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Satoyama, Plants & Nature

春の山菜料理 2 

前回に続いて春の山菜料理を紹介します。
今回はウド、チシマザサ(スズコ)、シャク、ヤマブキショウマ、ゼンマイ、オオバギボウシ、サンショウ、モミジガサなどを取り上げます。
なお、山野草の利用は各自の自己責任でお願いいたします。
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ウド

ウド
Fig.1 ウド (兵庫県但馬地方 2016.5/12)
里山の林縁などにも点々と生育しているのを見ますが、山地の高原では沢山収穫できます。
収量が多いときはアク抜きして冷凍保存します。

ウドの味噌漬け
Fig.2 ウドの味噌漬け
天然ウドを沢山獲った時には必ず作る定番です。

【調理法】
ウドは茎の部分を使い、表面の皮をむいて熱湯に5~10分漬けてアク抜きする。
冷水に取って水気を切り、浅漬け用の容器に入れ、味噌:味醂を5:1の分量で漬け込み、重しネジで締め付けて冷蔵庫に。翌日から食べられ、冷蔵庫で1週間~10日程度日持ちします。

・ポイント
浅漬け用の容器で重しをかけることによって水気を出し、日持ちするようにします。

ウドと春キャベツの酒バター蒸し
Fig.3 ウド・春キャベツ・アサリの酒バター蒸し
ウドとアサリだけで風味も旨味も充分ですが、野菜も沢山食べれるメニューに。

【調理法】
アサリは2時間程度ひたひたの塩水につけて、新聞紙を被せて砂出ししておく。
ウドの茎は皮を剥いて3~4mm幅の斜め薄切りにし、酢水につけ置き、キャベツは1口サイズに適当に切っておく。
フライパンにバター少々、酒(アサリ1パックに対して50~100cc)、ニンニク薄切り、キャベツ、ウド、アサリを入れて強火で煮立て、アサリが開いたら完成。

・ポイント
野菜は春キャベツの他、アスパラガス、ベビーコーン、新タマネギ、キノコ類などお好みで。
アサリは直前に50℃洗いすると甘味と旨味が増します。
食す後半に茹でたパスタを加えても美味しく頂けます。

ウドそぼろ
Fig.4 ウドそぼろ
ウドと豚の挽き肉を使ったそぼろ。塩そぼろでも味噌そぼろでも美味です。

【調理法】
①塩そぼろの場合
豚肉はウドの1/2量を用意し、フードプロセッサーでミンチにして、少量の酒を振りかけておく。
ウドは茎先と若い葉を細かく刻み、アク抜きはしない。
フライパンに豚挽き肉を油を敷かずに入れて、木ベラなどで切るように中火で炒める。
肉にだいたい火が通ったら刻んだウドを入れてウドが鮮やかな緑色になるまで炒める。
ウドの色が変わったら天日塩(豚肉約400gに対して小匙1杯)を入れ、粗引きコショウをミルでたっぷりと挽き入れる。
②味噌そぼろの場合
豚挽き肉とウドは塩そぼろと同様な仕込みをしておく。
鷹の爪1本を2等分し、つまようじなどで中の種子を取り除いておく。
フライパンに油を敷かず豚挽き肉とともに鷹の爪を入れて、木ベラなどで切るように中火で炒める。
肉にだいたい火が通ったら刻んだウドを入れてウドが鮮やかな緑色になるまで炒める。
ウドの色が変わったら酒と味噌を1:1の分量、好みにより味醂や昆布ダシ、砂糖を加える。

・ポイント
辛味は塩そぼろにはコショウ、味噌そぼろには鷹の爪が合います。
油は豚挽き肉から出たものを利用します。
仕上げにゴマ油を回しかけるとより香ばしくなります。
ニンニク、ショウガ、ネギなどの微塵切り、摺りゴマ、七味唐辛子などを加えて様々にアレンジできます。ウドのかわりにタラノメを使っても美味しくできます。

ウドとコゴミのグラタン
Fig.5 ウドとコゴミのグラタン
画像は冷凍保存していたキクイモのポタージュをグラタンソースに利用した山菜グラタンです。
調理法では正統的なグラタンソースの作り方を紹介しています。

