水中のコケ
2013/02/24 Sun. 03:09 [edit]

Fig.1 湧水の小さな泉
丹波地方の溜池畔の湿地に、湧水の溜まる小さな泉があります。
セリ、チドメグサ、ミズユキノシタ、ムツオレグサ、ミソハギなどが生育し、底が蘚類に覆われていて、以前からどんなコケが生えているのか気になっていたので調べてみました。
画像:ヤノネゴケ、ヤナギゴケ(?)、コツボゴケ、オオカサゴケ
セリ、セリバオウレン、サワオグルマ、エグリトビケラの仲間、泉の水中動画
*画像は全てクリックすると拡大できます。

Fig.2 水中内の様子

Fig.3 優占種はセリ

Fig.4 水中の蘚類 その1
水中内で最も多く見られたコケです。

Fig.5 ヤノネゴケ
暗く性能の悪い手持ちの顕微鏡で四苦八苦しながら調べると、どうやらヤノネゴケのようでした。
水中でサクを上げているものは見られませんでした。

Fig.6 ヤノネゴケの枝の拡大
葉は三角状卵形で、先は次第に細くなって尖り、多くの葉は中肋が葉の2/3程度で終わる。
葉縁には細鋸歯がある。葉身細胞は細い六角状線形。

Fig.7 水中の蘚類 その2
ヤノネゴケと違って枝は直立せず、多くは水平方向に広がっています。
見た目の印象はヤナギゴケですが、葉身が長いです。

Fig.8 ヤナギゴケ(?)
葉身の長さは3~4mmほどあり、図鑑の記述(1.5~2mm)とは一致しませんが、変異の多い種ということで、一応ヤナギゴケとしました。

Fig.9 ヤナギゴケ(?)の枝の拡大
形態的に候補に挙がったものはウカミカマゴケがありました。
しかし、ウカミカマゴケは国内の中部や東北の強酸性の水中に生育するようで、そのようなコケがここにあるとは考えにくいため除外しました。

Fig10 ヤナギゴケのサク
こちらは水中内でも点々とサクを上げていました。
少し透明感のあるサクでした。

Fig.11 泉で見られたトビケラsp.
泉の中では比較的大きな巣を持つトビケラの仲間が多く見られました。
巣は枯葉や繊維を横方向に綴ったもので、長さ2~3cmほどでした。
エグリトビケラの仲間ではないかと思います。

Fig.12 湿地を覆うコツボゴケ
泉の周りの湿地では、コツボゴケが地表を広く覆っていました。

Fig.13 畦を覆うオオカサゴケ
近隣の溜池直下の湿田の畦はオオカサゴケが覆っていました。
関連ページ 「関西の花・コケ オオカサゴケ」

Fig.14 サワオグルマの新芽
湿田脇にある小湿地ではサワオグルマが新葉を上げていました。
関連ページ 「湿生植物 サワオグルマ」

Fig.15 開花したセリバオウレン
周辺の林床ではセリバオウレンが開花しています。
今年も春がやって来ました。
関連ページ 「関西の花 セリバオウレン」
以下は今回とり上げた湧水泉の水中動画です。
今回は字幕もBGMもありませんが、ご参考までに。
動画画面の左上タイトル、「溜池畔にある湧水泉の水中画像 」をクリックすると、新しいウインドでYouTubeが立ち上がり、より大きな画面(640×480px)で見ることができます。
タカサゴシダを発見
2013/02/15 Fri. 00:47 [edit]
近頃、ハナワラビの仲間を調べに丹波地方に行く機会が多いのですが、その調査行の最中に山林内でタカサゴシダを発見しました。シダの中では稀少種で、兵庫県内では3例目となります。今回はその報告です。
*画像は全てクリックすると拡大できます。

