ウメバチソウの咲く貧栄養湿地 -西宮の自然-
2016/10/23 Sun. 13:58 [edit]
兵庫県は花崗岩や流紋岩質の基岩が広がる南部を中心として、数多くの貧栄養な湿地が点在しています。西宮市も例外ではなく、有名な甲山湿原をはじめとして大小の貧栄養な湿地が見られます。
本州中部以北で発達する高層湿原は主に雨水によって涵養され、ふつう高所で低い気温により有機物は分解されず、泥炭が発達して土壌は酸性に傾き、適度な栄養下で大きく成長する草本は生育できず、発達したミズゴケ類の群落中に貧栄養かつ嫌気的環境にも生育しうる草本が生育します。
一方で花崗岩や流紋岩ではナトリウムやカリウムの含有量はふつう少なく、風化土壌は酸性に傾きがちで、低地の低水温の湧水が湧出するような湿地では貧栄養な湿地が形成されることがあります。形成要因は地すべりによって表土が剥き出しとなり、湧水のある水源が堰き止められるものがほとんどで、泥炭は形成されませんが、緩斜面で湧水が広範な面積を占める場合は貧栄養湿地が成立し、寒冷期に南下した種が遺存的にそのような場所に生育していることがあります。
今回はちょうどウメバチソウの開花期ということもあって、久しぶりに西宮市内のウメバチソウが咲く貧栄養な湿地を訪れてみました。この湿地の基岩は六甲山地に広く見られる花崗岩からなり、風化してできた肌理の細かい「まさ土」がゆるい湧水の流れにより堆積して数多くの湿生植物の生育する湿地となっています。ここは湿生植物を観察しはじめた頃、頻繁に通っていた思い出深い場所でもあり、今でもほとんどの種が健在でした。
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Fig.1 ウメバチソウの咲く貧栄養湿地 (西宮市 2016.10/14)
ウメバチソウは日本のほか、台湾、東アジア北部、樺太、千島に分布し、台湾では高所に生育し、北方系の種です。国内では低地でも貧栄養湿地や裸地状の湿った草地や草刈りの行われる棚田の土手に遺存的に生育しています。酸性に傾いた貧栄養湿地では競合種が少ないため、最終氷期に定着したものと考えられ、この湿地の成立が比較的古いものと解ります。
関連ページ 湿生植物・ウメバチソウ

Fig.2 開花したウメバチソウ (西宮市 2016.10/14)
思惑通り、ちょうど開花全盛で多数の開花個体が見られました。西宮市内では時に日当たりのよい渓流畔の湧水に濡れた岩場にも見られますが、種子の供給源はこの湿地であるかもしれません。ウメバチソウの種子は1mm以下で小さく、泥とともに動物や鳥類によって容易に運ばれるでしょう。

Fig.3 ウメバチソウの花の拡大 (西宮市 2016.10/14)
ウメバチソウの魅力は先端に腺体を持った多数に糸状に裂開した仮雄蕊。
腺体は始め黄色ですが、やがて脱色して小さくなり透明となります。

Fig.4 オオミズゴケのマット (西宮市 2016.10/14)
湿地の大部分はオオミズゴケ群落が発達し、そこに湿地を特徴付ける湿生植物が生育しています。
関連ページ 湿生植物・オオミズゴケ

Fig.5 ウメバチソウとノガリヤス (西宮市 2016.10/14)
湿地周縁部のこんもりとしたオオミズゴケのマット上に生育しています。
ノガリヤスは湿地の林縁部にのみ少数が見られ、湿地の主要構成種ではなく、山野に広く生育する常在種です。
関連ページ 関西の花/イネ科・ノガリヤス

Fig.6 ミミカキグサ (西宮市 2016.10/14)
湿地の裸地部から内部の細流、水溜り内に生育しています。
この時期は寒気を避けるためか、花茎は低く少数の花を付けています。
関連ページ 湿生植物・ミミカキグサ

Fig.7 ホザキノミミカキグサ (西宮市 2016.10/14)
本種もミミカキグサ同様、寒気のため花茎は低くて穂咲き状とならず、花茎には1~2花が付いている程度でした。
関連ページ 湿生植物・ホザキノミミカキグサ

Fig.8 ムラサキミミカキグサ (西宮市 2016.10/14)
本種はこの仲間のなかでは、この時期もっとも草丈が低く、花自体も小さくなります。
ムラサキミミカキグサは比較的古くからある湿地に生育し、長期にわたって土壌の大きな撹乱のなかった自然度の高い湿地に生育しています。生育するには持続的に湧水の供給が必要で、ミミカキグサの中では長期維持が比較的困難な部類に入ります。
関連ページ 湿生植物・ムラサキミミカキグサ

Fig.9 沈水葉をつけたムラサキミミカキグサ (西宮市 2016.10/14)
湿地内の湧水の水溜りの泥中に地下茎が這っているものは、光条件が低下するためか沈水葉といえるような大きな葉を付けています。本種はミミカキグサの仲間の中でも最も大きな沈水葉をつけ、時に長さ5cmに達することもあります。

Fig.10 モウセンゴケ (西宮市 2016.10/14)
貧栄養な湿地では必ず見られる常在種で、西宮市内でも日当たりよく湧水のあるような場所でよく見かけます。この湿地では表水のある裸地から、細流周辺、日当たりよいオオミズゴケのマット上に多数の個体が見られます。コモウセンゴケやトウカイコモウセンゴケは丘陵地などのより低地に見られますが、ここは標高500mを超えるため近縁2種は生育していません。西宮市内ではトウカイコモウセンゴケは限られた場所にわずかに見られますが、開発が盛んな丘陵地では生育適地が失われコモウセンゴケは確認できていません。
関連ページ 湿生植物・モウセンゴケ

Fig.11 イヌノヒゲ (西宮市 2016.10/14)
湿地内に広く生育している1年生草本で、貧栄養湿地によく見られる種です。
似たものにニッポンイヌノヒゲがありますが、こちらは溜池畔によく見られます。
両種が混生する場所もありますが、小花の苞が有毛かどうかルーペで観察して区別します。
無毛の場合はニッポンイヌノヒゲで、有毛の場合はイヌノヒゲとなります。
関連ページ 湿生植物・イヌノヒゲ

Fig.11 シロイヌノヒゲ (西宮市 2016.10/14)
シロイヌノヒゲは完全に結実して、頭花と花茎がドライフラワーのようになっていました。
シロイヌノヒゲは最新の「Flora of Japan」ではイヌノヒゲと区別されなくなり、同種とされました。
遺伝子解析に基づくものなのですが、開花結実期はイヌノヒゲよりも少し早くて生態的な違いが見られ、生態的変異の範疇が同一DNA内に仕込まれているのでしょうか?
このほか、この湿地ではイトイヌノヒゲが生育しています。
関連ページ 湿生植物・シロイヌノヒゲ

Fig.12 フトヒルムシロ (西宮市 2016.10/14)
フトヒルムシロは腐植質の溜池や貧栄養な溜池や水路などで生育しています。
画像の上部に見られる褐色の泥は水酸化鉄(酸化第二鉄、酸化鉄( Ⅲ)、Fe2 O3)が沈殿したもので、酸性の貧栄養な湿地ではよく見られるもので、また鉄バクテリアによっても生産されます。これが長年にわたって堆積し凝固したものが褐鉄鉱となり、植物の根の周りで大量に発生した鉄バクテリアにより生成されたチューブ状のものは、土中で長い年月をかけて「高師小僧」となります。
関連ページ 浮葉植物・フトヒルムシロ