【調理法】
タマネギ1/2個(2~3人分)を5mm幅にスライスする。
ウドは茎の皮を剥いて5mm幅の斜め切りにし、酢水に漬け置く。
コゴミは3~5分下茹でして、冷水にとって色止めしておく。
卵は冷蔵庫から出して室温に戻し、牛乳400ccを湯煎しておく。
オーブン又はトースターを200度に加熱しておく。
フライパンにバター大匙1/2を弱火で溶かし、バター溶けたらスライスしたタマネギをフライパンに入れて強中火にして、しんなりするまで炒める。
タマネギがしんなりしたらウドを加えて2分程度炒め、小麦粉大匙2杯(2~3人分)を入れてよく馴染ませながら炒める。
小麦粉が馴染んだら牛乳を少しずつ加えながら、小麦粉がダマにならないよう泡だて器でよく混ぜる。
牛乳を全て混ぜてとろみが出たら、塩・コショウ・ナツメグを少々加えて火を止める。
グラタン皿にウドとコゴミを交互に並べてグラタンソースを流し込み、シュレッド・チーズ、パルミジャーノ・レッジャーノをかける。
室温に戻した卵をグラタン皿に割り入れて、オーブンに入れて卵が半熟になるまで様子を見ながら加熱する。

・ポイント
グラタン・ソース(ベシャメル・ソース)は大量に作っておいて冷凍保存しておくと便利です。
グラタン・ソースはホワイト・シチューやクリーム系のポタージュでも代用できます。
茎の太いボリュームのある山菜類はグラタンにするとよく合います。
ウドはやわらかい食感が好きな場合には下茹でしておきます。

ウドとワラビの炊き込みご飯
Fig.6 ウドとワラビの炊き込みご飯
春から初夏にかけて山菜の炊き込みご飯を何度も作ります。
ウドを利用した炊き込みご飯や混ぜご飯は、春から初夏にかけての我が家での定番です。

【調理法】2合分
白米2合を軽く研いでザルに上げておく。
ウドの茎の皮を剥き、3~4cmのぶつ切りにし、さらに3~5mmの短冊切りにし、切った端から酢水に漬けておく。ワラビはアク抜きしたものを長さ3~4cmに切っておく。
油揚げは横半分に切って幅4~5mm程度の短冊切りにしてザルにいれ、熱湯をかけて油抜きする。
炊飯器に白米を入れ、醤油・味醂・酒を各大匙1杯、出し醤油または白出汁を小匙1杯、天日塩・甜菜糖少々を入れてよくかき混ぜる。
炊飯器の釜に2合分の目盛りまで水を入れ、ウド、ワラビ、油揚げを上に広げて炊飯器のスウィッチを入れる。炊き上がったらよく混ぜて再度蓋を閉め、30分ほど蒸らして出来上がり。

・ポイント
山菜の炊き込みご飯自体は簡単なものですが、どんなオカズと組み合わせるかが思案のしどころ。
炊き込みご飯と混ぜご飯が連日続く場合は、飽きのこない常備菜を作り置きしたり、卵料理をサッと作るようにしています。

チシマザサ(ネマガリダケ、スズコ)やハチクなどのタケノコ類(スズコ・モウソウチク・ハチク・メダケ・ホテイチクなど)

スズコ
Fig.6 チシマザサの筍 (兵庫県但馬地方 2016.5/12)
兵庫県では日本海側の標高約800m以上の高原地帯に生育しています。
氷ノ山周辺では一体どうやって担ぎ下ろすのかと思うくらい麻袋に大量に収穫している人を見る。
私見ではチシマザサよりもハチクやホテイチクのほうが利用価値が高いと感じる。

ハチク
Fig.7 ハチクの筍 (西宮市 2016.5/12)
伐採後のハチク林では翌年初夏に沢山の筍が出てきます。
いずれのタケノコ類も保存するには10%以上の塩水で全体が漬かるように冷蔵保存すれば半年~1年保存可能です。塩抜きするには水道水で1日に数度水換えし、2~3日塩抜きして利用します。
メダケの筍の場合はアクが強いので、モウソウチク(一般に流通するタケノコ)よりもヌカを多めにしてアク抜きします。

焼きスズコ
Fig.8 焼きスズコ
チシマザサ採取は初夏の登山の楽しみの一部です。
チシマザサの筍採取は、群生して斜面を覆う群落の多過を適度にコントロールする作用もあります。
チシマザサの筍はツキノワグマの初夏の主要な食餌であるため、採取する際にはクマ対策をしっかりしてください。

【調理法】
8時間以内に採取したスズコ(チシマザサの筍)を洗って泥を落として水気を切る。
あらかじめ200度にオーブン又はトースターを加熱しておく。
オーブンで加熱する間に調味料を用意しておく。
水を切ったスズコをオーブンに並べ入れ、皮が乾燥して一部が焦げ付いたらオーブンから取り出す。
熱いうちに皮を剥き、用意した調味料をつけて筍の上から下に向かって食べる。
下方の筋が発達して噛み切れない部分は食べずに残す。
調味料の例:天日塩、藻塩、昆布塩、醤油、味噌、塩オリーブオイル、辛子マヨネーズ、醤油マヨ、化学調味料無添加の梅昆布茶など