Fig.1 タカサゴシダ
葉身は3回羽状深裂、やや光沢のある黄緑~緑色、紙質。
最下羽片の下側第1羽片が極端に長く、葉先は急に細くなりやや尾状に伸びる。

Fig.2 葉柄基部の鱗片
披針形、全縁で黒色に近い黒褐色。

Fig.3 小羽片の鋸歯
鋸歯の先は芒状に尖っている。

Fig.4 裏面
羽軸裏には基部が袋状の鱗片がつく。ソーラスは中間生。

Fig.5 生育状況
個体数はそれほど多くは無いものの、一部では群生しているところも。
周辺にはベニシダ、サイゴクベニシダ、トウゴクシダ、オオベニシダ、ヤブソテツ、オクマワラビ、ナンゴクナライシダ、ホソバナライシダ、ヤマイタチシダ、ミヤマイタチシダ、イノデ、リョウメンシダ、コバノイシカグマ、キジノオシダ、イワガネソウ、ウラジロ、ヌリトラノオ、カミガモシダ、シシガシラ、そして丹波では稀なマルバベニシダなどが生育していました。
主要な目的のモトマチハナワラビやオオハナワラビの生育は確認できませんでしたが、別のサプライズがあったということです。
周辺の田畑の畦では胞子葉の倒れていないフユノハナワラビと見えるものが生育しており、詳細を観察すると栄養葉の葉柄に微毛がありオオハナワラビとの雑種が疑われるものがありましたが、報告はもう少し丹波地方のハナワラビの仲間を調べてからにしたいと思います。
関連ページ 「関西の花・シダ タカサゴシダ」
そして、妙なシダもありました。
おそらく雑種かと思いますが、何の雑種なのか解りません。
*オオベニシダとのご指摘をいただきました。
以下、Fig.6~10の画像は同一のシダとその細部です。

Fig.6不明シダ オオベニシダ
イタチシダの雰囲気もあれば、ベニシダ系のにおいもします。

Fig.7 全体

Fig.8 葉柄基部の鱗片
長卵形~披針形、全縁、栗褐色で周縁部は淡色。

Fig.9 最下羽片
下側第1羽片は第2羽片に比べてやや短い。

Fig.10 裏面
羽軸裏には扁平な鱗片がつき、小羽軸には袋状鱗片がまばらにつく。
ソーラスは中間生。
他に中部付近の小羽片は下先についていました。
関連ページ 「関西の花・シダ オオベニシダ」

Fig.11 同じ林内にあったミヤコアオイ
ギフチョウの食草ですね。
関連ページ 「関西の花 ミヤコアオイ」
*画像は全てクリックすると拡大できます。

Fig.1 タカサゴシダ
葉身は3回羽状深裂、やや光沢のある黄緑~緑色、紙質。
最下羽片の下側第1羽片が極端に長く、葉先は急に細くなりやや尾状に伸びる。

Fig.2 葉柄基部の鱗片
披針形、全縁で黒色に近い黒褐色。

Fig.3 小羽片の鋸歯
鋸歯の先は芒状に尖っている。

Fig.4 裏面
羽軸裏には基部が袋状の鱗片がつく。ソーラスは中間生。

Fig.5 生育状況
個体数はそれほど多くは無いものの、一部では群生しているところも。
周辺にはベニシダ、サイゴクベニシダ、トウゴクシダ、オオベニシダ、ヤブソテツ、オクマワラビ、ナンゴクナライシダ、ホソバナライシダ、ヤマイタチシダ、ミヤマイタチシダ、イノデ、リョウメンシダ、コバノイシカグマ、キジノオシダ、イワガネソウ、ウラジロ、ヌリトラノオ、カミガモシダ、シシガシラ、そして丹波では稀なマルバベニシダなどが生育していました。
主要な目的のモトマチハナワラビやオオハナワラビの生育は確認できませんでしたが、別のサプライズがあったということです。
周辺の田畑の畦では胞子葉の倒れていないフユノハナワラビと見えるものが生育しており、詳細を観察すると栄養葉の葉柄に微毛がありオオハナワラビとの雑種が疑われるものがありましたが、報告はもう少し丹波地方のハナワラビの仲間を調べてからにしたいと思います。
関連ページ 「関西の花・シダ タカサゴシダ」
そして、妙なシダもありました。
*オオベニシダとのご指摘をいただきました。
以下、Fig.6~10の画像は同一のシダとその細部です。

