スミレ愛好会発刊 『近畿地方のスミレ類 -その分布と形態-』 付記:最近見かけたスミレ類
2015/04/27 Mon. 00:11 [edit]
スミレ愛好会のYさんから『近畿地方のスミレ類 -その分布と形態-』が送られてきました。
兵庫、大阪、京都、滋賀、奈良、和歌山、三重の2府5県に分布するスミレ科が網羅的に紹介されたA4版全57ページに亘る労作です。身近にみられるタチツボスミレやスミレといった馴染み深い種から、京都府が分布西限となっているオオバキスミレ、隔離分布するエゾノタチツボスミレ、イブキスミレ、ヒメミヤマスミレ、海岸特有のイソスミレ、アナマスミレ、アツバスミレ、ツヤスミレ、仮称段階でまだ未記載であるニホンカイタチツボスミレ、トウカイスミレなどを含む計44種の形態的特長と生態が詳しく述べられています。形態の特徴は数多くの画像で示され、必要に応じて果実や果実期の葉の画像を提示しつつ、詳細な記述とともに同定の際には大変参考になります。また、各種の近畿地方での具体的な分布状況は本書で初めて明らかにされたもので、今後の近畿地方と各県のスミレ類の分布を検討する上で欠かせないものとなるでしょう。
このような広範囲に亘る分布調査は非常に労力を要するもので、その結果を私のようなスミレ初心者でも共有できる本書の価値は計り知れないものです。本書をもとに近畿地方でスミレ類に新たに関心をもつ人も多くなるのではないかと思います。
以下、ほんの一部ですが抜粋しながらその内容を見ていきたいと思います。

Fig.1 表紙はハグロシハイスミレ(通称)
シハイスミレは近畿地方を代表するスミレ。その中でも葉が黒紫色となるものはハグロシハイスミレ(通称)と呼ばれ、兵庫県でも各所に点在しています。これに葉脈に沿って白斑の入るものはフイリハグロシハイスミレと呼ばれ稀に見かけます。

Fig.2 近畿地方でのスミレ類研究の概要
1972年の「日本すみれ研究会」に始まる近畿地方のスミレ研究史や活動が簡略に記されています。

Fig.3 近畿地方におけるスミレ類分布の特徴
各種を分布西限種、隔離分布を示す種、西日本分布型、日本海分布型、太平洋分布型、海岸型などに分類して記述しています。さらに9つの項目で近畿地方での分布の特徴が詳述されています。

Fig.4 スミレ類の分布表
近畿2府5県のスミレの分布状況を開花期とともに表にしているものです。
各府県の分布欄は「○:分布している」「-:分布情報はない」「△:現状不明」「×:絶滅」に分けて記号化されています。
兵庫県の欄を見ると太平洋分布型の一部、太平洋側の海岸型、高所に隔離分布する種が分布していない特徴が見て取れます。

Fig.5 本文 1
ケイリュウタチツボスミレとニホンカイタチツボスミレ(仮称)のページです。
両種の特徴である葉の形が画像と記述により容易に理解できます。
またほとんどの種の果実の画像が掲載されているのも本書の特徴の一つでしょう。
ケイリュウタチツボスミレでは「種子は播種すると2~3週間でほぼ100%発芽する」、ニホンカイタチツボスミレでは「近畿地方では日本海側から瀬戸内海の中国地方へ分布が続くほか、滋賀・三重両県の鈴鹿山麓から伊賀地方を経て、京都府南部・奈良県・和歌山県北部、さらに四国へ続く分布も確認された。」などの最新の研究調査の成果が記されています。

Fig.6 本文 2
アギスミレとヒメアギスミレのページです。
標本画像により両種の生態形の違いが明白に示されています。
ヒメアギスミレのページでは四国や九州でヒメアギスミレとされてきたものはアギスミレの小型のタイプで近畿以南のものは再検討が必要だと、最新の知見が述べられています。

Fig.7 本文 3
シハイスミレとマキノスミレのページです。
近畿地方は両種が移り変わる地域で中間的なものが多く、しばしば悩んでしまうものです。
マキノスミレの分布西限は現在のところ兵庫県西部とのことです。

Fig.8 本文 4
近畿地方に見られる自然交雑種のリストで、そのうち18種が画像で紹介されています。
以上が『近畿地方のスミレ類 -その分布と形態-』の大まかなあらましです。
本書は 「すみれ愛好会」のホームページから1冊1,500円で購入できます。
付記:最近見かけたスミレ類
*ここからは画像クリックで別ウィンドで表示されます。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。

