fc2ブログ
09«1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»11

Satoyama, Plants & Nature

秋の水田・溜池・湿地 1 

ちょっと更新期間が開きすぎたので緊急投下です。
9月終わりから10月半ばまでに水田・溜池・湿地などの水辺環境で見たものををいくつか拾いあげてみました。
*画像クリックで、別ウィンドで表示されます。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。


ミズネコノオ
Fig.1 ミズネコノオ (兵庫県丹波地方 2014.9/29)
自生地区の水田のうち今年は数枚が休耕田となっていて、大きな個体が沢山みられました。
関連ページ 湿生植物・ミズネコノオ

ミズトラノオ
Fig.2 ミズトラノオ (兵庫県播磨地方 2014.9/23)
今年は秋開花の湿性植物の当たり年のようで、ミズトラノオもいい調子でした。
関連ページ 湿生植物・ミズトラノオ

マツバイとミズワラビ
Fig.3 マツバイとヒメミズワラビ (兵庫県丹波地方 2014.9/29)
ミズノコノオが生えていた同じ休耕田で。
マツバイの画像をほとんど撮っていなかったことを思い出しました。
マツバイといえどもあなどれません。変種であるチシママツバイが徳島県で見つかっています。
実は身近にあったりするかもしれません。
関連ページ 湿生植物・マツバイ
関連ページ 湿生植物・ヒメミズワラビ

マツバイ痩果
Fig.4 マツバイの痩果 (兵庫県丹波地方 2014.9/29)
マツバイの痩果画像もロクなものがなかったので撮り直しました。
「CombineZM」というフリー・ソフトで深度合成しています。便利です。
チシママツバイは刺針状花披片が1~3個で、痩果より短いか完全に退化するとのこと。

シソクサ
Fig.5 シソクサ (京都府中丹地方 2014.9/29)
福知山盆地に入って水田地帯を少し探査してみました。
どこに行っても大抵シソクサが生えていて、大きな個体も沢山見かけました。
福知山盆地ではシソクサやヒメミズワラビは普通種のようで、兵庫県の丹波地方とよく似ています。
関連ページ 湿生植物・シソクサ

アブノメ
Fig.6 アブノメ (京都府中丹地方 2014.9/29)
シソクサに引きかえ、アブノメやミズマツバはほとんど見かけませんでした。
これも兵庫県の丹波地方と同様な傾向にあるようです。
関連ページ 湿生植物・アブノメ

シャジクモsp.
Fig.7 シャジクモsp. (兵庫県丹波地方 2014.10/1)
数個の溜池が連なる「重ね池」の最奥の池でシャジクモ科の淡水藻類が浅瀬を覆っていて、以前から気になっていました。泥を落として持ち帰って精査してみましたが、托葉冠が輪生枝より少し多かったり、あるいは全く退化して刺細胞のようになっているものが混じっており、なんとも判断できないものでした。2種が混じっているのかもしれず、もう少し調べるべきなのかもしれません。

シャジクモsp.の詳細
Fig.8 シャジクモsp.の細部 (兵庫県丹波地方 2014.10/1)
パッと見はイトシャジクモのように見えますが、画像左の右のものは托葉冠が見えません。
拡大すると(左上段)刺細胞のように退化した托葉冠が見られます。
刺細胞は小さく、皮層の1次列は2次列よりも少し太いです。また、卵胞子のらせん縁は8本あります(左下段)。該当しそうなものがないか検索表をたどると、ゲンカイイトシャジクモに行き着くのですが、分布は本州南部と九州となっています。古い図鑑を使っていることと、web上でほぼヒットしないことから、現在独立した種と認められているのか不明です。
関連ページ 淡水藻類・イトシャジクモ

ホソバヘラオモダカ
Fig.9 ホソバヘラオモダカ (兵庫県播磨地方 2014.10/1)
東播磨のホソバヘラオモダカを見に行くと、ちょうど開花していたので、花と熟した果実を数個持ち帰って葯や痩果を調べてみることにしました。阪神のホソバヘラオモダカの集団は花茎が1m近くにまで伸び、違和感を覚えていたので、生殖器官にどこか違いがないか調べる必要を感じていました。
東播磨のこの集団は一応典型的なホソバヘラオモダカとされているものです。
関連ページ 湿生植物・ホソバヘラオモダカ