Fig.6

Fig.7 全体

Fig.8 葉柄基部の鱗片
長卵形~披針形、全縁、栗褐色で周縁部は淡色。

Fig.9 最下羽片
下側第1羽片は第2羽片に比べてやや短い。

Fig.10 裏面
羽軸裏には扁平な鱗片がつき、小羽軸には袋状鱗片がまばらにつく。
ソーラスは中間生。
他に中部付近の小羽片は下先についていました。
関連ページ 「関西の花・シダ オオベニシダ」

Fig.11 同じ林内にあったミヤコアオイ
ギフチョウの食草ですね。
関連ページ 「関西の花 ミヤコアオイ」
category: シダ
thread: 博物学・自然・生き物 - janre: 学問・文化・芸術
冬に見る地衣類
2013/02/13 Wed. 20:20 [edit]

Fig.1 石垣のヒメレンゲゴケ
コケ(蘚苔類)を観察していると、どうしても地衣類のほうにも眼がいってしまいます。
というわけで、今回はこの冬見かけた地衣類です。
地衣類は内部に藻類を取り込んで共生する菌糸体で、2つの異なったものが1つの植物体をつくり、それが非常に多種におよんでいるということは非常に興味深いところだと思います。
ヒメレンゲゴケ、ウメノキゴケ、イワカラタチゴケ、センシゴケ、ヘラガタカブトゴケ、ヤマトキゴケ、ウラミゴケモドキ、ウスツメゴケ、タニガワキゴケ、ヒメジョウゴゴケの仲間、ササクレマタゴケ、ヤグラゴケ、トゲシバリ、ハナゴケ、コアカミゴケ(コナアカミゴケ)、ウロコアカミゴケ、ヤリノホゴケ、コフキカラタチゴケ、アカサルオガセ、キウメノキゴケ、マツゲゴケ、カラクサゴケ、ニセキンブチゴケ
*画像は全てクリックすると拡大できます。

