この秋に見たシダ類
2015/11/25 Wed. 22:37 [edit]
10月のシダをまとめようと思っていましたが、書く時期を逸してしまいました。
そこで今回は11月現在、これまで見てきたものも含めて掲載することにしました。
*画像クリックで、別ウィンドで表示されます。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。

Fig.1 岩場に群生するツルデンダ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
有志で裏六甲の幻のシダの探査に出掛けましたが、結局見つかりませんでした。
遡行した谷は花崗岩地ですが、基本的に好石灰性シダのツルデンダが群生していました。
風化が進行中の谷なので、なにがしかの変成作用で石灰分を生じているのかもしれません。
関連ページ 関西の花/シダ・ツルデンダ

Fig.2 ムカゴを生じたツルデンダ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
時期的に葉先にムカゴを付けた個体が沢山見られました。

Fig.3 この谷を象徴する岩上性のシダ類 (兵庫県六甲山 2015.10/8)
ツルデンダ、オウレンシダ、クジャクシダの3種が同時に見られます。
裏六甲ではオサシダもよく見られますが、この谷では生育していませんでした。
関連ページ 関西の花/シダ・オウレンシダ
関連ページ 関西の花/シダ・クジャクシダ

Fig.4 ミサキカグマ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
里山の農道脇のクヌギの根元に固まって生えていました。
忘れていた頃に何気ない場所で出会う、とらえどころの無いシダという印象があります。

Fig.5 ミヤコヤブソテツ (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
この日はシダの会の観察会で初見のシダが多く、お腹一杯になって帰ってきました。
これは谷の入り口近くに生育していた、葉が白味を帯びて見た目的に覚えやすいミヤコヤブソテツ。
この仲間はまだ不勉強で、ほかにホソバヤマヤブソテツ、テリハヤマヤブソテツを教えていただきました。あいにくほとんどの個体の包膜はすでに脱落しており、来年のいい頃合に再訪したいと思います。

Fig.6 ツクシイワヘゴ (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
自生であれば兵庫県新産種ですが、スギ植林地内の地上にあるため扱いは慎重になっているようです。
あと何ヶ所か自生地が見つかればいいのでしょうが、分布上そう簡単に見つかるとも思えません。

Fig.7 ヒカゲワラビ (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
阪神地域では稀なシダですが、最近数ヶ所で自生地が見つかっているとのことでした。
湿度が適度に保たれた植林地内なので生き残っているのでしょう。

Fig.8 ドウリョウイノデ(雑種) (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
周辺にはイノデ、サイゴクイノデ、アイアスカイノデなどのイノデ類も多かったので雑種が見つかりそうだと思っていたところ「ドウリョウイノデがありましたよ。」との声。
ドウリョウイノデはイノデとアイアスカイノデの雑種で、遠目からは大型のイノデのように見え、葉柄基部には中央が濃褐色となる鱗片が混じっています。
他にこの観察会ではアイノコクマワラビ、クジャクフモトシダ、イヌチャセンシダ、ツクシイワヘゴ×アイノコクマワラビ、イヌイワヘゴ、イワヘゴ、アカハナワラビ、オオハナワラビ、アイフユノハナワラビなどが見られました。

Fig.9 クルマシダ (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
観察会が終わった後、クルマシダ自生地に案内して頂きました。
兵庫県内では超稀少種で、初めて見る眼ではチャセンシダ科にはとても見えませんでした。
滑りやすい斜面の岩場に数個体が着生しているのみでした。

Fig.10 コウザキシダ (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
これも滅多にお目にかかれない稀少種。
スギが生長して日当たりが悪くなりつつある植林地の、ちょっとした岩場にかろうじて小さな1個体のみが生育していました。

Fig.11 成長しつつあるヒメムカゴシダのムカゴ (兵庫県 2015.10/20)
前回の保全調査の際にほとんどソーラスを付けていなかったので、そろそろ付いている頃かと自生地を訪ねました。前回見られたムカゴはかなり成長して新葉を展開しつつありました。
ソーラスの付いている葉もかなり増え、それらの葉軸にはムカゴが全く生じていませんでした。
どうやらここでは初夏に展開した大きめの葉にはムカゴを付け、夏の終わりから展開する秋葉にソーラスを付けているようです。

Fig.12 ハナワラビ属の不明種 (兵庫県丹波地方 2015.10/20)
栄養葉の形態からエゾフユノハナワラビが絡んでいる可能性がある個体で、周辺にも数個体見られます。11/14に再訪しましたがすでに胞子飛散後で、他のハナワラビ類よりも胞子飛散時期が少し早いようです。

Fig.13 胞子葉を展開しつつあるイヌガンソク (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
但馬の植林地ではイヌガンソクの大きな葉の間から低い胞子葉が展開し始めていました。
関連ページ 関西の花/シダ・イヌガンソク

Fig.14 群生するオオクジャクシダ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
植林地内の多湿な沢沿いに数十個体が群生していました。
シカの食害がそこそこ見られる場所で、イヌワラビ類などの食害は目立ちましたが、まだオオクジャクシダにまでは被害が及んでいないようです。集団内にイワヘゴが少数混じっていたのでキヨズミオオクジャクを探してみましたが見当たりませんでした。
関連ページ 関西の花/シダ・オオクジャクシダ

Fig.15 新葉を展開したオシャグジデンダ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
但馬の落葉広葉樹林の大木の樹幹にはオシャグジデンダがよく見られます。
冬緑性シダなのでこの時期はみずみずしい葉を広げています。
関連ページ 関西の花/シダ・オシャグジデンダ

Fig.16 イワオモダカ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
コンデジのズームを使って、なんとか至近距離で撮影できる個体が着生していました。
トチノキの大木に着生しており、はるか上方には大きな個体が3つほど付いています。
同じ樹にはオシャグジデンダやミヤマノキシノブも見られました。