・ポイント
スズコ採取初日の贅沢な食べ方。アクはほとんど感じられません。
モウソウチクは獲った直後、ハチク、ホテイチクでは採取8時間以内でスズコ同様に楽しめます。
ホテイチクは最もアクがなく肉厚で甘味があり利用価値の高い筍で、採取適期はライバルが多く、執着心のない私にはなかなかありつけません。今年も味わえませんでした。

ウド・スズコ・燻製サバのピザ
Fig.9 ウド・スズコ・燻製サバのピザ
燻製のサバと山菜のキド味がよく合って絶品です。
我が家では通常のマルゲリータやミックスピザも一緒に作って食べ較べて楽しんでいます。

【調理法】
ヒメダケの処理方法。収穫したスズコは沸騰した水をたっぷり入れた大きな鍋に皮をつけたまま入れて10分茹で、火を止めてそのまま冷めるまで放置する。
冷めたらスズコの皮を剥き、水を換えながら3時間~半日晒してアクを抜く。アク抜きの終わったスズコは水を張った容器で毎日水換えしながら冷蔵保存して5日以内に使いきる。
5日以内に使いきれない分は、10%以上の塩水に漬け込んで冷蔵庫で保存する。
塩サバのフィレをキッチン・ペーパーとラップで包み込み、ペーパーを毎日取り替えながら2~3日間水気を取った後、すのこを敷いたバットに並べて1昼夜冷蔵庫で乾かす。
中華鍋に厚めのアルミホイルを敷いて、燻製用のサクラ・チップを一掴みとザラメ少々を混ぜてのせ、チップの上にアルミホイルを被せて強火にかける。
チップから煙が出たら、中華鍋の直径よりも少し小さな円形の焼き網を載せ、その上に乾かした塩サバのフィレを置いて蓋を被せ、強火のまま5分、その後極弱火にして20分燻製にかけて火を止めて冷めるまで放置する。常温になったらラップにくるんで冷蔵庫で1日寝かせて味と香りを馴染ませます。
ウドは細めの茎を軽く塩茹でしてアク抜きしておく。
バジル1束とその半量の松の実(クルミ、カシューナッツでも代用可)、塩麹、EXオリーブオイル、塩コショウ少々をフードプロセッサーにかけてバジルペーストを作る。
シイタケの柄を取り除いて薄くスライスし、オーブン又はトースターを220℃で余熱しておく。
ピザ生地にバジルペーストを塗り広げた上に、粗めにほぐしたサバ燻製を散らし、その上にスライスしたシイタケを並べる。
次に中心から放射状にスズコとウドを交互に並べ、その上にシュレッド・チーズを散らし、オーブンで6~8分焼きチーズに軽く焦げ目がついたら取り出す。
焼きあがったピザの中央部にウドそぼろを盛って完成。

・ポイント
サバ缶を利用しても美味ですが、ひと手間かけて塩サバを燻製して使うと一段と美味しくなります。
塩サバを乾かす場合は室内で扇風機を使って表面を1時間乾かすことで、行程を短縮することができます。サクラのチップが手元にない場合は紅茶と麦茶の茶葉を混ぜたもので代用可能です。
スモークしたサバは冷蔵庫で1週間程保存可能です。
スズコは冷凍保存すると歯ごたえや風味が落ちるので濃度10%以上の塩水に漬け込んで保存します。
塩水漬けのスズコは冷蔵庫で1年以上保存可能で、料理する前に2,3日換水しながら塩抜きします。
バジルペーストは市販のジェノベーゼソースでも代用可能ですが、少し塩味がきつくなります。
ピザ生地はふっくらした厚味のある自家製のものがベストですが、厚めの市販のものを利用しても美味しくできます。

スズコ・新玉・サクラエビの掻揚げ風
Fig.10 スズコ・新タマネギ・サクラエビの掻揚げ風
旬のものを少量の油で炒め揚げにしました。酒のつまみにぴったり!