Fig.13 ヒナザサ (西宮市 2016.10/14)
貧栄養な湿地や、秋季に減水した溜池の縁などに見られる1年草です。西宮市内では5ヶ所で生育しており、ここでは常に表水があり、かつ中~大型の草本の生えない場所に見られます。
関連ページ 湿生植物・ヒナザサ

Fig.14 ミカヅキグサ (西宮市 2016.10/14)
本州の中部以北では高層湿原に見られる北方系の種で、西日本では貧栄養湿地に遺存的に分布しています。本種もやはり氷期の生き残りだと考えられており、湿地内では湧水が常ににじみ出している場所に見られます。すでに結実し、開花中は白色だった小穂も褐色になって、イヌノハナヒゲと紛らわしくなっています。
関連ページ 湿生植物・ミカヅキグサ

Fig.15 イヌノハナヒゲ (西宮市 2016.10/14)
貧栄養湿地に見られる湿生植物群落の主要構成種の一つで、貧栄養な溜池畔や経年した湿田休耕田などにもよく見られます。西宮市内の主要な貧栄養湿地では必ず出現するカヤツリグサ科の草本です。
関連ページ 湿生植物・イヌノハナヒゲ

Fig.16 イトイヌノハナヒゲ (西宮市 2016.10/14)
貧栄養な湿地から、貧栄養で粘土質の半裸地にまで生育する多年草で、本種が出現する場所では他にも面白い草本が見られることが多いように思います。
関連ページ 湿生植物・イトイヌノハナヒゲ

Fig.17 イヌシカクイ (西宮市 2016.10/14)
貧栄養湿地の主要構成種の一つで、狭義シカクイやマシカクイよりも貧栄養な湿地を好みます。
貧栄養傾向のある湿地では、先ずヤマイが現れ、次に本種やコアゼガヤツリ、自然度が高くなってくるとイヌノハナヒゲやイトイヌノヒゲ、コシンジュガヤが出現します。
この湿地はやや標高の高い場所にあるため、南方系のコシンジュガヤやマネキシンジュガヤの定着は見られません。標高の低い甲山湿原などではシンジュガヤの仲間も定着しています。
関連ページ 湿生植物・イヌシカクイ

Fig.18 コマツカサススキ (西宮市 2016.10/14)
西宮市内ではよく見かけるものですが、本種も貧栄養な湿地を好みます。
すでに結実期で、小穂は散り始めていました。
関連ページ 湿生植物・コマツカサススキ

Fig.19 ヌマガヤ (西宮市 2016.10/14)
北方系の種で、西日本では貧栄養湿地に遺存的に分布し、カミスキスダレグサという風雅な別名を持っています。兵庫県南部では用水路の脇などでもふつうに生育していますが、兵庫県中部では稀で、但馬には分布せず、花崗岩地や流紋岩地の少ない隣県の京都府では、絶滅寸前種という扱いになっています。本種は本州中部以北では高層湿原に生育して草丈が低くなりますが、西日本の貧栄養湿地では草体が大型化し、貧栄養湿地の主要構成種の一つとなります。
湿地内とその周辺では他にイネ科草本のトダシバが生育していますが、これは貧栄養湿地に限らず、林縁から草地にいたるまで広く見られます。
関連ページ 湿生植物・ヌマガヤ

Fig.20 サワシロギク (西宮市 2016.10/14)
サワシロギクはウメバチソウが咲く頃にはほぼ開花は終わっており、ぽつぽつと紅変した花が残っている程度でした。湿地では、ヌマガヤやトダシバの株元を足場にして生育しているのをよく見かけます。
関連ページ 湿生植物・サワシロギク

Fig.21 結実したカキラン (西宮市 2016.10/14)
カキランもサワシロギクと同様、ヌマガヤやトダシバの生育するような湿地の周縁部に見られます。
この湿地ではカキランの他にコバノトンボソウ、トキソウが生育しています。
関連ページ 湿生植物・カキラン

Fig.22 ヒメカリマタガヤ (西宮市 2016.10/14)
本種は湿地周辺部の「まさ土」が露出し、やや乾いた裸地に生育しています。
ごく近縁のカリマタガヤは栄養分の多い溜池畔の湿地などに見られ大型化するのに対して、本種はごく小さく貧栄養地の裸地に見られます。
リンドウが貧栄養湿地に適応しホソバリンドウとなったのと同様な適応型と見るべきものでしょう。
関連ページ 湿生植物・ヒメカリマタガヤ

Fig.23 センブリ (西宮市 2016.10/14)
湿地周辺部の半裸地にヒメカリマタガヤやアリノトウグサとともに点在しています。
本種は貧栄養地特有のものではありませんが、貧栄養地では本種が好む粘土質の裸地~半裸地が形成されやすく、そのため西宮市内の山野ではよく見かけます。
関連ページ 関西の花・センブリ

Fig.24 果実期のウメモドキ (西宮市 2016.10/14)
湿地を中心部(湧水の溜まりや細流があるかにじみ出して表水がある)・周縁部(中~大型の湿生草本があり表土は湿っているかオオミズゴケ群落がある)・周辺部(オオミズゴケ群落はあるが裸地部の表土は乾き気味で丈の低いネザサの侵入がある)・外周部(オオミズゴケ群落はあるがネザサと低木が優占する)と分けるとするなら、本種は周辺部・外周部にイヌツゲやノリウツギ、ノイバラなどの低木とともに出現することが多いです。貧栄養湿地に限らず湿地や溜池周辺に見られ、栄養状態がよければ多数の結実が見らますが、貧栄養湿地では画像程度の結実であることが多いようです。
関連ページ 湿生植物・ウメモドキ

Fig.25 ミヤマアカネ (西宮市 2016.10/14)
ミヤマアカネは各地で減少傾向にあって、兵庫県版RDBでもCランクとされ、保護策を検討している地域も多いようですが、西宮市内ではまだ見かける機会も多く、自宅の庭にも時々飛来しています。
翅にある褐色の斑紋が特徴的で近縁の他種とはひと目見るだけで区別可能なため、市民を交えた分布調査が進んでいる種でもあります。

Fig.26 ヒメアカネ (西宮市 2016.10/14)
赤トンボの中では最も遅くまで活動する種のうちの一つで、湿地や水生植物の多い溜池でよく見かけます。この湿地では夏場にはハッチョウトンボが見られ、春先にはカスミサンショウウオが産卵に訪れます。残念ながらヒメタイコウチやヒメヒカゲは標高が高いため生息しておらず、記録もありません。

Fig.27 ネキトンボ (西宮市 2016.10/14)
市内のやや高所の溜池で見られましたが丘陵地の溜池で見かけるアカネです。ショウジョウトンボに似ていますが、脚は黒く、胸部側面に太く明瞭な黒色条があって区別されますが、見慣れると大きさと腹部の細さですぐにショウジョウトンボとは違うことが解ります。

