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Satoyama, Plants & Nature

秋の溜池・湿地・水田 1 

秋口の豪雨と台風の来襲により、福知山市や綾部市の由良川氾濫原由来の水田は水没し、稲をはじめとした農作物に大きな被害をもたらしました。被害に遭われた方々には心からお悔やみ申し上げます。
今回の台風や豪雨による降雨のため、例年では干上がるはずの溜池も再び満水となり、残念ながら溜池の湿生・水生植物の調査には不適切となってしまいました。そのため湿地の植物を中心とした紹介がメインとなります。
画像:ウシノシッペイ、ミズオオバコ、イトモ、イヌタヌキモ、ミソハギ群落、キガンピ、
   コマツカサススキ×アイバソウ推定種間雑種、イヌホタルイ、ホタルイ、シカクイ、
   タイワンヤマイ、エゾアブラガヤ、マツカサススキ、ホソバヘラオモダカ?、
   タコノアシ、ミクリsp.、ミズニラ、アゼナ溜池型、ヒメシロネ、キクモ、
   エダウチスズメノトウガラシ、ヒロハイヌノヒゲ、ホザキノフサモ、コシンジュガヤ、
   クロゲンゴロウ、シマゲンゴロウ、イヌノヒゲ、沈水した両性植物群、ミズネコノオ、
   ムラサキミミカキグサ、アケボノソウ、ミズトンボ、タムラソウ、ミズマツバ、
   イガクサ、イトテンツキ、イトテンツキの生育環境、イトハナビテンツキ、アイナエ、
   ヒメナエ、イトイヌノハナヒゲ、カガシラ、ゴマクサ、タヌキマメ、キセルアザミ、
   ムカゴニンジン、ヌマゼリ
*画像クリックで、別ウィンドで拡大表示されます。

ウシノシッペイ
Fig.1 ウシノシッペイ (神戸市 2013.9/6)
山間の休耕田でウシノシッペイが群生していました。
阪神間では見かけることの少なくなったイネ科草本です。
関連ページ 湿生植物・ウシノシッペイ

ミズオオバコ群落
Fig.2 溜池のミズオオバコ (兵庫県加東市 2013.9/8)
今年はミズオオバコの当たり年だったようす。
昨年は水際に少しだけ開花していましたが、今年は溜池の1/3程を覆って開花していました。
関連ページ 沈水植物・ミズオオバコ

ミズオオバコの花
Fig.3 ミズオオバコの花 (兵庫県加東市 2013.9/8)
溜池に生育するものは花も大きく、紅色も強く出るように感じます。

水中のイトモ
Fig.4 水中のイトモ (兵庫県加東市 2013.9/8)
ミズオオバコの溜池の水中にはイトモやイヌタヌキモがみられました。
よく見るとイトモは右手のほうで水中に花茎が上がっています。
イトモは自家受粉するので、水中で開花しても大丈夫なのでしょうか?
左手のイヌタヌキモはすでに茎頂に殖芽をつくっているのが見えます。
関連ページ 沈水植物・イトモ  浮遊植物・イヌタヌキモ

ミソハギ群落
Fig.5 溜池畔のミソハギ群落 (兵庫県篠山市 2013.9/8)
丹波地方に1ヶ所だけあるマルバオモダカの様子を見ようと訪れた溜池では、池畔の湿地でミソハギが開花全盛でした。
関連ページ 湿生植物・ミソハギ

コンダアブラガヤ
Fig.6 コマツカサススキ×アイバソウ推定種間雑種 (兵庫県篠山市 2013.9/8)
年々遷移が進みつつある溜池跡の湿地ですが、今年も健在でした。
関連ページ 湿生植物・コマツカサススキ 湿生植物・アイバソウ

キガンピ
Fig.7 キガンピ (兵庫県篠山市 2013.9/8)
この溜池跡の湿地では周りを囲むようにキガンピが生育し、ちょうど開花中でした。

ホタルイとイヌホタルイ
Fig.8 イヌホタルイとホタルイ (神戸市 2013.9/8)
イヌホタルイ(左)、ホタルイ(右)。
ホタルイのほうが茎が細くて硬く、小穂も卵形で小さめで、すっきりとした印象をあたえます。
関連ページ 湿生植物・イヌホタルイ  湿生植物・ホタルイ

タイワンヤマイ
Fig.9 タイワンヤマイ (神戸市 2013.9/8)
タイワンヤマイはイヌホタルイやホタルイよりも稀で、苞葉が大変長く、小穂は熟しても緑色を保ちます。
関連ページ 湿生植物・タイワンヤマイ