Fig.2 ウメノキゴケ
最もメジャーな地衣類。里山の石垣についていました。

Fig.3 イワカラタチゴケ
ウメノキゴケと同じ石垣に着生していました。
関連ページ 「関西の花・地衣類 イワカラタチゴケ」

Fig.4 屋根を覆う地衣類
こういう光景は都市近郊では見られなくなりましたね。

Fig.5 センシゴケ
神社の石段に付いていました。孔があるのが特徴。

Fig.6 ヘラガタカブトゴケ
寺院の石垣で。色鮮やかな地衣類です。

Fig.7 ヘラガタカブトゴケの一部拡大
葉縁や網目脈上にヘラ形の小裂片を付けるのが特徴。

Fig.8 ヤマトキゴケ
神社の灯篭の台にびっしりと付いていました。

Fig.9 ウラミゴケモドキ
ウチワゴケ(シダ)に覆われた巨岩側面についていました。
葉縁には先の尖った突起が並ぶのが特徴。

Fig.10 ウスツメゴケ
ヒメシノブゴケ(蘚類)に覆われた渓谷の岩上に付いていました。
関連ページ 「関西の花・地衣類 ウスツメゴケ」

Fig.11 タニガワキゴケ
増水すれば水没しそうな渓流の岩上に付着していました。

Fig.12 ヒメジョウゴゴケの仲間
この仲間は数種ありますが、試薬を使わないと区別できません。

Fig.13 ササクレマタゴケ
山際の石段の隅にかたまって生えていました。

Fig.14 不明種
ヒメジョウゴゴケに近い仲間だと思いますが、種は不明です。
造形的にとても面白いです。

Fig.15 ヤグラゴケ
あるいはヒメヤグラゴケかもしれません。まるで電波塔のようです。
貧栄養な尾根に生えていました。

Fig.16 ヤグラゴケの拡大

Fig.17 トゲシバリ
貧栄養な尾根に沢山生えています。

Fig.18 ハナゴケ
トゲシバリと同じような場所に生育しています。

Fig.19 コアカミゴケ(コナアカミゴケ)
朽ちかけた倒木上に生育していました。

Fig.20 ウロコアカミゴケ
渓流に架けられた古い木橋に付いていました。

Fig.21 立ち枯れたクリの樹に付着する地衣類
湿度の高い場所では樹木に沢山の地衣類が見られます。

Fig.22 ヤリノホゴケ
樹によく付いている地衣類です。
蘚類にも同じ名を持つものがあり、紛らわしい。

Fig.23 コフキカラタチゴケ
かなり腐った樹についていました。石垣にもよく付いています。
関連ページ 「関西の花・地衣類 コフキカラタチゴケ」

Fig.24 アカサルオガセ
沢沿いの樹幹によく付いています。
関連ページ 「関西の花・地衣類 アカサルオガセ」

Fig.25 サクラの古木についた地衣類
左のやや黄色を帯びたものはキウメノキゴケ、右はマツゲゴケ。
マツゲゴケの群れの中には、カヤラン(ランの仲間)が着生しています。

Fig.26 カラクサゴケ
ヤマザクラの枯れた枝の部分に付いていました。

Fig.27 ニセキンブチゴケ
立ち枯れたクリの樹に付いていました。
category: 地衣類
thread: 博物学・自然・生き物 - janre: 学問・文化・芸術
冬に見るコケ 2 水辺近くのコケ
2013/02/10 Sun. 23:18 [edit]

Fig.1 苔むす渓流畔
オオバタネツケバナ、ミズタビラコとともにツルチョウチンゴケが生育していた。
前回に引き続いてのコケ(蘚苔類)ですが、今回は水辺近くに見られたものを中心に掲載します。
山麓をとりまく疎水、湧水泉、谷戸奥の細流から山間渓流を遡り、多くのコケを観察しました。
ヒロハツボミゴケ、ホソバミズゼニゴケ、ナガサキホウオウゴケ、ホウオウゴケ、オオミズゴケ、オオカサゴケ、アオハイゴケ、ツボゴケ、コツボゴケ、フジウロコゴケ、アブラゴケ、スギバゴケ、トサホラゴケモドキ、マルフサゴケ、ツクシナギゴケモドキ、トヤマシノブゴケ、キヨスミイトゴケ、ツルチョウチンゴケ、ケチョウチンゴケ、サワクサリゴケ、オオバチョウチンゴケ、ナミガタタチゴケ、オオトラノオゴケ、オオクラマゴケモドキ、オオサナダゴケモドキ、ホソベリミズゴケ、クモノスゴケ、ヒロハヒノキゴケ、コムチゴケ、クロヤスデゴケ
*画像は全てクリックすると拡大できます。

Fig.2 疎水壁面に生育するコケ
湧水の流入もある疎水の水中壁面に、暗緑色の地味なコケが生育していました。
このようなコケは採集して持ち帰って調べないと種は解りません。

Fig.3 ヒロハツボミゴケ
Fig.2の正体です。腹葉は持たず、側葉は広卵形で茎に斜めにわずかに重なり合ってつき、
全縁、葉縁付近の細胞は中央のものよりも小さく、膜はやや厚い。

Fig.4 疎水中のホソバミズゼニゴケ
水中に露出したオオバヤシャブシの根に絡み付いて生育していました。
2叉分枝する葉状体は陸生するものよりも細長く伸びています。

Fig.5 陸生するホソバミズゼニゴケ
湧水の混じる用水路脇などで頻繁に見かけます。

Fig.6 疎水の水中内に生育するナガサキホウオウゴケ
中型のホウオウゴケの中で、このような場所に生育するのはナガサキホウオウゴケか
ミヤマホウオウゴケかホソホウオウゴケ。
・ナガサキホウオウゴケ
葉の長さ2~3mm。葉身は1層細胞で、中肋は明瞭。乾くと多少縮れる。
・ミヤマホウオウゴケ
葉の長さ1~2mm。葉身は2層細胞で、表面から細胞の境がはっきり見えない。乾いてもあまり縮れない。
・ホソホウオウゴケ
葉の長さ2~5mm。葉身中央は数細胞の厚みがあり、中肋は埋もれて不明瞭。乾いても縮れない。