Fig.28 タイリクアカネ (西宮市 2016.10/14)
本種は平地の学校のプールや都市のビオトープでも生育できる逞しいアカネですが、ここでは澄んだ溜池の縁でネキトンボと縄張り争いをしていました。翅が透明で、翅脈が濃紅色に色付くことで近似種と区別できます。

Fig.29 ナメラダイモンジソウ (西宮市 2016.10/14)
帰途に立ち寄った渓谷ではナメラダイモンジソウが開花真っ盛りでした。
裏六甲の谷筋では近縁のダイモンジソウやジンジソウも最盛期を迎えていることでしょう。
関連ページ 関西の花・ナメラダイモンジソウ

Fig.30 アキチョウジ (西宮市 2016.10/14)
ナメラダイモンジソウの生育する渓流畔では、アキチョウジが開花終盤となって長い花茎を伸ばしていました。これらの花が終わると田園地帯ではヤマラッキョウやリンドウの花が咲き始め、花の季節の最後を飾ります。
関連ページ 関西の花・アキチョウジ
本州中部以北で発達する高層湿原は主に雨水によって涵養され、ふつう高所で低い気温により有機物は分解されず、泥炭が発達して土壌は酸性に傾き、適度な栄養下で大きく成長する草本は生育できず、発達したミズゴケ類の群落中に貧栄養かつ嫌気的環境にも生育しうる草本が生育します。
一方で花崗岩や流紋岩ではナトリウムやカリウムの含有量はふつう少なく、風化土壌は酸性に傾きがちで、低地の低水温の湧水が湧出するような湿地では貧栄養な湿地が形成されることがあります。形成要因は地すべりによって表土が剥き出しとなり、湧水のある水源が堰き止められるものがほとんどで、泥炭は形成されませんが、緩斜面で湧水が広範な面積を占める場合は貧栄養湿地が成立し、寒冷期に南下した種が遺存的にそのような場所に生育していることがあります。
今回はちょうどウメバチソウの開花期ということもあって、久しぶりに西宮市内のウメバチソウが咲く貧栄養な湿地を訪れてみました。この湿地の基岩は六甲山地に広く見られる花崗岩からなり、風化してできた肌理の細かい「まさ土」がゆるい湧水の流れにより堆積して数多くの湿生植物の生育する湿地となっています。ここは湿生植物を観察しはじめた頃、頻繁に通っていた思い出深い場所でもあり、今でもほとんどの種が健在でした。
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Fig.1 ウメバチソウの咲く貧栄養湿地 (西宮市 2016.10/14)
ウメバチソウは日本のほか、台湾、東アジア北部、樺太、千島に分布し、台湾では高所に生育し、北方系の種です。国内では低地でも貧栄養湿地や裸地状の湿った草地や草刈りの行われる棚田の土手に遺存的に生育しています。酸性に傾いた貧栄養湿地では競合種が少ないため、最終氷期に定着したものと考えられ、この湿地の成立が比較的古いものと解ります。
関連ページ 湿生植物・ウメバチソウ

Fig.2 開花したウメバチソウ (西宮市 2016.10/14)
思惑通り、ちょうど開花全盛で多数の開花個体が見られました。西宮市内では時に日当たりのよい渓流畔の湧水に濡れた岩場にも見られますが、種子の供給源はこの湿地であるかもしれません。ウメバチソウの種子は1mm以下で小さく、泥とともに動物や鳥類によって容易に運ばれるでしょう。

Fig.3 ウメバチソウの花の拡大 (西宮市 2016.10/14)
ウメバチソウの魅力は先端に腺体を持った多数に糸状に裂開した仮雄蕊。
腺体は始め黄色ですが、やがて脱色して小さくなり透明となります。

Fig.4 オオミズゴケのマット (西宮市 2016.10/14)
湿地の大部分はオオミズゴケ群落が発達し、そこに湿地を特徴付ける湿生植物が生育しています。
関連ページ 湿生植物・オオミズゴケ

Fig.5 ウメバチソウとノガリヤス (西宮市 2016.10/14)
湿地周縁部のこんもりとしたオオミズゴケのマット上に生育しています。
ノガリヤスは湿地の林縁部にのみ少数が見られ、湿地の主要構成種ではなく、山野に広く生育する常在種です。
関連ページ 関西の花/イネ科・ノガリヤス

Fig.6 ミミカキグサ (西宮市 2016.10/14)
湿地の裸地部から内部の細流、水溜り内に生育しています。
この時期は寒気を避けるためか、花茎は低く少数の花を付けています。
関連ページ 湿生植物・ミミカキグサ

Fig.7 ホザキノミミカキグサ (西宮市 2016.10/14)
本種もミミカキグサ同様、寒気のため花茎は低くて穂咲き状とならず、花茎には1~2花が付いている程度でした。
関連ページ 湿生植物・ホザキノミミカキグサ

Fig.8 ムラサキミミカキグサ (西宮市 2016.10/14)
本種はこの仲間のなかでは、この時期もっとも草丈が低く、花自体も小さくなります。
ムラサキミミカキグサは比較的古くからある湿地に生育し、長期にわたって土壌の大きな撹乱のなかった自然度の高い湿地に生育しています。生育するには持続的に湧水の供給が必要で、ミミカキグサの中では長期維持が比較的困難な部類に入ります。
関連ページ 湿生植物・ムラサキミミカキグサ

Fig.9 沈水葉をつけたムラサキミミカキグサ (西宮市 2016.10/14)
湿地内の湧水の水溜りの泥中に地下茎が這っているものは、光条件が低下するためか沈水葉といえるような大きな葉を付けています。本種はミミカキグサの仲間の中でも最も大きな沈水葉をつけ、時に長さ5cmに達することもあります。

Fig.10 モウセンゴケ (西宮市 2016.10/14)
貧栄養な湿地では必ず見られる常在種で、西宮市内でも日当たりよく湧水のあるような場所でよく見かけます。この湿地では表水のある裸地から、細流周辺、日当たりよいオオミズゴケのマット上に多数の個体が見られます。コモウセンゴケやトウカイコモウセンゴケは丘陵地などのより低地に見られますが、ここは標高500mを超えるため近縁2種は生育していません。西宮市内ではトウカイコモウセンゴケは限られた場所にわずかに見られますが、開発が盛んな丘陵地では生育適地が失われコモウセンゴケは確認できていません。
関連ページ 湿生植物・モウセンゴケ

Fig.11 イヌノヒゲ (西宮市 2016.10/14)
湿地内に広く生育している1年生草本で、貧栄養湿地によく見られる種です。
似たものにニッポンイヌノヒゲがありますが、こちらは溜池畔によく見られます。
両種が混生する場所もありますが、小花の苞が有毛かどうかルーペで観察して区別します。
無毛の場合はニッポンイヌノヒゲで、有毛の場合はイヌノヒゲとなります。
関連ページ 湿生植物・イヌノヒゲ

Fig.11 シロイヌノヒゲ (西宮市 2016.10/14)
シロイヌノヒゲは完全に結実して、頭花と花茎がドライフラワーのようになっていました。
シロイヌノヒゲは最新の「Flora of Japan」ではイヌノヒゲと区別されなくなり、同種とされました。
遺伝子解析に基づくものなのですが、開花結実期はイヌノヒゲよりも少し早くて生態的な違いが見られ、生態的変異の範疇が同一DNA内に仕込まれているのでしょうか?
このほか、この湿地ではイトイヌノヒゲが生育しています。
関連ページ 湿生植物・シロイヌノヒゲ

