京都府でハタベカンガレイの生育を確認
2013/03/28 Thu. 20:17 [edit]
以前からカンガレイの仲間には興味があり、web上でこの仲間についての情報を収集していたところ、京都の口丹波の植物や自然について紹介しておられるアタさんのブログ『アタの雑記』の「カンガレイ」の画像のものが、小穂が小さく、顕著な水中葉を形成しており、どうも普通のカンガレイではなくてハタベカンガレイではないかという印象を強く持ちました。ブログ管理者のアタさんに自生箇所をお訊ねして現地を調べたところ、やはりハタベカンガレイでした。環境省の2007年の資料によると、原記載に言及のあった集団は「絶滅」となっていますが、別の集団が山間の溜池にひっそりと生き残っていたわけです。結果的に、この溜池で150~200個体程度のハタベカンガレイの生育を確認することができました。
画像:冬期のハタベカンガレイ、半常緑越冬するハタベカンガレイ、水中の沈水形、
芽生したクローン、新茎を生じたハタベカンガレイ、自生地、冬期のカンガレイ、
夏期のハタベカンガレイ、気中形の芽生、夏期のカンガレイ、
カンガレイのクローン芽生など
* 画像は全てクリックすると拡大できます。

Fig.1 冬期の溜池に生育するハタベカンガレイ
カンガレイは冬期には水中や地上の茎(有花茎、桿)は全て枯れてしまい(Fig.11参照)、地中に越冬芽を形成して越冬します。一方、ハタベカンガレイは茎の水上に出ている部分は枯れますが、水中にある部分は枯れずに緑色を保ち、水中葉を持つ沈水形は水中で常緑越冬します。このため、冬期の溜池でハタベカンガレイに出くわすと、一目でそれとわかります。画像からもその様子が判るかと思います。溜池でハタベカンガレイを見つけるには、冬期に集中して探したほうが有利であることが解ります。国内では湧水河川や湿地内の水路などからの記録が多いですが、山間の腐植栄養質~貧栄養な溜池にひっそりと命脈を保っているかもしれません。

Fig.2 半常緑越冬するハタベカンガレイ
岸辺近くに生育している大型の個体ですが、茎の水没部分や倒伏しているものは緑色を保っています。気温が低下して溜池の水面が氷結しても、茎の水没部は枯れてしまうということがありません。溜池に生育するハタベカンガレイは半常緑越冬すると考えられます。

Fig.3 冬期ハタベカンガレイの水中画像
ハタベカンガレイの茎はカンガレイと比べて細くて柔らかく、簡単に折れ曲がったりたわんだりします。たわんだ茎は冬期でも枯れていません。数本の茎が小穂をつけているのが見えますが、これらは全て不稔で痩果はありませんでした。おそらく冬間近になって出た小穂でしょう。

Fig.4 群生する沈水形のハタベカンガレイ
この溜池では遠浅な部分が比較的多く広がっており、そのような水深の浅い場所では若い水中葉の個体がおびただしく生育しているのが見られました。水中葉ばかりの沈水形は常緑越冬するので、冬の溜池ではよく目立ちます。岸からすり鉢状にすぐに深くなるような溜池では、これほど多くの若い沈水形の個体を見ることはありません。

Fig.5 沈水形の水中画像
水中葉は幅約4mm、硬い紙質~やや革質、長いものでは80cm近くに達し、上部で次第に狭くなって鈍頭~やや鋭頭、全縁、一層の気質が並び、中肋はなく、葉脈は細長い格子状。基部の葉縁には幅1mm前後の葉耳があります。

Fig.6 深い場所に生育する成熟個体
水深が60cmを超えて深くなると、成熟個体もほとんど水没して、苞葉の基部から多数の水中葉を持ったクローン株を形成します。画像では各茎の先近くに細い水中葉が広がっているのが見られます。ハタベカンガレイの生育する溜池では冬期になると、このような光景が広がります。兵庫県内の数ヶ所の溜池で実測調査したところ、ハタベカンガレイの成熟個体は水深150cmまで生育できることがわかりました。

Fig.7 クローンを芽生した茎
こういった溜池の自生地では冬期に水際に打ち寄せられた、このような茎が見られます。このクローン株は泥に挿しておくと発根して容易に栽培することができます。水槽内でもしばらくは沈水形のまま生育しますが、育成環境がよいと、1年後には茎を生じてきます。

Fig.8 新茎を生じた個体
ハタベカンガレイはどうも季節に関係なく新茎を上げているように感じられます。これまで晩秋の11月になっても、またこのように早い時期でも新茎を上げているのを観察しています。これは、ハタベカンガレイの生育環境にも関係していると考えられます。ハタベカンガレイは国内では湧水河川や湿地内の水路で生育が確認されている例が多く、このような場所では湧水によって、水温が比較的一定していることが予想されます。一方、ハタベカンガレイが生育する溜池は決まって山際や谷の奥にあって護岸されていない場所で、湧水の影響によるものでしょうか、冬期でも水中の温度が4℃以下に下がることはありません。ハタベカンガレイは水温変化の少ない湧水環境と強く結びつくことによって、茎を枯死させて越冬芽を形成する必要がなかったのかもしれません。そのため、溜池で生育していても枯れることなく半常緑越冬していることが予想されます。また、顕著な水中葉を形成するのは、明らかに水流のある湧水河川に対して適応したためでしょう。

Fig.9 溜池での植生
植生といってもまだ春先なので、水中で確認できたものは移入されたコカナダモ、ミズユキノシタ、ハリイsp.くらいしか確認できませんでした。また、池の中央近くでは冬枯れしたミクリsp.の小さな塊りが見られました。

Fig.10 自生地の遠景
ハタベカンガレイは溜池に450㎡程度の群落を形成していました。画像左上の木陰の端の水面に見える冬枯れた草本はミクリsp.です。溜池畔はシカの食害がかなり進んでおり、ハイチゴザサ(京都府準絶滅危惧種)と少数のヒメアギスミレが見られる程度でした。しかし、ハタベカンガレイが生育する地域には希少な湿生・水生植物が生育していることが多く、兵庫県のハタベカンガレイの生育する溜池ではサイコクヒメコウホネ、ヒツジグサ、イトモ、フサモ、イヌタヌキモ、ヒメタヌキモ、ヤナギスブタなどの生育を確認しています。今回はこの溜池とは別の、湿地の付随した小さな溜池で、若いミズニラを確認することができました。初夏から夏にかけて再訪すると何か新たな発見があるかもしれません。また、近隣の溜池にもハタベカンガレイが生育していなか調べる必要があるでしょう。

Fig.11 冬期のカンガレイ
参考画像。冬期のカンガレイは地上部は全て枯死し、地中に越冬芽を形成して越冬します。

Fig.12 夏期のハタベカンガレイ
7月中旬の抽水状態の成熟個体ですが、すでにクローンを芽生しています。

Fig.13 気中で芽生するハタベカンガレイ
ハタベカンガレイは水中では水中葉の、気中では気中茎のクローンを苞葉基部から芽生します。

Fig.14 夏期のカンガレイ
カンガレイはハタベカンガレイよりも硬くしっかりとした茎を持ち、ふつう倒伏する茎はあまりありません。また、小穂も細長く、より大きな披針形をしています。