Fig.7 ナガサキホウオウゴケの陸生態
本来はこのように水の滴る風化しつつある崖に群生することが多い。

Fig.8 ホウオウゴケ
ホウオウゴケ属の中では最も大型。渓流畔の多湿な土崖に群生していました。

Fig.9 冬のオオミズゴケ群落
谷戸奥の湿地化した休耕田で雪をかぶっていました。

Fig.10 オオカサゴケ
里と山の境界の土手にトキワイカリソウ、ショウジョウバカマ、イヌショウマ、トウゲシバ
などが生育していました。オオカサゴケはそのような場所で点在していることが多いようです。

Fig.11 湧水池に生育するアオハイゴケ
渓流畔の岩上などにもよく見られますが、水中では長く伸びます。

Fig.12 アオハイゴケ拡大
Fig.11と同じもので、水中でも古い茎からサクを出していました。

Fig.13 ツボゴケ
アオハイゴケとともに湧水池内に生育していました。
コツボゴケとほとんど見分けがつきません。
・ツボゴケ
コツボゴケより少し大きい。雌雄同株。葉身細胞は大きさや形がやや不揃い。
・コツボゴケ
ツボゴケより小さい。雌雄異株。葉新細胞の大きさや形はほぼ均一。

Fig.14 コツボゴケ
半日陰の林道脇の湿った地表をマット状に覆っていました。

Fig.15 湧水中で群生するフジウロコゴケ
西宮市内の数少ない湧水池に純群落を形成しています。

Fig.16 フジウロコゴケの拡大
葉の長さ1~2mm、全縁、丸味のある方形~卵形。膜は薄い。
腹葉があり、その幅は茎より狭く、先は2裂する。

Fig.17 細流に生育するフジウロコゴケ
フジウロコゴケは谷戸奥の湧水の混じる流れの緩い細流でよく見かけます。

Fig.18 谷戸奥細流脇の土崖に生育する蘚苔類
山と里の接点といえる谷戸奥の湿った土崖には、様々な蘚苔類が生育しています。
画像には広い葉を持ったアブラゴケ、枝分かれした緑のヒモのようなスギバゴケ、
重なり合った葉を並べるトサホラゴケモドキが見えます。

Fig.19 マルフサゴケ
細流脇の斜面にサナダゴケの仲間がマット状に群生していました。
サクを出していたので持ち帰って調べると、どうやらマルフサゴケのようです。

Fig.20 ツクシナギゴケモドキ(?)
細流脇の岩上に群生していました。
ツクシナギゴケとの差は微妙で、もしかするとツクシナギゴケのほうかもしれません。

Fig.21 トヤマシノブゴケ
シノブゴケの仲間では最もよく見かける種で、渓流畔の砂上に群生していました。

Fig.22 渓流の枯れ木についたキヨスミイトゴケ
空中湿度の高いこの場所では、キヨスミイトゴケもみずみずしく元気そうです。

Fig.23 ツルチョウチンゴケ
渓流の倒木上に生育していました。サクを上げつつあります。

Fig.24 雄器を上げたツルチョウチンゴケ
ツルチョウチンゴケは雌雄異株で、雄株は直立茎の先に雄器をつけます。

Fig.25 流水中のケチョウチンゴケ
湧水の混じる流れでは、時々ケチョウチンゴケが沈水状態で生育しています。

Fig.26 沈水状態のケチョウチンゴケの拡大
水中では直立茎を出さず、匍匐茎を長く伸ばしています。
葉面から無性芽を形成しているものが見られます(画像中央付近)。