Fig.12 フトヒルムシロ (西宮市 2016.10/14)
フトヒルムシロは腐植質の溜池や貧栄養な溜池や水路などで生育しています。
画像の上部に見られる褐色の泥は水酸化鉄(酸化第二鉄、酸化鉄( Ⅲ)、Fe2 O3)が沈殿したもので、酸性の貧栄養な湿地ではよく見られるもので、また鉄バクテリアによっても生産されます。これが長年にわたって堆積し凝固したものが褐鉄鉱となり、植物の根の周りで大量に発生した鉄バクテリアにより生成されたチューブ状のものは、土中で長い年月をかけて「高師小僧」となります。
関連ページ 浮葉植物・フトヒルムシロ

Fig.13 ヒナザサ (西宮市 2016.10/14)
貧栄養な湿地や、秋季に減水した溜池の縁などに見られる1年草です。西宮市内では5ヶ所で生育しており、ここでは常に表水があり、かつ中~大型の草本の生えない場所に見られます。
関連ページ 湿生植物・ヒナザサ

Fig.14 ミカヅキグサ (西宮市 2016.10/14)
本州の中部以北では高層湿原に見られる北方系の種で、西日本では貧栄養湿地に遺存的に分布しています。本種もやはり氷期の生き残りだと考えられており、湿地内では湧水が常ににじみ出している場所に見られます。すでに結実し、開花中は白色だった小穂も褐色になって、イヌノハナヒゲと紛らわしくなっています。
関連ページ 湿生植物・ミカヅキグサ

Fig.15 イヌノハナヒゲ (西宮市 2016.10/14)
貧栄養湿地に見られる湿生植物群落の主要構成種の一つで、貧栄養な溜池畔や経年した湿田休耕田などにもよく見られます。西宮市内の主要な貧栄養湿地では必ず出現するカヤツリグサ科の草本です。
関連ページ 湿生植物・イヌノハナヒゲ

Fig.16 イトイヌノハナヒゲ (西宮市 2016.10/14)
貧栄養な湿地から、貧栄養で粘土質の半裸地にまで生育する多年草で、本種が出現する場所では他にも面白い草本が見られることが多いように思います。
関連ページ 湿生植物・イトイヌノハナヒゲ

Fig.17 イヌシカクイ (西宮市 2016.10/14)
貧栄養湿地の主要構成種の一つで、狭義シカクイやマシカクイよりも貧栄養な湿地を好みます。
貧栄養傾向のある湿地では、先ずヤマイが現れ、次に本種やコアゼガヤツリ、自然度が高くなってくるとイヌノハナヒゲやイトイヌノヒゲ、コシンジュガヤが出現します。
この湿地はやや標高の高い場所にあるため、南方系のコシンジュガヤやマネキシンジュガヤの定着は見られません。標高の低い甲山湿原などではシンジュガヤの仲間も定着しています。
関連ページ 湿生植物・イヌシカクイ

Fig.18 コマツカサススキ (西宮市 2016.10/14)
西宮市内ではよく見かけるものですが、本種も貧栄養な湿地を好みます。
すでに結実期で、小穂は散り始めていました。
関連ページ 湿生植物・コマツカサススキ

Fig.19 ヌマガヤ (西宮市 2016.10/14)
北方系の種で、西日本では貧栄養湿地に遺存的に分布し、カミスキスダレグサという風雅な別名を持っています。兵庫県南部では用水路の脇などでもふつうに生育していますが、兵庫県中部では稀で、但馬には分布せず、花崗岩地や流紋岩地の少ない隣県の京都府では、絶滅寸前種という扱いになっています。本種は本州中部以北では高層湿原に生育して草丈が低くなりますが、西日本の貧栄養湿地では草体が大型化し、貧栄養湿地の主要構成種の一つとなります。
湿地内とその周辺では他にイネ科草本のトダシバが生育していますが、これは貧栄養湿地に限らず、林縁から草地にいたるまで広く見られます。
関連ページ 湿生植物・ヌマガヤ

Fig.20 サワシロギク (西宮市 2016.10/14)
サワシロギクはウメバチソウが咲く頃にはほぼ開花は終わっており、ぽつぽつと紅変した花が残っている程度でした。湿地では、ヌマガヤやトダシバの株元を足場にして生育しているのをよく見かけます。
関連ページ 湿生植物・サワシロギク

Fig.21 結実したカキラン (西宮市 2016.10/14)
カキランもサワシロギクと同様、ヌマガヤやトダシバの生育するような湿地の周縁部に見られます。
この湿地ではカキランの他にコバノトンボソウ、トキソウが生育しています。
関連ページ 湿生植物・カキラン

Fig.22 ヒメカリマタガヤ (西宮市 2016.10/14)
本種は湿地周辺部の「まさ土」が露出し、やや乾いた裸地に生育しています。
ごく近縁のカリマタガヤは栄養分の多い溜池畔の湿地などに見られ大型化するのに対して、本種はごく小さく貧栄養地の裸地に見られます。
リンドウが貧栄養湿地に適応しホソバリンドウとなったのと同様な適応型と見るべきものでしょう。
関連ページ 湿生植物・ヒメカリマタガヤ

Fig.23 センブリ (西宮市 2016.10/14)
湿地周辺部の半裸地にヒメカリマタガヤやアリノトウグサとともに点在しています。
本種は貧栄養地特有のものではありませんが、貧栄養地では本種が好む粘土質の裸地~半裸地が形成されやすく、そのため西宮市内の山野ではよく見かけます。
関連ページ 関西の花・センブリ

Fig.24 果実期のウメモドキ (西宮市 2016.10/14)
湿地を中心部(湧水の溜まりや細流があるかにじみ出して表水がある)・周縁部(中~大型の湿生草本があり表土は湿っているかオオミズゴケ群落がある)・周辺部(オオミズゴケ群落はあるが裸地部の表土は乾き気味で丈の低いネザサの侵入がある)・外周部(オオミズゴケ群落はあるがネザサと低木が優占する)と分けるとするなら、本種は周辺部・外周部にイヌツゲやノリウツギ、ノイバラなどの低木とともに出現することが多いです。貧栄養湿地に限らず湿地や溜池周辺に見られ、栄養状態がよければ多数の結実が見らますが、貧栄養湿地では画像程度の結実であることが多いようです。
関連ページ 湿生植物・ウメモドキ

Fig.25 ミヤマアカネ (西宮市 2016.10/14)
ミヤマアカネは各地で減少傾向にあって、兵庫県版RDBでもCランクとされ、保護策を検討している地域も多いようですが、西宮市内ではまだ見かける機会も多く、自宅の庭にも時々飛来しています。
翅にある褐色の斑紋が特徴的で近縁の他種とはひと目見るだけで区別可能なため、市民を交えた分布調査が進んでいる種でもあります。

Fig.26 ヒメアカネ (西宮市 2016.10/14)
赤トンボの中では最も遅くまで活動する種のうちの一つで、湿地や水生植物の多い溜池でよく見かけます。この湿地では夏場にはハッチョウトンボが見られ、春先にはカスミサンショウウオが産卵に訪れます。残念ながらヒメタイコウチやヒメヒカゲは標高が高いため生息しておらず、記録もありません。