ホソバヘラオモダカの葯
Fig.10 ホソバヘラオモダカ東播磨集団の葯 (兵庫県播磨地方 2014.10/1)
葯の長さは0.7~0.9mmで、20個のうち14個が0.8mm、幅はほぼ0.2mmでした。
阪神の集団の葯の長さもほぼ同様、幅はほぼ0.1mm。ただし、この葯の幅は花粉が出きった状態のもので、東播磨のものは画像からも解るように、まだ花粉が多少とも残っていたので、完全に花粉放出した後のものを調べなおす必要がありそうです。

ホソバヘラオモダカの花粉
Fig.11 ホソバヘラオモダカの花粉 (兵庫県播磨地方 2014.10/1)
黄色、球形で、表面にはやや大きくて先が鈍頭~円頭のコブが散在していました。

ホソバヘラオモダカの痩果
Fig.12 ホソバヘラオモダカの痩果 (兵庫県播磨地方 2014.10/1)
東播磨集団の3つの果実を採集しましたが、果実1個につき痩果は9~10個ついています。
28個の痩果を調べた結果、長さ(突起部は含まない)2.6~3.0mm、幅1.4~1.7mmとなりました。
最も多いサイズは長さ3.0mm(12個)、幅1.5mm(11個)となりました。
今後、阪神集団のものも結実を待って調べてみます。
ヘラオモダカの葯や果実も調べるとよいのですが、今年はもう遅いかもしれません。

ホソバヘラオモダカ阪神集団
Fig.13 ホソバヘラオモダカ阪神集団 (兵庫県阪神地方 2014.9/27)
水源上部で農薬が撒かれたため、いったん枯れた後に出芽して開花しているもので、この大きさならば典型的なものとほぼ同じで違和感はありません。枯れていなければ、花序はとても大きくなってホソバヘラオモダカとは思えない大きさになっているところです。

チリフラスコモ
Fig.14 チリフラスコモ (兵庫県阪神地方 2014.9/27)
ホソバヘラオモダカと同じ休耕田に生育していたもので、農薬の影響が無くなってから生えてきたためか、藻体は小さい。うっかりして生態画像を撮り忘れたため、ページ作成はしばらくお預けに。

水抜き中の溜池遠景
Fig.15 水抜き中の溜池 (兵庫県丹波地方 2014.10/7)
余水吐の改修工事のため、数ヶ月にわたって水抜きされている溜池です。
画像右上にほぼ改修が完了した余水吐が見えています。
この溜池の水源部にはやや中栄養な溜池と、それに続く水田や畑地があり、水抜き以前は岸近くはヨシやガマが抽水状態で茂り、水面はヒシで覆われ、イチョウウキゴケやミズユキノシタが見られるやや富栄養寄りの溜池でした。水抜きされた溜池は中栄養なものが最も面白いのですが、一番賑わいそうな時期を見計らって池底に下りてみました。

水抜き中の溜池底
Fig.16 水抜き中の溜池底 (兵庫県丹波地方 2014.10/7)
溜池底の中央から土堤方向を見た画像です。
かつて水域だった部分は、この溜池上部の水田があることを反映してかタイヌビエとアゼナが優占しています。

水抜き中の溜池底の植物達1
Fig.17 水抜き中の溜池底の植物達 1 (兵庫県丹波地方 2014.10/7)
溜池底ではアゼナ群落が少し切れて裸地が現れるような場所にいろいろな草本が現れています。
最も眼を引いたのは画像中央のメアゼテンツキで丹波地方では少ないものですが、ここでは沢山生育していました。他の溜池でも水抜きされると案外沢山現れてくるものなのかも知れませんが、丹波地方の溜池は比較的小規模なものが多く、秋期に水抜きされる溜池はあまりありません。
他にクロテンツキ、アゼガヤツリ、イヌミゾハコベなどが写っていますが、タネツケバナ属のものは秋開花したミズタネツケバナなのか、アキノタネツケバナなのか、まだ茎が接地するほど育っておらず判断できません。
関連ページ 湿生植物・メアゼテンツキ

水抜き中の溜池底の植物達2
Fig.18 水抜き中の溜池底の植物達 2 (兵庫県丹波地方 2014.10/7)
ヒンジガヤツリ(左)とヒナガヤツリ(右)。どちらも上部にある水田由来のものでしょう。
両種ともにかなりの個体数でした。
関連ページ 湿生植物・ヒンジガヤツリ
関連ページ 湿生植物・ヒナガヤツリ

水抜き中の溜池底の植物達3
Fig.19 水抜き中の溜池底の植物達 3 (兵庫県丹波地方 2014.10/7)
左からクロテンツキ、トキンソウ、ウリクサが写っていますが、いずれもやはり上部の耕作地由来でしょう。
関連ページ 湿生植物・クロテンツキ
関連ページ 湿生植物・トキンソウ
関連ページ 湿生植物・ウリクサ