エゾアブラガヤ
Fig.10 エゾアブラガヤ (神戸市 2013.9/8)
エゾアブラガヤは低地ではふつうアブラガヤよりも花序が大きくなり、花茎は頂花序のみがついて側花序は出さず、結実は早い傾向があります。
アブラガヤよりもかなり稀で、この場所ではあちこちの休耕田に群生しており、県内では特異な地区だといえます。
関連ページ 湿生植物・エゾアブラガヤ

マツカサススキ
Fig.11 マツカサススキ (神戸市 2013.9/8)
まだ開花直前の小穂の青い個体です。
エゾアブラガヤに混じって休耕田に生育していますが、エゾアブラガヤよりも稀で、兵庫県RDBではBランク種となっています。
関連ページ 湿生植物・マツカサススキ

シカクイ
Fig.12 シカクイ (神戸市 2013.9/8)
兵庫県南部では休耕田や湿地にはふつうイヌシカクイが出現しますが、ここではシカクイが生育していました。
小穂の基部から芽生しているものも多く、中にはハリイ類との雑種と見られるような小穂が不稔で細長いものも見られました。
関連ページ 湿生植物・シカクイ

ホソバヘラオモダカ?
Fig.13 ホソバヘラオモダカ? (神戸市 2013.9/8)
花の葯は褐色で、現状ではホソバヘラオモダカに分類されるものですが、湧水の見られない休耕田で大型となり旺盛に繁殖しています。
ホソバヘラオモダカはふつうアギナシの生育するような場所に生育しますが、このような生育環境は異例で、ここに生育するものが本来のホソバヘラオモダカなのかは今後の課題です。
関連ページ 抽水植物・ホソバヘラオモダカ

タコノアシ
Fig.14 タコノアシ (神戸市 2013.9/8)
ホソバヘラオモダカと同じ休耕田に点在しています。
休耕田内には他にカンガレイ、イヌホタルイ、ハリイ、エゾアブラガヤ、ヒメミコシガヤ、タチスゲ、ゴウソ、ホナガヒメゴウソ、イグサ、ホソイ、ハナビゼキショウ、ムツオレグサ、コブナグサ、サイコクヌカボ、ミゾソバ、ヤノネグサ、キツネノボタン、セリなどが生育しています。
関連ページ 湿生植物・タコノアシ

イヌタヌキモとミクリsp.
Fig.15 イヌタヌキモとミクリsp. (京都府福知山市 2013.9/12)
イヌタヌキモは兵庫県内ではふつうに見られますが、京都では稀だとのこと。
兵庫・京都ともに内陸部では、沈水形で花茎をあげないミクリsp.の自生地が数多く見られます。
これらのうち冬期にも地上部(溜池水中でも)が枯死しないものはヤマトミクリである可能性が高いと考えられます。

ミズニラと溜池型アゼナ
Fig.16 ミズニラと溜池型アゼナ (京都府福知山市 2013.9/12)
山間の溜池畔にミズニラが群生していました。
画像右には溜池型のアゼナが群生しています。溜池に見られるアゼナはほとんど分枝せず、葉幅は狭く厚みがあります。水田に生育するアゼナとまったく同一のものか一度検討する必要があるでしょう。
関連ページ 湿生植物・ミズニラ

ヒメシロネ
Fig.17 ヒメシロネ (京都府福知山市 2013.9/12)
林道脇の湧水による小湿地にヒメシロネが群生し、新鮮な花が見られました。
関連ページ 湿生植物・ヒメシロネ

エダウチスズメノトウガラシ
Fig.18 エダウチスズメノトウガラシ (京都府福知山市 2013.9/12)
なぜか神社境内の水溜り跡のような場所に、極小のエダウチスズメノトウガラシが開花していました。
関連ページ 湿生植物・エダウチスズメノトウガラシ

開花したキクモ
Fig.19 開花したキクモ (京都府福知山市 2013.9/12)
あちこちの休耕田にあるキクモも開花し始めてきました。
関連ページ 湿生植物・キクモ

ヒロハイヌノヒゲ
Fig.20 ヒロハイヌノヒゲ (京都府福知山市 2013.9/12)
他の水田雑草に埋もれるようにして大株が開花しはじめていました。
関連ページ 湿生植物・ヒロハイヌノヒゲ