Fig.15 倒伏した茎からクローンを芽生したカンガレイ
カンガレイがハタベカンガレイのようにクローンを芽生するのはごく稀で、これまで4例しか観察していません。画像のように芽生箇所が水没しても水中葉となることはなく、水上に向かって気中茎を上げます。水面にジュンサイやヒツジグサなどの広葉な浮葉が遮っていても、それを突き破って水面上に現れていました。しかし、カンガレイの芽生についてはまだものが言えるほどのデータが取れていないので、さらに観察事例を増やす必要があります。
関連ページ
西宮の湿生・水生植物 ハタベカンガレイ
西宮の湿生・水生植物 カンガレイ
参考文献
前田哲弥・佐藤千芳・内野明徳 2004. ハタベカンガレイの変異とそれに近縁なヒメカンガレイおよびカンガレイとの形態比較. 植物研究雑誌 79(1):29~42.
松岡成久 2010. 兵庫県産カヤツリグサ科フトイ属カンガレイ類の形態的特徴と分布. 兵庫の植物 20:1~14. 兵庫県植物誌研究会.
画像:冬期のハタベカンガレイ、半常緑越冬するハタベカンガレイ、水中の沈水形、
芽生したクローン、新茎を生じたハタベカンガレイ、自生地、冬期のカンガレイ、
夏期のハタベカンガレイ、気中形の芽生、夏期のカンガレイ、
カンガレイのクローン芽生など
* 画像は全てクリックすると拡大できます。

Fig.1 冬期の溜池に生育するハタベカンガレイ
カンガレイは冬期には水中や地上の茎(有花茎、桿)は全て枯れてしまい(Fig.11参照)、地中に越冬芽を形成して越冬します。一方、ハタベカンガレイは茎の水上に出ている部分は枯れますが、水中にある部分は枯れずに緑色を保ち、水中葉を持つ沈水形は水中で常緑越冬します。このため、冬期の溜池でハタベカンガレイに出くわすと、一目でそれとわかります。画像からもその様子が判るかと思います。溜池でハタベカンガレイを見つけるには、冬期に集中して探したほうが有利であることが解ります。国内では湧水河川や湿地内の水路などからの記録が多いですが、山間の腐植栄養質~貧栄養な溜池にひっそりと命脈を保っているかもしれません。

Fig.2 半常緑越冬するハタベカンガレイ
岸辺近くに生育している大型の個体ですが、茎の水没部分や倒伏しているものは緑色を保っています。気温が低下して溜池の水面が氷結しても、茎の水没部は枯れてしまうということがありません。溜池に生育するハタベカンガレイは半常緑越冬すると考えられます。

Fig.3 冬期ハタベカンガレイの水中画像
ハタベカンガレイの茎はカンガレイと比べて細くて柔らかく、簡単に折れ曲がったりたわんだりします。たわんだ茎は冬期でも枯れていません。数本の茎が小穂をつけているのが見えますが、これらは全て不稔で痩果はありませんでした。おそらく冬間近になって出た小穂でしょう。

Fig.4 群生する沈水形のハタベカンガレイ
この溜池では遠浅な部分が比較的多く広がっており、そのような水深の浅い場所では若い水中葉の個体がおびただしく生育しているのが見られました。水中葉ばかりの沈水形は常緑越冬するので、冬の溜池ではよく目立ちます。岸からすり鉢状にすぐに深くなるような溜池では、これほど多くの若い沈水形の個体を見ることはありません。

Fig.5 沈水形の水中画像
水中葉は幅約4mm、硬い紙質~やや革質、長いものでは80cm近くに達し、上部で次第に狭くなって鈍頭~やや鋭頭、全縁、一層の気質が並び、中肋はなく、葉脈は細長い格子状。基部の葉縁には幅1mm前後の葉耳があります。

Fig.6 深い場所に生育する成熟個体
水深が60cmを超えて深くなると、成熟個体もほとんど水没して、苞葉の基部から多数の水中葉を持ったクローン株を形成します。画像では各茎の先近くに細い水中葉が広がっているのが見られます。ハタベカンガレイの生育する溜池では冬期になると、このような光景が広がります。兵庫県内の数ヶ所の溜池で実測調査したところ、ハタベカンガレイの成熟個体は水深150cmまで生育できることがわかりました。

Fig.7 クローンを芽生した茎
こういった溜池の自生地では冬期に水際に打ち寄せられた、このような茎が見られます。このクローン株は泥に挿しておくと発根して容易に栽培することができます。水槽内でもしばらくは沈水形のまま生育しますが、育成環境がよいと、1年後には茎を生じてきます。

Fig.8 新茎を生じた個体
ハタベカンガレイはどうも季節に関係なく新茎を上げているように感じられます。これまで晩秋の11月になっても、またこのように早い時期でも新茎を上げているのを観察しています。これは、ハタベカンガレイの生育環境にも関係していると考えられます。ハタベカンガレイは国内では湧水河川や湿地内の水路で生育が確認されている例が多く、このような場所では湧水によって、水温が比較的一定していることが予想されます。一方、ハタベカンガレイが生育する溜池は決まって山際や谷の奥にあって護岸されていない場所で、湧水の影響によるものでしょうか、冬期でも水中の温度が4℃以下に下がることはありません。ハタベカンガレイは水温変化の少ない湧水環境と強く結びつくことによって、茎を枯死させて越冬芽を形成する必要がなかったのかもしれません。そのため、溜池で生育していても枯れることなく半常緑越冬していることが予想されます。また、顕著な水中葉を形成するのは、明らかに水流のある湧水河川に対して適応したためでしょう。

Fig.9 溜池での植生
植生といってもまだ春先なので、水中で確認できたものは移入されたコカナダモ、ミズユキノシタ、ハリイsp.くらいしか確認できませんでした。また、池の中央近くでは冬枯れしたミクリsp.の小さな塊りが見られました。

Fig.10 自生地の遠景
ハタベカンガレイは溜池に450㎡程度の群落を形成していました。画像左上の木陰の端の水面に見える冬枯れた草本はミクリsp.です。溜池畔はシカの食害がかなり進んでおり、ハイチゴザサ(京都府準絶滅危惧種)と少数のヒメアギスミレが見られる程度でした。しかし、ハタベカンガレイが生育する地域には希少な湿生・水生植物が生育していることが多く、兵庫県のハタベカンガレイの生育する溜池ではサイコクヒメコウホネ、ヒツジグサ、イトモ、フサモ、イヌタヌキモ、ヒメタヌキモ、ヤナギスブタなどの生育を確認しています。今回はこの溜池とは別の、湿地の付随した小さな溜池で、若いミズニラを確認することができました。初夏から夏にかけて再訪すると何か新たな発見があるかもしれません。また、近隣の溜池にもハタベカンガレイが生育していなか調べる必要があるでしょう。

Fig.11 冬期のカンガレイ
参考画像。冬期のカンガレイは地上部は全て枯死し、地中に越冬芽を形成して越冬します。

Fig.12 夏期のハタベカンガレイ
7月中旬の抽水状態の成熟個体ですが、すでにクローンを芽生しています。

Fig.13 気中で芽生するハタベカンガレイ
ハタベカンガレイは水中では水中葉の、気中では気中茎のクローンを苞葉基部から芽生します。

Fig.14 夏期のカンガレイ
カンガレイはハタベカンガレイよりも硬くしっかりとした茎を持ち、ふつう倒伏する茎はあまりありません。また、小穂も細長く、より大きな披針形をしています。

