晩秋の溜池
2013/11/09 Sat. 01:55 [edit]
いよいよ晩秋を迎えて、山野では花も少なくなってきました。
丹波地方のような内陸部ではすでに夜間はかなり冷え込んでくるようになり、溜池畔の湿地も冬枯れに近い光景が見られます。播磨地方などの県南部では、池干しされた池や半ば干上がった池底で、小型の1年生カヤツリグサ科草本が沢山見られる時期となっています。
画像:丹波地方の溜池湿地、ヒナノカンザシ、キキョウ、ホソバニガナ、ゴマクサ、
ハマハナヤスリ、丘陵部の谷池、タチモ、サイコクヌカボ、ガガブタ殖芽、
イトモ、イトトリゲモ、ヤマラッキョウ、リンドウ、ミスミイ、ミズスギ、
ヒメタヌキモ、ヒメタヌキモ殖芽、洪積台地の皿池、イヌセンブリ群落、
ヤマアワ群落、池底の1年生草本群落、ツルナシコアゼガヤツリ、
クロテンツキ、ムラサキトキンソウ、コイヌガラシ、メアゼテンツキ、
アオテンツキ、オオシロガヤツリ、ヒメアオガヤツリ
*画像クリックで、別ウィンドで拡大表示されます。

Fig.1 丹波地方の溜池畔の湿地 (兵庫県篠山市 2013.10/28)
池畔の湿地はすでに枯れ草色に染まり、スイランの茎は低温によって紫色に色づいています。
枯野の中で目立っているホシクサ科草本はシロイヌノヒゲのもの。

Fig.2 ヒナノカンザシ (兵庫県篠山市 2013.10/28)
夏から秋の間、ヒメカリマタガヤやマネキシンジュガヤによって隠されていたヒナノカンザシが姿を見せていました。ヒナノカンザシは晩秋遅くまで開花しているので、この時期には見つけやすくなります。
関連ページ 湿生植物・ヒナノカンザシ

Fig.3 キキョウ (兵庫県篠山市 2013.10/28)
頻繁に草刈りされていた溜池土堤もこの時期になると放置されて、これまで開花の機会のなかったキキョウやワレモコウが急いで開花しています。
関連ページ 関西の花・キキョウ

Fig.4 ホソバニガナ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
変なニガナが咲いていたけど、ホソバニガナではないかというS氏から連絡を受け、確認しに行ったところ確かにホソバニガナと思われるものが生育していました。その時は11頃で花は半開だったので、午前中開花で閉じつつあるのかと思いましたが、その後のS氏の観察により午後から開花するらしいとのこと。
1週間後、午後になってから再び自生地を訪れて開花した花を片っ端から計測し、ホソバニガナであることを確認し、開花画像を撮影しました。晩秋開花型のニガナと違い根生葉に鋸歯や歯牙状の突起も形成せず、ニガナとは明らかに違うものであると確信しました。ニガナとホソバニガナとの交雑種も考慮されているようですが、取敢えずは分類上、ホソバニガナの範疇にあるのではないかと認識しています。
ホソバニガナは全国的に稀な湿生植物で、兵庫県内でも数ヶ所しか自生地がありません。
関連ページ 湿生植物・ホソバニガナ

Fig.5 ゴマクサ (兵庫県播磨地方 2013.10/30)
ホソバニガナが生育する溜池畔は表土が少なく、このような場所に先駆的に侵入して群生するメリケンカルカヤが優占しています。この湿性草原ではメリケンカルカヤにちゃっかりと寄生しているゴマクサが数千株生育しています。ゴマクサは宿主に在来・外来を問わないようです。
すでに開花最盛期は終わっていますが、残り花がちらほらと見られました。
関連ページ 湿生植物・ゴマクサ

Fig.6 ハマハナヤスリ (兵庫県播磨地方 2013.10/30)
ホソバニガナ、ゴマクサと同じ溜池畔の比較的被植の少ない場所に点々と生育していました。
ハマハナヤスリはこの近辺の他の湿性草原を伴う溜池にも見られ、かつてはこのあたり一帯の溜池に生育していたのでしょう。現在では池畔が全てコンクリート護岸に改修されている溜池が大半となって生育環境が失われ、稀少種となってしまったのでしょう。
関連ページ 湿生植物・ハマハナヤスリ