ホザキノフサモ
Fig.21 ホザキノフサモ (兵庫県三田市 2013.9/17)
山間棚田で見つけたホザキノフサモが開花しはじめていました。
フサモやオグラノフサモの開花は見たことがありますが、ホザキノフサモの開花はようやく見ることができました。小さな花序が3つほど上がっているのが分かるでしょうか?
関連ページ 沈水植物・ホザキノフサモ

コシンジュガヤ
Fig.22 コシンジュガヤ (京都府南丹地方 2013.9/20)
京都ではコシンジュガヤは稀とのこと。
周辺は堆積岩を基岩とし肥沃な場所になりやすく、このような地域では貧栄養地に多いコシンジュガヤの自生地としては珍しいでしょう。
イヌシカクイ、ヤマイ、タムラソウ、ヤマラッキョウ、ヌマトラノオ、ヒメシダなどとともに多湿な畦のような農道上に生育していました。
関連ページ 湿生植物・コシンジュガヤ

クロゲンゴロウ
Fig.23 クロゲンゴロウ (京都府南丹地方 2013.9/20)
コシンジュガヤの生育する農道すぐ近くの浅い鋤洗い場のような小池に数匹見られました。
京都では少ないようです。兵庫県の丹波地方では湛水休耕田で比較的見かける機会があります。

シマゲンゴロウ
Fig.24 シマゲンゴロウ (京都府南丹地方 2013.9/20)
クロゲンゴロウがいたので、少しタモ網でガサッてみたところシマゲンゴロウがいました。
他にハイイロゲンゴロウ、ミズカマキリ、ヒメガムシ、コオイムシ、マツモムシなどが網に入りました。

イヌノヒゲ
Fig.25 イヌノヒゲ (京都府京丹波町 2013.9/20)
シカの食害の激しい地域で、溜池畔では大型の草本はサワオグルマのような忌避植物しか見られず、ミズユキノシタやハイチゴザサ、ネコノメソウ、ムラサキサギゴケ(ヤマサギゴケかも)のような匍匐性草本、あるいはイヌノヒゲやハリイのような小型の1年生草本程度しか見られません。
関連ページ 湿生植物・イヌノヒゲ

沈水した両性植物
Fig.26 再び沈水した両性植物群 (京都府福知山市 2013.9/22)
台風に伴う豪雨で満水となった溜池では気中形で陸生していた水陸両性植物が沈水し、沈水葉を形成しはじめていました。
キクモはFig.19の葉と比較すると少し形が変わっていることが解ります。
イボクサも先端近くの葉が赤味を帯びています。

水田のミズネコノオ
Fig.27 ミズネコノオ (兵庫県丹波地方 2013.9/22)
丹波地方の刈り取り後の水田ではミズネコノオが開花し始めていましたが、例年より個体数は少なく、草丈も低いものばかりでした。
一緒に生育しているはずのホシクサ、シソクサ、ミズマツバなどもほとんど見られず、数度にわたって除草剤が撒かれたのではないかと思います。
関連ページ 湿生植物・ミズネコノオ

ムラサキミミカキグサ
Fig.28 ムラサキミミカキグサ (兵庫県篠山市 2013.9/22)
丹波地方ではムラサキミミカキグサは非常に稀で、これまで1ヶ所で見たのみでしたが、よく通っていた溜池畔の湿地の一画に生育していました。
同行したMさんが見つけました。馴染みの場所を違う人の眼で見てもらうことも重要です。
関連ページ 湿生植物・ムラサキミミカキグサ

アケボノソウ
Fig.29 アケボノソウ (兵庫県篠山市 2013.9/22)
ムラサキミミカキグサと同じ溜池畔で開花し始めていました。
この花が開くと秋真っ只中という感じです。
関連ページ 湿生植物・アケボノソウ

ミズトンボ
Fig.30 ミズトンボ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
溜池直下の湛水休耕田に数百個体が群生しています。
減少傾向の著しい湿生ランですが、ここでは下方の休耕田にも侵入しはじめており、生育領域を拡大しているようです。
関連ページ 湿生植物・ミズトンボ

タムラソウ
Fig.31 タムラソウ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
溜池直下の水路沿いに列をなして開花していました。
花にはメスグロヒョウモンなどのヒョウモンチョウ類が多く訪花していましたが、忙しく飛び回るため撮影はできませんでした。
関連ページ 湿生植物・タムラソウ

ミズマツバ群落
Fig.32 群生するミズマツバ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
移動の途上に全面がミズマツバに覆われた水田に出くわしました。
このような密な群生を見るのは久しぶりです。
関連ページ 湿生植物・ミズマツバ