Fig.17 ムキタケ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
10月は極端に降雨が少なく、期待していたキノコ類をほとんど見かけることがありませんでした。
見かけるものは枯れ木に発生するムキタケとヌメリスギタケモドキだけで、ヌメリスギタケモドキはすでにキノコバエにボロボロにされており、収穫できたのはムキタケのみでした。

Fig.18 アカハバヒロキノコムシとキノコバエの仲間 (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
アカハバヒロキノコムシはキノコムシ類では比較的ふつうな種で見かける機会の多いものです。
虫に喰われてボロボロになりかけのヌメリスギタケモドキに着いていました。

Fig.19 ヤシャゼンマイとオオバヤシャゼンマイ (兵庫県阪神地方 2015.11/1)
阪神地方のヤシャゼンマイの既知の自生地を訪ねてみました。
すると、そこにあったのはほとんどがヤシャゼンマイとゼンマイの雑種であるオオバヤシャゼンマイで、純粋な成熟したヤシャゼンマイは3個体ほどでした。
画像左上の羽片の細いものがヤシャゼンマイ、羽片の幅の広いものはオオバヤシャゼンマイです。
秋葉を出している大型個体のみによる確認ですが、それにしては個体数が少ないように思います。
一方、オオバヤシャゼンマイのほうは胞子で殖えているとしか思えない状況で、胞子を形成しているかどうか確認のしどころです。

Fig.20 ホソバオオハナワラビ(仮称) (兵庫県阪神地方 2015.11/10)
今年も林に囲まれて日陰地となっている休耕田に、巨大なホソバ・タイプのオオハナワラビが数個体見られました。オオハナワラビには3つのタイプが見られ、これら多形性を見せるオオハナワラビを分類上どのように考えるか難しいものがありますが、見ている分には楽しいものです。

Fig.21 シモツケヌリトラノオ (兵庫県丹波地方 2015.11/14)
この日はシダの会の観察会を案内させて頂きました。
雨が降ったり止んだりのあいにくの天候で、ほとんどよい画像が撮れませんでしたが比較的マシなものを何点か。シモツケヌリトラノオは日当たり良い岩場に生育しているため、コンデジでも難のない画像が取れました。葉が立ち上がって無性芽を付けないのが特徴で、乾燥のためか葉が黄化しています。
周辺の岩上にはカミガモシダも沢山見られ、両種の種間雑種と推定されるニセヌリトラノオも群生しています。
関連ページ 関西の花/シダ・シモツケヌリトラノオ

Fig.22 ヌカイタチシダマガイ (兵庫県丹波地方 2015.11/14)
全国的に稀少なベニシダの仲間で、兵庫県内では今のところここでしか見たことがありません。
雨で濡れているため光って見えますが、葉面には光沢がないところがヌカイタチシダモドキと違うところ。鱗片の色もヌカイタチシダモドキは黒褐色~暗褐色ですが、こちらのほうは明褐色となります。
周囲には先のシモツケヌリトラノオ、カミガモシダ、ニセヌリトラノオ、小型のアツギノヌカイタチシダマガイ、シノブカグマ、オオマルバベニシダ、シシランなどが見られます。
関連ページ 関西の花/シダ・ヌカイタチシダマガイ

Fig.23 キノクニベニシダ (兵庫県丹波地方 2015.11/14)
ベニシダ、トウゴクシダ、ヌカイタチシダモドキの性質を併せ持つもので、要検討とされている分類群です。羽片は中軸と直交して立体的な階段状となり、初夏の若い葉は中軸が赤味を帯びます。
関連ページ 関西の花/シダ・キノクニベニシダ

Fig.24 ハコネシケチシダ (兵庫県丹波地方 2015.11/14)
キヨタキシダの群生かと、あまり気に留めていなかったものが、なんとハコネシケチシダでした。
よく考えてみれば、キヨタキシダが面的に広がって群生するなんてことはありえませんでした。
キヨタキシダの新芽は美味しいので、来年の春に食べてみて初めてオカシイことに気付いていたことでしょう。食い意地が優先して何を見ていたのかと、我ながら浅ましく思った次第でした。

Fig.25 ハコネシダ (三重県北西部 2015.11/16)
この日は野暮用ついでに三重の西端に足を伸ばしました。
兵庫県では珍しい種もこちらでは普通種というものが短時間で見れました。
道中の道沿いの岩場ではハコネシダが沢山みられました。
関連ページ 関西の花/シダ・ハコネシダ

Fig.26 クジャクシダ (三重県北西部 2015.11/16)
これも道路沿いの法面に群生しているもので、周辺の湿度の高さが窺えます。
関連ページ 関西の花/シダ・クジャクシダ

Fig.27 ヒメクラマゴケ (三重県北西部 2015.11/16)
道路沿いの崖ではヒメクラマゴケが典型的な生態で生育していました。
周辺にはフジシダ、ヌリトラノオ、コウヤコケシノブ、ホソバコケシノブなども着生していました。

Fig.28 ヒメクラマゴケの大胞子 (三重県北西部 2015.11/16)
採集した標本は小胞子は全て飛散してしまってありませんでしたが、大胞子はまだかなり残っていたので観察してみました。大きさは260μ(0.26mm)前後で、球状の4面体で3稜の分裂分岐点が明瞭、この部分を内側にして大胞子嚢内に4個(ときに3個)の大胞子が見られました。
大胞子の表面にはしわのような細かい模様があるようですが、そこまでは画像で再現できませんでした。100倍での撮影でしたが、1段階落とした80倍のほうが再現できたかもしれません。

Fig.29 コンテリクラマゴケ (三重県北西部 2015.11/16)
農道脇に群生していた外来種で、兵庫県でも時々こういった場所がありますね。

Fig.30 ヘラシダ (三重県北西部 2015.11/16)
ヘラシダも出現率が高いようで、川筋や湿った土崖など複数箇所で生育していました。
関連ページ 関西の花/シダ・ヘラシダ

Fig.31 コバノカナワラビ (三重県北西部 2015.11/16)
兵庫県内でもあるところに行けば沢山生えていますが、ここではどこに行っても見られます。
なかなか本種だけを見に行く機会もなく、ここで堪能できました。