Fig.27 ネキトンボ (西宮市 2016.10/14)
市内のやや高所の溜池で見られましたが丘陵地の溜池で見かけるアカネです。ショウジョウトンボに似ていますが、脚は黒く、胸部側面に太く明瞭な黒色条があって区別されますが、見慣れると大きさと腹部の細さですぐにショウジョウトンボとは違うことが解ります。

Fig.28 タイリクアカネ (西宮市 2016.10/14)
本種は平地の学校のプールや都市のビオトープでも生育できる逞しいアカネですが、ここでは澄んだ溜池の縁でネキトンボと縄張り争いをしていました。翅が透明で、翅脈が濃紅色に色付くことで近似種と区別できます。

Fig.29 ナメラダイモンジソウ (西宮市 2016.10/14)
帰途に立ち寄った渓谷ではナメラダイモンジソウが開花真っ盛りでした。
裏六甲の谷筋では近縁のダイモンジソウやジンジソウも最盛期を迎えていることでしょう。
関連ページ 関西の花・ナメラダイモンジソウ

Fig.30 アキチョウジ (西宮市 2016.10/14)
ナメラダイモンジソウの生育する渓流畔では、アキチョウジが開花終盤となって長い花茎を伸ばしていました。これらの花が終わると田園地帯ではヤマラッキョウやリンドウの花が咲き始め、花の季節の最後を飾ります。
関連ページ 関西の花・アキチョウジ
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category: 西宮の自然
山のキノコ達 -西宮の自然-
2016/10/13 Thu. 23:20 [edit]
9月は長雨に悩まされましたが、そのおかげで今年は西宮市内の林床でも沢山のキノコが見られます。しかし、出ているキノコはほとんどが出遅れていた夏のキノコで、秋のキノコはほとんど出てきていませんでした。最近、気温が下がってきたので、これからひと雨あれば秋のキノコも出てくるのかもしれません。
なお、キノコの利用は各自の責任でご利用ください。当方では一切責任を負えません。
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大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。

Fig.1 ミイノベニヤマタケ (西宮市 2016.10/6)
山道に入る前の林道脇に点々と出ていました。
傘に鱗片はなく、ベニヤマタケに似ていますが、色が薄く、湿ると傘の表面に粘性があります。

Fig.2 ダイダイイグチ (西宮市 2016.10/6)
夏の終わりから秋のはじめによく見かけるキノコで、ここでは最盛期のようで、あちこちに出ていました。傷つくとすみやかに青変するため手を出す人は少ないようですが、肉質は非常に緻密で歯応えのよいキノコです。

Fig.3 青変したダイダイイグチ (西宮市 2016.10/6)
裂いたり傷つけるとすぐに青変する。

Fig.4 ヤマドリタケモドキ (西宮市 2016.10/6)
このあたりではムラサキヤマドリタケに次いで美味しいキノコ。
そろそろこのキノコの時期も終わりです。

Fig.5 ヤマドリタケモドキの柄と管孔 (西宮市 2016.10/6)
柄には縦長の網目模様があり、管孔は緻密で白色で変色性はありません。

Fig.6 シコクママコナ (西宮市 2016.10/6)
この仲間は半寄生植物と言われていますが、痩せて表土の少ない尾根で生育しており、奇主らしきものは見られませんでした。
関連ページ 関西の花・シコクママコナ

Fig.7 この日の収穫 (西宮市 2016.10/6)
アカヤマドリ1本、ヤマドリタケモドキ3本、ヌメリコウジタケ少々、ダイダイイグチやや多。
このあたりのヌメリコウジタケは酸味がほとんどなく、ヌメリイグチのように美味しく食べれます。
ダイダイイグチは冷凍用と乾燥用に少し多めに採取。味や香りを比較してみます。

Fig.8 ヨシノアザミ (西宮市 2016.10/8)
森への農道脇でヨシノアザミが開花全盛でした。
西宮市では里山の林縁の湿った場所などでふつうに見られます。
関連ページ 関西の花・ヨシノアザミ

Fig.9 コメナモミ (西宮市 2016.10/8)
林道脇や農道脇の撹乱のあるような場所でよく見かけます。
ここではケフシグロ、ヒメキンミズヒキ、ベニバナボロギクなどと生育していました。

Fig.10 ミサキカグマ (西宮市 2016.10/8)
森の入口にある棚田の石垣に生育していました。
本種は探そうと思って見つかるものではなく、いつも偶然に眼にします。
関連ページ 関西の花/シダ・ミサキカグマ

Fig.11 テングツルタケ (西宮市 2016.10/8)
一見ヘビキノコモドキに似ていますが、柄にツバがないことで区別できます。

Fig.12 ミドリニガイグチ (西宮市 2016.10/8)
ヤマドリタケモドキがよく出ている場所に行きましたが、出ていたのは本種でした。
管孔は緻密、白色で変色性はなく、柄の網目は不明瞭なものが多く、柄の上部は少し赤味を帯びます。

Fig.13 クロラッパタケ (西宮市 2016.10/8)
香りの良いキノコで日本では店頭に並びませんが、ヨーロッパなどでは人気のあるキノコです。
香りと独特の食感が楽しめます。

Fig.14 チチタケ (西宮市 2016.10/8)
1ヶ月前にクサハツが沢山出ていた土手でチチタケがまとまって出ていました。
よい出汁が出るキノコで、混ぜご飯にするとパサつきも気にならず、美味しく頂けます。

Fig.15 ニガイグチモドキ (西宮市 2016.10/8)
移動して別の森に入るとニガイグチモドキが群生していました。
美味しそうに見えるイグチの仲間ですが、強烈な苦味があります。

Fig.16 ニガイグチモドキの管孔部 (西宮市 2016.10/8)
管孔の網目が紫色を帯びるという、解りやすい特徴があります。

Fig.17 アカヤマドリ (西宮市 2016.10/8)
ちょうど食べ頃のサイズのものがありましたが、虫喰いが激しく、傘の内側もスカスカになっていました。濃厚な味と香りを持つキノコで、ヤマドリタケモドキに次ぐ美味しいキノコです。煮汁からは黄色い色素が出るため染色にも利用されます。

Fig.18 アンズタケ (西宮市 2016.10/8)
アンズの香りがし、フランスでは「ジロール」や「シャンテレル」などと呼ばれ人気のあるキノコですが、最近毒キノコとされました。チチアワタケにしろ、セイタカイグチにしろ、本種にしろ美味しいキノコが毒キノコとされていくものが多く残念ですが、量を控えながら未だに食べています。

Fig.19 カラカサタケ (西宮市 2016.10/8)
背丈の高い食用菌ですが、以前食べたところ腐葉土臭くてあまりいい印象がありません。
生えている場所によって匂いも変わるようで、当たり外れがあるのかもしれません。
ドクカラカサタケとは傷つけても赤変しないことにより区別できます。