雄性期のイガクサ
Fig.33 雄性期のイガクサ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
痩せた流紋岩質の低山の林道脇でイガクサが生育していました。
さまざまな段階の花序がありましたが、画像のものは雄性期の花序です。
長くのびている花柱はすでにしおれて褐色となり、小穂の先から2個の黄白色の葯が出て、花粉を放出しているところです。
関連ページ 湿生植物・イガクサ

イトテンツキ
Fig.34 イトテンツキ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
全国的に稀な小型の一年生カヤツリグサ科草本で、兵庫県内ではここでしか見たことがありません。
同属のイトハナビテンツキとは小穂が頭状に集まることによって、ハタガヤとは鱗片の先が外曲しないことにより区別できます。
関連ページ 湿生植物・イトテンツキ

イトテンツキ生育環境
Fig.35 イトテンツキの生育環境 (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
もとはハゲ山であったであろう低木状の雑木とコシダに覆われた低山で、流紋岩質の基岩を削って古い林道が通っています。
林道には流紋岩が風化した土砂が溜まっている以外は表土は薄く、高茎草本は侵入しにくい貧栄養地となっています。
イトテンツキは日当たり良い粘土状の表土の薄く溜まった林道脇に、帯状に数十メートルにわたって群生していて、画像の褐色に見える部分がイトテンツキの生育している箇所です。
同所的に生育しているのは生育の悪いススキやネザサ、ウンヌケ、トダシバ、メリケンカルカヤ、アカマツやヒサカキ、ヤマハギの幼木、イトハナビテンツキ、矮小化したテンツキ、イトイヌノハナヒゲ、イガクサ、アリノトウグサ、アイナエ、イシモチソウ、トウカイコモウセンゴケ、ニガナ、妙に葉幅の狭いイヌコウジュなどでした。

イトハナビテンツキ
Fig.36 イトハナビテンツキ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
兵庫県下では比較的ふつうに見られ、貧栄養な粘土質土壌やシバ地でよく出会います。
イトテンツキとは花序が散形状に広がり、花序枝が1~2回分枝することにより区別できます。
関連ページ 湿生植物・イトハナビテンツキ

イトイヌノハナヒゲ
Fig.37 イトイヌノハナヒゲ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
同属の貧栄養湿地の主要構成種であるイヌノハナヒゲは、表土が少なく水分条件の悪い場所には出てきませんが、小型の1年生草本である本種は、発根を最小限にして浅い粘土質の貧栄養地にも適応できるようです。
画像のものはイトテンツキ自生地で単独で見られましたが、湿地では他の草本に埋もれるように生育している例が多く、撮影には骨の折れる種です。
関連ページ 湿生植物・イトイヌノハナヒゲ

アイナエ
Fig.38 アイナエ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
イトテンツキの周辺ではアイナエが開花全盛でした。
関連ページ 湿生植物・アイナエ

ヒメナエ
Fig.39 ヒメナエ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
溜池畔の湿原に生育しているもので、開花初期らしく開花していたのはこの個体のみでした。イヌノハナヒゲやコシンジュガヤ、イノノヒゲ類に埋もれるように生育しているので、探すのにひと苦労します。
関連ページ 湿生植物・ヒメナエ

カガシラ
Fig.40 カガシラ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
湿原のかきわけながらヒメナエを探している際に見つけたもので、他の草本類に完全に埋もれていました。
知る人ぞ知るというようなサギソウ、ミズトンボ、ゴマクサ、ミクリのある旧くからの観察適地ですが、ここでの記録が無かったのはこんなふうに生育していたからなのでしょう。
ヒメナエも昨年のS氏発見以前は、ここで生育していることは知られていませんでした。
すでに開拓されつくしたと考えられている場所でも、予断は許されません。
関連ページ 湿生植物・カガシラ

ゴマクサ
Fig.41 ゴマクサ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
ここでは湿地周縁部で多産しています。半寄生植物と言われており、イノヌハナヒゲやカモノハシの成育する水分条件のよい場所では60cm程に生育しますが、イトハナビテンツキやアイナエの成育するような水分条件の厳しい場所では、草丈5~10cm程度で開花結実しています。
関連ページ 湿生植物・ゴマクサ

タヌキマメの花
Fig.42 タヌキマメの花 (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
湿地周縁部の湿生草原にはタヌキマメが群生していますが、すでに開花全盛期は終わり、残り花がポツポツと見られる程度でした。
関連ページ 湿生植物・タヌキマメ

キセルアザミ
Fig.43 開花し始めたキセルアザミ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
湿原内や排水路周辺ではキセルアザミが開花し始めていました。秋も深まってきたと感じます。
周囲にはヤマラッキョウのつぼみが沢山見られます。
関連ページ 湿生植物・キセルアザミ