Fig.9 アリアケスミレ(左)とスミレ(右) (西宮市 2015.4/21)
里山の畑地で見かけたほっとする光景です。
両種ともに市街地に進出中とのことですが、まだアリアケスミレは市街地で見たことがありません。
関連ページ 関西の花・アリアケスミレ
関連ページ 関西の花・スミレ

Fig.10 ハリマスミレ 1 (兵庫県小野市 2015.4/12)
アリアケスミレとスミレの自然交雑種で、花粉を調べると不斉なものばかりです。
両親種が群生する中に様々なタイプが見られました。
これは背丈が低く、花をブーケ状に沢山つけているものです。

Fig.11 ハリマスミレ 2 (兵庫県小野市 2015.4/12)
こちらは花がまばらで背丈の高いものです。

Fig.12 フモトスミレ(左)とシハイスミレ(右) (兵庫県小野市 2015.4/12)
兵庫県では低地でフモトスミレを見る機会は少ないのですが、ここでは洪積台地上の社寺林の半日陰地に見られました。
こんなに隣りあって生育しているのならフモトシハイスミレがあってもおかしくはなく、周囲を探しましたが見つかりませんでした。
関連ページ 関西の花・フモトスミレ
関連ページ 関西の花・シハイスミレ

Fig.13 シハイスミレとマキノスミレの中間タイプ (兵庫県小野市 2015.4/12)
兵庫県内ではこのようなものが頻繁に現れます。葉裏の紫色もごく淡い色をしています。
シハイマキノスミレとしか言い様がありません。

Fig.14 マキノスミレ? (兵庫県三田市 2015.4/17)
葉が立ち上がり、花色も濃いのでマキノスミレと言いたくなりますが、葉裏が先のFig.13のものよりも赤紫色が濃かったです。
ここには昨年見つけたエイザンスミレがあったのですが、シカの食害が急増して、跡形もありませんでした。

Fig.15 ウスアカネスミレ (神戸市 2015.4/26)
アカネスミレの花色の淡い品種ですが、花色は連続的に変化するためどこに境界線を引くか微妙なもののようです。
Mさんに案内していただいた場所では、かろうじて木漏れ日が当たる尾根筋に生き残っているという感じでした。兵庫県では山地に見られる種で、神戸市ではあまり見られません。
他の山地性のスミレ類はまだこれからですね。

Fig.16 ナガバノタチツボスミレの白花品 (兵庫県三田市 2015.4/17)
疎林の林床に小型で距まで白い白花品が点在していました。
関連ページ 関西の花・ナガバノタチツボスミレ

Fig.17 渓流畔の岩上に生育するニホンカイタチツボスミレ(仮称) (兵庫県三田市 2015.4/17)
周辺ではタチツボスミレが多いのですが、渓流沿いに限って本種が現れました。
ナガバノタチツボスミレとともに生育しています。
関連ページ 関西の花・タチツボスミレ

Fig.18 オオタチツボスミレ (兵庫県篠山市 2015.4/9)
日本海型分布で、兵庫県東部では三田市以北に見られますが、宝塚市や六甲山に出てきてもおかしくはないと思っています。今年は開花期が例年よりも早かったような気がします。
関連ページ 関西の花・オオタチツボスミレ

Fig.19 ニオイタチツボスミレ (兵庫県三田市 2015.3/31)
向陽地に現れ、開花時には茎が無いように見えます。
関連ページ 関西の花・ニオイタチツボスミレ

Fig.20 アオイスミレ (兵庫県篠山市 2015.3/21)
最も開花の早いスミレで、花がまだ少ない時期にこれが咲いていると、どうしてもカメラを向けてしまいます。
関連ページ 関西の花・アオイスミレ
兵庫、大阪、京都、滋賀、奈良、和歌山、三重の2府5県に分布するスミレ科が網羅的に紹介されたA4版全57ページに亘る労作です。身近にみられるタチツボスミレやスミレといった馴染み深い種から、京都府が分布西限となっているオオバキスミレ、隔離分布するエゾノタチツボスミレ、イブキスミレ、ヒメミヤマスミレ、海岸特有のイソスミレ、アナマスミレ、アツバスミレ、ツヤスミレ、仮称段階でまだ未記載であるニホンカイタチツボスミレ、トウカイスミレなどを含む計44種の形態的特長と生態が詳しく述べられています。形態の特徴は数多くの画像で示され、必要に応じて果実や果実期の葉の画像を提示しつつ、詳細な記述とともに同定の際には大変参考になります。また、各種の近畿地方での具体的な分布状況は本書で初めて明らかにされたもので、今後の近畿地方と各県のスミレ類の分布を検討する上で欠かせないものとなるでしょう。
このような広範囲に亘る分布調査は非常に労力を要するもので、その結果を私のようなスミレ初心者でも共有できる本書の価値は計り知れないものです。本書をもとに近畿地方でスミレ類に新たに関心をもつ人も多くなるのではないかと思います。
以下、ほんの一部ですが抜粋しながらその内容を見ていきたいと思います。