Fig.15 倒伏した茎からクローンを芽生したカンガレイ
カンガレイがハタベカンガレイのようにクローンを芽生するのはごく稀で、これまで4例しか観察していません。画像のように芽生箇所が水没しても水中葉となることはなく、水上に向かって気中茎を上げます。水面にジュンサイやヒツジグサなどの広葉な浮葉が遮っていても、それを突き破って水面上に現れていました。しかし、カンガレイの芽生についてはまだものが言えるほどのデータが取れていないので、さらに観察事例を増やす必要があります。
関連ページ
西宮の湿生・水生植物 ハタベカンガレイ
西宮の湿生・水生植物 カンガレイ
参考文献
前田哲弥・佐藤千芳・内野明徳 2004. ハタベカンガレイの変異とそれに近縁なヒメカンガレイおよびカンガレイとの形態比較. 植物研究雑誌 79(1):29~42.
松岡成久 2010. 兵庫県産カヤツリグサ科フトイ属カンガレイ類の形態的特徴と分布. 兵庫の植物 20:1~14. 兵庫県植物誌研究会.
スポンサーサイト
category: カヤツリグサ科フトイ属
春の花 前半
2013/03/24 Sun. 23:42 [edit]
スプリング・エフェメラルのお花見は毎年恒例の行事となっている方も多いかと思います。
「毎年見ているから、別に無理して見に行かなくてもいいか」と思っていても、自生地近くを通るとつい寄り道して覗きに行ってしまうものです。
このお花見は、また今年も調査が始まるという出発点、いわば出初式みたいな所もあります。
では、毎年のことなのであっさりと行きたいと思います。
画像:アマナ、キバナノアマナ、キンキエンゴサク、ケスハマソウ、ユキワリイチゲ、
アズマイチゲ、フッキソウ、アブラチャンとキブシ、コショウノキ、ネコノメソウ、
ツボゴケ、フキノトウ、ツチグリ、キジムシロ、ノジスミレ、ナガバノタチツボスミレ、
ウバユリの若葉、ミヤコアオイ、ミヤマカンスゲ、オオマルバコンロンソウ、
カワモヅクの仲間
*画像は全てクリックすると拡大できます。

Fig.1 アマナ
福知山市の棚田の土手に沢山咲いていました。
セツブンソウとセリバオウレンに続いて開花するのはこの種あたりでしょうか。
福知山は丹波地方よりも暖かいようで、開花も早かったです。
関連ページ 「関西の花 アマナ」

Fig.2 キバナノアマナ
福知山の帰りに立ち寄った、丹波市の落葉広葉樹林下で開花しはじめていました。
長い花茎が倒れこんで開花していることが多く、全体像がなかなか絵になりにくい花です。
関連ページ 「関西の花 キバナノアマナ」

Fig.3 キンキエンゴサク
キバナノアマナの近くで群生していました。
母種と変種関係にあるヤマエンゴサク、ヒメエンゴサク、キンキエンゴサクは区別がやっかいです。
このうちキンキエンゴサクは種子に突起があることで、比較的区別しやすいものです。
蒴果が熟すタイミングを捉えるのが難しく、全ての集団のものを確認した訳ではありませんが、丹波地方に生育しているこの手のものはほとんどがキンキエンゴサクであると思います。
関連ページ 「関西の花 ヤマエンゴサク(広義)」

Fig.4 ケスハマソウ
ケスハマソウはまだページを作っていなかったので、少し気合を入れて撮りに行きました。
時間的に早かったのかどうか、木陰のものは半開きでうつむいていましたが、よく陽にあたっているものは充分開花していました。

Fig.5 ケスハマソウの花
ここでは紅色のものと白色のものが見られ、半日陰のもののほうが紅色を帯びる傾向があるように思います。
ところで、群落周辺には撮影者による踏み跡ができているのですが、撮影の際に踏みつけに遭ったと見られるものがかなり見られました。
ここは十数年前は鉄条網が張られ、立ち入りの出来なかった場所です。
花を愛でるのはよいのですが、再び立ち入り禁止とならぬよう、各自が配慮したいものです。

Fig.6 ユキワリチゲ
ケスハマソウの撮影ついでに立ち寄ると、ちょうど見頃の状態でした。

Fig.7 ユキワリイチゲの花
上を向いて全開の花にも出会えました。
関連ページ 「関西の花 ユキワリイチゲ」

Fig.8 アズマイチゲ
アズマイチゲは太陽が山の陰に隠れてしまい、閉じかけの状態でした。
関連ページ 「関西の花 アズマイチゲ」

Fig.9 フッキソウ
フッキソウは花序最下部にある雌花(といっても花柱だけ)が開花していました。
花序の大部分を占める雄蕊が開いてくるのはこれから。

Fig.10 アブラチャンとキブシ
フッキソウ群落の上ではアブラチャンが開花中でした。
キブシはまだこれから。

Fig.11 コショウノキ
ケスハマソウのある山を歩いているときに雑木林の中で1本だけ出会いました。
花粉が見られたので雄花でしょうか。相変わらず良い香りがしていました。

Fig.12 ネコノメソウ
湧水池の縁で開花していました。
この春は山麓部を中心に調査することになりそうなので、他のネコノメソウ類に会えるかどうか微妙。
関連ページ 「湿生植物 ネコノメソウ」

Fig.13 ツボゴケ
湧水池の縁ではツボゴケがみずみずしい茎を立ち上げていました。
サクは出さないんだろうか?

Fig.14 フキノトウ
雄花・雌花がちょうどいい具合に並んでいたので撮影。
左が雄花、右は雌花。雌花は赤みを帯びるものも見ます。

Fig.15 ツチグリ
圃場整備されたような水田の土手に生き残って、かなりの個体数になっています。
長白毛が密生するため、複葉の軸や花茎が白く見え、葉を裏返すまでもありません。
強度な草刈りに遭うためか、花茎は横向きに出ていました。
関連ページ 「関西の花 ツチグリ」

Fig.16 キジムシロ
ツチグリのすぐそばで開花していたキジムシロ。
この時期、キジムシロも結構毛深いのですが、葉軸や花茎の地色は見えています。
あとミツバツチグリがあれば兵庫の里山キジムシロ属3兄弟コンプリートでしたが、近くでは見かけませんでした。
関連ページ 「関西の花 キジムシロ」

Fig.17 ノジスミレ
春の畦の常連です。
関連ページ 「関西の花 ノジスミレ」

Fig.18 ナガバノタチツボスミレ
林縁や雑木林の常連。しばらくは毎回顔を合わせることに。
関連ページ 「関西の花 ナガバノタチツボスミレ」

Fig.19 ウバユリの若葉
ウバユリはこの頃の姿が一番いいような気がする。ウバユリには申し訳ないが・・・

Fig.20 ミヤコアオイ
雑木林のミヤコアオイが開花するのも丁度今ごろ。
株元の落ち葉をそっと掻き分けると、花を見ることができます。
関連ページ 「関西の花 ミヤコアオイ」

Fig.21 ミヤマカンスゲ
林縁の農道脇の日当たりよい場所では、ミヤマカンスゲも開花していました。
庭のアオスゲも開花中だし、スゲのシーズンも間もなく到来です。
関連ページ 「関西の花 ミヤマカンスゲ」

Fig.22 オオマルバコンロンソウ
氷上低地の落葉広葉樹林ではオオマルバコンロンソウも開花。
今年はちょっと早いか? 少し焦る・・・
関連ページ 「関西の花 オオマルバコンロンソウ」