【調理法】
茹でてアク抜きしたスズコは3cmに切ってさらに薄切りにする。
新タマネギは縦に2分し、くし切りにしておく。
スズコ、タマネギ、サクラエビ、小麦粉大匙2~3杯をボールに入れ混ぜる。
別のボールに卵1個を割り入れ、同量程度の水を入れてよくかき混ぜる。
混ざったらスズコ、タマネギ、サクラエビのボールに入れて混ぜる。
フライパンに5mm程度の炒め揚げ用の油を張って熱する。
フライ返しでボールのネタをすくってフライパンに入れ、バラけないように整えながら炒め揚げる。
裏返して軽く色付いたら油から上げて、よく油分を切る。
皿に盛り付けて、塩か天つゆをつけて頂く。

・ポイント
勿論ふつうの掻揚げにしてもOKです。
ウドの皮を千切りにして混ぜても美味しいです。
画像のものは衣に冷凍保存したセリのみじん切りを混ぜています。

スズコの混ぜご飯
Fig.11 スズコの混ぜご飯
春の混ぜご飯の定番です。

【調理法】3合分
干しシイタケ15gを1時間程水で戻し、柄の部分は除いて傘の部分を薄切りにし、戻し汁は取っておく。
スズコ100gは茹でてアク抜きして幅3~4mmの斜め薄切りにし、キクラゲを幅5mm程度に切る。
油揚げは横に2等分し、さらに5mm幅の短冊に切り、熱湯をかけて油抜きしておく。
米は白米をふつうに炊いておく。シイタケの戻し汁に水を加えて200ccにしておく。
フライパンに薄く油を敷いてスズコ、油揚げ、キクラゲ、シイタケを炒める。
だいたい火が通ったら、戻し汁+水200cc、酒大匙1、味醂大匙2、醤油大匙2、昆布粉小匙1を入れて煮汁が少なくなるまで煮詰める。
火を止めて粗熱がとれたらボールで炊きたてのご飯とよく混ぜ、濡れた布巾をかぶせて数分蒸らしてできあがり。

・ポイント
ニンジンやコンニャクなどを入れて具沢山にしても美味しいです。
具材をご飯に混ぜる前に味見して甘味が足りなければ砂糖を足してください。

ハチク入りウド汁
Fig.12 ハチク入りウド汁
サバ缶を利用した中部地方の郷土料理です。
ふつうはそれぞれ別に汁にしますが、今回は合わせて作ってみました。

【調理法】
ウドは茎の部位は皮を剥いて斜めに切り、茎先は食べやすい大きさに切り、酢水にさらしアク抜き。
ハチクは皮を剥いてナベに入る大きさに切って、たっぷりの水で水から煮て沸騰したら弱火にして20分程度煮る。煮えたらそのまま冷まし、水を換えながら3時間程晒しておく。
下処理の終わったハチクは下方の硬い部分は取り除き、食べやすい大きさに切る。
ナベに水800ccを入れて沸騰させ、サバ水煮缶1缶分、ウド、ハチクを入れ、再沸騰したら酒大匙1を加え、ひと煮立ちしたら味噌大匙2~3を加えてできあがり。

・ポイント
サバ水煮缶は汁ごと投入します。
ウドとハチクの量を少し減らして、大きめに切った木綿豆腐を入れても美味しいです。
ウド、ハチクともに採取した当日なら、アク抜きは不要です。

シャク

シャク
Fig.13 シャク (兵庫県但馬地方 2016.5/12)
兵庫県では南部ではほとんど見られない草本ですが、但馬地方では至る所で雑草のごとく生育しています。爽やかな香りがあり、開花前の柔らかい花茎や、花茎が上がる前のやわらかい葉などを利用します。画像のように開花したものはスジっぽくなって食べられません。

シャクのクルミ味噌和え
Fig.13 シャクのクルミ味噌和え
シャクはウドのような香りがありますが、ウドのようなキド味やアクは全くありません。
アクがないので、アイデア次第でいろいろな料理に利用できますが、これは定番の料理です。

【調理法】
シャクはやわらかい花茎を30秒ほど塩茹でして、冷水にとっておく。
クルミはフライパンで軽く乾煎りし、擂鉢で粗めに食感を多少残す程度にすり潰す。
ボールに味噌:醤油を2:1、砂糖少々を混ぜ合わせておく。
冷水に取ったシャクの水気を絞り、潰したクルミとともに調味料の入ったボールに入れて混ぜ合わせる。

・ポイント
シャクはアクがないので、さっと茹でるだけで大丈夫。

シャクとセリのうどんすき
Fig.14 シャクとセリのうどんすき
セリ科2種をたっぷり入れて両種の香りと味を楽しむうどんすきです。

【調理法】
ナベに水を張り、出汁用昆布と冷凍キノコ2種以上を凍ったまま入れ、極弱火から20分程かけてゆっくり熱していく。沸騰直前に出汁昆布を引き上げ、沸騰したら中弱火にして出汁パックに入れた鰹節を入れてやや濃いめに煮出す。
出汁が出たら出汁パックを引き上げ、日本酒、醤油、塩を加え、味見して調整する。
長ネギ、木綿豆腐を入れ、豆腐が温まったら下茹でしたうどんか冷凍うどんとともにたっぷりのシャクとセリを入れる。

