   カミガモシダ、ニセヌリトラノオ、ヘラシダ、ヌカイタチシダマガイ、
   アツギノヌカイタチシダマガイ、ヤノネシダ、コタニワタリ、チャセンシダ、
   有馬層群の岩壁、ハコネシダ、イワヒバ、カタヒバ、オシャグジデンダ、
   ギフベニシダ、ミヤマノコギリシダ
*画像クリックで、別ウィンドで拡大表示されます。

チャート岩壁
Fig.1 沢沿いのチャートの岩壁 (兵庫県丹波市 2014.1/28)
谷に溜まった緩やかな麓屑面からチャートの岩壁が80mほど段状に突き上がり、いろいろな着生シダが付いています。
画像はその中部あたりの岩棚から見上げたものです。
よく目立っているのはシシラン。右の樹幹後方のモヤッとした部分はコウヤコケシノブの群生。

チャート
Fig.2 チャート (兵庫県篠山市 2014.1/16)
古生代~中生代に海中に堆積した放散虫などの遺骸で、主成分はSiO2(二酸化珪素)で硬く、画像のような赤色のもののほか黒色、半透明なものなどがあります。
プレートの移動によって運ばれたり削り取られたりした緑色岩、頁岩、粘板岩などの丹波帯(付加体)の堆積岩中にブロック状の岩脈として取り込まれています。
チャートは丹波帯の他の堆積岩に比べるとはるかに硬く、他の堆積岩が風化・崩壊しても残り、急峻な岩峰を形成しています。
チャートの岩壁は堅牢で安定したものが多いですが、湧水などの水分の凍結・溶解により風化が進む場所も稀にあります。

シシラン
Fig.3 シシランの群生 (兵庫県丹波市 2014.1/28)
丹波地方のチャートの岩壁にはごく普通に見られるシダで、やや空中湿度の高い半日陰~日陰に生育しています。ほとんど垂直な岩壁にも、根茎を這わせて大きな群落をつくっていることもよくあります。
関連ページ 関西の花/シダ・シシラン

コウヤコケシノブ
Fig.4 コウヤコケシノブ (兵庫県篠山市 2014.1/16)
チャートの岩壁下部の湧水近くに生育しているもの。コケシノブの仲間では近畿地方では最もふつうに見られるものです。
チャートに限らず、花崗岩の渓谷や、流紋岩質の岩壁、ときに湿った石垣にも見られ、空中湿度の高い日陰を好みます。
関連ページ 関西の花/シダ・コウヤコケシノブ

ホソバコケシノブ
Fig.5 ホソバコケシノブ (兵庫県篠山市 2014.1/16)
コウヤコケシノブよりも大きく繊細なシダで、チャートや流紋岩類の岩壁で見かけます。
関連ページ 関西の花/シダ・ホソバコケシノブ

ヒメハイホラゴケ
Fig.6 ヒメハイホラゴケ (兵庫県丹波市 2014.1/28)
コウヤコケシノブやホソバコケシノブよりも稀な種ですが、ハイホラゴケとの雑種と見られるものが多く、この集団も一部の羽片は重なり合っていますが、ハイホラゴケの血が入っているかもしれません。県内では丹波地方で多く見かける種です。
関連ページ 関西の花/シダ・ヒメハイホラゴケ

オオフジシダ
Fig.7 オオフジシダ (兵庫県丹波市 2014.1/28)
美しいシダで、Fig.1 の下方の岩棚にキジノオシダと混生していました。
丹波地方に多いが、チャート以外の基岩地域にも見られ、丹波から北は但馬地方の渓流畔の岩壁にも見られます。
近年、中軸にムカゴをつくる近縁種のヒメムカゴシダがY氏によって兵庫県内でも発見されました。
関連ページ 関西の花/シダ・オオフジシダ

オオフジシダ子株群
Fig.8 オオフジシダの子株 (兵庫県丹波市 2014.1/28)
Fig.7 直下の岩壁に密生していました。

フジシダ
Fig.9 フジシダ (兵庫県市川町 2012.12/11)
この冬に、丹波地方でもこのシダに出会っているのですが、満足のいく画像が撮れず、一昨年撮影した画像を掲載しました。このシダも美しいシダで、北向きの空中湿度の高い岩壁に生育し、見つけると嬉しくなるものです。
兵庫県内では丹波地方を中心とした内陸部のチャートの岩壁が分布の中心域となり、但馬地方では稀となり、オオフジシダよりも見かける機会は少ないように思います。
関連ページ 関西の花/シダ・フジシダ

ヌリトラノオ
Fig.10 ヌリトラノオ (兵庫県篠山市 2014.1/16)
チャートの岩壁でまず最初に現れるシダ。稀に流紋岩質の岩壁に付いていることもあります。
葉先に無性芽を生じるのが特徴(画像左下)。
関連ページ 関西の花/シダ・ヌリトラノオ