Fig.1 表紙はハグロシハイスミレ(通称)
シハイスミレは近畿地方を代表するスミレ。その中でも葉が黒紫色となるものはハグロシハイスミレ(通称)と呼ばれ、兵庫県でも各所に点在しています。これに葉脈に沿って白斑の入るものはフイリハグロシハイスミレと呼ばれ稀に見かけます。

Fig.2 近畿地方でのスミレ類研究の概要
1972年の「日本すみれ研究会」に始まる近畿地方のスミレ研究史や活動が簡略に記されています。

Fig.3 近畿地方におけるスミレ類分布の特徴
各種を分布西限種、隔離分布を示す種、西日本分布型、日本海分布型、太平洋分布型、海岸型などに分類して記述しています。さらに9つの項目で近畿地方での分布の特徴が詳述されています。

Fig.4 スミレ類の分布表
近畿2府5県のスミレの分布状況を開花期とともに表にしているものです。
各府県の分布欄は「○:分布している」「-:分布情報はない」「△:現状不明」「×:絶滅」に分けて記号化されています。
兵庫県の欄を見ると太平洋分布型の一部、太平洋側の海岸型、高所に隔離分布する種が分布していない特徴が見て取れます。

Fig.5 本文 1
ケイリュウタチツボスミレとニホンカイタチツボスミレ(仮称)のページです。
両種の特徴である葉の形が画像と記述により容易に理解できます。
またほとんどの種の果実の画像が掲載されているのも本書の特徴の一つでしょう。
ケイリュウタチツボスミレでは「種子は播種すると2~3週間でほぼ100%発芽する」、ニホンカイタチツボスミレでは「近畿地方では日本海側から瀬戸内海の中国地方へ分布が続くほか、滋賀・三重両県の鈴鹿山麓から伊賀地方を経て、京都府南部・奈良県・和歌山県北部、さらに四国へ続く分布も確認された。」などの最新の研究調査の成果が記されています。

Fig.6 本文 2
アギスミレとヒメアギスミレのページです。
標本画像により両種の生態形の違いが明白に示されています。
ヒメアギスミレのページでは四国や九州でヒメアギスミレとされてきたものはアギスミレの小型のタイプで近畿以南のものは再検討が必要だと、最新の知見が述べられています。

Fig.7 本文 3
シハイスミレとマキノスミレのページです。
近畿地方は両種が移り変わる地域で中間的なものが多く、しばしば悩んでしまうものです。
マキノスミレの分布西限は現在のところ兵庫県西部とのことです。

Fig.8 本文 4
近畿地方に見られる自然交雑種のリストで、そのうち18種が画像で紹介されています。
以上が『近畿地方のスミレ類 -その分布と形態-』の大まかなあらましです。
本書は 「すみれ愛好会」のホームページから1冊1,500円で購入できます。
付記:最近見かけたスミレ類
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Fig.9 アリアケスミレ(左)とスミレ(右) (西宮市 2015.4/21)
里山の畑地で見かけたほっとする光景です。
両種ともに市街地に進出中とのことですが、まだアリアケスミレは市街地で見たことがありません。
関連ページ 関西の花・アリアケスミレ
関連ページ 関西の花・スミレ

Fig.10 ハリマスミレ 1 (兵庫県小野市 2015.4/12)
アリアケスミレとスミレの自然交雑種で、花粉を調べると不斉なものばかりです。
両親種が群生する中に様々なタイプが見られました。
これは背丈が低く、花をブーケ状に沢山つけているものです。

Fig.11 ハリマスミレ 2 (兵庫県小野市 2015.4/12)
こちらは花がまばらで背丈の高いものです。

Fig.12 フモトスミレ(左)とシハイスミレ(右) (兵庫県小野市 2015.4/12)
兵庫県では低地でフモトスミレを見る機会は少ないのですが、ここでは洪積台地上の社寺林の半日陰地に見られました。
こんなに隣りあって生育しているのならフモトシハイスミレがあってもおかしくはなく、周囲を探しましたが見つかりませんでした。
関連ページ 関西の花・フモトスミレ
関連ページ 関西の花・シハイスミレ