Fig.23 カワモヅクの仲間
福地山市の田園地帯を流れるメダカの多い用水路内に生育していました。
見かける機会の減った淡水藻類で、オリーブ色のものと濃赤紫色のものが見られました。
高精度の顕微鏡があれば種類も特定できますが、うちのでは到底わからないのでサンプルは採りませんでした。
同じ水路内にはヤナギモも生育していました。
「毎年見ているから、別に無理して見に行かなくてもいいか」と思っていても、自生地近くを通るとつい寄り道して覗きに行ってしまうものです。
このお花見は、また今年も調査が始まるという出発点、いわば出初式みたいな所もあります。
では、毎年のことなのであっさりと行きたいと思います。
画像:アマナ、キバナノアマナ、キンキエンゴサク、ケスハマソウ、ユキワリイチゲ、
アズマイチゲ、フッキソウ、アブラチャンとキブシ、コショウノキ、ネコノメソウ、
ツボゴケ、フキノトウ、ツチグリ、キジムシロ、ノジスミレ、ナガバノタチツボスミレ、
ウバユリの若葉、ミヤコアオイ、ミヤマカンスゲ、オオマルバコンロンソウ、
カワモヅクの仲間
*画像は全てクリックすると拡大できます。

Fig.1 アマナ
福知山市の棚田の土手に沢山咲いていました。
セツブンソウとセリバオウレンに続いて開花するのはこの種あたりでしょうか。
福知山は丹波地方よりも暖かいようで、開花も早かったです。
関連ページ 「関西の花 アマナ」

Fig.2 キバナノアマナ
福知山の帰りに立ち寄った、丹波市の落葉広葉樹林下で開花しはじめていました。
長い花茎が倒れこんで開花していることが多く、全体像がなかなか絵になりにくい花です。
関連ページ 「関西の花 キバナノアマナ」

Fig.3 キンキエンゴサク
キバナノアマナの近くで群生していました。
母種と変種関係にあるヤマエンゴサク、ヒメエンゴサク、キンキエンゴサクは区別がやっかいです。
このうちキンキエンゴサクは種子に突起があることで、比較的区別しやすいものです。
蒴果が熟すタイミングを捉えるのが難しく、全ての集団のものを確認した訳ではありませんが、丹波地方に生育しているこの手のものはほとんどがキンキエンゴサクであると思います。
関連ページ 「関西の花 ヤマエンゴサク(広義)」

Fig.4 ケスハマソウ
ケスハマソウはまだページを作っていなかったので、少し気合を入れて撮りに行きました。
時間的に早かったのかどうか、木陰のものは半開きでうつむいていましたが、よく陽にあたっているものは充分開花していました。

Fig.5 ケスハマソウの花
ここでは紅色のものと白色のものが見られ、半日陰のもののほうが紅色を帯びる傾向があるように思います。
ところで、群落周辺には撮影者による踏み跡ができているのですが、撮影の際に踏みつけに遭ったと見られるものがかなり見られました。
ここは十数年前は鉄条網が張られ、立ち入りの出来なかった場所です。
花を愛でるのはよいのですが、再び立ち入り禁止とならぬよう、各自が配慮したいものです。

Fig.6 ユキワリチゲ
ケスハマソウの撮影ついでに立ち寄ると、ちょうど見頃の状態でした。

Fig.7 ユキワリイチゲの花
上を向いて全開の花にも出会えました。
関連ページ 「関西の花 ユキワリイチゲ」

Fig.8 アズマイチゲ
アズマイチゲは太陽が山の陰に隠れてしまい、閉じかけの状態でした。
関連ページ 「関西の花 アズマイチゲ」

Fig.9 フッキソウ
フッキソウは花序最下部にある雌花(といっても花柱だけ)が開花していました。
花序の大部分を占める雄蕊が開いてくるのはこれから。

Fig.10 アブラチャンとキブシ
フッキソウ群落の上ではアブラチャンが開花中でした。
キブシはまだこれから。

Fig.11 コショウノキ
ケスハマソウのある山を歩いているときに雑木林の中で1本だけ出会いました。
花粉が見られたので雄花でしょうか。相変わらず良い香りがしていました。

Fig.12 ネコノメソウ
湧水池の縁で開花していました。
この春は山麓部を中心に調査することになりそうなので、他のネコノメソウ類に会えるかどうか微妙。
関連ページ 「湿生植物 ネコノメソウ」

Fig.13 ツボゴケ
湧水池の縁ではツボゴケがみずみずしい茎を立ち上げていました。
サクは出さないんだろうか?

Fig.14 フキノトウ
雄花・雌花がちょうどいい具合に並んでいたので撮影。
左が雄花、右は雌花。雌花は赤みを帯びるものも見ます。

Fig.15 ツチグリ
圃場整備されたような水田の土手に生き残って、かなりの個体数になっています。
長白毛が密生するため、複葉の軸や花茎が白く見え、葉を裏返すまでもありません。
強度な草刈りに遭うためか、花茎は横向きに出ていました。
関連ページ 「関西の花 ツチグリ」

Fig.16 キジムシロ
ツチグリのすぐそばで開花していたキジムシロ。
この時期、キジムシロも結構毛深いのですが、葉軸や花茎の地色は見えています。
あとミツバツチグリがあれば兵庫の里山キジムシロ属3兄弟コンプリートでしたが、近くでは見かけませんでした。
関連ページ 「関西の花 キジムシロ」

Fig.17 ノジスミレ
春の畦の常連です。
関連ページ 「関西の花 ノジスミレ」

Fig.18 ナガバノタチツボスミレ
林縁や雑木林の常連。しばらくは毎回顔を合わせることに。
関連ページ 「関西の花 ナガバノタチツボスミレ」

Fig.19 ウバユリの若葉
ウバユリはこの頃の姿が一番いいような気がする。ウバユリには申し訳ないが・・・

Fig.20 ミヤコアオイ
雑木林のミヤコアオイが開花するのも丁度今ごろ。
株元の落ち葉をそっと掻き分けると、花を見ることができます。
関連ページ 「関西の花 ミヤコアオイ」

Fig.21 ミヤマカンスゲ
林縁の農道脇の日当たりよい場所では、ミヤマカンスゲも開花していました。
庭のアオスゲも開花中だし、スゲのシーズンも間もなく到来です。
関連ページ 「関西の花 ミヤマカンスゲ」

Fig.22 オオマルバコンロンソウ
氷上低地の落葉広葉樹林ではオオマルバコンロンソウも開花。
今年はちょっと早いか? 少し焦る・・・
関連ページ 「関西の花 オオマルバコンロンソウ」

Fig.23 カワモヅクの仲間
福地山市の田園地帯を流れるメダカの多い用水路内に生育していました。
見かける機会の減った淡水藻類で、オリーブ色のものと濃赤紫色のものが見られました。
高精度の顕微鏡があれば種類も特定できますが、うちのでは到底わからないのでサンプルは採りませんでした。
同じ水路内にはヤナギモも生育していました。
category: 春植物
thread: 博物学・自然・生き物 - janre: 学問・文化・芸術
冬のハナワラビの迷宮
2013/03/17 Sun. 22:52 [edit]
昨年末から今年の早春にかけてハナワラビの仲間を集中的に探してまわりました。
兵庫県で冬期に胞子葉を出すものとしてはフユノハナワラビ、アカハナワラビ、オオハナワラビ、モトマチハナワラビが生育していますが、2種以上が混生すると雑種を生じていることが多く、それぞれの種の線引きが容易ではありません。3種以上になると、どれが親種であるのか推測するのが難しく、まるで迷宮に迷い込んだ感じになってしまいます。
課題は山積していますが、とりあえずまとめておこうと思います。
画像:フユノハナワラビ、アカハナワラビ、アカフユノハナワラビ?、オオハナワラビ、
アイフユノハナワラビ、モトマチハナワラビ、
モトマチハナワラビとオオハナワラビの幼個体、
モトマチハナワラビとオオハナワラビ交雑個体、
モトマチハナワラビとフユノハナワラビ交雑個体?、
フユノハナワラビの変異個体?、ほか
アカネハナワラビの画像を追加しました。(2013.5/5)