ムカゴニンジン
Fig.44 ムカゴニンジン (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
大きな株に成長したムカゴニンジンが倒伏しつつ開花を続けていました。
自然の汲めども尽きぬ生命力の表象と感じてしまい、圧倒されます。
関連ページ 湿生植物・ムカゴニンジン

ヌマゼリ
Fig.45 ヌマゼリ (兵庫県播磨地方 2013.9/24)
ムカゴニンジンに近縁のヌマゼリの様子も見に行ってみました。
やはり徒長して倒伏し、開花し続けていました。
開花初期にはキアゲハにほとんど食害されていないという知らせを受けましたが、2化目の幼虫によって食い荒らされているうえ、トダシバやサワヒヨドリと混じって何がなんやらという画像となってしまいました。
キアゲハの食害が激しく、この場所のヌマゼリ特有の「柄のあるムカゴ」が確認できませんでした。
関連ページ 湿生植物・ヌマゼリ
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category: 湿地・溜池

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9月の花 1 

ついこの前まで続いていた、あの夏の暑さと天気の急変はなんだったのでしょうか。近年のように猛暑になったり、局所的な気候の急激な変化は、平野部の開発によって水田が激減したためという説もあるようです。今では朝夕はすっかり涼しくなり、日中も汗ばむものの、からっとした暑さが心地よい、フィールドでの観察適期となりました。山野では秋の花があちこちで開花しはじめています。草原ではクサヒバリやマツムシの声も聞こえてきました。
画像:マツムシソウ、オミナエシ、シラヤマギク、ウド、コアオハナムグリ、ヤブラン、
   ホソヒラタアブ、ミズタマソウ、ネコハギ、ガガイモ、ツチアケビの実、ムギラン、
   ヤマジノホトトギス、ハダカホオズキ、オオバクサフジ、オオヒキヨモギ、
   ヒキヨモギ
*画像クリックで、別ウィンドで拡大表示されます。
マツムシソウの花
Fig.1 マツムシソウの花 (神戸市 2013.9/3)
六甲山上にある神戸ゴルフ倶楽部の草原性植物観察会に解説員として参加させていただきました。
神戸ゴルフ倶楽部は110年前に開場した日本最古のゴルフ場で、除草剤を使用せずに草刈りによって長く草原環境が保たれ、また一般の入場ができなかったため、稀少な植物が数多く残っています。マツムシソウもそういう環境で残ったもので、兵庫県内で確実な自生地は2ヶ所しかなく、まとまった自生地は県内ではここにしかありません。
この日は小雨や霧にあいましたが、花にはハナバチの仲間、ジャノメチョウ、イチモンジセセリ、ベニシジミなどが訪花していました。

マツムシソウの生育環境
Fig.2 マツムシソウの生育環境 (神戸市 2013.9/3)
ススキが優占する草原にツリガネネンジン、ワレモコウとともに多数の個体が生育しています。
マツムシソウ保全のために草刈りの時期もしっかりと管理され、これからも長く見ることができるでしょう。草地には来年、再来年に開花するだろうロゼットも沢山見られました。

シラヤマギクとオミナエシ
Fig.3 林縁草地の花 (神戸市 2013.9/3)
神戸ゴルフ倶楽部内ではマツムシソウ、ツリガネニンジ、ワレモコウ、画像に見えるオミナエシ、シラヤマギクなどの他にスズサイコ、リンドウ、ネコハギ、タムラソウ、アキノキリンソウといった草原性草本が見られました。
関連ページ 湿生植物・オミナエシ  関西の花・シラヤマギク

ウド
Fig.4 ウド (神戸市 2013.9/9)
この時期、里山の林縁や溜池土堤などのススキ草原では大きく成長したウドの開花が目立ちます。
春の新芽と同様、花も天ぷらにできるようですが、この時期はあまり天ぷらが発想できず、私的にはそれよりも花にやってくる訪花昆虫を観察をしていたほうが面白いと思います。

ウドの花にきたコアオハナムグリ
Fig.5 ウドを訪花したコアオハナムグリ (神戸市 2013.9/6)

ヤブランを訪花したホソヒラタアブ
Fig.6 ヤブランの花に来たホソヒラタアブ (神戸市 2013.9/6)
ヤブランのようにどこにでもある花も拡大して見ると面白いものです。
この仲間の花は、雄蕊が雌蕊よりも下に集まるように、花糸がカーブするのが特徴です。