Fig.32 クリハラン (三重県北西部 2015.11/16)
社寺境内に流れる小川の石垣に生育していました。
これも兵庫県内ではやや中途半端な種で、あえて見に行くような気にはならず、ここで出会えてラッキーでした。

Fig.33 マツザカシダ (三重県北西部 2015.11/16)
これも社寺林内で見たものですが、残念ながら胞子葉を出しているものはありませんでした。
近くに点々と見られるウラボシノコギリシダもソーラスを付けているものがなく、シカによる食害があるようです。一度、三重や和歌山のシダもゆっくり見て廻りたいものです。

Fig.34 モトマチハナワラビ (神戸市 2015.11/20)
今のところ神戸市内で1個体のみ確認できているモトマチハナワラビで、今年も健在でした。
オオハナワラビの自生地自体は沢山あるので、まだこれから自生地は見つかるはずだと考えています。
関連ページ 関西の花/シダ・モトマチハナワラビ

Fig.35 アカフユノハナワラビ(雑種) (神戸市 2015.11/20)
アカハナワラビとフユノハナワラビの推定種間雑種とされているものです。
寒さが増すと紅変しますが、11月は暖かい日が続いたためか紅変する気配がまだ見られません。
ここでは紅変が見られない個体も混じっており、複雑に交雑している可能性もあります。
関連ページ 関西の花/シダ・アカフユノハナワラビ(雑種)

Fig.36 浸透交雑を繰り返していると見られるハナワラビ類 (神戸市 2015.11/20)
クリ園の林床に生育している集団で、一つとして同じ顔のないハナワラビ達が見られる場所です。
画像にはアイフユらしきもの、アカフユらしきもの、モトマチハナワラビとフユノハナワラビの混生地に見られるようなものなどが入り混じって生育しています。
関連ブログ・ページ 冬緑~常緑性ハナワラビの種間雑種

Fig.37 トガリバイヌワラビ (兵庫県丹波地方 2015.11/20)
これまでシカの食害に遭ったソーラスをつけないような小型個体しか見つけれなかったのですが、ここは数年前にシカ避け柵を設置してから復活したようです。
まだ小さな葉でしたが、裏面には全面にソーラスが付いていました。夏緑性シダはそろそろ枯れる頃で、この個体も中軸がもろくなって、葉身上部の軸が折れていました。

Fig.38 タニイヌワラビ (兵庫県丹波地方 2015.11/20)
当地では比較的ふつうな常緑のイヌワラビの仲間ですが、羽片・小羽片ともに形がシャープでお気に入りのシダです。近くに先のトガリバイヌワラビやホソバイヌワラビがあるので、雑種ハツキイヌワラビがないか探しましたが、そう易々とは見つかりませんね。
関連ページ 関西の花/シダ・タニイヌワラビ
そこで今回は11月現在、これまで見てきたものも含めて掲載することにしました。
*画像クリックで、別ウィンドで表示されます。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。

Fig.1 岩場に群生するツルデンダ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
有志で裏六甲の幻のシダの探査に出掛けましたが、結局見つかりませんでした。
遡行した谷は花崗岩地ですが、基本的に好石灰性シダのツルデンダが群生していました。
風化が進行中の谷なので、なにがしかの変成作用で石灰分を生じているのかもしれません。
関連ページ 関西の花/シダ・ツルデンダ

Fig.2 ムカゴを生じたツルデンダ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
時期的に葉先にムカゴを付けた個体が沢山見られました。

Fig.3 この谷を象徴する岩上性のシダ類 (兵庫県六甲山 2015.10/8)
ツルデンダ、オウレンシダ、クジャクシダの3種が同時に見られます。
裏六甲ではオサシダもよく見られますが、この谷では生育していませんでした。
関連ページ 関西の花/シダ・オウレンシダ
関連ページ 関西の花/シダ・クジャクシダ

Fig.4 ミサキカグマ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
里山の農道脇のクヌギの根元に固まって生えていました。
忘れていた頃に何気ない場所で出会う、とらえどころの無いシダという印象があります。

Fig.5 ミヤコヤブソテツ (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
この日はシダの会の観察会で初見のシダが多く、お腹一杯になって帰ってきました。
これは谷の入り口近くに生育していた、葉が白味を帯びて見た目的に覚えやすいミヤコヤブソテツ。
この仲間はまだ不勉強で、ほかにホソバヤマヤブソテツ、テリハヤマヤブソテツを教えていただきました。あいにくほとんどの個体の包膜はすでに脱落しており、来年のいい頃合に再訪したいと思います。

Fig.6 ツクシイワヘゴ (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
自生であれば兵庫県新産種ですが、スギ植林地内の地上にあるため扱いは慎重になっているようです。
あと何ヶ所か自生地が見つかればいいのでしょうが、分布上そう簡単に見つかるとも思えません。

Fig.7 ヒカゲワラビ (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
阪神地域では稀なシダですが、最近数ヶ所で自生地が見つかっているとのことでした。
湿度が適度に保たれた植林地内なので生き残っているのでしょう。

Fig.8 ドウリョウイノデ(雑種) (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
周辺にはイノデ、サイゴクイノデ、アイアスカイノデなどのイノデ類も多かったので雑種が見つかりそうだと思っていたところ「ドウリョウイノデがありましたよ。」との声。
ドウリョウイノデはイノデとアイアスカイノデの雑種で、遠目からは大型のイノデのように見え、葉柄基部には中央が濃褐色となる鱗片が混じっています。
他にこの観察会ではアイノコクマワラビ、クジャクフモトシダ、イヌチャセンシダ、ツクシイワヘゴ×アイノコクマワラビ、イヌイワヘゴ、イワヘゴ、アカハナワラビ、オオハナワラビ、アイフユノハナワラビなどが見られました。

Fig.9 クルマシダ (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
観察会が終わった後、クルマシダ自生地に案内して頂きました。
兵庫県内では超稀少種で、初めて見る眼ではチャセンシダ科にはとても見えませんでした。
滑りやすい斜面の岩場に数個体が着生しているのみでした。