Fig.20 カラカサタケの傘 (西宮市 2016.10/8)
濃褐色の鱗片が傘全体に散らばっています。

Fig.21 イナカギク (西宮市 2016.10/8)
帰りの林道脇で開花全盛でした。同じ林道脇ではノコンギクが咲き始め、つぼみをぶらさげたキクバヤマボクチも見られ、これからキク科の花が次々に開花しそうです。
関連ページ 関西の花・イナカギク
なお、キノコの利用は各自の責任でご利用ください。当方では一切責任を負えません。
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Fig.1 ミイノベニヤマタケ (西宮市 2016.10/6)
山道に入る前の林道脇に点々と出ていました。
傘に鱗片はなく、ベニヤマタケに似ていますが、色が薄く、湿ると傘の表面に粘性があります。

Fig.2 ダイダイイグチ (西宮市 2016.10/6)
夏の終わりから秋のはじめによく見かけるキノコで、ここでは最盛期のようで、あちこちに出ていました。傷つくとすみやかに青変するため手を出す人は少ないようですが、肉質は非常に緻密で歯応えのよいキノコです。

Fig.3 青変したダイダイイグチ (西宮市 2016.10/6)
裂いたり傷つけるとすぐに青変する。

Fig.4 ヤマドリタケモドキ (西宮市 2016.10/6)
このあたりではムラサキヤマドリタケに次いで美味しいキノコ。
そろそろこのキノコの時期も終わりです。

Fig.5 ヤマドリタケモドキの柄と管孔 (西宮市 2016.10/6)
柄には縦長の網目模様があり、管孔は緻密で白色で変色性はありません。

Fig.6 シコクママコナ (西宮市 2016.10/6)
この仲間は半寄生植物と言われていますが、痩せて表土の少ない尾根で生育しており、奇主らしきものは見られませんでした。
関連ページ 関西の花・シコクママコナ

Fig.7 この日の収穫 (西宮市 2016.10/6)
アカヤマドリ1本、ヤマドリタケモドキ3本、ヌメリコウジタケ少々、ダイダイイグチやや多。
このあたりのヌメリコウジタケは酸味がほとんどなく、ヌメリイグチのように美味しく食べれます。
ダイダイイグチは冷凍用と乾燥用に少し多めに採取。味や香りを比較してみます。

Fig.8 ヨシノアザミ (西宮市 2016.10/8)
森への農道脇でヨシノアザミが開花全盛でした。
西宮市では里山の林縁の湿った場所などでふつうに見られます。
関連ページ 関西の花・ヨシノアザミ

Fig.9 コメナモミ (西宮市 2016.10/8)
林道脇や農道脇の撹乱のあるような場所でよく見かけます。
ここではケフシグロ、ヒメキンミズヒキ、ベニバナボロギクなどと生育していました。

Fig.10 ミサキカグマ (西宮市 2016.10/8)
森の入口にある棚田の石垣に生育していました。
本種は探そうと思って見つかるものではなく、いつも偶然に眼にします。
関連ページ 関西の花/シダ・ミサキカグマ

Fig.11 テングツルタケ (西宮市 2016.10/8)
一見ヘビキノコモドキに似ていますが、柄にツバがないことで区別できます。

Fig.12 ミドリニガイグチ (西宮市 2016.10/8)
ヤマドリタケモドキがよく出ている場所に行きましたが、出ていたのは本種でした。
管孔は緻密、白色で変色性はなく、柄の網目は不明瞭なものが多く、柄の上部は少し赤味を帯びます。

Fig.13 クロラッパタケ (西宮市 2016.10/8)
香りの良いキノコで日本では店頭に並びませんが、ヨーロッパなどでは人気のあるキノコです。
香りと独特の食感が楽しめます。

Fig.14 チチタケ (西宮市 2016.10/8)
1ヶ月前にクサハツが沢山出ていた土手でチチタケがまとまって出ていました。
よい出汁が出るキノコで、混ぜご飯にするとパサつきも気にならず、美味しく頂けます。

Fig.15 ニガイグチモドキ (西宮市 2016.10/8)
移動して別の森に入るとニガイグチモドキが群生していました。
美味しそうに見えるイグチの仲間ですが、強烈な苦味があります。

Fig.16 ニガイグチモドキの管孔部 (西宮市 2016.10/8)
管孔の網目が紫色を帯びるという、解りやすい特徴があります。

Fig.17 アカヤマドリ (西宮市 2016.10/8)
ちょうど食べ頃のサイズのものがありましたが、虫喰いが激しく、傘の内側もスカスカになっていました。濃厚な味と香りを持つキノコで、ヤマドリタケモドキに次ぐ美味しいキノコです。煮汁からは黄色い色素が出るため染色にも利用されます。

Fig.18 アンズタケ (西宮市 2016.10/8)
アンズの香りがし、フランスでは「ジロール」や「シャンテレル」などと呼ばれ人気のあるキノコですが、最近毒キノコとされました。チチアワタケにしろ、セイタカイグチにしろ、本種にしろ美味しいキノコが毒キノコとされていくものが多く残念ですが、量を控えながら未だに食べています。

Fig.19 カラカサタケ (西宮市 2016.10/8)
背丈の高い食用菌ですが、以前食べたところ腐葉土臭くてあまりいい印象がありません。
生えている場所によって匂いも変わるようで、当たり外れがあるのかもしれません。
ドクカラカサタケとは傷つけても赤変しないことにより区別できます。

Fig.20 カラカサタケの傘 (西宮市 2016.10/8)
濃褐色の鱗片が傘全体に散らばっています。

Fig.21 イナカギク (西宮市 2016.10/8)
帰りの林道脇で開花全盛でした。同じ林道脇ではノコンギクが咲き始め、つぼみをぶらさげたキクバヤマボクチも見られ、これからキク科の花が次々に開花しそうです。
関連ページ 関西の花・イナカギク
category: 西宮の自然
雨上がりの森を歩けば -西宮の自然-
2016/09/30 Fri. 23:51 [edit]
このところ毎日降雨があり、遠出がはばかられますが、降雨の合間を縫って近場の森に出掛けています。長雨が続いているので、キノコが沢山出ていると予想できます。
下草の少ない森の中なら蚊の攻撃は受けるかもしれませんが、雨に濡れた草で衣服がびしょぬれになることはありません。長雨続きなので、普段見かけないキノコもありそうで、少し期待して出掛けました。
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Fig.1 オニイグチモドキ (西宮市 2016.9/26)
森の入口ですぐに出てきたのはオニイグチモドキでした。
オニイグチ、オニイグチモドキともに雑木林ではしばしば眼にするキノコです。
オニイグチよりも傘の上の突起は細かく、裏の管孔部を傷つけると赤くなった後に黒変します。

Fig.2 ベニヒガサ (西宮市 2016.9/26)
鮮やかな朱赤色のキノコは暗い林内でもよく目立ちます。
まるで蝋細工のような感じで、傘の上には非常に細かい鱗片があり、ひだは柄に垂生します。

Fig.3 ソライロタケ (西宮市 2016.9/26)
草本ではこのような青い色の花は珍しくありませんが、菌類でこの色は稀なものです。
花の青よりも少しケミカル系の色合いで、傷つけると黄変します。

Fig.4 オチバタケ (西宮市 2016.9/26)
ブレてしまいましたが、地表に落ちている経年したスギの果実から出ていました。
柄は針金のように細く、長く伸びていました。