ミズタマソウ
Fig.7 ミズタマソウ (神戸市 2013.9/6)
里山の林縁の湿った場所でよく見かけます。
同じような場所に近縁のウシタキソウも生えますが、より稀で、葉は心形となります。

ネコハギ
Fig.8 ネコハギ (神戸市 2013.9/6)
農道脇や畦ではネコハギの花が最盛期となっていました。

ガガイモの花
Fig.9 ガガイモの花 (神戸市 2013.9/6)
旧畑作地やあまり草刈りの行われていない土手では、ガガイモが覆いかぶさるように繁茂して、沢山の花序をつけて開花していました。花が淡紅色の個体もあれば、白色の個体もあります。

ツチアケビの果実
Fig.10 ツチアケビの果実 (神戸市 2013.9/6)
竹林の脇に果実をつけたツチアケビがありました。このあたりでは比較的よく見る腐生ランです。
焼くと焼き芋の香りがするけど、食べても美味しくないそうです。

ムギラン
Fig.11 カシの樹幹に密生したムギラン (神戸市 2013.9/9)
岩場で見る機会の多いムギランですが、ここでは樹幹に密生しているのに出くわして驚きました。
カシの木のほとんど根元近くから高さ5mあたりまでびっしりと着生しています。
よくもこれまで盗掘に遭わなかったものだと思います。

ヤマジノホトトギス
Fig.12 ヤマジノホトトギス (兵庫県篠山市 2013.9/8)
よく見かける種であるのに、沢山花のついた生育条件のよい個体に出会えません。
きっとこの時期は溜池や水田ばかり歩いているからでしょうね。

ハダカホオズキの花
Fig.13 ハダカホオズキ (兵庫県篠山市 2013.9/8)
丹波地方には非常に多い草本で、植林地下に大きな群落を形成していることがあります。

オオバクサフジ
Fig.14 オオバクサフジ (神戸市 2013.9/9)
オオバクサフジが棚田の最上部の土手に群生していました。
多くのものは成長期に草刈りに遭ったため、つぼみを着けたものばかりでしたが、草刈りをまぬがれた個体では、すでに多くの花が開花していました。草原環境の減少とともに少なくなった種で、兵庫県版RDBではBランクとされています。

オオバクサフジの花
Fig.15 オオバクサフジの花 (神戸市 2013.9/9)
花だけ見るとナンテンハギやヨツバハギと区別できません。

オオヒキヨモギ
Fig.16 オオヒキヨモギの花 (西宮市 2013.9/9)
西宮市内ではよく見られ、流紋岩質の岩場や、花崗岩の崩壊地などのバッドランドに多い草本です。次に紹介するヒキヨモギとは、茎上部の葉は切れ込まないことと腺毛が全体的に多い、花が淡黄色であることにより区別できます。ヒキヨモギのほうは西宮市内では見たことがありません。
関連ページ 関西の花・オオヒキヨモギ

ヒキヨモギの花
Fig.17 ヒキヨモギの花 (神戸市 2013.9/9)
ヒキヨモギは草原環境に生育する草本で、阪神間ではあまり見かけません。
ここでは草刈りされる山の斜面に数個体が生育していました。ここでは他にオケラ、ツリガネニンジン、オミナエシ、リンドウ、アワボスゲ、ノグサなどが生育しています。本当はカワラボウフウが目的で来てみましたが、残念ながら今年は生育が確認できませんでした。
ヒキヨモギもオオヒキヨモギも半寄生植物とされています。
関連ページ 関西の花・ヒキヨモギ

category: 9月の花

thread: 博物学・自然・生き物 - janre: 学問・文化・芸術

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フトイ・オオフトイと海浜性小型フトイのもんだい 

お知らせ:京都府レッドデータブックが改訂されました。
http://www.pref.kyoto.jp/kankyo_red/index.html

フトイとオオフトイの違いを見極めよう
今年はフトイの仲間をメインに調べました。
兵庫県には小穂が赤紫色のオオフトイと思われるものが何ヶ所かにありました。
図鑑やwebなどによると、柱頭が3岐するものがオオフトイの特徴としてあげられています。
昨年試みにオオフトイと思われる集団の柱頭を調べてみたところ、1つの小穂に柱頭が2岐するものと3岐するものとが混じっていて、どうも図鑑やwebの記述は怪しいと思うようになりました。
そこで今年はフトイとオオフトイの区別点を見極めようと、主に兵庫県南部の18集団のフトイ類調査を多くの方々の協力を得て行ないました。その結果、フトイとオオフトイの区別点は明確になりましたが、いくつかの疑問点も生じてきました。今回はその概略の報告です。