Fig.10 コウザキシダ (兵庫県阪神地方 2015.10/11)
これも滅多にお目にかかれない稀少種。
スギが生長して日当たりが悪くなりつつある植林地の、ちょっとした岩場にかろうじて小さな1個体のみが生育していました。

Fig.11 成長しつつあるヒメムカゴシダのムカゴ (兵庫県 2015.10/20)
前回の保全調査の際にほとんどソーラスを付けていなかったので、そろそろ付いている頃かと自生地を訪ねました。前回見られたムカゴはかなり成長して新葉を展開しつつありました。
ソーラスの付いている葉もかなり増え、それらの葉軸にはムカゴが全く生じていませんでした。
どうやらここでは初夏に展開した大きめの葉にはムカゴを付け、夏の終わりから展開する秋葉にソーラスを付けているようです。

Fig.12 ハナワラビ属の不明種 (兵庫県丹波地方 2015.10/20)
栄養葉の形態からエゾフユノハナワラビが絡んでいる可能性がある個体で、周辺にも数個体見られます。11/14に再訪しましたがすでに胞子飛散後で、他のハナワラビ類よりも胞子飛散時期が少し早いようです。

Fig.13 胞子葉を展開しつつあるイヌガンソク (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
但馬の植林地ではイヌガンソクの大きな葉の間から低い胞子葉が展開し始めていました。
関連ページ 関西の花/シダ・イヌガンソク

Fig.14 群生するオオクジャクシダ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
植林地内の多湿な沢沿いに数十個体が群生していました。
シカの食害がそこそこ見られる場所で、イヌワラビ類などの食害は目立ちましたが、まだオオクジャクシダにまでは被害が及んでいないようです。集団内にイワヘゴが少数混じっていたのでキヨズミオオクジャクを探してみましたが見当たりませんでした。
関連ページ 関西の花/シダ・オオクジャクシダ

Fig.15 新葉を展開したオシャグジデンダ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
但馬の落葉広葉樹林の大木の樹幹にはオシャグジデンダがよく見られます。
冬緑性シダなのでこの時期はみずみずしい葉を広げています。
関連ページ 関西の花/シダ・オシャグジデンダ

Fig.16 イワオモダカ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
コンデジのズームを使って、なんとか至近距離で撮影できる個体が着生していました。
トチノキの大木に着生しており、はるか上方には大きな個体が3つほど付いています。
同じ樹にはオシャグジデンダやミヤマノキシノブも見られました。

Fig.17 ムキタケ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
10月は極端に降雨が少なく、期待していたキノコ類をほとんど見かけることがありませんでした。
見かけるものは枯れ木に発生するムキタケとヌメリスギタケモドキだけで、ヌメリスギタケモドキはすでにキノコバエにボロボロにされており、収穫できたのはムキタケのみでした。

Fig.18 アカハバヒロキノコムシとキノコバエの仲間 (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
アカハバヒロキノコムシはキノコムシ類では比較的ふつうな種で見かける機会の多いものです。
虫に喰われてボロボロになりかけのヌメリスギタケモドキに着いていました。

Fig.19 ヤシャゼンマイとオオバヤシャゼンマイ (兵庫県阪神地方 2015.11/1)
阪神地方のヤシャゼンマイの既知の自生地を訪ねてみました。
すると、そこにあったのはほとんどがヤシャゼンマイとゼンマイの雑種であるオオバヤシャゼンマイで、純粋な成熟したヤシャゼンマイは3個体ほどでした。
画像左上の羽片の細いものがヤシャゼンマイ、羽片の幅の広いものはオオバヤシャゼンマイです。
秋葉を出している大型個体のみによる確認ですが、それにしては個体数が少ないように思います。
一方、オオバヤシャゼンマイのほうは胞子で殖えているとしか思えない状況で、胞子を形成しているかどうか確認のしどころです。

Fig.20 ホソバオオハナワラビ(仮称) (兵庫県阪神地方 2015.11/10)
今年も林に囲まれて日陰地となっている休耕田に、巨大なホソバ・タイプのオオハナワラビが数個体見られました。オオハナワラビには3つのタイプが見られ、これら多形性を見せるオオハナワラビを分類上どのように考えるか難しいものがありますが、見ている分には楽しいものです。

Fig.21 シモツケヌリトラノオ (兵庫県丹波地方 2015.11/14)
この日はシダの会の観察会を案内させて頂きました。
雨が降ったり止んだりのあいにくの天候で、ほとんどよい画像が撮れませんでしたが比較的マシなものを何点か。シモツケヌリトラノオは日当たり良い岩場に生育しているため、コンデジでも難のない画像が取れました。葉が立ち上がって無性芽を付けないのが特徴で、乾燥のためか葉が黄化しています。
周辺の岩上にはカミガモシダも沢山見られ、両種の種間雑種と推定されるニセヌリトラノオも群生しています。
関連ページ 関西の花/シダ・シモツケヌリトラノオ

Fig.22 ヌカイタチシダマガイ (兵庫県丹波地方 2015.11/14)
全国的に稀少なベニシダの仲間で、兵庫県内では今のところここでしか見たことがありません。
雨で濡れているため光って見えますが、葉面には光沢がないところがヌカイタチシダモドキと違うところ。鱗片の色もヌカイタチシダモドキは黒褐色~暗褐色ですが、こちらのほうは明褐色となります。
周囲には先のシモツケヌリトラノオ、カミガモシダ、ニセヌリトラノオ、小型のアツギノヌカイタチシダマガイ、シノブカグマ、オオマルバベニシダ、シシランなどが見られます。
関連ページ 関西の花/シダ・ヌカイタチシダマガイ

Fig.23 キノクニベニシダ (兵庫県丹波地方 2015.11/14)
ベニシダ、トウゴクシダ、ヌカイタチシダモドキの性質を併せ持つもので、要検討とされている分類群です。羽片は中軸と直交して立体的な階段状となり、初夏の若い葉は中軸が赤味を帯びます。
関連ページ 関西の花/シダ・キノクニベニシダ