・ポイント
シャクやセリはすぐに火が通るので最後にうどんとともに投入します。

ヤマブキショウマ

ヤマブキショウマの出芽
Fig.15 ヤマブキショウマの出芽 (兵庫県但馬地方 2016.5/12)
アク抜きをうまくやればコクがあって美味しい山菜ですが、あまり知られていないようです。
但馬地方の高原地帯ではごくふつうに生育している種です。

ヤマブキショウマとハチクの白だし漬け
Fig.16 ヤマブキショウマとハチクの白だし漬け
白だしによる淡白な味付けが、ヤマブキショウマのコクを活かします。

【調理法】
採取してきたヤマブキショウマは50℃洗いを30秒~1分程行い、冷水で冷やして水気を切って冷蔵庫に保存する。
ナベに水1Lに対して小麦粉大匙3、塩小匙1を入れて、泡だて器でよく掻き混ぜて完全に溶かし込む。
小麦粉が溶けたらナベを火にかけ、時々木ベラで底からゆっくりと掻き混ぜる。
沸騰したらヤマブキショウマを入れ、再沸騰したら弱火にして木ベラでゆっくり掻き混ぜながら4分弱煮込み、ザルに上げて冷水に晒す。
時々換水しながら3時間~半日アク抜きする。アク抜きの最中、味見しながら時間調整する。
小鍋に水:酒:白だしを3:1:2の割合で入れてひと煮立ちさせてアルコールを飛ばし、火を止めて冷ます。ヤマブキショウマとアク抜きしたハチクを食べやすい大きさに切り、ジップロックか容器に入れ、漬け汁を注ぐ。冷蔵庫に入れ1日置いたら食べられます。

・ポイント
私の場合、ヤマブキショウマのアク抜きは小麦粉水で3分40秒煮て、3時間程水で晒しています。
あまり長い時間水に晒すと旨味であるコクも抜けるので、小マメに味見するとよいです。

ゼンマイ

ゼンマイ
Fig.17 ゼンマイの出芽 (兵庫県篠山市 2016.4/22)
ゼンマイ自体はどこにでもあるものですが、充実した株で太くやわらかい芽を出す個体はどこにでもあるという訳ではないようです。ゼンマイも小麦粉水でアク抜きすることができます。

山菜3種のだし醤油漬け
Fig.18 山菜3種のダシ醤油漬け
左からゼンマイ、ヤマブキショウマ、ワラビ。
ダシ醤油漬けは前回紹介しましたが、ゼンマイのアク抜き時間が少々異なります。
アク抜きしたゼンマイは様々な料理に利用できます。

【調理法】
ゼンマイの毛と胞子葉部を50度洗いまたは水洗いしながら毟り取り、鍋に収まる長さに揃えておく。
鍋に水1Lに対して小麦粉大匙3、塩小匙1を入れてダマが無くなるまで泡だて器でかき混ぜ、中火にかける。沸騰したらゼンマイを入れ、再沸騰したら弱火にし、木ベラで小麦粉が底に凝固しないように底からゆっくりかき混ぜ4分煮る。
ザルに上げて冷水にとって熱を取り、苦味が気にならなくまで水に晒しておく。
漬け汁を作る。水:酒:味醂:醤油を4:2:1:1cupの割合で鍋に入れて弱火に掛けて、沸騰したら削り節20gを入れてアクを取りながら2分間煮て、削り節は漉しとって除き放置して粗熱を取る。
粗熱が取れたらタッパーやジップロックに漬け汁を入れて、アク抜きの終わったゼンマイを1日漬け込む。

・ポイント
ゼンマイはワラビよりも多少アクが強いので、小麦粉水で4分煮るようにします。
4分を超えると繊維状に分解して溶けはじめるので、以後は水に晒してアク抜きします。

オオバギボウシ(ウルイ)

オオバギボウシ
Fig.19 オオバギボウシの出芽 (兵庫県但馬地方 2016.5/12)
里山にも生育しているが、山地の草原の湿った場所に生えるものに太い芽を上げるものが多い。
降雨量の多い地域では、庭に植えておいて利用するのもよいだろう。