Fig.1 フユノハナワラビ
日当たりよい草地-農地の畦、溜池土堤、草刈りされた土手、庭の草地などでよく見かけます。開けた場所に生育しているので眼につきやすく、自宅の庭にも生えています。

Fig.2 フユノハナワラビの葉
小羽片は鈍頭であることが多く、深裂します。裂片も丸味を帯び、辺縁の鋸歯は鈍頭。
葉面にはほとんど光沢はなく、脈が微妙に膨らんでいるものが多く見られます。
冬に紅変するものと、紅変しないものがあり、紅変するものはアカハナワラビや種間雑種のアカフユノハナワラビと混同しやすいものです。
紅変しても葉裏の色が変わりないものはフユノハナワラビ紅変型であることが多いようです。

Fig.3 胞子葉が倒れこんだフユノハナワラビ
フユノハナワラビの胞子葉は胞子を放出したあと枯れ始め、年を越すと葉柄ごと倒れこみます。
アカハナワラビも倒れこみますが、オオハナワラビやモトマチハナワラビは胞子放出後も胞子葉は枯れずに直立しています。

Fig.4 アカハナワラビ
明るい雑木林や社寺林の林縁など、長く土壌が撹乱されなかったような場所に生育するようで、兵庫県では自生地の少ない稀な種です。丹波地方では未記録だったので探したところ、胞子葉を持たない小さな個体が2株見つかったにすぎません。
画像は一昨年の12月にアカハナワラビの具体的特長をよく把握しないまま、自生地を案内していただいた時に撮影したもので、他の種も混じっているかもしれません。
葉が紅変していませんが、暖かい地域生えているからかもしれません。
また、越年しても紅変しない個体もあるようで、フユノハナワラビとの区別を難しくしています。

Fig.5 アカハナワラビの栄養葉
Fig.4と同じ場所のものです。小羽片はフユノハナワラビよりも尖り気味になります。
小羽軸は淡色となり、脈に沿ってカスリ状の模様が微妙に入るのですが、緑色のものは解りづらいです。

Fig.6 紅変したアカハナワラビの栄養葉
紅変すると、淡色の小羽軸や、脈のカスリ模様がはっきりしてきます。
葉の裏側も紅変します。

Fig.7 アカフユノハナワラビ?
フユノハナワラビとアカハナワラビが交雑したものをアカフユノハナワラビといいますが、画像の個体がそうであるかどうかは解りません。周囲にはフユノハナワラビしか見られず、カスリ模様は入っていますが、葉の形はフユノハナワラビと変わりがありません。この時はすぐ近くにコバノヒノキシダとトキワトラノオの雑種らしきものがあって、そちらに気を取られて裏面を確認しなかったのが悔やまれます。葉裏の確認は今冬の宿題です。

Fig.8 オオハナワラビ
この仲間では最も大きくなる種で、林縁から林床の肥沃でやや湿った場所を好むようです。
冬期にあまり乾燥しないような地域では、日なたに出てくることもあります。
小羽片が規則正しく切れ込む美しいハナワラビで、各地に普通に見られますが、見つけると嬉しくなるシダです。

Fig.9 オオハナワラビの小羽片
切れ込みは下に向かうほど深くなり、最下裂片の下側は心形状に湾曲します。
辺縁には尖った鋸歯が並びます。

Fig.10 オオハナワラビの葉柄
茎は地上近くで分枝します。左の直立気味なのは胞子葉の柄、右に斜上しているのは栄養葉の柄。
栄養葉の葉柄には細長い灰色の微毛が生え、葉軸上にも同様の毛が見られます。
フユノハナワラビやアカハナワラビの栄養葉の葉柄はほぼ無毛です。

Fig.11 紅変した葉をもったオオハナワラビ
日当たりよい場所に生育するものは、越年すると栄養葉が強く紅紫色を帯びることがあります。
生育しているのは乾燥した草地斜面で、葉縁が下側に巻いていました。
オオハナワラビの胞子葉は越年しても枯れることなく、晩春あたりまで直立しています。

Fig.12 群生するオオハナワラビ
植林地の平坦部にいくつかの塊りとなって群生していました。
周辺にはシダ類が多いのですが、オオハナワラビの群生箇所には他のシダや草本の被植がほとんどありません。
腐生菌類が生産した物質による影響でしょうか。
近くにはフユノハナワラビ、アカハナワラビ、モトマチハナワラビも生育し、雑種らしきものも多数見られました。画像中にもよく見ると怪しげな栄養葉を持ったものが見られます。

Fig.13 アイフユノハナワラビ
フユノハナワラビとオオハナワラビの雑種で、両種の混生地によく現れるもので、丹波地方ではよく見かけるものです。向陽~半日陰の草地に生育しているもので、胞子葉のソーラスが付く部分は枯れていますが、葉柄は直立したままです。葉には両種の特徴が見られ、紅変して葉縁が下に巻いています。
栄養葉の葉柄を見ると、まばらに微毛が見られました。

Fig.14 アカネハナワラビ (2013.5/5追加)
アカハナワラビとオオハナワラビの推定種間雑種で、両種の混生地に稀に見られるものです。栄養葉の全体の形はオオハナワラビに非常に近いが、葉面にはカスリ模様がある上、春期になって紅色から退色し、青白い印象を与えます。カスリ模様や退色後に青白くなるのは、アカハナワラビの特徴であり、両種の種間雑種であると考えられます。この個体の胞子葉はすでに倒れこんでほとんど枯れていました。一方、周囲に生育しているオオハナワラビはまだ胞子葉が直立している状態でした。周辺を探してみましたが、樹林下の薄暗い場所でアカハナワラビの生育は確認できませんでした。

Fig.15 アカネハナワラビの羽片拡大 (2013.5/5追加)
鋸歯は内側に湾曲し、裂片の縁には重鋸歯状となる部分が現れています。

Fig.16 オオハナワラビの栄養葉の変異
栄養葉の下方の裂片が細くなって、ソーラスを形成し、直立しています。
大型の個体に稀に見られます。

Fig.17 モトマチハナワラビ
伊豆大島の元町で、最近になって認識された種で、まだ原記載されていません。
南方系で種で、本来は照葉樹林下に生育するものですが、兵庫県では社寺周辺の植林地などで遺存的に生育しています。葉面に光沢があり、羽片や裂片の先は尖り、裂片の幅は多種に比べて狭いものです。
胞子葉は胞子放出後も枯れることなく、直立して越年します。

Fig.18 モトマチハナワラビの全草標本
この仲間は年に1枚の葉を生じますが、シカやイノシシなどの食害や撹乱を受けない場所では、モトマチハナワラビは地上に当年と昨年の2枚の栄養葉が見られ、さらに枯葉の下には痛んだ一昨年の栄養葉がよく見られます。このことから、モトマチハナワラビは常緑性であると考えられます。画像の標本では、昨年の栄養葉の基部付近に、枯れた昨年の胞子葉が干からびて残っているのが見えています。