Fig.24 ハコネシケチシダ (兵庫県丹波地方 2015.11/14)
キヨタキシダの群生かと、あまり気に留めていなかったものが、なんとハコネシケチシダでした。
よく考えてみれば、キヨタキシダが面的に広がって群生するなんてことはありえませんでした。
キヨタキシダの新芽は美味しいので、来年の春に食べてみて初めてオカシイことに気付いていたことでしょう。食い意地が優先して何を見ていたのかと、我ながら浅ましく思った次第でした。

Fig.25 ハコネシダ (三重県北西部 2015.11/16)
この日は野暮用ついでに三重の西端に足を伸ばしました。
兵庫県では珍しい種もこちらでは普通種というものが短時間で見れました。
道中の道沿いの岩場ではハコネシダが沢山みられました。
関連ページ 関西の花/シダ・ハコネシダ

Fig.26 クジャクシダ (三重県北西部 2015.11/16)
これも道路沿いの法面に群生しているもので、周辺の湿度の高さが窺えます。
関連ページ 関西の花/シダ・クジャクシダ

Fig.27 ヒメクラマゴケ (三重県北西部 2015.11/16)
道路沿いの崖ではヒメクラマゴケが典型的な生態で生育していました。
周辺にはフジシダ、ヌリトラノオ、コウヤコケシノブ、ホソバコケシノブなども着生していました。

Fig.28 ヒメクラマゴケの大胞子 (三重県北西部 2015.11/16)
採集した標本は小胞子は全て飛散してしまってありませんでしたが、大胞子はまだかなり残っていたので観察してみました。大きさは260μ(0.26mm)前後で、球状の4面体で3稜の分裂分岐点が明瞭、この部分を内側にして大胞子嚢内に4個(ときに3個)の大胞子が見られました。
大胞子の表面にはしわのような細かい模様があるようですが、そこまでは画像で再現できませんでした。100倍での撮影でしたが、1段階落とした80倍のほうが再現できたかもしれません。

Fig.29 コンテリクラマゴケ (三重県北西部 2015.11/16)
農道脇に群生していた外来種で、兵庫県でも時々こういった場所がありますね。

Fig.30 ヘラシダ (三重県北西部 2015.11/16)
ヘラシダも出現率が高いようで、川筋や湿った土崖など複数箇所で生育していました。
関連ページ 関西の花/シダ・ヘラシダ

Fig.31 コバノカナワラビ (三重県北西部 2015.11/16)
兵庫県内でもあるところに行けば沢山生えていますが、ここではどこに行っても見られます。
なかなか本種だけを見に行く機会もなく、ここで堪能できました。

Fig.32 クリハラン (三重県北西部 2015.11/16)
社寺境内に流れる小川の石垣に生育していました。
これも兵庫県内ではやや中途半端な種で、あえて見に行くような気にはならず、ここで出会えてラッキーでした。

Fig.33 マツザカシダ (三重県北西部 2015.11/16)
これも社寺林内で見たものですが、残念ながら胞子葉を出しているものはありませんでした。
近くに点々と見られるウラボシノコギリシダもソーラスを付けているものがなく、シカによる食害があるようです。一度、三重や和歌山のシダもゆっくり見て廻りたいものです。

Fig.34 モトマチハナワラビ (神戸市 2015.11/20)
今のところ神戸市内で1個体のみ確認できているモトマチハナワラビで、今年も健在でした。
オオハナワラビの自生地自体は沢山あるので、まだこれから自生地は見つかるはずだと考えています。
関連ページ 関西の花/シダ・モトマチハナワラビ

Fig.35 アカフユノハナワラビ(雑種) (神戸市 2015.11/20)
アカハナワラビとフユノハナワラビの推定種間雑種とされているものです。
寒さが増すと紅変しますが、11月は暖かい日が続いたためか紅変する気配がまだ見られません。
ここでは紅変が見られない個体も混じっており、複雑に交雑している可能性もあります。
関連ページ 関西の花/シダ・アカフユノハナワラビ(雑種)

Fig.36 浸透交雑を繰り返していると見られるハナワラビ類 (神戸市 2015.11/20)
クリ園の林床に生育している集団で、一つとして同じ顔のないハナワラビ達が見られる場所です。
画像にはアイフユらしきもの、アカフユらしきもの、モトマチハナワラビとフユノハナワラビの混生地に見られるようなものなどが入り混じって生育しています。
関連ブログ・ページ 冬緑~常緑性ハナワラビの種間雑種

Fig.37 トガリバイヌワラビ (兵庫県丹波地方 2015.11/20)
これまでシカの食害に遭ったソーラスをつけないような小型個体しか見つけれなかったのですが、ここは数年前にシカ避け柵を設置してから復活したようです。
まだ小さな葉でしたが、裏面には全面にソーラスが付いていました。夏緑性シダはそろそろ枯れる頃で、この個体も中軸がもろくなって、葉身上部の軸が折れていました。

Fig.38 タニイヌワラビ (兵庫県丹波地方 2015.11/20)
当地では比較的ふつうな常緑のイヌワラビの仲間ですが、羽片・小羽片ともに形がシャープでお気に入りのシダです。近くに先のトガリバイヌワラビやホソバイヌワラビがあるので、雑種ハツキイヌワラビがないか探しましたが、そう易々とは見つかりませんね。
関連ページ 関西の花/シダ・タニイヌワラビ
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category: シダ
10月の花と果実
2015/11/11 Wed. 00:24 [edit]
10月はあまりまとまった時間が取れず、短時間の市内探査が中心となりました。ですから、今回の記事は少し少な目。ともに少な目ですが、シダや湿地・溜池の植物は別の回に掲載します。
但馬の高原では、例年よりも秋が通り過ぎるのが早いようで、花よりも果実が目立っていました。
*画像クリックで、別ウィンドで表示されます。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。