Fig.13 シハイスミレとマキノスミレの中間タイプ (兵庫県小野市 2015.4/12)
兵庫県内ではこのようなものが頻繁に現れます。葉裏の紫色もごく淡い色をしています。
シハイマキノスミレとしか言い様がありません。

Fig.14 マキノスミレ? (兵庫県三田市 2015.4/17)
葉が立ち上がり、花色も濃いのでマキノスミレと言いたくなりますが、葉裏が先のFig.13のものよりも赤紫色が濃かったです。
ここには昨年見つけたエイザンスミレがあったのですが、シカの食害が急増して、跡形もありませんでした。

Fig.15 ウスアカネスミレ (神戸市 2015.4/26)
アカネスミレの花色の淡い品種ですが、花色は連続的に変化するためどこに境界線を引くか微妙なもののようです。
Mさんに案内していただいた場所では、かろうじて木漏れ日が当たる尾根筋に生き残っているという感じでした。兵庫県では山地に見られる種で、神戸市ではあまり見られません。
他の山地性のスミレ類はまだこれからですね。

Fig.16 ナガバノタチツボスミレの白花品 (兵庫県三田市 2015.4/17)
疎林の林床に小型で距まで白い白花品が点在していました。
関連ページ 関西の花・ナガバノタチツボスミレ

Fig.17 渓流畔の岩上に生育するニホンカイタチツボスミレ(仮称) (兵庫県三田市 2015.4/17)
周辺ではタチツボスミレが多いのですが、渓流沿いに限って本種が現れました。
ナガバノタチツボスミレとともに生育しています。
関連ページ 関西の花・タチツボスミレ

Fig.18 オオタチツボスミレ (兵庫県篠山市 2015.4/9)
日本海型分布で、兵庫県東部では三田市以北に見られますが、宝塚市や六甲山に出てきてもおかしくはないと思っています。今年は開花期が例年よりも早かったような気がします。
関連ページ 関西の花・オオタチツボスミレ

Fig.19 ニオイタチツボスミレ (兵庫県三田市 2015.3/31)
向陽地に現れ、開花時には茎が無いように見えます。
関連ページ 関西の花・ニオイタチツボスミレ

Fig.20 アオイスミレ (兵庫県篠山市 2015.3/21)
最も開花の早いスミレで、花がまだ少ない時期にこれが咲いていると、どうしてもカメラを向けてしまいます。
関連ページ 関西の花・アオイスミレ
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category: 書籍・植物
枝状の殖芽を形成した大型のエビモ
2015/04/05 Sun. 17:15 [edit]
先日のこと、水田の畦や休耕田の蘚苔類を観察しながら歩いていると、エビモ、ヤナギモ、オオカナダモなどが混生している用水路があった。まだ水田に水を入れる時期ではないので、水量は少なく生育している水草も休眠状態のようだった。水路を見ながら歩いていると、ふつうのエビモよりも大きな葉を持ったエビモが眼に入った。水路内に降りて近くで観察してみると、周辺には通常の殖芽とは違った枝状の殖芽が見られた。葉が大きなことから、雑種の可能性も考慮し、混生するヤナギモ、通常のエビモとともに採集して持ち帰り観察してみた。
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Fig.1 生育状況 (兵庫県三田市 2015.3/27)
幅1m程度の灌漑用水路内でヤナギモ、エビモが混生している。
左下はヤナギモ。右はエビモのように見えるが、葉の長さがヤナギモの葉と同長程度に見える。

Fig.2 葉の大きなエビモ (兵庫県三田市 2015.3/27)
通常のエビモの葉は画像左上の根元近くに見えるものの程度の大きさだが、枝を張り出しているものはかなり大きな葉であることが判る。また葉は新鮮で休眠状態ではなく生育中のように見える。

Fig.3 大型エビモとその殖芽 (兵庫県三田市 2015.3/27)
中央がこの個体周辺に見られた枝状の殖芽。
屈曲した枝が肥厚しているもので、通常のエビモの殖芽とは異なる形状である。

Fig.4 ヤナギモ、通常のエビモとの比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
中央が今回の大きなエビモ。左はヤナギモ、右は通常のエビモ。
ヤナギモは休眠状態にあり、枝先には不完全な殖芽状の越冬芽を作っている。
この状態ではヤナギモの葉よりも長いように見える。