Fig.19 モトマチハナワラビの羽片
葉面には光沢があり、小羽片は細かく中~深裂し、幅の狭い裂片の縁には尖った鋸歯が並びます。

Fig.20 モトマチハナワラビ(左)とオオハナワラビ(右)

Fig.21 モトマチハナワラビ(左)とオオハナワラビ(右)の葉
たまたま両種が接近して生えていました。両種の栄養葉の違いがよく解るかと思います。

Fig.22 モトマチハナワラビの葉柄
左から順に、昨年の栄養葉の葉柄、当年の栄養葉の葉柄、胞子葉の葉柄。
当年の栄養葉の葉柄にはオオハナワラビと同様の微毛が見られます。

Fig.23 モトマチハナワラビの自生状況
これまで丹波地方に十数か所の自生地を見つけましたが、遺存的に分布するためか群生地には出会っていません。多くは湿った植林地の林床で点在しています。オオハナワラビとともに生育している場所がほとんどで、画像中の右端にもオオハナワラビが見られます。

Fig.24 日なたで見られた栄養葉
モトマチハナワラビはあまり向陽地には出てきませんが、稀に日なたに生育しているものは、越年すると黄褐色を帯びているものがほとんどで、オオハナワラビが赤紫色を帯びるのとは大きな違いになります。

Fig.25 福知山で発見した個体
丹波市でもモトマチハナワラビが見つかったことから、モトマチハナワラビは氷上低地を通って福知山方面へと北上して分布域を広げているに違いないと思い探してみると、やはり見つけることができました。社寺林縁の向陽な草地で、黄変した強い光沢を持った栄養葉を広げていました。

Fig.26 モトマチハナワラビ(左)とオオハナワラビ(右)の幼個体
被植の少ない植林地の林床では、幼個体があってもよく目立ち、成長過程がよく観察できます。
モトマチハナワラビにはすでに小さな羽片に切れ込みが見えます。

Fig.27モトマチハナワラビとオオハナワラビの雑種と思われる個体
モトマチハナワラビとオオハナワラビとの中間的な特徴が見られ、胞子には不稔と思われるへこんだものが混じっています。(2015.1/2訂正)

Fig.28 モトマチハナワラビとオオハナワラビの混生地
小さなお堂の脇のシキミの木陰で残っているもので、午前中は向陽地となるような場所で混生しています。
しかし、ここに写っているものの大半が雑種であるかもしれません。向陽地での雑種の勉強には良い場所かもしれませんが、それにしても悩ましい個体ばかりです。さらに困ったことにはすぐ脇の草地にはフユノハナワラビもあり、そこにもモトマチハナワラビが進出していました。

Fig.29 栄養葉が赤褐色に染まった個体
Fig.27の脇にある刈り込まれた草地に生育しているものです。
モトマチハナワラビは向陽地では黄褐色を帯びるのを見てきましたが、ここでは赤褐色に染まっています。
葉面には光沢がありますが、裂片の幅はモトマチよりも広く感じられ、これもモトマチハナワラビとオオハナワラビの交雑個体ではないかと考えています。

Fig.30 モトマチハナワラビとフユノハナワラビの交雑個体?
植林地の暗い場所に生育している個体で、胞子葉は倒れこみ、栄養葉もしなだれて乱れています。
近くにはフユノハナワラビ、オオハナワラビ、モトマチハナワラビが生育していますが、胞子葉が倒れこむ形質にはフユノハナワラビの血が、裂片が狭く鋸歯が尖っている形質にはモトマチハナワラビの血が混じっているのではと感じさせます。
どのような胞子をつくるのか、今冬の課題です。

Fig.31 モトマチハナワラビとフユノハナワラビの交雑個体?
こちらは光条件がやや恵まれた社寺林の林床で見られたもので、やはり栄養葉に乱れが見られますが、フユノハナワラビとオオハナワラビの交雑の可能性も捨てきれません。

Fig.32 Fig.29の小羽片
小羽片の鋸歯には鋭頭のものと鈍頭のものが混ざっています。少し赤紫色を帯びているあたりは、片親がオオハナワラビの可能性を感じます。栄養葉の葉柄には微毛がまばらに見られました。この社寺林の林床には雑種と考えられるこのタイプだけが残っています。

Fig.33 フユノハナワラビの変異個体?
ナガボノワレモコウの生育する水田の畦に生育しているものです。
裂片の幅の狭いフユノハナワラビの変異個体かと考えていましたが、mst-kyさんのブログにも同様なものが見られ、胞子葉にも異常があることを知りました。
良く見ると画像のものも胞子葉(右側)にソーラスがほとんど付いていません。
フユノハナワラビに一定の割合で現れる変異や病変なのか、それとも何かとの雑種なのか、周辺を調べてみる必要がありそうです。
mst-kyさんのブログには、ハナワラビの仲間の胞子の顕微鏡画像もあり、雑種を含めてこの仲間を知りたい方には必須のブログでしょう。
「関西の花」関連ページ
関西の花・シダ フユノハナワラビ
関西の花・シダ オオハナワラビ
兵庫県で冬期に胞子葉を出すものとしてはフユノハナワラビ、アカハナワラビ、オオハナワラビ、モトマチハナワラビが生育していますが、2種以上が混生すると雑種を生じていることが多く、それぞれの種の線引きが容易ではありません。3種以上になると、どれが親種であるのか推測するのが難しく、まるで迷宮に迷い込んだ感じになってしまいます。
課題は山積していますが、とりあえずまとめておこうと思います。
画像:フユノハナワラビ、アカハナワラビ、アカフユノハナワラビ?、オオハナワラビ、
アイフユノハナワラビ、モトマチハナワラビ、
モトマチハナワラビとオオハナワラビの幼個体、
モトマチハナワラビとオオハナワラビ交雑個体、
モトマチハナワラビとフユノハナワラビ交雑個体?、
フユノハナワラビの変異個体?、ほか
アカネハナワラビの画像を追加しました。(2013.5/5)

Fig.1 フユノハナワラビ
日当たりよい草地-農地の畦、溜池土堤、草刈りされた土手、庭の草地などでよく見かけます。開けた場所に生育しているので眼につきやすく、自宅の庭にも生えています。

Fig.2 フユノハナワラビの葉
小羽片は鈍頭であることが多く、深裂します。裂片も丸味を帯び、辺縁の鋸歯は鈍頭。
葉面にはほとんど光沢はなく、脈が微妙に膨らんでいるものが多く見られます。
冬に紅変するものと、紅変しないものがあり、紅変するものはアカハナワラビや種間雑種のアカフユノハナワラビと混同しやすいものです。
紅変しても葉裏の色が変わりないものはフユノハナワラビ紅変型であることが多いようです。

Fig.3 胞子葉が倒れこんだフユノハナワラビ
フユノハナワラビの胞子葉は胞子を放出したあと枯れ始め、年を越すと葉柄ごと倒れこみます。
アカハナワラビも倒れこみますが、オオハナワラビやモトマチハナワラビは胞子放出後も胞子葉は枯れずに直立しています。

Fig.4 アカハナワラビ
明るい雑木林や社寺林の林縁など、長く土壌が撹乱されなかったような場所に生育するようで、兵庫県では自生地の少ない稀な種です。丹波地方では未記録だったので探したところ、胞子葉を持たない小さな個体が2株見つかったにすぎません。
画像は一昨年の12月にアカハナワラビの具体的特長をよく把握しないまま、自生地を案内していただいた時に撮影したもので、他の種も混じっているかもしれません。
葉が紅変していませんが、暖かい地域生えているからかもしれません。
また、越年しても紅変しない個体もあるようで、フユノハナワラビとの区別を難しくしています。