フトイとオオフトイ
Fig.1 フトイ(左)とオオフトイ(右)

柱頭の分岐数
まず柱頭の分岐数ですが、1小穂のほぼ全てが2岐するものと、1小穂内で2岐するものと3岐するものとに分けられます。1小穂中に1~2個ほど3岐するものもあるが、ほぼ全てが2岐するものはフトイとしました。1小穂内に2岐するものと3岐するものが混じるものは、だいたい全体の1/3~2/3が3岐するものとなっていました。この2つの分岐パターンが混じっているものをオオフトイと仮定しました。
オオフトイの雌蕊
Fig.2 オオフトイの雌蕊
柱頭が2岐するものと3岐するものが混じっています。
フトイの雌蕊はほとんどのものが2岐し、稀に1小穂中に1~2個程度3岐するものが混じることがあります。

鱗片
このフトイとオオフトイとして分けたものの鱗片の色を調べると、オオフトイとしたものは鱗片の上半分中肋両側に赤紫色となる部分が見られます。
フトイとしたものは淡色~褐色となっています。
この特徴の差は生時、特に鱗片が新鮮な開花初期の雌性期に明瞭で、この時期のものは花粉放出後の葯に小穂が覆われないため、慣れれば花序を見ることにより区別できます。
鱗片の長さ(乾燥時)についてはフトイが3.0~3.7mm、オオフトイが3.4~4.2mmとなり、オオフトイがやや大きいことが解りました。
フトイ類生時の鱗片
Fig.3 オオフトイ(左)とフトイ(右)の雌性期生時の鱗片
オオフトイの鱗片はフトイよりも大きく、上半部は赤紫色を帯びます。

フトイ類の雌性期花序
Fig.4 オオフトイ(左)とフトイ(右)の雌性期の花序
オオフトイの花序は赤紫色であるのに対し、フトイは黄緑色に見えます。

フトイ類の小穂
Fig.5 オオフトイ(左)とフトイ(右)の雄性期の小穂
開花後半の雄性期に入ると色の差はややわかりにくくなります。

結実期の鱗片
Fig.6 オオフトイ(左)とフトイ(右)の結実期の鱗片
結実期の乾いた鱗片ですが、古い標本であれば退色して色の差はわかりにくくなるでしょう。

葯の長さ
カンガレイの仲間では葯の長さに有意差が見られ、その長さが同定のキーとなる例がありますが、フトイの仲間もカンガレイの仲間も同じフトイ属に分類されています。そこで、フトイとオオフトイとしたものの間に有意差がないか各集団について50個の葯の長さを計測しました。
結果、フトイは長さ1.5~2.3mmの間に収まり、出現頻度10%以上のものは1.6~2.1mmとなりました。
オオフトイでは長さ2.1~3.0mmの間に収まり、出現頻度10%以上のものは2.1~2.8mmとなりました。
両種の間には葯の長さに有意差があると見てもよいでしょう。
フトイ類の葯
Fig.7 オオフトイ(左)とフトイ(右)の葯

痩果
嘴部を含む痩果の長さはフトイが1.8~2.4mm、オオフトイが2.7~3.2mmとなり、ここでも有意差が見られます。痩果の形状は微妙ですが、オオフトイのほうがやや長い倒卵形といっていい形状をしています。
刺針状花被片については数、痩果に対する長さ、共に有意差は見られませんでした。
フトイ類の痩果
Fig.8 オオフトイ(左)とフトイ(右)の痩果
オオフトイの痩果のほうが明らかに大きく、長倒卵形気味になっています。

茎の高さと幅
茎の幅は基部から10cm上を計測しました。
フトイの最大高は245cm、最大幅25mm、オオフトイの最大高は280cm、最大幅28mmでしたが、場所によってばらつきが激しく、茎の高さや幅には有意差らしきものはあまりありませんでした。草体の大きさや茎の太さで両種を区別することはできないようです。根茎の太さについても、両種とも生育状態のよいものは幅2cmに達します。
両種ともに通年水の絶えない溜池で抽水状態で生育するものは大型となる傾向がみられます。

とりあえずの「まとめ」
これまで見てきたようなことから、兵庫県内でこれまでフトイとされてきたものはフトイとオオフトイに分けることができるでしょう。特徴をまとめると以下のようになりますが、これはあくまで兵庫県の例なので、他の地域にそのままあてはまるかは検証が必要だと思われます。
フトイ・オオフトイ比較表
フトイとオオフトイは草体の大きさや太さではほとんど区別できません!