メカジキのスモーク、山菜4種のボイル、ムスリンソースで
Fig.20 メカジキのスモーク、山菜4種のボイル、ムスリンソースで
淡白なメカジキを短時間熱燻して香りにアクセントを加え、アクの無い山菜、アク抜きした山菜を添えて、優しい味のムスリンソースで頂きます。
山菜は左からコゴミ、オオバギボウシ(ウルイ)、ヤマブキショウマ、ワラビ。
ワンプレートで複数の食材をバランスよくのせて、一つのソースで頂くというのは素材に対する試行錯誤が必要で、奥深いものがあります。

【調理法】
ヤマブキショウマとワラビは事前にアク抜きしておく。
メカジキの熱燻のために事前に漬け込むソミュール液を作る。水300ccに塩と砂糖ともに10g、ローズマリー、タイム、ディルなどの香草を混ぜる。
ソミュール液をジッパーに入れて2~3時間メカジキを漬けこむ。
メカジキを時間通り漬け込んだらよく水気を拭い去り、すのこを敷いたバットの上に並べ、扇風機を回して1時間風乾。メカジキの表面が乾いたら、中華鍋の底にアルミホイルを敷き、その上に一掴みのサクラのウッドチップ、大匙1のザラメを混ぜる。
さらにその上にメカジキからの脂や肉汁がチップにかからないようにアルミホイルを被せ、強中火にかける。鍋底のチップから煙が立ってきたら鍋の外径より少し小さな丸網を乗せ、その上にメカジキを並べ蓋をする。
そのまま中火で5分熱燻し、火をとめて蓋をしたまま冷めるまで放置する。ソース用の卵1~2個を冷蔵庫から出して室温に戻す。
メカジキが冷めたらビニール袋に入れ、中の空気をしっかり抜いて口を結んで、60~70℃の湯で40分湯煎する。メカジキを湯煎する間、コゴミとオオバギボウシを塩茹でする。コゴミは5分、オオバギボウシは1分塩茹でし、冷水に取る。
山菜類は食べやすい大きさに切り、ワンプレートの皿の上方に並べておく。
卵を固ゆでして流水中で殻を剥いて冷まし、細かく刻んでおく。さらにムスリンソースを作る。
室温に戻した卵を卵黄と卵白に分け、卵白は卵黄よりやや大きめのボールに入れる。
卵黄1個分に対してディジョン・マスタード小匙1を入れてよく混ぜる。
良質な米油、グレープシードオイル、オリーブオイルなどを卵黄1個分に対して200cc用意しておく。
卵黄とマスタードを混ぜたものに、少しずつオイルを足しては小さな泡だて器で混ぜることを繰り返し、マヨネーズくらいのネバリが出たら、オイルを足すのを止めて、味見し掻き混ぜながら塩をを加える。この状態がマヨネーズ状態あるいはオランデーズ・ソースとされているもので、マヨネーズは簡単に自家製できます。
湯煎が終わる5分前に大きめのボールに分けておいた卵白を泡だて器で休み無く素早くメランジェして泡立てる。卵白の液がほとんど泡状となったら、マヨネーズ状のオランデーズ・ソースをなるべく泡を壊さないようにさっくりと混ぜる。
皿に並べた山菜の下方に湯煎したメカジキを置いて、ソースをたっぷりとかけ、メカジキの上に刻んだゆで卵を乗せる。

・ポイント
メカジキは単に火を通して燻香をつけるなら中火で熱燻20分すればよいのですが、食感を柔らかくするため短時間熱燻したあと、湯煎で低温調理しています。
メカジキの食感が硬めでよいのであれば熱燻20分して放置し、湯煎する必要はありません。
オランデーズ・ソースはホワイト・アスパラのソースの定番で、アスパラの味と風味に近いコゴミ、オオバギボウシが美味しく食べられると思い採用してみました。
卵白を無駄にしないためメランジェしてオランデーズ・ソースに混ぜ、ふんわりとしたムスリン・ソースにします。
卵黄に油を加える際には少しずつ混ぜながら加える。
油を一度に大量に加えるを卵黄と油が分離してしまいます。

サンショウ

若い実をつけたサンショウ
Fig.21 若い実をつけたアサクラザンショウ (西宮市 2016.5/12)
耕作放棄地が増えるにしたがって、かつて利用されていたはずのサンショウが、草深い土手などで人知れず結実しているのをよく見かけるようになりました。
画像のものもそのひとつで、やがては周囲の低木に埋もれてしまいそうです。
サンショウは在来種。古くから利用されてきた香辛料で、様々な利用法があります。

サンショウの雄花
Fig.22 サンショウの雄花(花山椒)
木の芽が出回り始める時期にわずかに市場に流通しています。
これは植林地で放置されていた株から採取したもので、今回は鍋に利用します。
基本はスキヤキですが、1年のうちでもわずかな期間だけ楽しめる贅沢な鍋料理です。