Fig.1 ハマビシ (兵庫県播磨地方 2015.10/7)
この日は海岸での植物誌研究会のハマビシの個体群動態調査でした。
昨年に較べて水分条件があまり良くなかったのか、小型の個体がほとんどでした。
関連ページ 関西の花・ハマビシ

Fig.2 訪花したホソヒラタアブ (兵庫県播磨地方 2015.10/7)

Fig.3 ハマゴウ (兵庫県播磨地方 2015.10/7)
海岸でまだ残り花が開花していました。
関連ページ 関西の花・ハマゴウ

Fig.4 センダイスゲ (兵庫県播磨地方 2015.10/7)
調査終了後、センダイスゲの自生地に足を伸ばしました。
見た目はナキリスゲとほとんど変わりませんが、ナキリスゲよりも小型で側小穂は少なく、大株とはならずに根茎によって面的に広がります。ナキリスゲの仲間では兵庫県では稀なものです。

Fig.5 センダイスゲの全草標本 (兵庫県播磨地方 2015.10/7)
隣の子株と根茎でつながっています。

Fig.6 果実期のホソバテンナンショウ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
この日はシダの探査で六甲山の谷筋に入りました。
ツリフネソウに囲まれてホソバテンナンショウの果実が色付き始めていました。
関連ページ 関西の花・ホソバテンナンショウ

Fig.7 ジンジソウ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
谷筋に降りるとジンジソウが開花真っ盛りで、渓流岩上に群生した本種が見事な景観をつくっていました。

Fig.8 シラネセンキュウ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
湿った岩場に点在するシラネセンキュウも開花中でした。
コンデジでかなり露出を抑えて撮ったのですが、どうしても白飛びしていまいます。

Fig.9 果実期のハナビゼリ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
シラネセンキュウに似ていますが、より繊細に見え開花期も早いです。
シラネセンキュウよりも花序の花数は少なくまばらで、葉裏は強く白味を帯び、シラネセンキュウが2~3回3出羽状複葉なのに対して、ハナビゼリは1~2回3出羽状複葉となります。

Fig.10 ヒヨドリバナ2倍体 (兵庫県六甲山 2015.10/8)
ふつうに見かけるのは3,4,5倍体の倍数体のヒヨドリバナで、2n=20の2倍体の分布は限られ、兵庫県でも六甲山周辺のみで見られます。自生環境は山地の岩場や、林縁の崩壊地で、草体は倍数体よりも繊細で葉はキクバ形になる傾向が強いです。

Fig.11 テイショウソウ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
兵庫県東南部では比較的見かける機会は多く、群生地も数ヶ所あります。
この日はヒロハ・タイプのものも1個体見かけました。
この日は同属のフクオウソウも見られましたが、崩壊地の岩場の上にあって撮影は断念、というかそこまでの根性や思い入れが足りないのかも。
どうもキク科草本についてはあまり関心が持てず、今回が初の大幅掲載だと思います。

Fig.12 ウスゲタマブキ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
但馬地方で見るものは生育が良すぎてとりとめがないような草体になりがちですが、六甲山の岩場に生育するものはコンパクトでスマートにまとまっています。

Fig.13 ミヤマコウモリソウ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
ウスギタマブキの変種ですがウスゲタマブキよりはるかに稀で、兵庫県内では六甲山のみに生育しています。コウモリソウ属のものはいずれも花が地味ですが、同属のモミジガサやヤブレガサよりもさらに一般には知られていない種でしょう。

Fig.14 ミチバタガラシ (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
社寺の参道の一画でミチバタガラシがかたまって生育していました。
まるで外来種のような名前ですが、在来種で近縁のイヌガラシやスカシタゴボウにように多くは見られません。社寺境内の湿った場所で見る機会の多い雑草です。
関連ページ 関西の花・ミチバタガラシ

Fig.15 ウシクサ (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
強度に草刈りされた溜池土堤で、草丈3cmほどのウシクサの草紅葉が見られました。
度重なる草刈りのためか、節間は極端に短くなって葉も小さく矮小化し、その間から花穂を高密度で上げています。
関連ページ 湿生植物・ウシクサ

Fig.16 色付いた自然林 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
但馬の高原ではブナ、ミズナラ、トチノキなどの高木が色付き始めていました。

Fig.17 ミズナラの紅葉 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
ミズナラはなかなか綺麗に紅葉しませんが、ここでは湿地に張り出すように生育しているものが綺麗に色付いていました。

Fig.18 ノブキ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
紛らわしい近縁種もなく、あまりカメラを向けてこなかった草本ですが、新鮮な花が開花していたので撮影しました。頭花は白い筒状花の集まりで、果実には粘液を分泌する腺毛があって、「ひっつき虫」になります。

Fig.19 果実期のツチアケビ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
比較的頻繁に見かけますが、立派な個体なので撮影。非常に存在感がありました。
関連ページ 関西の花・ツチアケビ

Fig.20 タチシオデの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
林縁でちょうど完熟した果実を付けていました。黒熟した液果のなかには、赤い種子が5個前後入っていて、画像でも破れた部分に種子が見えています。
関連ページ 関西の花・タチシオデ

Fig.21 オオナルコユリの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
タチシオデの脇に、葉をほとんど落としたオオナルコユリが果実をぶら下げていました。
すでに液果表面にはしわが寄って干からびはじめています。

Fig.22 トチバニンジンの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
トチバニンジンはすでに多くの果実が落果していました。
ここのものは果実に黒目が入っていないものでした。
残った果柄の風情が面白かったので撮影してみました。
関連ページ 関西の花・トチバニンジン

Fig.23 サルマメの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
小さなサルトリイバラといった感じのサルマメ。
葉腋につく総状花序の花数は少ないので、サルトリイバラのように果実はまとまってつきません。

Fig.24 果実期のミヤマニガウリ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
小川の脇でミヤマニガウリが沢山の果実をぶら下げていました。雄性両全性異株でよく知られています。多くの果実は2枚に合わさった葉の内側に隠れるように付きますが、大きな個体ではぶら下げて付ける果実も多いようです。ぶら下がっている果実はほとんどゆがみが見られませんでした。