水抜き中の溜池底の植物達4
Fig.20 水抜き中の溜池底の植物達 4 (兵庫県丹波地方 2014.10/7)
ヒロハノコウガイゼキショウの立派な個体が沢山点在していました。
溜池の改修中や改修後、年に1、2度耕起されるような管理休耕田によく現れる草本です。
同亜属のコウガイゼキショウやアオコウガイゼキショウも見られました。
他にはアオガヤツリ、カンガレイなどが見られましたが、やはり播磨地方に較べるとそれほど面白いものは出てきませんでした。
関連ページ 湿生植物・ヒロハノコウガイゼキショウ

倒伏したヒメカンガレイ
Fig.21 倒伏したヒメカンガレイ (兵庫県但馬地方 2014.10/7)
5年ぶりに但馬のヒメカンガレイの様子を見てきました。
シカの増加で減少していないか心配していましたが、湿地内はそれほど食害を受けておらず、特に減少することもなく健在でした。健在といっても個体数はわずか5株ほどで、あいかわらずほとんどの個体は撹乱を受けて倒伏していましたが、以前よりも株が大きくなっているのが幸いでした。
今回、大きな株のそばに細い茎をもった個体が花序をつけていているのが見つかりました。ヒメカンガレイというよりはホタルイの仲間のように見えますが、背丈はヒメカンガレイ並みで茎は3稜形。結実もしていました。
次の画像はヒメカンガレイとそばにあった細い茎のものの花序付近の比較画像です。
関連ページ 湿生植物・ヒメカンガレイ

ヒメカンガレイの2タイプ
Fig.22 ヒメカンガレイの2タイプ (兵庫県但馬地方 2014.10/7)
上2本が以前から生育しているヒメカンガレイで、下2本が今回見つけた茎が細いものです。
次に両タイプの茎の横断面を並べた画像を示します。

ヒメカンガレイ2タイプの茎横断面
Fig.23 2タイプの茎横断面 (兵庫県但馬地方 2014.10/7)
左が茎が細いもの、右が以前からあるヒメカンガレイ。
茎の径には明らかに有意差があるように見えます。
周囲に他のホタルイ属の草本がないか調べましたが、シカクイやオオヌマハリイ、アブラガヤ、コアゼガヤツリは生育していますが、ホタルイ属のものは見当たりませんでした。
ヒメカンガレイはこういうものなのでしょうか?
他の自生地ではどうなのか知りたいところですが、兵庫県内の確実な自生地は今やここだけしかありません。

エゾシロネ
Fig.24 結実期のエゾシロネ (兵庫県但馬地方 2014.10/7)
今年は但馬地方では秋の花が早いようで、エゾシロネもすでに結実期に入り、期待していた花は見れませんでした。紫色と黄色が混じった複雑な色合い帯びた葉が秋雨にしっとりと濡れて、秋の終わりを思わせる風情です。

ヤマドリゼンマイ
Fig.25 湿原のヤマドリゼンマイ (兵庫県但馬地方 2014.10/7)
湿原に群生するヤマドリゼンマイも褐色に変わり始め、高所の湿性植物のシーズンの終わりを早くも告げていました。
高原の草地のサルマメも赤熟して、すでに落果し始めているものも見られました。

ミスミイ群落
Fig.26 ミスミイ群落 (兵庫県播磨地方 2014.10/11)
10月前半の楽しみにしていたイベント、ミスミイ観察会。
度々お世話になっている兵庫水辺ネットのOさんがコーディネーターとなって、「日本の水草」を上梓されたK先生、コウホネのSさん、Sさんの生徒さん、兵庫の水辺の生物全般のエキスパートSさんが参加という豪華な顔ぶれ。
そしてここは兵庫県に残された唯一のミスミイ自生地。水面にはヒメタヌキモやイヌタヌキモ、ジュンサイ、ヒツジグサが浮かび、池畔にはマルバオモダカやサワギキョウが生育しています。
関連ページ 抽水植物・ミスミイ

ミスミイ雌性期
Fig.27 ミスミイの雌性期 (兵庫県播磨地方 2014.10/11)
今回の観察会では雌性期と雄性期の観察と撮影が課題でした。
雌性期のものはいずれも水面から1~2cm出たものばかり。それ以上出ると雄性期になって葯が出ていました。どうやら水面ぎりぎりで花序は雌性期に入って、有花茎を伸ばしながら雄性期に入っていくようです。有花茎はその後も伸びて、結実する頃には水面から20cm以上伸びていました。
最初にこの場所を訪れた時はただただミスミイと対面した嬉しさに舞い上がり、冷静な観察はできませんでしたが、2度目となる今回は、かなり冷静にミスミイの性格を掴めたように思います。となると、水田や溜池にふつうに見られる近縁のクログワイの生育過程も非常に気になってきます。