Fig.5 アカハナワラビの栄養葉
Fig.4と同じ場所のものです。小羽片はフユノハナワラビよりも尖り気味になります。
小羽軸は淡色となり、脈に沿ってカスリ状の模様が微妙に入るのですが、緑色のものは解りづらいです。

Fig.6 紅変したアカハナワラビの栄養葉
紅変すると、淡色の小羽軸や、脈のカスリ模様がはっきりしてきます。
葉の裏側も紅変します。

Fig.7 アカフユノハナワラビ?
フユノハナワラビとアカハナワラビが交雑したものをアカフユノハナワラビといいますが、画像の個体がそうであるかどうかは解りません。周囲にはフユノハナワラビしか見られず、カスリ模様は入っていますが、葉の形はフユノハナワラビと変わりがありません。この時はすぐ近くにコバノヒノキシダとトキワトラノオの雑種らしきものがあって、そちらに気を取られて裏面を確認しなかったのが悔やまれます。葉裏の確認は今冬の宿題です。

Fig.8 オオハナワラビ
この仲間では最も大きくなる種で、林縁から林床の肥沃でやや湿った場所を好むようです。
冬期にあまり乾燥しないような地域では、日なたに出てくることもあります。
小羽片が規則正しく切れ込む美しいハナワラビで、各地に普通に見られますが、見つけると嬉しくなるシダです。

Fig.9 オオハナワラビの小羽片
切れ込みは下に向かうほど深くなり、最下裂片の下側は心形状に湾曲します。
辺縁には尖った鋸歯が並びます。

Fig.10 オオハナワラビの葉柄
茎は地上近くで分枝します。左の直立気味なのは胞子葉の柄、右に斜上しているのは栄養葉の柄。
栄養葉の葉柄には細長い灰色の微毛が生え、葉軸上にも同様の毛が見られます。
フユノハナワラビやアカハナワラビの栄養葉の葉柄はほぼ無毛です。

Fig.11 紅変した葉をもったオオハナワラビ
日当たりよい場所に生育するものは、越年すると栄養葉が強く紅紫色を帯びることがあります。
生育しているのは乾燥した草地斜面で、葉縁が下側に巻いていました。
オオハナワラビの胞子葉は越年しても枯れることなく、晩春あたりまで直立しています。

Fig.12 群生するオオハナワラビ
植林地の平坦部にいくつかの塊りとなって群生していました。
周辺にはシダ類が多いのですが、オオハナワラビの群生箇所には他のシダや草本の被植がほとんどありません。
腐生菌類が生産した物質による影響でしょうか。
近くにはフユノハナワラビ、アカハナワラビ、モトマチハナワラビも生育し、雑種らしきものも多数見られました。画像中にもよく見ると怪しげな栄養葉を持ったものが見られます。

Fig.13 アイフユノハナワラビ
フユノハナワラビとオオハナワラビの雑種で、両種の混生地によく現れるもので、丹波地方ではよく見かけるものです。向陽~半日陰の草地に生育しているもので、胞子葉のソーラスが付く部分は枯れていますが、葉柄は直立したままです。葉には両種の特徴が見られ、紅変して葉縁が下に巻いています。
栄養葉の葉柄を見ると、まばらに微毛が見られました。

Fig.14 アカネハナワラビ (2013.5/5追加)
アカハナワラビとオオハナワラビの推定種間雑種で、両種の混生地に稀に見られるものです。栄養葉の全体の形はオオハナワラビに非常に近いが、葉面にはカスリ模様がある上、春期になって紅色から退色し、青白い印象を与えます。カスリ模様や退色後に青白くなるのは、アカハナワラビの特徴であり、両種の種間雑種であると考えられます。この個体の胞子葉はすでに倒れこんでほとんど枯れていました。一方、周囲に生育しているオオハナワラビはまだ胞子葉が直立している状態でした。周辺を探してみましたが、樹林下の薄暗い場所でアカハナワラビの生育は確認できませんでした。

Fig.15 アカネハナワラビの羽片拡大 (2013.5/5追加)
鋸歯は内側に湾曲し、裂片の縁には重鋸歯状となる部分が現れています。

Fig.16 オオハナワラビの栄養葉の変異
栄養葉の下方の裂片が細くなって、ソーラスを形成し、直立しています。
大型の個体に稀に見られます。

Fig.17 モトマチハナワラビ
伊豆大島の元町で、最近になって認識された種で、まだ原記載されていません。
南方系で種で、本来は照葉樹林下に生育するものですが、兵庫県では社寺周辺の植林地などで遺存的に生育しています。葉面に光沢があり、羽片や裂片の先は尖り、裂片の幅は多種に比べて狭いものです。
胞子葉は胞子放出後も枯れることなく、直立して越年します。

Fig.18 モトマチハナワラビの全草標本
この仲間は年に1枚の葉を生じますが、シカやイノシシなどの食害や撹乱を受けない場所では、モトマチハナワラビは地上に当年と昨年の2枚の栄養葉が見られ、さらに枯葉の下には痛んだ一昨年の栄養葉がよく見られます。このことから、モトマチハナワラビは常緑性であると考えられます。画像の標本では、昨年の栄養葉の基部付近に、枯れた昨年の胞子葉が干からびて残っているのが見えています。

Fig.19 モトマチハナワラビの羽片
葉面には光沢があり、小羽片は細かく中~深裂し、幅の狭い裂片の縁には尖った鋸歯が並びます。

Fig.20 モトマチハナワラビ(左)とオオハナワラビ(右)

Fig.21 モトマチハナワラビ(左)とオオハナワラビ(右)の葉
たまたま両種が接近して生えていました。両種の栄養葉の違いがよく解るかと思います。

Fig.22 モトマチハナワラビの葉柄
左から順に、昨年の栄養葉の葉柄、当年の栄養葉の葉柄、胞子葉の葉柄。
当年の栄養葉の葉柄にはオオハナワラビと同様の微毛が見られます。

Fig.23 モトマチハナワラビの自生状況
これまで丹波地方に十数か所の自生地を見つけましたが、遺存的に分布するためか群生地には出会っていません。多くは湿った植林地の林床で点在しています。オオハナワラビとともに生育している場所がほとんどで、画像中の右端にもオオハナワラビが見られます。

Fig.24 日なたで見られた栄養葉
モトマチハナワラビはあまり向陽地には出てきませんが、稀に日なたに生育しているものは、越年すると黄褐色を帯びているものがほとんどで、オオハナワラビが赤紫色を帯びるのとは大きな違いになります。

Fig.25 福知山で発見した個体
丹波市でもモトマチハナワラビが見つかったことから、モトマチハナワラビは氷上低地を通って福知山方面へと北上して分布域を広げているに違いないと思い探してみると、やはり見つけることができました。社寺林縁の向陽な草地で、黄変した強い光沢を持った栄養葉を広げていました。

Fig.26 モトマチハナワラビ(左)とオオハナワラビ(右)の幼個体
被植の少ない植林地の林床では、幼個体があってもよく目立ち、成長過程がよく観察できます。
モトマチハナワラビにはすでに小さな羽片に切れ込みが見えます。

Fig.27
モトマチハナワラビとオオハナワラビとの中間的な特徴が見られ、胞子には不稔と思われるへこんだものが混じっています。(2015.1/2訂正)