Fig.25 果実期のヒロハテンナンショウ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
半ば倒伏したヒロハテンナンショウに果実が赤く熟していました。
葉は1枚で花序は葉よりも下にあるのは、今のところこの地域ではヒロハテンナショウだけです。
関連ページ 関西の花・ヒロハテンナンショウ

Fig.26 オオカニコウモリ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
すでにほとんどの個体は果実期を迎えていましたが、この2本は開花が遅かったようで枯れかけた花の状態を保っていました。標高の高いタマガワホトトギスの生育するような氷ノ山中腹の沢筋では、8月中旬にすでに開花し始めていました。
先のウスゲタマブキ、ミヤモコウモリソウと同属のため、花は見栄えがしません。
兵庫県ではカニコウモリは分布しておらず、日本海側にオオカニコウモリのみが見られます。

Fig.27 開花中のオオタチツボスミレ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
周辺に生育しているアケボノスミレはすでに葉が黄化して枯れかけていましたが、少し窪地になった場所ではオオタチツボスミレが元気に開花していました。
閉鎖花を形成するこのような草本類で、条件が揃えば開花する種は不時開花という言葉が似合わないような気もしてきます。それはタツナミソウの仲間にも言えるような気がします。
関連ページ 関西の花・オオタチツボスミレ

Fig.28 ウメバチソウ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
ウメバチソウは開花が早かったようで、半数は果実を形成していました。
低地では湿地やその周辺で見かけますが、ここでは草地に生育していました。
関連ページ 湿生植物・ウメバチソウ

Fig.28 イトハナビテンツキ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
スキー場の半裸地ではイトハナビテンツキが秋風に吹かれていました。イトテンツキが混じっていないかと探しましたが、全てイトハナビテンツキでした。同所的にアリノトウグサやセンブリが生育しており、周辺にはウメバチソウ、エゾヒカゲノカズラが生育していました。
関連ページ 湿生植物・イトハナビテンツキ

Fig.29 ヒメヤママユガ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
この時期は秋の大型野生蚕蛾の活動シーズンです。
道の駅の休憩所の陰では夜間に飛来したであろうヒメヤママユガが夜を待って静止していました。
渋い色調の組み合わせと、前翅の目玉模様が魅力的です。

Fig.30 クスサン (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
これも別の場所で見た大型蚕蛾の仲間で、後翅に魅力的な目玉模様がありますが、翅を広げてはくれませんでした。この付近ではヤママユガ・ウスタビガ>クスサン・シンジュサン>ヒメヤママユの順に低山から山地に現れるという印象があります。どの大型蚕蛾もじっくり観察すると美しいものです。渋い色調のグラデーションではなく、渋い色調の中でのやや格差のある色調のミニマルな段階的な移行が魅力的です。
但馬の高原では、例年よりも秋が通り過ぎるのが早いようで、花よりも果実が目立っていました。
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Fig.1 ハマビシ (兵庫県播磨地方 2015.10/7)
この日は海岸での植物誌研究会のハマビシの個体群動態調査でした。
昨年に較べて水分条件があまり良くなかったのか、小型の個体がほとんどでした。
関連ページ 関西の花・ハマビシ

Fig.2 訪花したホソヒラタアブ (兵庫県播磨地方 2015.10/7)

Fig.3 ハマゴウ (兵庫県播磨地方 2015.10/7)
海岸でまだ残り花が開花していました。
関連ページ 関西の花・ハマゴウ

Fig.4 センダイスゲ (兵庫県播磨地方 2015.10/7)
調査終了後、センダイスゲの自生地に足を伸ばしました。
見た目はナキリスゲとほとんど変わりませんが、ナキリスゲよりも小型で側小穂は少なく、大株とはならずに根茎によって面的に広がります。ナキリスゲの仲間では兵庫県では稀なものです。

Fig.5 センダイスゲの全草標本 (兵庫県播磨地方 2015.10/7)
隣の子株と根茎でつながっています。

Fig.6 果実期のホソバテンナンショウ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
この日はシダの探査で六甲山の谷筋に入りました。
ツリフネソウに囲まれてホソバテンナンショウの果実が色付き始めていました。
関連ページ 関西の花・ホソバテンナンショウ

Fig.7 ジンジソウ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
谷筋に降りるとジンジソウが開花真っ盛りで、渓流岩上に群生した本種が見事な景観をつくっていました。

Fig.8 シラネセンキュウ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
湿った岩場に点在するシラネセンキュウも開花中でした。
コンデジでかなり露出を抑えて撮ったのですが、どうしても白飛びしていまいます。

Fig.9 果実期のハナビゼリ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
シラネセンキュウに似ていますが、より繊細に見え開花期も早いです。
シラネセンキュウよりも花序の花数は少なくまばらで、葉裏は強く白味を帯び、シラネセンキュウが2~3回3出羽状複葉なのに対して、ハナビゼリは1~2回3出羽状複葉となります。

Fig.10 ヒヨドリバナ2倍体 (兵庫県六甲山 2015.10/8)
ふつうに見かけるのは3,4,5倍体の倍数体のヒヨドリバナで、2n=20の2倍体の分布は限られ、兵庫県でも六甲山周辺のみで見られます。自生環境は山地の岩場や、林縁の崩壊地で、草体は倍数体よりも繊細で葉はキクバ形になる傾向が強いです。

Fig.11 テイショウソウ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
兵庫県東南部では比較的見かける機会は多く、群生地も数ヶ所あります。
この日はヒロハ・タイプのものも1個体見かけました。
この日は同属のフクオウソウも見られましたが、崩壊地の岩場の上にあって撮影は断念、というかそこまでの根性や思い入れが足りないのかも。
どうもキク科草本についてはあまり関心が持てず、今回が初の大幅掲載だと思います。