Fig.7 晩秋の丘陵部の谷池 (兵庫県加東市 2013.11/4)
水抜きされた溜池の池畔では、広大な面積をサワトウガラシとタチモが優占していました。
奇観とも言える光景で、赤い部分はサワトウガラシ、黄緑色の部分は全てタチモです。
サワトウガラシとタチモ群落の合間にはミミカキグサ、ムラサキミミカキグサが生育しています。
関連ページ 湿生植物・サワトウガラシ

Fig.8 殖芽を形成するタチモ (兵庫県加東市 2013.11/4)
茎頂や根際に赤褐色の殖芽を形成し、緑色の草体と美しいコントラストを見せていました。
関連ページ 沈水~湿生植物・タチモ

Fig.9 紅葉したサイコクヌカボ (兵庫県加東市 2013.11/4)
このところ急に冷え込んできたためか、サイコクヌカボが色濃く紅葉していました。
この池畔では雑草のごとく多数の個体が生育しています。
関連ページ 湿生植物・サイコクヌカボ

Fig.10 ガガブタの殖芽 (兵庫県加東市 2013.11/4)
干上がった池畔にガガブタの殖芽が目だっていました。
発生量は年によって消長があるようで、今年は少なく感じられました。
関連ページ 浮葉植物・ガガブタ

Fig.11 イトモ (兵庫県加東市 2013.11/4)
丘陵の谷津の水田の排水路内でイトモが点々と生育していました。
水田の水路内でイトモが生育しているのは珍しい例だと思います。
関連ページ 沈水植物・イトモ

Fig.12 イトトリゲモ (兵庫県加東市 2013.11/4)
イトモと同じ水路内に生育していました。イトモもイトトリゲモも溜池など他の場所では枯れていることが多いのですが、ここの水路は水温の比較的一定している湧水によって涵養されているのでしょう。
関連ページ 沈水植物・イトトリゲモ

Fig.13 ヤマラッキョウとリンドウ (兵庫県加東市 2013.11/4)
溜池土堤の水際にヤマラッキョウとリンドウが咲き競っていました。
このあたりではホソバリンドウが見られず、湿地にリンドウが出てくる地域なのでしょう。
土堤上にはキキョウ、オミナエシ、スズサイコ、ユウスゲ、タチカモメヅルなどが見られ、自然度の高い場所でした。
関連ページ 湿生植物・ヤマラッキョウ 関西の花・リンドウ

Fig.14 ミスミイ (兵庫県播磨地方 2013.11/4)
兵庫県唯一のミスミイの自生地を兵庫水辺ネットのO氏、S氏に案内していただきました。
水中には無数のチスイビルが泳いでおり、これまで除草剤などの有害な農薬が混入してこなかったことが伺われます。他にもマルバオモダカ、ヒメタヌキモ、ヒツジグサ、ジュンサイなどが生育する非常に自然度の高いこじんまりとした谷池でした。
関連ページ 抽水植物・ミスミイ

Fig.15 ヒメタヌキモ (兵庫県播磨地方 2013.11/4)
マルバオモダカとともに急激に減少しつつあると感じる水生植物です。
この池では豊富に生育しており、茎頂や枝先に殖芽を形成しつつありました。
関連ページ 浮遊植物・ヒメタヌキモ

Fig.16 ヒメタヌキモの殖芽 (兵庫県播磨地方 2013.11/4)
タヌキモやイヌタヌキモと違って、シダのフィドルヘッドのように巻いた殖芽を作ります。
殖芽の直径は3~4mm程度のとても小さなもので、草体が枯れると自生地で見つけ出すには困難なものでしょう。

Fig.17 ミズスギ (兵庫県播磨地方 2013.11/4)
ミスミイの生育する溜池土堤の水際に生育しています。
溜池土堤では他にコハナヤスリやフユノハナワラビが見られました。
関連ページ 湿生植物・ミズスギ