関連ページ 湿生~抽水植物・フトイ  湿生~抽水植物・オオフトイ


疑問点と今後の課題
「フトイに見られるいくつかのタイプ」
調査の過程でいくつかの疑問点も生じてきました。
自生地で生体を観察すると、フトイには花序全体が小型で直立するものと、花序全体が大型で茎がしなだれるタイプが見られます。痩果や葯の大きさなど生殖器官では有意差が見られませんが、今後、この2つのタイプが異なった分類群となるのか課題を残しています。
フトイには小穂が2~3個枝先に集まるキタフトイ(f. creber)や、小穂が枝先に単性するナミフトイ(f. luxurianus)、小穂が10~15mmと細長いナガボフトイ(f. australis)が品種として報告されていますが、兵庫県産の2タイプがこのうちのどれかに該当するのかもしれません。
直立するフトイ
Fig.9 直立タイプのフトイ (兵庫県三田市 2013.6/4)
花序は小さく直立するフトイ。画像は雌性期のものです。

茎のしなだれるフトイ
Fig.10 しなだれるタイプのフトイ (兵庫県篠山市 2013.7/1)
花序は大きく茎がしなだれるフトイ。画像は雄性期のものです。

「海浜性小型フトイとイヌフトイ」
塩性湿地には小型で根茎の細いタイプのフトイが生育しています。
今回は兵庫県の家島の塩性湿地のフトイと岡山県備前市の塩性湿地のフトイを調べました。
南西諸島の沖縄本島、石垣島、西表島や大東島には、海浜近くに生育するイヌフトイという小型種があります。
これについてはSM氏が、西表島の汽水域で採集されたイヌフトイらしきものを育成維持しておられ、いくつか花序部分を提供して頂いて調べてみました。
イヌフトイについては刺針状花被片が羽毛状となることが図鑑に記述されていましたが、それ以上の情報がなく実態がよく解りません。頂いたものを調べると刺針状花被片はフトイと比較しても「やや羽毛状」と言えるかどうか、その差は非常に微妙なものでした。
イヌフトイ(?)の痩果
Fig.11 西表島産イヌフトイ(?)の痩果
刺針状花被片がやや羽毛状かどうか、非常に微妙です。
それよりも刺針状花被片の長さが目立ちます。

西表島産、兵庫県産、岡山県産海浜性の小型フトイのデータはそれぞれ以下のとおりでした。
 西表島産・・・葯長1.5~2.1mm、痩果長2.0~2.3mm、鱗片長3.4~4mm、茎高や幅、根茎の幅は不明
 兵庫県産・・・葯長1.6~2.3mm、痩果長2.0~2.3mm、鱗片長2.5~3.2mm、最長茎148cm、最大茎幅8mm、
       最大根茎幅8mm
 岡山県産・・・葯長1.4~2.1mm、痩果長2.0~2.4mm、鱗片長3.2~3.6mm、最長茎99cm、最大茎幅7mm、
       最大根茎幅10mm

海浜性フトイ3種とフトイの痩果
Fig.12 海浜性小型フトイ3種とフトイの痩果
A:岡山県産 B:兵庫県産 C:西表島産イヌフトイ(?) D:フトイ

兵庫県の海浜性小型フトイ
Fig.13 兵庫県の海浜性小型フトイの群生 (兵庫県姫路市 2013.8/1)

岡山県の海浜性小型フトイ
Fig.14 岡山県の海浜性小型フトイ (岡山県備前市 2013.8/8)

兵庫県産海浜性小型フトイの全草標本
Fig.15 兵庫県の海浜性小型フトイの全草標本 (兵庫県姫路市 2013.8/1)
フトイほど茎は高く伸びず、茎の幅も狭い。

海浜性小型フトイの根茎
Fig.16 海浜性小型フトイの根茎 (兵庫県姫路市 2013.8/1)
フトイの根茎よりも明らかに細く、やや硬い。

これら小型のフトイは塩性湿地に適応した一時的な形質か、固定化された形質なのか、現時点ではデータが少なく、各地の観察例を増やす必要があるでしょう。
一度、南西諸島に生育するイヌフトイの自生地も見てくる必要がありそうです。

今回の調査ではSM氏、NO氏、TS氏、MM氏に自生地の情報提供、サンプル提供で大変お世話になりました。お礼申し上げます。

category: カヤツリグサ科フトイ属

thread: 博物学・自然・生き物 - janre: 学問・文化・芸術

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