Fig.5 葉の上半部の比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
上からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
今回のエビモはヤナギモのように葉先はとがらず、葉縁には鋸歯があり、エビモの葉を大きくしたもののように見える。

Fig.6 葉先の拡大比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
左からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
葉先は通常のエビモと変わらないように見える。

Fig.7 葉縁の拡大比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
左からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
ヤナギモの葉縁には葉身とは異なった葉縁細胞と言うべきやや長い細胞層が並んでいる。
一方、エビモには葉縁部に特化した細胞はなく、1細胞からなる鋸歯が並んでいて、今回の大型のエビモも同様であった。
以上のことから、今回の大型のエビモもエビモの範疇に入りそうである。

Fig.8 枝状の殖芽例 (兵庫県三田市 2015.3/27)
大型のエビモの周辺に見られた枝状の殖芽を数個持ち帰り、観察してみた。
長さは10cm前後で、古い痛んだ葉が残存していることから、茎頂が成長しつつ次第に肥厚して殖芽となったように見える。
念のため角野先生にご報告したところ、何度かこのような殖芽を見たことがあるが、その形成要因はよくわからないとのことだった。南米を除いた世界各地に生育する汎存種に近い種なので、様々な変異があってもおかしくはないとも。

Fig.9 殖芽の上部 (兵庫県三田市 2015.3/27)
枝状の殖芽は非常に硬く、葉腋にある小さな芽も硬化していた。
上部の腋芽はすでに萌芽しはじめていた。
このような枝状の殖芽が形成される要因は何なのか。
形成時期や水位、流速などが要因として考えられそうだが、今回の個体については継続的に観察していきたい。
関連ページ 沈水植物・エビモ
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Fig.1 生育状況 (兵庫県三田市 2015.3/27)
幅1m程度の灌漑用水路内でヤナギモ、エビモが混生している。
左下はヤナギモ。右はエビモのように見えるが、葉の長さがヤナギモの葉と同長程度に見える。

Fig.2 葉の大きなエビモ (兵庫県三田市 2015.3/27)
通常のエビモの葉は画像左上の根元近くに見えるものの程度の大きさだが、枝を張り出しているものはかなり大きな葉であることが判る。また葉は新鮮で休眠状態ではなく生育中のように見える。

Fig.3 大型エビモとその殖芽 (兵庫県三田市 2015.3/27)
中央がこの個体周辺に見られた枝状の殖芽。
屈曲した枝が肥厚しているもので、通常のエビモの殖芽とは異なる形状である。

Fig.4 ヤナギモ、通常のエビモとの比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
中央が今回の大きなエビモ。左はヤナギモ、右は通常のエビモ。
ヤナギモは休眠状態にあり、枝先には不完全な殖芽状の越冬芽を作っている。
この状態ではヤナギモの葉よりも長いように見える。

Fig.5 葉の上半部の比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
上からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
今回のエビモはヤナギモのように葉先はとがらず、葉縁には鋸歯があり、エビモの葉を大きくしたもののように見える。

Fig.6 葉先の拡大比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
左からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
葉先は通常のエビモと変わらないように見える。

Fig.7 葉縁の拡大比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
左からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
ヤナギモの葉縁には葉身とは異なった葉縁細胞と言うべきやや長い細胞層が並んでいる。
一方、エビモには葉縁部に特化した細胞はなく、1細胞からなる鋸歯が並んでいて、今回の大型のエビモも同様であった。
以上のことから、今回の大型のエビモもエビモの範疇に入りそうである。

Fig.8 枝状の殖芽例 (兵庫県三田市 2015.3/27)
大型のエビモの周辺に見られた枝状の殖芽を数個持ち帰り、観察してみた。
長さは10cm前後で、古い痛んだ葉が残存していることから、茎頂が成長しつつ次第に肥厚して殖芽となったように見える。
念のため角野先生にご報告したところ、何度かこのような殖芽を見たことがあるが、その形成要因はよくわからないとのことだった。南米を除いた世界各地に生育する汎存種に近い種なので、様々な変異があってもおかしくはないとも。

Fig.9 殖芽の上部 (兵庫県三田市 2015.3/27)
枝状の殖芽は非常に硬く、葉腋にある小さな芽も硬化していた。
上部の腋芽はすでに萌芽しはじめていた。
このような枝状の殖芽が形成される要因は何なのか。
形成時期や水位、流速などが要因として考えられそうだが、今回の個体については継続的に観察していきたい。
関連ページ 沈水植物・エビモ
category: ヒルムシロ科
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