Fig.17 晩秋の洪積台地の皿池 (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
土堤から池底に向けて緩傾斜が広がっていて、堤体に囲まれた池内に様々な環境が見られます。
手前には表土の少ない貧栄養な湿生草原が広がっており、丈の低いネザサ、チガヤ、トダシバ、メリケンカルカヤがパッチ状に生育しており、その中でイヌセンブリ、ゴマクサ、サワヒヨドリが生育しています。
満水時に水際近くになる箇所ではヒメヒラテンツキ、トダシバ、ヤマアワ、クサヨシ、ミソハギなどが群落をつくり、浅い湛水状態となる場所ではアゼスゲ、ウキヤガラが群落を作っています。
また夏から秋にかけて水量の増減を繰り返すような緩斜面ではヌマカゼクサ、スズメノコビエ、ウキシバ、イヌノヒゲ、クロテンツキなどが生育しています。
満水時に完全に水没しているような場所では、干上がりかけてから出芽してきたカヤツリグサ科をはじめとした1年生草本の天国になっていました。

Fig.18 湿生草原のイヌセンブリ群落 (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
上記の溜池のネザサやメリケンカルカヤが優占する場所でまとまって群落をつくっています。
曇り勝ちの日で、多くの花はツボミのままで開花していませんでした。
関連ページ 湿生植物・イヌセンブリ

Fig.19 冬枯れのヤマアワ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
満水時の水際周辺で群生しています。ヤマアワの結実期は夏から秋にかけてですが、種子脱落後も花序は残り、翌年の春まで見られることがあります。
後方の高茎草本はミソハギで同所的に群生しています。
関連ページ 湿生植物・ヤマアワ

Fig.20 干上がった池底の1年生草本群落 (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
4株のツルナシコアゼガヤツリ、ヒナガヤツリ、サワトウガラシ、アゼナ、トキンソウ、ムラサキトキンソウ、それにヒロハホウキギクとスカシタゴボウの若いロゼットが見えています。

Fig.21 ツルナシコアゼガヤツリ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
夏から晩秋にかけて増減を繰り返す水際周辺に生育する、やや南方系の1年生カヤツリグサ科草本。
ウキシバやヌマカゼクサの生育する緩傾斜の水際では、それらの種との競合で負けてしまうのか、満水時の水際近くの急な斜面に見られるか、干上がって現れてくる池底裸地に見られます。
ミズハナビに似ていますが、ミズハナビのほうがより南方系で、兵庫県内での記録はありません。
両種の一番の区別点は鱗片の形状で、ミズハナビは先が切形に近い円頭になるが、ツルナシコアゼガヤツリではごく短い芒が出て外曲気味になります。
またミズハナビの小穂は花序のわりには細長く、著しく扁平となるのも同定する上での参考となります。
関連ページ 湿生植物・ツルナシコアゼガヤツリ

Fig.22 クロテンツキ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
溜池の干上がった場所に生育しているものは、畦に生育しているもののように草丈は高くならず、花茎も横に広がるように伸びています。
湛水時に生育期が重なった場合、画像のように根生する葉があまり長く伸びず、渦巻き状に出るようです。図鑑に載っている写真とはかけはなれた草体になるので、注意が必要でしょう。
関連ページ 湿生植物・クロテンツキ

Fig.23 ムラサキトキンソウ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
干上がった溜池に出現する、頭花が紫色となる溜池型のトキンソウ。
兵庫県南部の皿池ではふつうに見られます。

Fig.24 コイヌガラシ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
これも兵庫県南部の皿池や、氾濫原由来の地下水位の高い休耕田などで比較的よく見かける種。
同じアブラナ科のヒレタゴボウとともに生育していることが多いように思います。
関連ページ 湿生植物・コイヌガラシ