Fig.27 ケチョウチンゴケの陸生
沢沿いなどで普通に見かけるのは、この姿のものです。

Fig.28 サワクサリゴケ
渓流畔の岩の水際を覆う、とても小さな葉を持つ苔類です。
苔体の上の藻類でも食べているのか、小さな巣を持ったツツトビケラの仲間が這いまわっていました。
サワクサリゴケは水中の石にも付着しているものが見られます。

Fig.29 サワクサリゴケの拡大
葉幅は1mm程度で卵形、全縁。腹葉をもち、茎の2~3倍幅で、横長のハート形。

Fig.30 オオバチョウチンゴケ
大型で美しい蘚類です。渓流の腐植土の被った岩上で群生していました。

Fig.31 ナミガタタチゴケ
オオバチョウチンゴケとともに生育していました。
ナミガタタチゴケは里山にも普通に見られる蘚類です。

Fig.32 オオトラノオゴケ
渓流の巨岩側面を覆っていました。
このコケの中には、比較的珍しい小型シダのカラクサシダが混生していました。

Fig.33 オオクラマゴケモドキ
オオトラノオゴケと同じ巨岩の、水が滴るような下方に群生していました。

Fig.34 オオサナダゴケモドキ
渓流畔の岩上にマットをつくっていました。

Fig.35 ホソベリミズゴケ
このミズゴケは湿地に生育する他種とは異なり、湧水の滴る岩壁に生育しています。
丹波地方では岩壁下部全体が、本種によって占められている所もあります。

Fig.36 クモノスゴケ
ホソベリミズゴケの隣ではクモノスゴケが広がり、サクを上げようとしていました。

Fig.37 ヒロハヒノキゴケ
岩壁に倒れこんだ朽ちた倒木上で、長いサクを上げていました。

Fig.38 コムチゴケのマット
岩壁に沿って尾根筋に登ると、岩稜にコムチゴケの緑のマットが現れました。

Fig.39 シダレヤスデゴケ
岩稜の反対側にはオオクラマゴケモドキを小さくしたようなコケが目立ちました。
帰って調べるとクロヤスデゴケのようですが、いま一つ自信はありません。
*シダレヤスデゴケと教えていただきました。(2014.4/25変更)

Fig.40 シダレヤスデゴケの拡大
小さな苔類ですが、なかなか枝振りが良いです。
この仲間は小型な上、似たような種が多く、区別はなかなか難しいです。
以下はオマケです。
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水中のコケをほぐすとよく出てくる生き物達3種

Fig.41 ミズムシ
およそ水辺であれば何所にでも現れる甲殻類で、庭にいるワラジムシ、ダンゴムシに近縁。
やや汚れた水域の指標種の一つとされるが、きれいな止水域にも必ずいる。
落ち葉や水底のベントスを漁る、淡水の掃除屋として知られている。
同じような名称の「コミズムシ」「チビミズムシ」などの水生カメムシもおり、
さらに「コガシラミズムシ」などの水生甲虫もいて、とても紛らわしい。

Fig.42 ナミウズムシ(プラナリア)
身体を2つ3つに切り刻んでも、その切片がクローン再生することで有名。
頭の形と2つの眼点により、「キモカワイイ」の部類に入るか?
小川や水路の水中の水草の葉上を這い回って、微小な水生生物を捕食している。
近年、外国産の輸入水草に付いて来たと見られる、類似のアメリカナミウズムシ、
アメリカツノウズムシなどの外来種が定着しているという。

Fig.43 カワゲラ類の幼虫
体長4mm程度で水中コケをほぐすとミズムシとともに必ず現れる。
幼虫といってもまだまだ小さく、種類を判断できるまでに育っていない。
category: コケ
thread: 博物学・自然・生き物 - janre: 学問・文化・芸術
冬に見るコケ 1
2013/02/05 Tue. 22:22 [edit]