コバネアオイトトンボ
Fig.28 コバネアオイトトンボ (兵庫県播磨地方 2014.10/11)
ミスミイ自生地はトンボの楽園でもありました。
Oさん、Sさんに教えていただいたコバネアオイトトンボ。
各地で絶滅危惧種となっている稀少種です。
普段のフィールドでは見たことのない青い眼が印象深いイトトンボです。
他にもう1種珍しいトンボを追いかけましたが、公表するにふさわしい画像が撮れませんでした。

溜池畔の紅葉
Fig.29 秋の溜池畔 (兵庫県播磨地方 2014.10/11)
馴染みの溜池ですが、今回は細部よりも溜池全体の雰囲気をいかに伝えられるかに腐心しました。
画角内に多くの種が写っている場合は、その多様性をどうしたら伝えられるかということが課題です。
同一画角内に多くの種が入っている場合は画像にアクセントがなくノッペリとしたものになりがちで、実際に見た光景とは乖離したものになりがちで、ガッカリしてしまうことがしばしばです。
今回はフリー・ソフトの「GIMP 2.6」を使ってレタッチしてみました。
「GIMP 2.6」は「Photoshop」に迫る機能を搭載していて、HPやブログの画像処理に必要充分対処できるフリー・ソフトです。
色についてはツールバーの「色」から「明るさ・コントラスト」「カラーバランス」「レベル」「色相・彩度」の順に補正・調整していきます。
試行錯誤を重ねていくうち、望んでいる光景が再現されていきます。
眼で見ているものが表現方法の洗練により、芸術的な表現行為へとシフトすることもあります。
自然との付き合いが、そのまま表現行為であると考えるのは、素人の希望的な願いでしょうか。
画像には紅色の絨毯をなすサワトウガラシ、手前に明るい紅葉を見せているヤナギタデとサイコクヌカボ、中ほどの湛水地帯に緑色鮮やかなクログワイとその株元に群生するタチモ群落、干上がった溜池と溜池畔の湿地の境界に生育するヌマガヤ、イヌツゲ、スイランなどが明瞭に見て取られ、画像処理によって溜池畔の植生が明瞭なものとなったと思われます。

溜池畔のタチモ群落
Fig.30 タチモ群落とその周辺 (兵庫県播磨地方 2014.10/11)
同様にレタッチによるタチモ群落の特性をソフトによって強化したもの。
多少黄緑色のレベルを持ち上げているため、タチモの気中形が持つ白味は押さえられている。
黄緑色レベルを持ち上げたのは周囲に生育しているホタルイやクログワイを視覚的に意識させるため。
タチモ生育部分を別レイヤーで処理すれば、より視覚的に近い画像を作ることは可能です。
関連ページ 湿性植物・タチモ

スイラン
Fig.31 スイラン (兵庫県播磨地方 2014.10/11)
溜池畔に続く湿地でスイランが美しく開花していました。
ここまで捕らえたい被写体が接近すると、あまりレタッチは必要ではなくなります。
露出を多少アンダーめに設定して、撮影後にカラーバランスを少し調整して明るさを調整すれば、見た目と同様な画像になります。
花に対してはやや露光過剰気味ですが、それを抑えるためには、花とそれ以外のマテリアルを別のレイヤーに分けて、レイヤー毎にレタッチする必要があります。
関連ページ 湿性植物・スイラン

クロホシクサ群落

Fig.32 クロホシクサ群落 (兵庫県播磨地方 2014.10/11)
毎年個体群調査を行っている集団ですが、今年は夏期の降雨のおかげか、多くの個体が出現して群生しています。例年であればまだ開花期がはじまったばかりですが、すでに花茎は枯れかけて熟した種子を持っているものも見られます。
関連ページ 湿性植物・クロホシクサ

アイノコカンガレイ」
Fig.33 アイノコカンガレイ (兵庫県播磨地方 2014.10/11)
ヒメホタルイとカンガレイの種間雑種で両種の混生地で稀に見られます。
関連ページ 抽水植物・アイノコカンガレイ

スポンサーサイト



category: 湿地・溜池

cm 0   tb 0   page top

プロフィール

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