Fig.12 ウスゲタマブキ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
但馬地方で見るものは生育が良すぎてとりとめがないような草体になりがちですが、六甲山の岩場に生育するものはコンパクトでスマートにまとまっています。

Fig.13 ミヤマコウモリソウ (兵庫県六甲山 2015.10/8)
ウスギタマブキの変種ですがウスゲタマブキよりはるかに稀で、兵庫県内では六甲山のみに生育しています。コウモリソウ属のものはいずれも花が地味ですが、同属のモミジガサやヤブレガサよりもさらに一般には知られていない種でしょう。

Fig.14 ミチバタガラシ (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
社寺の参道の一画でミチバタガラシがかたまって生育していました。
まるで外来種のような名前ですが、在来種で近縁のイヌガラシやスカシタゴボウにように多くは見られません。社寺境内の湿った場所で見る機会の多い雑草です。
関連ページ 関西の花・ミチバタガラシ

Fig.15 ウシクサ (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
強度に草刈りされた溜池土堤で、草丈3cmほどのウシクサの草紅葉が見られました。
度重なる草刈りのためか、節間は極端に短くなって葉も小さく矮小化し、その間から花穂を高密度で上げています。
関連ページ 湿生植物・ウシクサ

Fig.16 色付いた自然林 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
但馬の高原ではブナ、ミズナラ、トチノキなどの高木が色付き始めていました。

Fig.17 ミズナラの紅葉 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
ミズナラはなかなか綺麗に紅葉しませんが、ここでは湿地に張り出すように生育しているものが綺麗に色付いていました。

Fig.18 ノブキ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
紛らわしい近縁種もなく、あまりカメラを向けてこなかった草本ですが、新鮮な花が開花していたので撮影しました。頭花は白い筒状花の集まりで、果実には粘液を分泌する腺毛があって、「ひっつき虫」になります。

Fig.19 果実期のツチアケビ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
比較的頻繁に見かけますが、立派な個体なので撮影。非常に存在感がありました。
関連ページ 関西の花・ツチアケビ

Fig.20 タチシオデの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
林縁でちょうど完熟した果実を付けていました。黒熟した液果のなかには、赤い種子が5個前後入っていて、画像でも破れた部分に種子が見えています。
関連ページ 関西の花・タチシオデ

Fig.21 オオナルコユリの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
タチシオデの脇に、葉をほとんど落としたオオナルコユリが果実をぶら下げていました。
すでに液果表面にはしわが寄って干からびはじめています。

Fig.22 トチバニンジンの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
トチバニンジンはすでに多くの果実が落果していました。
ここのものは果実に黒目が入っていないものでした。
残った果柄の風情が面白かったので撮影してみました。
関連ページ 関西の花・トチバニンジン

Fig.23 サルマメの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
小さなサルトリイバラといった感じのサルマメ。
葉腋につく総状花序の花数は少ないので、サルトリイバラのように果実はまとまってつきません。

Fig.24 果実期のミヤマニガウリ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
小川の脇でミヤマニガウリが沢山の果実をぶら下げていました。雄性両全性異株でよく知られています。多くの果実は2枚に合わさった葉の内側に隠れるように付きますが、大きな個体ではぶら下げて付ける果実も多いようです。ぶら下がっている果実はほとんどゆがみが見られませんでした。

Fig.25 果実期のヒロハテンナンショウ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
半ば倒伏したヒロハテンナンショウに果実が赤く熟していました。
葉は1枚で花序は葉よりも下にあるのは、今のところこの地域ではヒロハテンナショウだけです。
関連ページ 関西の花・ヒロハテンナンショウ

Fig.26 オオカニコウモリ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
すでにほとんどの個体は果実期を迎えていましたが、この2本は開花が遅かったようで枯れかけた花の状態を保っていました。標高の高いタマガワホトトギスの生育するような氷ノ山中腹の沢筋では、8月中旬にすでに開花し始めていました。
先のウスゲタマブキ、ミヤモコウモリソウと同属のため、花は見栄えがしません。
兵庫県ではカニコウモリは分布しておらず、日本海側にオオカニコウモリのみが見られます。

Fig.27 開花中のオオタチツボスミレ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
周辺に生育しているアケボノスミレはすでに葉が黄化して枯れかけていましたが、少し窪地になった場所ではオオタチツボスミレが元気に開花していました。
閉鎖花を形成するこのような草本類で、条件が揃えば開花する種は不時開花という言葉が似合わないような気もしてきます。それはタツナミソウの仲間にも言えるような気がします。
関連ページ 関西の花・オオタチツボスミレ

Fig.28 ウメバチソウ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
ウメバチソウは開花が早かったようで、半数は果実を形成していました。
低地では湿地やその周辺で見かけますが、ここでは草地に生育していました。
関連ページ 湿生植物・ウメバチソウ

Fig.28 イトハナビテンツキ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
スキー場の半裸地ではイトハナビテンツキが秋風に吹かれていました。イトテンツキが混じっていないかと探しましたが、全てイトハナビテンツキでした。同所的にアリノトウグサやセンブリが生育しており、周辺にはウメバチソウ、エゾヒカゲノカズラが生育していました。
関連ページ 湿生植物・イトハナビテンツキ

Fig.29 ヒメヤママユガ (兵庫県但馬地方 2015.10/26)
この時期は秋の大型野生蚕蛾の活動シーズンです。
道の駅の休憩所の陰では夜間に飛来したであろうヒメヤママユガが夜を待って静止していました。
渋い色調の組み合わせと、前翅の目玉模様が魅力的です。

Fig.30 クスサン (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
これも別の場所で見た大型蚕蛾の仲間で、後翅に魅力的な目玉模様がありますが、翅を広げてはくれませんでした。この付近ではヤママユガ・ウスタビガ>クスサン・シンジュサン>ヒメヤママユの順に低山から山地に現れるという印象があります。どの大型蚕蛾もじっくり観察すると美しいものです。渋い色調のグラデーションではなく、渋い色調の中でのやや格差のある色調のミニマルな段階的な移行が魅力的です。
category: 10月の花
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