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Satoyama, Plants & Nature

琵琶湖の湿生・水生植物 4 

湿地化の進んだ休耕田
Fig.1 湿地化の進んだ休耕田

湖西の山間湿地・山間棚田
今回、10月頭の滋賀行きではMさんに山中の水田跡が大規模な湿原となっている場所にご案内いただいた。
上記掲載した画像はその一部で、低茎な1年生草本が一面に生育する中、湿地の先駆種であるアブラガヤやコマツカサススキ、イグサが点在し、表土の比較的安定した場所ではミズオトギリが生育している。

この湿原上部は棚田の痕跡と見られる畦と段差があり、下部は半ばアシ原となった広大な湿原が広がっている。
近くには民家がないため、離村とともに放棄された水田か、あるいは年貢を避けるための隠田が放棄されて湿地化したものだろう。
湿地化した隠田は各地に残っており、例えば兵庫県では「篠山の森公園」にあるものが小規模ではあるがよく知られており、そこではキタヤマブシなどの稀少種が生育している。

ここでは、地すべり地に生じる自然湿地に生育するようなカヤツリグサ科イヌノハナヒゲ属草本が全く見られず、アゼナ、トキンソウ、シソクサ、マルバノサワトウガラシ、ヤノネグサ、ヒルムシロ、ヤナギスブタなどの水田雑草をはじめとして、カサスゲ(あるいはキンキカサスゲか)、ミズオトギリといった肥沃な湿地を好む湿生植物が生育しており、水田跡が湿地化したことを裏付けている。
1年生草本のホシクサ類や水田雑草の生える場所では、泥炭が体積し、ヒザまで泥に埋まり難渋し、放棄されてかなりの年月が経過しているのを思わせた。

フサタヌキモ
Fig.2 山中の池で生育するフサタヌキモ
この湿地とは別の場所で、栄養不足なのか花茎を上げていない。

滋賀県では絶滅危惧種であるフサタヌキモが、水鳥の散布によるものか分布を拡大中で、この湿原内の水溜りにもそれらしき個体が多数生育している。ここにあったタヌキモの仲間は後日、イヌタヌキモと判明しました。)ただし、あまり栄養状態がよいとはいえず、小さな個体が多く、開花個体は全く見られなかった。
このほか水溜りや水路内ではヒツジグサやヒルムシロ(フトヒルムシロと判明)、ヤナギスブタが浅い水深の中、かろうじて生き残っていた。(2013.7/13訂正)

オオミズゴケ群落
Fig.3 低木下に発達したオオミズゴケ群落

この湿原では多数のニホンジカが侵入しており、撹乱が激しい。
この日は湿原中のアシ原に居た20頭ほどの群れが森林へと逃げ込んでいった。
湿原内には所々でノリウツギやイヌツゲ、ハンノキ、アカメヤナギなどの低木が点在し、その直下はシカの撹乱を受けにくいため、オオミズゴケ群落が発達していた。
かつてはヒメミクリやカンガレイなども生育していたというが、シカによる食害のためか、今回は確認できなかった。
また、高湿度であるためか、シカが運んできたヤマビルの発生が多く、Mさんが初めてのヤマビルの洗礼を受けていた。

シソクサ、マルバノサワトウガラシ
Fig.4 小型化して地表を覆うシソクサとマルバノサワトウガラシ

シソクサやマルバノサワトウガラシは休耕田で生育する場合、かなり立ち上がって大きくなるものだ。
湖岸近くの休耕田で見たものは、そのような個体ばかりだった。
しかし、ここではシカの食害を受けるため背丈は低くて小さく、茎は地表に広がっている。

siroInunohige.jpg
Fig.5 撹乱を受けた湿地に生育したシロイヌノヒゲ

一方、シカの撹乱は1年生草本にとっては、多年草の被植を妨げるため生存にとっては有利になっている。
ここではシロイヌノヒゲとニッポンイヌノヒゲが群生し、葉は食害に遭っているが、花茎は無傷で残っており、翌年に子孫を残すことができる。

ミツカドシカクイ
Fig.6 ミツカドシカクイ

湖岸近くの低湿地では狭義のシカクイが生育していたが、ここではシカクイは見られず、ミツカドシカクイばかりが見られた。
一見するとシカクイと区別できないが、茎は3稜形であり、手にとってみると違いがわかる。
兵庫県ではやや高所の準平原に点在する湿地に現れるが、ここはそれらの場所よりもやや標高が低い。
本種はよほど飢えているシカでないと食しない。