Fig.25 流れ込み周辺部の1年生草本群落 (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
流れ込み周辺部や湧水浸出部では、水分条件の良い立地を好む1年生草本がシバ地のような景観を晩秋限定でつくりだします。ここではメアゼテンツキ、アオガヤツリ、オオシロガヤツリ、ヒメアオガヤツリが丈の低いまま開花結実していました。

Fig.26 メアゼテンツキ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
干上がった溜池では最もふつうに現れ、内陸部の溜池でも見ることがあります。
溜池ばかりでなく休耕田にも出現する種です。
関連ページ 湿生植物・メアゼテンツキ

Fig.27 アオテンツキ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
ここではメアゼテンツキの次に沢山生育していました。
やや南方系の種で、丹波地方などの内陸部の溜池で見かける機会はありません。
ユニークな花序の形は一度覚えると忘れることがないでしょう。
また、痩果も縁に瘤をつけたユニークなものです。
関連ページ 湿生植物・アオテンツキ

Fig.28 オオシロガヤツリ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
アオガヤツリ、シロガヤツリ、ヒメオガヤツリなどは干上がった溜池の小さな草体では見分けるのに難儀しますが、オオシロガヤツリは小穂が扁平ではなく、小穂がらせん状について円柱状となるので、区別は容易なほうです。分布は局所的ですが、自生地では大群生する傾向があります。
関連ページ 湿生植物・オオシロガヤツリ

Fig.29 ヒメアオガヤツリ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
シロガヤツリとともに比較的稀な部類に入りますが、兵庫県内では自生地が多いように思います。
干上がった溜池に生育する小型個体は、外見上シロガヤツリとの区別が難しく、小穂をしごいて痩果を出して、ルーペで痩果の縁に翼があるかどうか確認します。痩果の稜上に翼があるものがシロガヤツリ、翼のないものがヒメアオガヤツリとなります。
もう1種ニイガタガヤツリというものがあり、HPのほうにページをつくっていますが、実は実態がハッキリしないものだということです。ではスポンジ状の翼がつくものは、全く新しい未記載種ということになるのでしょうか?
関連ページ 湿生植物・ヒメアオガヤツリ 湿生植物・ニイガタガヤツリ?
丹波地方のような内陸部ではすでに夜間はかなり冷え込んでくるようになり、溜池畔の湿地も冬枯れに近い光景が見られます。播磨地方などの県南部では、池干しされた池や半ば干上がった池底で、小型の1年生カヤツリグサ科草本が沢山見られる時期となっています。
画像:丹波地方の溜池湿地、ヒナノカンザシ、キキョウ、ホソバニガナ、ゴマクサ、
ハマハナヤスリ、丘陵部の谷池、タチモ、サイコクヌカボ、ガガブタ殖芽、
イトモ、イトトリゲモ、ヤマラッキョウ、リンドウ、ミスミイ、ミズスギ、
ヒメタヌキモ、ヒメタヌキモ殖芽、洪積台地の皿池、イヌセンブリ群落、
ヤマアワ群落、池底の1年生草本群落、ツルナシコアゼガヤツリ、
クロテンツキ、ムラサキトキンソウ、コイヌガラシ、メアゼテンツキ、
アオテンツキ、オオシロガヤツリ、ヒメアオガヤツリ
*画像クリックで、別ウィンドで拡大表示されます。

Fig.1 丹波地方の溜池畔の湿地 (兵庫県篠山市 2013.10/28)
池畔の湿地はすでに枯れ草色に染まり、スイランの茎は低温によって紫色に色づいています。
枯野の中で目立っているホシクサ科草本はシロイヌノヒゲのもの。

Fig.2 ヒナノカンザシ (兵庫県篠山市 2013.10/28)
夏から秋の間、ヒメカリマタガヤやマネキシンジュガヤによって隠されていたヒナノカンザシが姿を見せていました。ヒナノカンザシは晩秋遅くまで開花しているので、この時期には見つけやすくなります。
関連ページ 湿生植物・ヒナノカンザシ

Fig.3 キキョウ (兵庫県篠山市 2013.10/28)
頻繁に草刈りされていた溜池土堤もこの時期になると放置されて、これまで開花の機会のなかったキキョウやワレモコウが急いで開花しています。
関連ページ 関西の花・キキョウ