Fig.5 ハナオチバタケ (西宮市 2016.9/26)
小さいながらもオレンジ色の美しいキノコでこれも林内で目立っていました。

Fig.6 カバイロツルタケ (西宮市 2016.9/26)
テングタケ科の中では数少ない食用菌です。
ツルタケに似ていますが、柄が褐色を帯びることで区別できます。
美味しい菌ということですが、キノコ狩りするほどの群生に出会ったことがありません。

Fig.7 セイタカイグチ (西宮市 2016.9/26)
老生して傘が褐色を帯びており、背丈は低いですがセイタカイグチです。
なかなか出会えないキノコで、これも長雨が続いたおかげでしょう。

Fig.8 セイタカイグチの柄と管孔部 (西宮市 2016.9/26)
柄の網目は惚れ惚れするほどの隆起具合です。
管孔部は黄色で、傷つけても色は変わりません。

Fig.9 ホウキタケの仲間 (西宮市 2016.9/26)
コホウキタケかウスムラサキホウキタケかと思うのですが、老菌で色褪せて区別できません。
基部からの分枝が多いのでコホウキタケのほうかもしれません。

Fig.10 ホコリタケの仲間 (西宮市 2016.9/26)
林道脇の落ち葉の溜まった場所で点在していました。
成熟して周辺には表面の刺状の突起が落ちていました。

Fig.11 キホコリタケ (西宮市 2016.9/26)
キホコリタケの未成熟なものが枯れ葉の間から出ていました。
最初は白色ですが、成熟するにつれて黄色を帯びていきます。

Fig.12 ドクベニタケとニッケイタケ (西宮市 2016.9/26)
これも林道脇の枯れ枝や落ち葉の溜まった場所に見られました。
ニッケイタケはもう少し大きくなると、傘に独特の模様が現れます。

Fig.13 ヤブレベニタケ (西宮市 2016.9/26)
ドクベニタケよりも大型で、柄が赤くなりますが、画像のものは降雨で柄の色が色褪せています。
傘が破れることが多く、傘の外周に接したひだが赤くなります。
可食ですが、まだ試してみたことはありません。

Fig.14 ヤマドリタケモドキ (西宮市 2016.9/26)
今日はこれが目当ての雑木林探査でもあります。
柄には網目模様が入りますが、柄全体にはっきり出るものから、柄上部に薄く出るものまで様々です。
根元からちらっと出ている黄色のものはナギナタタケです。

Fig.15 本日収穫分のヤマドリタケモドキ (西宮市 2016.9/26)
中央のやや大きなものは夕食のピザの具材となりました。それ以外のものはスライスして乾燥させます。乾燥させるとより香りよく、よい出汁がでるようになります。
なお、野生キノコの利用は自己責任でお願いします。自己流の判断は危険です。必ず熟達した人のもとで講習を受けて知識を集積した上でお試しください。

Fig.16 若いタマゴタケ (西宮市 2016.9/26)
タマゴタケはこの1本にだけ出会いました。
しばし撮影した後、採取せずに置いておきました。

Fig.17 ギンリョウソウモドキ (西宮市 2016.9/26)
降雨が多いと腐生植物も元気なようで、あちこちでギンリョウソウモドキが見られました。

Fig.18 アズキガイ (西宮市 2016.9/26)
アズキガイは京都・大阪・滋賀などでは絶滅危惧種となっていますが、西宮市ではよく見られます。
ふだんは落ち葉の下、木の洞、腐食した倒木の隙間に居ますが、雨後の濡れたアカメガシワの樹幹をはっていました。カタツムリ類と異なってフタを持っており、ニナ目に属しています。

Fig.19 センチコガネ (西宮市 2016.9/26)
センチコガネもまだまだ活発に活動していました。これは崩れかけたヤマドリタケモドキのそばにいたもので、腐りかけたキノコを食べていたのでしょうか?

Fig.20 マムシ (西宮市 2016.9/26)
湿地でよく見かけるマムシ君。湿度が高いためか森の中で見かけました。
胴体がくすんだ灰褐色をした温厚なほうのマムシで、野外で出会うと逃げていくマムシです。
胴体が赤褐色をしたものは少し小型で攻撃性が高く、野外で出会うと「シャー」という威嚇音を出して身構えます。西宮市内では温厚なマムシしか見たことがなく、赤味の強いマムシは内陸部で見かけます。

Fig.21 甌穴の連続する十八丁川 (西宮市 2016.9/26)
林内はあまりの高湿度で汗だくとなったので、涼しげな光景を求めて十八丁川(とはっちょうがわ)を訪れました。この川の河床は粘土質の砂礫層が広がっている区間があって、そこに連続した大きな甌穴が発達しています。上流から転がってきた花崗岩が、河床の一ヶ所で流水により回転して河床がえぐれたものです。甌穴は風呂よりも深いものがあり、清流とともに涼しげな光景が見られます。

Fig.22 ホシクサ (西宮市 2016.9/26)
帰途、ホシクサの生育する水田に立ち寄ってきました。
同所的に生育するアブノメ、ミズマツバ、ヒメミソハギとともに健在でした。
関連ページ 湿生植物・ホシクサ

Fig.23 ヌメリコウジタケ (西宮市 2016.9/28)
この日は昼の間3時間程雨がやんだので、家から車で5分、ごく近場での探査。
林内にはヌメリコウジタケが沢山出ていました。
傘は赤褐色で強い粘性があり、管孔部は鮮やかな黄色で傷つけても変色せず、解りやすい特徴を持っています。酸味があってまだ試していないが、ジュンサイなんかと組み合わせるといいかもしれません。

Fig.24 ブドウニガイグチ (西宮市 2016.9/28)
苦くて食用になりませんが、紫色を帯びた美しいイグチの仲間です。
管孔部は白色ですが、傷つけると褐色に変わり、見分けやすいキノコです。

Fig.25 若いキクバナイグチ (西宮市 2016.9/28)
赤紫色の色合いが美しく、管孔部は黄色で傷つけると青変する、これもわかりやすいイグチの仲間です。食用に利用できますが、ここでは若いものでも傘の内部まで食い荒らされ、残念ながら食べられるものはありませでした。

Fig.26 老成したキクバナイグチ (西宮市 2016.9/28)
成熟すると傘のささくれが菊花のように見えることからキクバナイグチと命名されました。
傘の裏の画像は黄色の管孔部と青変した部分を示したもの。

Fig.27 テングタケ属sp. (西宮市 2016.9/28)
シロウロコツルタケのような感じもあるし、スオウシロオニタケのような感じもあり、特定できません。傘のササクレが毛羽立たないAmanitaにフクロツルタケがありますが、肝心の根元の袋の確認をしていませんでした。

Fig.28 ヤグラタケ (西宮市 2016.9/28)
キノコの上に生える小さなキノコで、老成したクロハツの上から出ています。
注意していれば案外見つかるキノコです。

Fig.29 チョウジチチタケ (西宮市 2016.9/28)
渋い環紋を持った小さなキノコで、傷つけるとチチタケのような乳液を出します。
乾くと調味料のクローブ(丁字)のような臭いがあることから命名されました。

Fig.30 アシグロタケ (西宮市 2016.9/28)
硬いキノコで、ふつうは枯れ木上に群生していますが、1本だけが土中の枯れ木から出ていました。
乾燥させるとよい出汁が取れますが、1本だけ獲ってもしれているので、そのまま放置しました。