Fig.1 ヒジキゴケと小顔のオブジェ 船坂の石垣にて。
今回は冬に観察したコケ(蘚苔類)を集めてみました。
冬になってからは小雨や小雪の降る日が多く、空中湿度も高くなっているので、美しいコケの姿を見るには良い季節です。撮った画像を整理してみると、割と数が多く、2回にわけて掲載しようと思います。1回目は石垣や木に付着しているものを中心に、比較的よく見かけるものが多いと思います。しかし、なにぶんコケについては初心者であるため、間違えもあるかもしれません。
ヒジキゴケ、オオスギゴケ、フトリュウビゴケ、ヒメハイゴケ、タマゴケ、ホソバギボウシゴケ、タチヒダゴケ、キヌゴケ、エゾスナゴケ、ネズミノオゴケ、サヤゴケ、ヒロハツヤゴケ、キヨスミイトゴケ、ホソバオキナゴケ、オオシラガゴケ、ヤマトムチゴケ、ヒノキゴケ、フデゴケ、ハイゴケ、オオシッポゴケ
*画像は全てクリックすると拡大できます。

Fig.2 石垣に付いたオオスギゴケとヒメレンゲゴケ(地衣類)

Fig.3 オオスギゴケ
大型で美しいスギゴケで、空気のきれいな里山のしめった石垣や岩上でよく見かけます。

Fig.4 フトリュウビゴケ
大型のコケで、石垣にふんわりとしたマットをつくっています。
葉には短い2肋があり、先は急に細長くなってとがります。

Fig.5 ヒメハイゴケ
石垣に付いている。ハイゴケよりも少し小型で、サクは1.5~3cmと短い。

Fig.6 タマゴケ
あちこちの石垣でよく見かけます。春になると玉のようなサクを出す。

Fig.7 ホソバギボウシゴケ
石垣の、普段は乾いているだろう場所にマット状に群生していました。

Fig.8 タチヒダゴケ(コダマゴケ)
石垣よりも樹幹でよく見かけますが、ここでは石垣に小さな塊で点在していました。
周囲に生えている地衣類はイワカラタチゴケ。

Fig.9 キヌゴケ
旧い堰堤に付いていました。とても小さな蘚類です。

Fig.10 エゾスナゴケ
墓地の石段で。都会から亜高山帯まで広く普通に見られるコケです。

Fig.11 ネズミノオゴケ
石垣や溝壁によく見られますが、ここではイチョウの古木の根際に生育していました。

Fig.12 サヤゴケ
社寺境内のアラカシの樹幹で群生していました。
非常に小さなものですが、サクの柄が鞘に包まれた特徴的なコケです。

Fig.13 ヒロハツヤゴケ
タニウツギの樹幹に付いていました。雑木林の樹の根元によく付いています。

Fig.14 キヨスミイトゴケ
社寺境内のツツジの植え込みにビッシリと付いていました。

Fig.15 ホソバオキナゴケ
林道脇の一部の土手に生育している集団のみがサクを上げていました。

Fig.16 オオシラガゴケとヤマトムチゴケ
暗く湿った、風化の進んだ岩壁に群生していました。

Fig.17 ヒノキゴケ
植林地の林床の所々にかたまって生育しています。

Fig18. ケゼニゴケ
林床の枯れた細流の脇にマット状に広がっていました。

Fig.19 オオシッポゴケ(?)
林縁のフカフカした腐植土上に生育していました。
仮根は褐色で、葉があまり細くならないのでオオシッポゴケとしましたが、
カモジゴケなのかもしれません。

Fig.20 フデゴケ
風化が進んだ貧栄養な乾いた尾根で、トゲシバリ(左・地衣類)とともに生育していました。

Fig.21 ハイゴケ
フデゴケの生えているすぐそばで、大きなマットを形成していました。
水田の畦から乾いた岩上まで、いたるところで見られるコケです。

Fig.22 赤い果実をつけたツルアリドオシ
おまけです。トヤマシノブゴケが生育する石垣で果実をつけていました。
次回は水辺や渓流畔で観察したコケ類を予定しています。
category: コケ
thread: 博物学・自然・生き物 - janre: 学問・文化・芸術
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