花山椒鍋
Fig.23 花山椒鍋
国産の花山椒は中華で利用する「花椒」とは異なります。
「花椒」は国産のサンショウとは種が異なり、カホクザンショウの果皮を乾燥させたものです。
花山椒は実山椒や花椒と比べて香り高く、それでいて刺激のやわらかなもので、沢山食べられます。

【調理法】
先に書いたように基本スキヤキですが、牛肉の扱いが多少異なります。
最初に出汁用に牛肉4~5枚を少量の牛脂で炒めて肉汁を出してから割り下を加え、具材を入れていきます。具材は冷凍キノコ数種(出汁用)、ささがきゴボウなどの根菜類、ネギなどの葉物野菜、豆腐や厚揚げの順に入れていきます。
花山椒は最後にたっぷりと投入し、牛肉をしゃぶしゃぶのようにして、花山椒を包んで溶いた生卵をつけて頂きます。〆にはうどんがよく合います。

・ポイント
花山椒は肉の量に合わせて数回に分けて投入するので、充分な量を用意しておきます。

イワシの山椒焼き
Fig.24 イワシの山椒焼き
なんか画像がイマイチですが、味は絶品です。
実山椒の佃煮を利用したもので、毎年大量に作っています。
佃煮のレシピはネット上に沢山あるので、ここでは省きます。

【調理法】
イワシは頭を切り落として内蔵を取り、手開きして骨を取ったのち30~40℃のぬるま湯に10分ほどつけおき、血抜きして臭みをとる。
血抜きしたら冷水で軽く洗って水気を拭き取り、ジッパーやビニール袋に入れる。
袋の中に実山椒の佃煮と塩麹を入れて口を閉じ、イワシに揉み込み、冷蔵庫で1時間ほど漬け込んでおく。トースターを200℃で余熱しておく。
1時間程経ったら袋からイワシを取り出し、表面の塩麹を拭い取り、イワシの開いた面に実山椒を並べて、開いた面を閉じる。
アルミホイルを一度軽くクシャクシャにして、凹凸が残る状態でトースターの網の上に広げる。
アルミホイルの上にイワシを並べて軽く酒を振ったのち、焦げ防止にもう1枚アルミホイルを上から被せて10分焼く。10分経ったら被せていたアルミホイルを取り除き、焼き色がつくまで焼く。

・ポイント
実山椒は硬くなっていない弾力のある若い実を摘んで佃煮にする。
イワシは腹膜と血合いに臭みがあるので、ぬるま湯に漬けて臭みのある部分を除きながら血抜きする。
下に敷くアルミホイルをクシャクシャにすることで、余分な脂をホイルの凹部に落とします。
画像のものは手抜きをしてホイルを被せなかったので、少し焦げ付いてしまいました

モミジガサ(シドケ)

モミジガサ
Fig.25 モミジガサ (兵庫県但馬地方 2016.5/12)
中部地方や東北地方ではよく利用されている山菜ですが、西日本で利用する人はほとんどいないようです。独特なクセのある山菜ですが、食べ慣れるとこのクセが病みつきになります。

モミジガサの塩揉み
Fig.26 モミジガサの塩揉み
モミジガサの独特のクセが味わえるシンプルな1品です。
その年の最初に獲ったモミジガサは、先ずこのレシピで味わっています。

【調理法】
モミジガサは茎先は残して葉の部分は取り除き、沸騰した湯に塩を一つまみ入れて塩茹でする。
再沸騰したら1分でザルに空けて、すぐに冷水に取る。
水気を除き食べやすい大きさに切ってボールに入れ、多目の塩を振ってしっかり目に揉み込む。
アクと水分がでてくるのでそれを捨てて、器に盛ってできあがり。

・ポイント
塩揉みするとアクが出てくるので、アク抜きは不要です。
塩揉みするとしゃっきり感は無くなるので、歯応えを期待するなら別の調理法で。

モミジガサとヤマブキショウマの豚肉ロール
Fig.27 モミジガサとヤマブキショウマの豚肉ロール、バルサミコ・ソース
独特のクセやコクのある山菜は豚肉とよく合います。
酸味と甘味のあるソースであっさりと頂けます。