シモツケヌリトラノオ
Fig.11 シモツケヌリトラノオ (兵庫県丹波地方 2014.1/28)
ヌリトラノオよりもかなり稀なシダで、昨年2ヶ所の自生地を見つけましたが、その後なかなか見つかりません。
ヌリトラノオと違って、葉先に無性芽を作らず、葉は斜上気味となるのが特徴。
関連ページ 関西の花/シダ・シモツケヌリトラノオ

カミガモシダ
Fig.12 カミガモシダ (兵庫県丹波市 2014.1/28)
丹波地方のチャートの岩壁ではふつうに見られる美しいシダです。
県内では丹波帯を基岩とする地域に分布し、樹の根元などにも付きます。
関連ページ 関西の花/シダ・カミガモシダ

ニセヌリトラノオ群生
Fig.13 ニセヌリトラノオの群生 (兵庫県丹波地方 2014.1/28)
ニセヌリトラノオはシモツケヌリトラノオとカミガモシダの雑種で、両種の混生地で良く出現します。雑種強勢で草体は大きくなり、まるでタマシダのように見えます。
関連ページ 関西の花/シダ・ニセヌリトラノオ

ヘラシダ
Fig.14 ヘラシダ (兵庫県丹波地方 2014.1/28)
ヘラシダは岩壁でも水のしたたるような多湿な場所を好むようです。
ここでは沢沿いの壁面に群生していましたが、湿った斜面に生育することもあるようです。
関連ページ 関西の花/シダ・ヘラシダ

ヌカイタチシダマガイ
Fig.15 ヌカイタチシダマガイ (兵庫県丹波地方 2013.12/3)
県内ではチャートの岩壁のみに生育するかなり稀なシダで、自生地は1ヶ所しか知りません。
ふつうに見られるトウゴクシダに似ていますが、基部鱗片は赤褐色で、羽片・小羽片ともに軸にほぼ直角に付くことにより区別できます。
関連ページ 関西の花/シダ・ヌカイタチシダマガイ

アツギノヌカイタチシダマガイ群生
Fig.16 アツギノヌカイタチシダマガイの群生 (兵庫県丹波地方 2013.12/3)
チャートの大きな岩壁の基部周辺で、100個体ほどが生育する新たな自生地を見つけました。
シカの近寄り難い場所のため食害も少なく、生育良好な集団でした。
関連ページ 関西の花/シダ・アツギノヌカイタチシダマガイ

アツギノヌカイタチシダマガイ
Fig.17 アツギノヌカイタチシダマガイの大型個体 (兵庫県丹波地方 2013.12/3)
成熟した大きな葉を持つものは傷んでいるものが多かったですが、最下羽片の中~深裂する小羽片が確認できました。

ヤノネシダ
Fig.18 ヤノネシダ (兵庫県丹波市 2014.1/28)
沢沿いの巨岩上や周辺の林床に点々と生育していましたが、シカの食害により矮小化したものばかりでした。
関連ページ 関西の花/シダ・ヤノネシダ

コタニワタリ
Fig.19 コタニワタリ (兵庫県丹波市 2014.1/28)
沢沿いの岩の間に生育していました。
コタニワタリは岩壁よりも古い護岸のコンクリート壁面や古い砂防ダムに着生しているのをよく見かけます。
関連ページ 関西の花/シダ・コタニワタリ

チャセンシダとウチワゴケ
Fig.20 チャセンシダとウチワゴケ (兵庫県篠山市 2014.1/16)
やや風化したチャートの壁面に着生していました。
チャセンシダは岩壁よりも、社寺の石垣に良く見られるものです。
関連ページ 関西の花/シダ・チャセンシダ
関連ページ 関西の花/シダ・ウチワゴケ

流紋岩質溶結凝灰岩のスラブ
Fig.21 有馬層群の岩壁 (兵庫県神戸市 2014.1/17)
有馬層群は流紋岩質の凝灰岩や凝灰角礫岩、溶結凝灰岩などからなり、その中で侵食や風化に強い溶結凝灰岩の硬質な部分が残り、岩壁を作っています。
流紋岩質溶結凝灰岩の岩壁ではチャートの岩壁とは多少異なった種が見られます。

ハコネシダ
Fig.22 ハコネシダ (兵庫県神戸市 2014.1/17)
川に近いかなり湿った日陰の岩場に着生していました。
ハコネシダはチャートの岩壁で見かけることはありません。
関連ページ 関西の花/シダ・ハコネシダ

イワヒバ
Fig.22 イワヒバ (兵庫県神戸市 2014.1/17)
これもハコネシダと同様、県内ではチャートの岩壁で見かけることはありません。
盗掘対象になり易い種ですが、足場の悪い岩壁ではまだまだよく見かけます。
県南部でイワヒバとともによく岩壁で見かけるツメレンゲやオオヒキヨモギもチャートの岩壁には現れません。