Fig.4 ホソバニガナ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
変なニガナが咲いていたけど、ホソバニガナではないかというS氏から連絡を受け、確認しに行ったところ確かにホソバニガナと思われるものが生育していました。その時は11頃で花は半開だったので、午前中開花で閉じつつあるのかと思いましたが、その後のS氏の観察により午後から開花するらしいとのこと。
1週間後、午後になってから再び自生地を訪れて開花した花を片っ端から計測し、ホソバニガナであることを確認し、開花画像を撮影しました。晩秋開花型のニガナと違い根生葉に鋸歯や歯牙状の突起も形成せず、ニガナとは明らかに違うものであると確信しました。ニガナとホソバニガナとの交雑種も考慮されているようですが、取敢えずは分類上、ホソバニガナの範疇にあるのではないかと認識しています。
ホソバニガナは全国的に稀な湿生植物で、兵庫県内でも数ヶ所しか自生地がありません。
関連ページ 湿生植物・ホソバニガナ

Fig.5 ゴマクサ (兵庫県播磨地方 2013.10/30)
ホソバニガナが生育する溜池畔は表土が少なく、このような場所に先駆的に侵入して群生するメリケンカルカヤが優占しています。この湿性草原ではメリケンカルカヤにちゃっかりと寄生しているゴマクサが数千株生育しています。ゴマクサは宿主に在来・外来を問わないようです。
すでに開花最盛期は終わっていますが、残り花がちらほらと見られました。
関連ページ 湿生植物・ゴマクサ

Fig.6 ハマハナヤスリ (兵庫県播磨地方 2013.10/30)
ホソバニガナ、ゴマクサと同じ溜池畔の比較的被植の少ない場所に点々と生育していました。
ハマハナヤスリはこの近辺の他の湿性草原を伴う溜池にも見られ、かつてはこのあたり一帯の溜池に生育していたのでしょう。現在では池畔が全てコンクリート護岸に改修されている溜池が大半となって生育環境が失われ、稀少種となってしまったのでしょう。
関連ページ 湿生植物・ハマハナヤスリ

Fig.7 晩秋の丘陵部の谷池 (兵庫県加東市 2013.11/4)
水抜きされた溜池の池畔では、広大な面積をサワトウガラシとタチモが優占していました。
奇観とも言える光景で、赤い部分はサワトウガラシ、黄緑色の部分は全てタチモです。
サワトウガラシとタチモ群落の合間にはミミカキグサ、ムラサキミミカキグサが生育しています。
関連ページ 湿生植物・サワトウガラシ

Fig.8 殖芽を形成するタチモ (兵庫県加東市 2013.11/4)
茎頂や根際に赤褐色の殖芽を形成し、緑色の草体と美しいコントラストを見せていました。
関連ページ 沈水~湿生植物・タチモ

Fig.9 紅葉したサイコクヌカボ (兵庫県加東市 2013.11/4)
このところ急に冷え込んできたためか、サイコクヌカボが色濃く紅葉していました。
この池畔では雑草のごとく多数の個体が生育しています。
関連ページ 湿生植物・サイコクヌカボ

Fig.10 ガガブタの殖芽 (兵庫県加東市 2013.11/4)
干上がった池畔にガガブタの殖芽が目だっていました。
発生量は年によって消長があるようで、今年は少なく感じられました。
関連ページ 浮葉植物・ガガブタ

Fig.11 イトモ (兵庫県加東市 2013.11/4)
丘陵の谷津の水田の排水路内でイトモが点々と生育していました。
水田の水路内でイトモが生育しているのは珍しい例だと思います。
関連ページ 沈水植物・イトモ

Fig.12 イトトリゲモ (兵庫県加東市 2013.11/4)
イトモと同じ水路内に生育していました。イトモもイトトリゲモも溜池など他の場所では枯れていることが多いのですが、ここの水路は水温の比較的一定している湧水によって涵養されているのでしょう。
関連ページ 沈水植物・イトトリゲモ