【調理法】
モミジガサのアク抜き。沸騰した湯に塩を一つまみ入れて塩茹でする。
再沸騰したら1分でザルに空けて、すぐに冷水に取り、水に10~30分晒してアク抜きする。
ヤマブキショウマは小麦粉水でアク抜きしておく。
豚バラ肉の薄切りを広げ、軽く塩コショウして下味を付け、モミジガサとヤマブキショウマをそれぞれ別に斜めに巻いていく。
巻き終わったら外側に片栗粉をまぶし、余分な粉をはたき落とす。
フライパンに油を敷いて巻き終わりの部分を下にして焼き始め、途中から転がしながら外側がパリッとするまで焼く。
焼けたら熱いうちにアルミホイルに包んで寝かし、その間にバルサミコ・ソースを作ります。
小鍋に卸したタマネギ大匙2、バルサミコ酢大匙1、赤ワイン大匙1/2、醤油大匙1、メープルシロップまたは蜂蜜大匙1/2、刻んだプルーン1個分をフライパンに入れて弱火にかけ、少しトロ味がついたら火を止める。寝かせていた肉ロールを皿に並べて、バルサミコ・ソースをかけて頂きます。

・ポイント
モミジガサは長く水に晒すと、独特のクセが薄れるのでほどほどに。
モミジガサとヤマブキショウマは別々の肉で巻きます。

モミジガサとノビルの餃子
Fig.28 モミジガサとノビルの餃子
モミジガサは葉を、ノビルはムカゴや蕾のついた花茎上部の柔らかい部分を利用します。
一度に大量に作って冷凍しておくと、季節に関係なく楽しめます。

【調理法】
モミジガサの葉はボールに入れて熱湯を回し掛けて湯通しし、すぐにザルに上げて冷水に取る。
よく絞って水気を切ったら幅2~3mmに刻みます。ノビル坊主も洗って微塵切りに。
刻んだモミジガサの葉をノビル坊主をボールに入れ、塩を振ってしっかり塩揉みする。
塩揉みして出てきた水分を捨て、水気をしっかり絞る。
半解凍状態の豚挽き肉(200g)に、下処理の終わったモミジガサとノビル坊主、摺り下ろしたショウガ1片分、鶏がらスープの素大匙1、昆布粉小匙1/2、米油小匙1、酒50ccを加えてよく捏ね混ぜる。
餃子の皮に具を包みます。小さな器に水50cc、薄力粉小匙1を入れて水溶き薄力粉をつくっておく。
フライパンに油を敷き、餃子を入れて中火で下面に焼き色がついたら、水溶き薄力粉をよく混ぜて回しかけ、蓋を被せて3分蒸し焼きにする。
3分たったら蓋を取って水分を飛ばし、餃子のフチが少し反り返ったら、鍋肌にゴマ油を回しかけ香り付けして完成。

・ポイント
モミジガサの葉はたっぷりと入れてください。
ノビル坊主を使うのでニンニクは入れていませんが、ニンニク好きの方はニンニクの摺り下ろしをお好みの量入れてください。
水溶き薄力粉で蒸すことによって羽根付き餃子に仕上がります。
豚肉に合うフキノトウ、セリ、シャク、タラノメ、コシアブラ、ウドなどの山菜も応用できます。
ジューシーな餃子がお好みなら、挽き肉に背脂かラードを混ぜてください。

その他の山菜

ツリガネニンジン
Fig.29 ツリガネニンジン(サイヨウシャジン) (兵庫県篠山市 2016.4/22)
どこにでもある山菜で、アクやクセはほとんどなく様々な料理に利用できます。

ナルコユリ
Fig.30 ナルコユリ (兵庫県但馬地方 2016.5/12)
甘味の強い山菜で、ホワイトアスパラのようにオランデーズ・ソースで味わうのがよい。
出芽状態は有毒のホウチャクソウにやや似ているので注意が必要です。

山菜天ぷら盛り合わせ
Fig.31 山菜の天ぷら盛り合わせ
山菜料理の定番。
中央左下から時計周りで、若い実山椒の花序、スズコ、ナルコユリ、結んだノビル坊主、ハリエンジュの花序、ヤマブキショウマ、ワラビ、モミジガサ、ウド、タラノメ、ツリガネニンジン。
山菜の天ぷらは食卓中央に天ぷら鍋を置いて、好きなものに天ぷら粉をつけてその場で揚げていくのが最高の食べ方です。

おまけの山菜料理

クレソンのサルシッチャ炒め
Fig.32 クレソンのサルシッチャ炒め
サルシッチャをほぐしながらクレソンを炒めた、クレソン大量消費の簡単料理。

クレソンのポタージュ
Fig.33 クレソンのポタージュ
クレソンの爽やかな苦味が味わえます。

セリと鮭のポタージュ
Fig.34 セリと鮭のポタージュ
ディルを使うところをセリに置きかえたら、ディルとはまた違った風味で美味に。

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