カタヒバ
Fig.23 カタヒバ (兵庫県丹波市 2014.1/28)
カタヒバはイワヒバとは異なり、チャートの岩壁でも、流紋岩質の岩壁にもふつうに見られます。
川沿いの巨岩上によく見られるシダです。
関連ページ 関西の花/シダ・カタヒバ

オシャグジデンダ
Fig.24 オシャグジデンダ (兵庫県丹波市 2014.1/28)
これは岩壁ではなく、古い石垣に着生していたものです。
樹幹に付いていることの多いシダで、冬緑性で夏に葉を落とします。
関連ページ 関西の花/シダ・オシャグジデンダ

ギフベニシダ
Fig.25 ギフベニシダ (兵庫県篠山市 2014.1/23)
これも古い社寺の石垣に生育していたものです。
兵庫県ではあまり多くないシダで、社寺の石垣などで偶然に見つかるような感じです。
関連ページ 関西の花/シダ・ギフベニシダ

ミヤマノコギリシダ
Fig.26 ミヤマノコギリシダ (兵庫県丹波市 2014.1/28)
岩壁直下の緩い麓屑面に群生していました。丹波地方では所々で見かけます。
関連ページ 関西の花/シダ・ミヤマノコギリシダ

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フキノトウ
1月16日に篠山市のチャート岩壁観察の帰途、沢沿いではやくもフキノトウの走りがポツポツと出ていました。
まだ寒い日もありますが、春は確実に近づいていますね。
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category: シダ

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コメント

またまた新自生地が…おめでとうございます

 アツギノヌカイタチシダマガイ、素晴らしいですね。拡大して確認してみました。良い型でした。ニセヌリトラノオは、これまで京都府だけと思っていたのに。でも、これも祝杯!
 「ヒメムカゴシダ兵庫県に産す」の報は、はじめて知りました。滋賀・京都・兵庫と、北近畿で出そろったことになりますね。
 有馬層群は、石灰分を含むのでしょうか。京都府でハコネシタが見られるところはすべて緑色岩地で、たしかにチャートでは見たことがありません。ときにはアオネカズラを伴っており、これも石灰岩・緑色岩植物です。
光田 重幸 #UPCNk2uw URL [2014/02/07 07:53] edit

 光田先生、コメントありがとうございます!
 アツギノ~の群落を見つけた時には、さすがにテンション上がりました。
 ニセヌリトラノオはシモツケヌリトラノオの10倍以上の個体数で、雑種ながら繁殖能力があるとしか思えませんでした。
 ヒメムカゴシダは昨年、丹波地方で見つかったもので、いずれ見に行こうと思っています。
 ハコネシダは兵庫では面白い分布をしていて、丹波(0例)と但馬(1例)ではほとんど記録がありません。京都の緑色岩地に出るのなら丹波地方にあっても不思議ではないのに・・・
 有馬層群ですが、流紋岩質なので石灰分はほとんどないと思います。なので、ちょっとした地すべり地が酸性の貧栄養湿地になったりします。しかしながら、県南の有馬層群でハコネシダが見られるような場所は、ヨコグラノキ、ヒトツバハギ、ヒメカナワラビ、イワヘゴなどが出てきて、ちょっとクセのある場所であったりもします。
 ところで、今年に入ってから両面ともに紅変して、胞子葉も倒伏し、胞子の粒の大きさも揃っているフユノハナワラビとしか思えないものを見つけました。2~3日中にブログにUPしますので、見ていただけたらと思います。
マツモムシ #7qQ58teA URL [2014/02/07 22:51] edit

 流紋岩と石灰岩植物

 ヨコグラノキ、ヒトツバハギ、ヒメカナワラビ、イワヘゴなどが出てくるというのは、立派な石灰岩フロラですね。流紋岩は酸性岩なので普通は石灰分を含みませんが、灰長石由来の石灰分が含まれることは原理的にはありえます。面白いですね。
 ニセヌリトラノオのほうがシモツケヌリトラノオより多いというのは、京都も同様。はるかに大きくもなります。所によってはニセヌリが先に見つかり、探したら小さなシモツケが片隅になんてことも。ニセはムカゴ状の芽をつけないので、わかりやすいです。
 へんてこなフユノハナワラビ、楽しみです。私もアカハナ系を探しに出たいのですが、レッドデータブックがらみで、春まで囚われの身です。
光田 重幸 #UPCNk2uw URL [2014/02/08 19:59] edit

流紋岩と石灰岩植物

>灰長石由来の石灰分が含まれることは原理的にはありえます。
 なるほど。長石に含まれるCaの含有量によっては、流紋岩地域でも好石灰性の植物が出てくることは充分に有り得るということですね。有馬層群の地域でも好石灰性の植物が出てくるような場所が点々とあるので、その場所の土壌のpHや硬度を調べたら面白い結果が出るかもしれませんねえ。
 大変勉強になりました、ありがとうございます!

 次回ブログのハナワラビの原稿は今ちょうど書いているところなので、日曜か月曜の夜あたりにUPできそうです。
マツモムシ #7qQ58teA URL [2014/02/08 20:53] edit

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