Fig.13 ヤマラッキョウとリンドウ (兵庫県加東市 2013.11/4)
溜池土堤の水際にヤマラッキョウとリンドウが咲き競っていました。
このあたりではホソバリンドウが見られず、湿地にリンドウが出てくる地域なのでしょう。
土堤上にはキキョウ、オミナエシ、スズサイコ、ユウスゲ、タチカモメヅルなどが見られ、自然度の高い場所でした。
関連ページ 湿生植物・ヤマラッキョウ 関西の花・リンドウ

Fig.14 ミスミイ (兵庫県播磨地方 2013.11/4)
兵庫県唯一のミスミイの自生地を兵庫水辺ネットのO氏、S氏に案内していただきました。
水中には無数のチスイビルが泳いでおり、これまで除草剤などの有害な農薬が混入してこなかったことが伺われます。他にもマルバオモダカ、ヒメタヌキモ、ヒツジグサ、ジュンサイなどが生育する非常に自然度の高いこじんまりとした谷池でした。
関連ページ 抽水植物・ミスミイ

Fig.15 ヒメタヌキモ (兵庫県播磨地方 2013.11/4)
マルバオモダカとともに急激に減少しつつあると感じる水生植物です。
この池では豊富に生育しており、茎頂や枝先に殖芽を形成しつつありました。
関連ページ 浮遊植物・ヒメタヌキモ

Fig.16 ヒメタヌキモの殖芽 (兵庫県播磨地方 2013.11/4)
タヌキモやイヌタヌキモと違って、シダのフィドルヘッドのように巻いた殖芽を作ります。
殖芽の直径は3~4mm程度のとても小さなもので、草体が枯れると自生地で見つけ出すには困難なものでしょう。

Fig.17 ミズスギ (兵庫県播磨地方 2013.11/4)
ミスミイの生育する溜池土堤の水際に生育しています。
溜池土堤では他にコハナヤスリやフユノハナワラビが見られました。
関連ページ 湿生植物・ミズスギ

Fig.17 晩秋の洪積台地の皿池 (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
土堤から池底に向けて緩傾斜が広がっていて、堤体に囲まれた池内に様々な環境が見られます。
手前には表土の少ない貧栄養な湿生草原が広がっており、丈の低いネザサ、チガヤ、トダシバ、メリケンカルカヤがパッチ状に生育しており、その中でイヌセンブリ、ゴマクサ、サワヒヨドリが生育しています。
満水時に水際近くになる箇所ではヒメヒラテンツキ、トダシバ、ヤマアワ、クサヨシ、ミソハギなどが群落をつくり、浅い湛水状態となる場所ではアゼスゲ、ウキヤガラが群落を作っています。
また夏から秋にかけて水量の増減を繰り返すような緩斜面ではヌマカゼクサ、スズメノコビエ、ウキシバ、イヌノヒゲ、クロテンツキなどが生育しています。
満水時に完全に水没しているような場所では、干上がりかけてから出芽してきたカヤツリグサ科をはじめとした1年生草本の天国になっていました。

Fig.18 湿生草原のイヌセンブリ群落 (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
上記の溜池のネザサやメリケンカルカヤが優占する場所でまとまって群落をつくっています。
曇り勝ちの日で、多くの花はツボミのままで開花していませんでした。
関連ページ 湿生植物・イヌセンブリ

Fig.19 冬枯れのヤマアワ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
満水時の水際周辺で群生しています。ヤマアワの結実期は夏から秋にかけてですが、種子脱落後も花序は残り、翌年の春まで見られることがあります。
後方の高茎草本はミソハギで同所的に群生しています。
関連ページ 湿生植物・ヤマアワ

Fig.20 干上がった池底の1年生草本群落 (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
4株のツルナシコアゼガヤツリ、ヒナガヤツリ、サワトウガラシ、アゼナ、トキンソウ、ムラサキトキンソウ、それにヒロハホウキギクとスカシタゴボウの若いロゼットが見えています。

