琵琶湖周辺のカヤツリグサ科フトイ属
2014/09/13 Sat. 17:39 [edit]
*画像クリックで、別ウィンドで表示されます。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。
毎年訪ねる琵琶湖ですが、今回はM先生からの滋賀県新産のツクシカンガレイ自生地の情報も頂き、カヤツリグサ科フトイ属の草本にいろいろと面白いものが観察できました。
その中から数種の草本を取り上げてみようと思います。
2014.9/22に追記しました。

Fig.1 ツクシカンガレイ Schoenoplectus multisetus
M先生が見つけられたツクシカンガレイ自生地を見てきました。
放棄された造成跡地が大きな湿原になっていて、湿原内に3つの大きな群落が見られました。
ツクシカンガレイは横走根茎によって栄養繁殖するため、画像のように広い面積を優占します。
関連ページ 湿生植物・ツクシカンガレイ

Fig.2 ツクシカンガレイの横走根茎
横走根茎は同じように湿地に生えるサンカクイやクログワイなどに較べると太くて硬質で頑丈。

Fig.3 ツクシカンガレイの有花茎
有花茎の先の苞葉=小穂から上の部分はカンガレイ、ヒメカンガレイ、ハタベカンガレイなどの近縁種に較べて顕著に短い。

Fig.4 ツクシカンガレイの痩果
痩果表面には低い横しわがあり、刺針状花披片は痩果と同長か短く、稀に少し長い。

Fig.5 ツクシカンガレイの幼個体
最初2~3枚の扁平で線形の葉を展葉し、続いて3稜形の茎を出します。

Fig.6 コマツカサススキと混生するツクシカンガレイ
自生地ではこの他、シカクイ、ヤマイ、コアゼガヤツリ、アゼスゲ、イヌノハナヒゲ、イグサが多く見られ、ツクシカンガレイ群落中にはアゼトウガラシ、サワトウガラシ、マルバノサワトウガラシなどの小型の1年生草本が生育していました。

Fig.7 コホタルイ Schoenoplectiella komarovii
地下水位の高い休耕田で20個体あまりが生育していました。
北方系の種で、これまで福井県までは記録がありましたが、近畿地方では初めての記録になります。
根茎は短く叢生し、有花茎はやや細い円柱形です。
関連ページ 湿生植物・コホタルイ

Fig.8 コホタルイの苞葉と花序
コホタルイの一番の特徴は、長い苞葉と小穂が多数集まった花序にあります。
苞葉は長いものでは有花茎(花序よりも下の茎)の1/2もの長さになります。
小穂は近縁のホタルイやイヌホタルイに較べて小型で、花序には多数の小穂が集まってつきます。

Fig.9 コホタルイの痩果
コホタルイの痩果は小さく、長さ約1.2~1.5mm。(ホタルイでは約2mm。イヌホタルイでは約1.5mm。)
柱頭は2岐するため、痩果の横断面は凸レンズ状となります。

Fig.10 コホタルイの自生環境
休耕後3年を経た水田で、カンガレイ、ホタルイ、シカクイ、ナガバノウナギツカミ、アメリカセンダングサが優占していました。
他にハリイ、カワラスガナ、コアゼガヤツリ、タイヌビエ、チゴザサ、ガマ、イボクサ、ヘラオモダカ、コケオトギリ、キクモ、ヒメジソなどが混生していました。

Fig.11 イヌホタルイ×カンガレイ S. juncoides × S. triangulata
コホタルイの生育する休耕田に隣接する別の休耕田に生育していたもので、カンガレイとイヌホタルイの雑種です。茎の横断面はいびつな4稜または不完全な5稜があり、太さはカンガレイとイヌホタルイの間くらいになります。周辺には両親種であるカンガレイとイヌホタルイが見られ、両種がサンカクイとともに休耕田中で優占種となっていました。
画像中の奥の有花茎が弓なりに反っているのがカンガレイ。手前にあってより細く斜上した有花茎をもつものがシカクホタルイ イヌホタルイ×カンガレイです。
*当初本種はシカクホタルイとしていましたが、シカクホタルイのタイプ標本はサンカクホタルイと同じもので、シカクホタルイはサンカクホタルイのシノニムであるとのご指摘を頂きました。よって種名をイヌホタルイ×カンガレイと変更いたしました。ご指摘を頂いたO氏には感謝申し上げます。
関連ページ 湿生植物・イヌホタルイ x カンガレイ