Fig.28 モトマチハナワラビとオオハナワラビの混生地
小さなお堂の脇のシキミの木陰で残っているもので、午前中は向陽地となるような場所で混生しています。
しかし、ここに写っているものの大半が雑種であるかもしれません。向陽地での雑種の勉強には良い場所かもしれませんが、それにしても悩ましい個体ばかりです。さらに困ったことにはすぐ脇の草地にはフユノハナワラビもあり、そこにもモトマチハナワラビが進出していました。

Fig.29 栄養葉が赤褐色に染まった個体
Fig.27の脇にある刈り込まれた草地に生育しているものです。
モトマチハナワラビは向陽地では黄褐色を帯びるのを見てきましたが、ここでは赤褐色に染まっています。
葉面には光沢がありますが、裂片の幅はモトマチよりも広く感じられ、これもモトマチハナワラビとオオハナワラビの交雑個体ではないかと考えています。

Fig.30 モトマチハナワラビとフユノハナワラビの交雑個体?
植林地の暗い場所に生育している個体で、胞子葉は倒れこみ、栄養葉もしなだれて乱れています。
近くにはフユノハナワラビ、オオハナワラビ、モトマチハナワラビが生育していますが、胞子葉が倒れこむ形質にはフユノハナワラビの血が、裂片が狭く鋸歯が尖っている形質にはモトマチハナワラビの血が混じっているのではと感じさせます。
どのような胞子をつくるのか、今冬の課題です。

Fig.31 モトマチハナワラビとフユノハナワラビの交雑個体?
こちらは光条件がやや恵まれた社寺林の林床で見られたもので、やはり栄養葉に乱れが見られますが、フユノハナワラビとオオハナワラビの交雑の可能性も捨てきれません。

Fig.32 Fig.29の小羽片
小羽片の鋸歯には鋭頭のものと鈍頭のものが混ざっています。少し赤紫色を帯びているあたりは、片親がオオハナワラビの可能性を感じます。栄養葉の葉柄には微毛がまばらに見られました。この社寺林の林床には雑種と考えられるこのタイプだけが残っています。

Fig.33 フユノハナワラビの変異個体?
ナガボノワレモコウの生育する水田の畦に生育しているものです。
裂片の幅の狭いフユノハナワラビの変異個体かと考えていましたが、mst-kyさんのブログにも同様なものが見られ、胞子葉にも異常があることを知りました。
良く見ると画像のものも胞子葉(右側)にソーラスがほとんど付いていません。
フユノハナワラビに一定の割合で現れる変異や病変なのか、それとも何かとの雑種なのか、周辺を調べてみる必要がありそうです。
mst-kyさんのブログには、ハナワラビの仲間の胞子の顕微鏡画像もあり、雑種を含めてこの仲間を知りたい方には必須のブログでしょう。
「関西の花」関連ページ
関西の花・シダ フユノハナワラビ
関西の花・シダ オオハナワラビ
category: シダ
thread: 博物学・自然・生き物 - janre: 学問・文化・芸術
春の到来
2013/03/03 Sun. 00:35 [edit]

Fig.1 セツブンソウ
丹波地方の里山では、2月の中旬あたりからセツブンソウがポツポツと咲いていましたが、もうこの時期になるとあちこちの自生地で一面に開花して最盛期を迎えます。
こうなると、春がやって来たなと実感することができます。
これからは春植物が次々に開花し、花を追う人達は忙しい季節になりますね。
これからはブログの更新も頻繁にしてゆきたいところです。
画像:セツブンソウ、セリバオウレン、フキ(フキノトウ)、
カスミサンショウウオ卵塊、ニホンアカガエル卵塊、ハンノキ群落
*画像は全てクリックすると拡大できます。

Fig.2 セツブンソウの近影
花の下にある葉は「総苞葉」、白色の花びらに見えるのは「萼片」、黄色く突き出ているのは「蜜弁」、「葯」が青紫色のものは「雄蕊」、中心に見える肉色の突き出しているものが「雌蕊」。
雌蕊は2~3個程度が結実することが多いようです。

Fig.3 紫色の色素を欠いたセツブンソウ
ここの集団では紫色の色素を欠いた個体が混じっています。
紫色の色素を欠いたものは、雄蕊の葯が青紫色とならず白色になります。

Fig.4 群生するセツブンソウ
晴れた日には多くのハチやアブも吸蜜のため飛び交いますが、残念ながら曇天で昆虫達は見かけませんでした。
関連ページ 「関西の花・セツブンソウ」

Fig.5 セリバオウレン
これまでシダを探してドカドカと歩き回っていた植林地、雑木林、クリ園など、到るところでセリバオウレンが開花し、足の踏み場がなくて困ってしまうこともしばしば。
関連ページ 「関西の花・セリバオウレン」

Fig.6 フキノトウ(フキの花茎)
自宅の斜面にも生えていますが日あたりが悪く、標高もずっと高い丹波の里山の日あたり良い土手のほうが早く花茎をあげています。
しかも土壌が肥沃なためか、よく太っていて美味しそう。

Fig.7 カスミサンショウウオの卵塊
フキノトウが顔を出した土手の近くの素掘りの排水路ではカスミサンショウウオの卵塊が見られました。

Fig.8 湧水池のカスミサンショウウオの卵塊
こちらのものはかなり前に産み付けられたようで、中の幼生がかなり育っています。

Fig.9 ニホンアカガエルの卵塊
棚田上部の湿田内ではニホンアカガエルの卵塊も。

Fig.10 アカガエルsp.の卵塊
こちらは産み付けられたばかりのアカガエルの仲間の卵塊。
種名はこの段階ではちょっとわかりません。
ところで、福島県二本松市の山林のカエル(種は未詳)から1kg当たり最高6700bq超のセシウム137が検出されたというニュースがありました。
東京新聞:福島の山林の生物、セシウム蓄積 カエル6700ベクレル
人類が利便性追求のために行ってきた営為の結果が、多くの生命を危機に陥れ、人類自体をも蝕んでいるように思います。
この潮流にある限り、人は意識しようがしまいが、人類を含めた生物=隣人に毒を盛り続けていくことになるのではないでしょうか。
この先の生きるべき指標などほとんどありませんが、既存の習慣や考え方を見直さなければならない時に来ているように思います。
死ぬまで他者を踏み台にするのか?あるいは、できるだけ他者と共存するのか?
最近、世の中で幅を利かせつつある耳障りの良い新自由主義(ネオリベラリズム)、しかも本来的な新自由主義を曲解した実質的には弱腰のポピュリズムは、ますます現在の危険な潮流を促進するものではないかと考えています。
原発再稼動、TPP参加推進といった流れはそれを象徴するものではないでしょうか。
これらの問題はもう他人まかせにはできないところまで差し迫っているものだと思います。
生きとし生けるものが、人類と共にこれからも円満に生きていくためには、時流に流されずに過去を見直し、大きな視野を持って考えねばならないことが沢山あるように思います。
本来はこのブログは自然を対象にした趣味的な範疇にとどめておきたいのですが、趣味と生活、あるいは私の生き方自体が自然全体と密接に連関しあっているという思いがあるので、度々このような発言があると思います。
私には避けて通ることのできない問題ですが、不快に感じる方はスルーして頂いて結構ですので、あしからず。

Fig.11 溜池畔のハンノキ群落
寒々として見えますが、枝先にぶら下がるように付いた雄花序はすでに開花していました。
林床ではネコノメソウやサワオグルマの新芽が動きはじめていました。
関連ページ 「湿生植物・ハンノキ」
category: 春植物
thread: 博物学・自然・生き物 - janre: 学問・文化・芸術
| h o m e |