コマツカサススキ群落
Fig.7 コマツカサススキ群落

シカの不嗜好植物であるコマツカサススキが大群落を形成し、見事な光景となっていた。
同所的にアブラガヤも少数生育していたので、種間雑種が必ずあるだろうと探したところ、やはり見つかった。

コマツカサアブラガヤ
Fig.8 コマツカサアブラガヤ

コマツカサススキとアブラガヤの推定種間雑種で、2タイプの花序を持つ。
画像左のものは小穂が球状に集まり、花序分枝は少ない。
右は小穂が束状に集まっており、分花序が多い。
両タイプともに不稔で、F1の雌親株がどちらの種かによって、このような2つのタイプが現れると推定される。

この日は湖岸近くの湿地で、もう1種面白い雑種を見つけたので紹介しておこう。

サンカクホタルイ
Fig.8 サンカクホタルイ

地味なカヤツリグサ科でサンカクやらシカクやら、いろいろと紛らわしいとは思うが、サンカクホタルイはカンガレイとホタルイの種間雑種で、両種が混生している場所に稀に見られる。
茎の太さはカンガレイとホタルイの丁度中間くらいで、横断面はいびつな3角形だった。
小穂を調べてみたところ、多くの結実がみられ、刺針状花被片は痩果よりも長かった。
シカクホタルイというのもあり、これはカンガレイとイヌホタルイの種間雑種。


昨年、ミズキカシグサを発見した棚田の減反地にも行ってみた。
しかし、全ての水田雑草の背丈は低く、ミズキカシグサは1個体も発見できなかった
隣の減反地にはミズネコノオが生育していたのだが、これも見られなかった。
断定できないが、今年は夏期の降雨が少なかったため、種子が休眠状態に入ってしまい発芽しなかったのかもしれない。

スズメハコベ
Fig.9 スズメハコベ(スズメノハコベ)

昨年、減反地で生育していたスズメハコベは今年も確認できた。
生育規模は依然として小規模で、昨年同様、今年もMさんが執念で見つけた。
スズメハコベも水分条件のよい水田にしか現れないが、ミズキカシグサはスズメハコベよりもさらにデリケートな水分条件が必要なのだろう。

ホシクサ
Fig.10 付近の水田では比較的普通なホシクサ

ヒロハイヌノヒゲ
Fig.11 こちらも普通なヒロハイヌノヒゲ

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琵琶湖の湿生・水生植物 3 

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Fig.1 休耕田で群生するナガバノウナギツカミ

琵琶湖沿岸には耕作放棄された水田が湿地となっている場所がある。
湖岸近くでは地下水位が高いため湛水状態となり、そこでは多くの湿生植物が見られ、稀少種も多い。
このような湿地はやがて遷移が進んでアシ原やハンノキ-ヤナギ林へと変わっていくが、適度な撹乱を受けることによって湿地が維持される。
今回訪れた休耕田では、畦にオグルマやコバノカモメヅルが生育し、水田内では群生するナガバノウナギツカミや足の踏み場もないほどのマルバノサワトウガラシ群落を観察できた。

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Fig.2 休耕田の畦に咲くオグルマ

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Fig.3 ナガバノウナギツカミ

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Fig.4 マルバノサワトウガラシ

ミズトラノオ
fig.5 ミズトラノオ アシ原化の進む湿地で。

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Fig.6 ゴキヅルの花 アシ原化の進む湿地で。


琵琶湖沿岸には現在も淡水魚を水揚げする小規模な漁港が数多くあって、防波堤に囲まれた湾内は波静かで、このような場所ではヒシやオニビシとともにトチカガミが群生し、ところによっては密生して浮葉が立ち上がっている。
トチカガミの浮葉の裏面には浮嚢があるが、立ち上がった葉にはほとんど浮嚢を生じない。
花は雌雄異花。

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Fig.7 群生するトチカガミ

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Fig.8 トチカガミの雄花 花柄は細い。

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Fig.9 トチカガミの雌花 花柄の上部は太くなる。

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Fig.10 港湾内に多いマツモ

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