Fig.12 イヌホタルイ×カンガレイの有花茎断面
茎の横断面はいびつな4稜または不完全な5稜があり、太さはカンガレイとイヌホタルイの間くらいで、径2.5~4mm。

Fig.13 イヌホタルイ×カンガレイの小穂
小穂は細長く伸び、太さはいびつで、よじれるものが多い。

Fig.14 イヌホタルイ×カンガレイの柱頭
柱頭は3岐しているものがほとんどでした。

Fig.15 イヌホタルイ×カンガレイの痩果
この場所のものは結実した痩果と不稔の痩果とがはっきりと分かれていました。
画像は結実したもので、痩果表面の不明瞭な横しわがイヌホタルイの影響を、痩果よりも長い刺針状花披片がカンガレイの影響を感じさせます。

Fig.16 不明のホタルイ近縁種 Schoenoplectus sp.
コホタルイが生育する休耕田内に1個体だけ見られたもので、一見するとホタルイに見えますが、有花茎は円柱形ではなく、明瞭な3~4稜があります。

Fig.17 不明ホタルイsp.の有花茎断面
有花茎は細く、径2mm以下で、3~4稜があるのが解ります。
有花茎が3稜形となるものにカンガレイとホタルイの雑種であるサンカクホタルイがありますが、径2.5mm以上となります。

Fig.18 不明ホタルイsp.の小穂
小穂の形状はややいびつなものが見られます。

Fig.19 不明ホタルイsp.の柱頭
3岐するものが多く、2岐するものが混在していました。

Fig.20 不明ホタルイsp.の痩果
痩果は正常に結実しており、イヌホタルイ×カンガレイやサンカクホタルイの正常なものに似ています。
以上のことから、ホタルイにイヌホタルイ×カンガレイかサンカクホタルイが戻し交配となったものと予想できそうです。
自生地に隣接する休耕田には前出のイヌホタルイ×カンガレイがあるほか、道を隔てた湿地にはサンカクホタルイが見られるめ、片親をどちらかに決めることができません。
今後はそれぞれの種の葯の長さなどの細部をより詳しく調べる必要があるでしょう。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。
毎年訪ねる琵琶湖ですが、今回はM先生からの滋賀県新産のツクシカンガレイ自生地の情報も頂き、カヤツリグサ科フトイ属の草本にいろいろと面白いものが観察できました。
その中から数種の草本を取り上げてみようと思います。
2014.9/22に追記しました。

Fig.1 ツクシカンガレイ Schoenoplectus multisetus
M先生が見つけられたツクシカンガレイ自生地を見てきました。
放棄された造成跡地が大きな湿原になっていて、湿原内に3つの大きな群落が見られました。
ツクシカンガレイは横走根茎によって栄養繁殖するため、画像のように広い面積を優占します。
関連ページ 湿生植物・ツクシカンガレイ

Fig.2 ツクシカンガレイの横走根茎
横走根茎は同じように湿地に生えるサンカクイやクログワイなどに較べると太くて硬質で頑丈。

Fig.3 ツクシカンガレイの有花茎
有花茎の先の苞葉=小穂から上の部分はカンガレイ、ヒメカンガレイ、ハタベカンガレイなどの近縁種に較べて顕著に短い。

Fig.4 ツクシカンガレイの痩果
痩果表面には低い横しわがあり、刺針状花披片は痩果と同長か短く、稀に少し長い。

Fig.5 ツクシカンガレイの幼個体
最初2~3枚の扁平で線形の葉を展葉し、続いて3稜形の茎を出します。

Fig.6 コマツカサススキと混生するツクシカンガレイ
自生地ではこの他、シカクイ、ヤマイ、コアゼガヤツリ、アゼスゲ、イヌノハナヒゲ、イグサが多く見られ、ツクシカンガレイ群落中にはアゼトウガラシ、サワトウガラシ、マルバノサワトウガラシなどの小型の1年生草本が生育していました。

Fig.7 コホタルイ Schoenoplectiella komarovii
地下水位の高い休耕田で20個体あまりが生育していました。
北方系の種で、これまで福井県までは記録がありましたが、近畿地方では初めての記録になります。
根茎は短く叢生し、有花茎はやや細い円柱形です。
関連ページ 湿生植物・コホタルイ