Fig.21 ツルナシコアゼガヤツリ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
夏から晩秋にかけて増減を繰り返す水際周辺に生育する、やや南方系の1年生カヤツリグサ科草本。
ウキシバやヌマカゼクサの生育する緩傾斜の水際では、それらの種との競合で負けてしまうのか、満水時の水際近くの急な斜面に見られるか、干上がって現れてくる池底裸地に見られます。
ミズハナビに似ていますが、ミズハナビのほうがより南方系で、兵庫県内での記録はありません。
両種の一番の区別点は鱗片の形状で、ミズハナビは先が切形に近い円頭になるが、ツルナシコアゼガヤツリではごく短い芒が出て外曲気味になります。
またミズハナビの小穂は花序のわりには細長く、著しく扁平となるのも同定する上での参考となります。
関連ページ 湿生植物・ツルナシコアゼガヤツリ

Fig.22 クロテンツキ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
溜池の干上がった場所に生育しているものは、畦に生育しているもののように草丈は高くならず、花茎も横に広がるように伸びています。
湛水時に生育期が重なった場合、画像のように根生する葉があまり長く伸びず、渦巻き状に出るようです。図鑑に載っている写真とはかけはなれた草体になるので、注意が必要でしょう。
関連ページ 湿生植物・クロテンツキ

Fig.23 ムラサキトキンソウ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
干上がった溜池に出現する、頭花が紫色となる溜池型のトキンソウ。
兵庫県南部の皿池ではふつうに見られます。

Fig.24 コイヌガラシ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
これも兵庫県南部の皿池や、氾濫原由来の地下水位の高い休耕田などで比較的よく見かける種。
同じアブラナ科のヒレタゴボウとともに生育していることが多いように思います。
関連ページ 湿生植物・コイヌガラシ

Fig.25 流れ込み周辺部の1年生草本群落 (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
流れ込み周辺部や湧水浸出部では、水分条件の良い立地を好む1年生草本がシバ地のような景観を晩秋限定でつくりだします。ここではメアゼテンツキ、アオガヤツリ、オオシロガヤツリ、ヒメアオガヤツリが丈の低いまま開花結実していました。

Fig.26 メアゼテンツキ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
干上がった溜池では最もふつうに現れ、内陸部の溜池でも見ることがあります。
溜池ばかりでなく休耕田にも出現する種です。
関連ページ 湿生植物・メアゼテンツキ

Fig.27 アオテンツキ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
ここではメアゼテンツキの次に沢山生育していました。
やや南方系の種で、丹波地方などの内陸部の溜池で見かける機会はありません。
ユニークな花序の形は一度覚えると忘れることがないでしょう。
また、痩果も縁に瘤をつけたユニークなものです。
関連ページ 湿生植物・アオテンツキ

Fig.28 オオシロガヤツリ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
アオガヤツリ、シロガヤツリ、ヒメオガヤツリなどは干上がった溜池の小さな草体では見分けるのに難儀しますが、オオシロガヤツリは小穂が扁平ではなく、小穂がらせん状について円柱状となるので、区別は容易なほうです。分布は局所的ですが、自生地では大群生する傾向があります。
関連ページ 湿生植物・オオシロガヤツリ

Fig.29 ヒメアオガヤツリ (兵庫県播磨地方 2013.11/6)
シロガヤツリとともに比較的稀な部類に入りますが、兵庫県内では自生地が多いように思います。
干上がった溜池に生育する小型個体は、外見上シロガヤツリとの区別が難しく、小穂をしごいて痩果を出して、ルーペで痩果の縁に翼があるかどうか確認します。痩果の稜上に翼があるものがシロガヤツリ、翼のないものがヒメアオガヤツリとなります。
もう1種ニイガタガヤツリというものがあり、HPのほうにページをつくっていますが、実は実態がハッキリしないものだということです。ではスポンジ状の翼がつくものは、全く新しい未記載種ということになるのでしょうか?
関連ページ 湿生植物・ヒメアオガヤツリ 湿生植物・ニイガタガヤツリ?
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