Fig.8 コホタルイの苞葉と花序
コホタルイの一番の特徴は、長い苞葉と小穂が多数集まった花序にあります。
苞葉は長いものでは有花茎(花序よりも下の茎)の1/2もの長さになります。
小穂は近縁のホタルイやイヌホタルイに較べて小型で、花序には多数の小穂が集まってつきます。

Fig.9 コホタルイの痩果
コホタルイの痩果は小さく、長さ約1.2~1.5mm。(ホタルイでは約2mm。イヌホタルイでは約1.5mm。)
柱頭は2岐するため、痩果の横断面は凸レンズ状となります。

Fig.10 コホタルイの自生環境
休耕後3年を経た水田で、カンガレイ、ホタルイ、シカクイ、ナガバノウナギツカミ、アメリカセンダングサが優占していました。
他にハリイ、カワラスガナ、コアゼガヤツリ、タイヌビエ、チゴザサ、ガマ、イボクサ、ヘラオモダカ、コケオトギリ、キクモ、ヒメジソなどが混生していました。

Fig.11 イヌホタルイ×カンガレイ S. juncoides × S. triangulata
コホタルイの生育する休耕田に隣接する別の休耕田に生育していたもので、カンガレイとイヌホタルイの雑種です。茎の横断面はいびつな4稜または不完全な5稜があり、太さはカンガレイとイヌホタルイの間くらいになります。周辺には両親種であるカンガレイとイヌホタルイが見られ、両種がサンカクイとともに休耕田中で優占種となっていました。
画像中の奥の有花茎が弓なりに反っているのがカンガレイ。手前にあってより細く斜上した有花茎をもつものが
*当初本種はシカクホタルイとしていましたが、シカクホタルイのタイプ標本はサンカクホタルイと同じもので、シカクホタルイはサンカクホタルイのシノニムであるとのご指摘を頂きました。よって種名をイヌホタルイ×カンガレイと変更いたしました。ご指摘を頂いたO氏には感謝申し上げます。
関連ページ 湿生植物・イヌホタルイ x カンガレイ

Fig.12 イヌホタルイ×カンガレイの有花茎断面
茎の横断面はいびつな4稜または不完全な5稜があり、太さはカンガレイとイヌホタルイの間くらいで、径2.5~4mm。

Fig.13 イヌホタルイ×カンガレイの小穂
小穂は細長く伸び、太さはいびつで、よじれるものが多い。

Fig.14 イヌホタルイ×カンガレイの柱頭
柱頭は3岐しているものがほとんどでした。

Fig.15 イヌホタルイ×カンガレイの痩果
この場所のものは結実した痩果と不稔の痩果とがはっきりと分かれていました。
画像は結実したもので、痩果表面の不明瞭な横しわがイヌホタルイの影響を、痩果よりも長い刺針状花披片がカンガレイの影響を感じさせます。

Fig.16 不明のホタルイ近縁種 Schoenoplectus sp.
コホタルイが生育する休耕田内に1個体だけ見られたもので、一見するとホタルイに見えますが、有花茎は円柱形ではなく、明瞭な3~4稜があります。

Fig.17 不明ホタルイsp.の有花茎断面
有花茎は細く、径2mm以下で、3~4稜があるのが解ります。
有花茎が3稜形となるものにカンガレイとホタルイの雑種であるサンカクホタルイがありますが、径2.5mm以上となります。

Fig.18 不明ホタルイsp.の小穂
小穂の形状はややいびつなものが見られます。

Fig.19 不明ホタルイsp.の柱頭
3岐するものが多く、2岐するものが混在していました。

Fig.20 不明ホタルイsp.の痩果
痩果は正常に結実しており、イヌホタルイ×カンガレイやサンカクホタルイの正常なものに似ています。
以上のことから、ホタルイにイヌホタルイ×カンガレイかサンカクホタルイが戻し交配となったものと予想できそうです。
自生地に隣接する休耕田には前出のイヌホタルイ×カンガレイがあるほか、道を隔てた湿地にはサンカクホタルイが見られるめ、片親をどちらかに決めることができません。
今後はそれぞれの種の葯の長さなどの細部をより詳しく調べる必要があるでしょう。
スポンサーサイト
category: カヤツリグサ科フトイ属
| h o m e |