Fig.31 キツネノカラカサ (西宮市 2016.9/28)
キツネ絡みのキノコ3連発です。森の中でよく見かける小さなキノコ。
可食とありますが、小さいものなので手を出す気にはなれません。

Fig.32 キツネノハナガサ (西宮市 2016.9/28)
まだ幼菌で傘が開いておらず、マッチ棒が生えている感じに見えました。
2日前のものですが、もう崩れ去って無くなっているでしょう。

Fig.33 キツネノエフデ (西宮市 2016.9/28)
もうグレバは雨で流れ落ちて、子実体も倒伏していました。
よく似たものにコイヌノエフデ、キツネノタイマツ、キツネノロウソクがあってなかなか微妙です。
下草の少ない森の中なら蚊の攻撃は受けるかもしれませんが、雨に濡れた草で衣服がびしょぬれになることはありません。長雨続きなので、普段見かけないキノコもありそうで、少し期待して出掛けました。
*画像クリックで、別ウィンドで表示されます。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。

Fig.1 オニイグチモドキ (西宮市 2016.9/26)
森の入口ですぐに出てきたのはオニイグチモドキでした。
オニイグチ、オニイグチモドキともに雑木林ではしばしば眼にするキノコです。
オニイグチよりも傘の上の突起は細かく、裏の管孔部を傷つけると赤くなった後に黒変します。

Fig.2 ベニヒガサ (西宮市 2016.9/26)
鮮やかな朱赤色のキノコは暗い林内でもよく目立ちます。
まるで蝋細工のような感じで、傘の上には非常に細かい鱗片があり、ひだは柄に垂生します。

Fig.3 ソライロタケ (西宮市 2016.9/26)
草本ではこのような青い色の花は珍しくありませんが、菌類でこの色は稀なものです。
花の青よりも少しケミカル系の色合いで、傷つけると黄変します。

Fig.4 オチバタケ (西宮市 2016.9/26)
ブレてしまいましたが、地表に落ちている経年したスギの果実から出ていました。
柄は針金のように細く、長く伸びていました。

Fig.5 ハナオチバタケ (西宮市 2016.9/26)
小さいながらもオレンジ色の美しいキノコでこれも林内で目立っていました。

Fig.6 カバイロツルタケ (西宮市 2016.9/26)
テングタケ科の中では数少ない食用菌です。
ツルタケに似ていますが、柄が褐色を帯びることで区別できます。
美味しい菌ということですが、キノコ狩りするほどの群生に出会ったことがありません。

Fig.7 セイタカイグチ (西宮市 2016.9/26)
老生して傘が褐色を帯びており、背丈は低いですがセイタカイグチです。
なかなか出会えないキノコで、これも長雨が続いたおかげでしょう。

Fig.8 セイタカイグチの柄と管孔部 (西宮市 2016.9/26)
柄の網目は惚れ惚れするほどの隆起具合です。
管孔部は黄色で、傷つけても色は変わりません。

Fig.9 ホウキタケの仲間 (西宮市 2016.9/26)
コホウキタケかウスムラサキホウキタケかと思うのですが、老菌で色褪せて区別できません。
基部からの分枝が多いのでコホウキタケのほうかもしれません。

Fig.10 ホコリタケの仲間 (西宮市 2016.9/26)
林道脇の落ち葉の溜まった場所で点在していました。
成熟して周辺には表面の刺状の突起が落ちていました。

Fig.11 キホコリタケ (西宮市 2016.9/26)
キホコリタケの未成熟なものが枯れ葉の間から出ていました。
最初は白色ですが、成熟するにつれて黄色を帯びていきます。

Fig.12 ドクベニタケとニッケイタケ (西宮市 2016.9/26)
これも林道脇の枯れ枝や落ち葉の溜まった場所に見られました。
ニッケイタケはもう少し大きくなると、傘に独特の模様が現れます。

Fig.13 ヤブレベニタケ (西宮市 2016.9/26)
ドクベニタケよりも大型で、柄が赤くなりますが、画像のものは降雨で柄の色が色褪せています。
傘が破れることが多く、傘の外周に接したひだが赤くなります。
可食ですが、まだ試してみたことはありません。

Fig.14 ヤマドリタケモドキ (西宮市 2016.9/26)
今日はこれが目当ての雑木林探査でもあります。
柄には網目模様が入りますが、柄全体にはっきり出るものから、柄上部に薄く出るものまで様々です。
根元からちらっと出ている黄色のものはナギナタタケです。

Fig.15 本日収穫分のヤマドリタケモドキ (西宮市 2016.9/26)
中央のやや大きなものは夕食のピザの具材となりました。それ以外のものはスライスして乾燥させます。乾燥させるとより香りよく、よい出汁がでるようになります。
なお、野生キノコの利用は自己責任でお願いします。自己流の判断は危険です。必ず熟達した人のもとで講習を受けて知識を集積した上でお試しください。

Fig.16 若いタマゴタケ (西宮市 2016.9/26)
タマゴタケはこの1本にだけ出会いました。
しばし撮影した後、採取せずに置いておきました。

Fig.17 ギンリョウソウモドキ (西宮市 2016.9/26)
降雨が多いと腐生植物も元気なようで、あちこちでギンリョウソウモドキが見られました。

Fig.18 アズキガイ (西宮市 2016.9/26)
アズキガイは京都・大阪・滋賀などでは絶滅危惧種となっていますが、西宮市ではよく見られます。
ふだんは落ち葉の下、木の洞、腐食した倒木の隙間に居ますが、雨後の濡れたアカメガシワの樹幹をはっていました。カタツムリ類と異なってフタを持っており、ニナ目に属しています。

Fig.19 センチコガネ (西宮市 2016.9/26)
センチコガネもまだまだ活発に活動していました。これは崩れかけたヤマドリタケモドキのそばにいたもので、腐りかけたキノコを食べていたのでしょうか?

Fig.20 マムシ (西宮市 2016.9/26)
湿地でよく見かけるマムシ君。湿度が高いためか森の中で見かけました。
胴体がくすんだ灰褐色をした温厚なほうのマムシで、野外で出会うと逃げていくマムシです。
胴体が赤褐色をしたものは少し小型で攻撃性が高く、野外で出会うと「シャー」という威嚇音を出して身構えます。西宮市内では温厚なマムシしか見たことがなく、赤味の強いマムシは内陸部で見かけます。

Fig.21 甌穴の連続する十八丁川 (西宮市 2016.9/26)
林内はあまりの高湿度で汗だくとなったので、涼しげな光景を求めて十八丁川(とはっちょうがわ)を訪れました。この川の河床は粘土質の砂礫層が広がっている区間があって、そこに連続した大きな甌穴が発達しています。上流から転がってきた花崗岩が、河床の一ヶ所で流水により回転して河床がえぐれたものです。甌穴は風呂よりも深いものがあり、清流とともに涼しげな光景が見られます。

Fig.22 ホシクサ (西宮市 2016.9/26)
帰途、ホシクサの生育する水田に立ち寄ってきました。
同所的に生育するアブノメ、ミズマツバ、ヒメミソハギとともに健在でした。
関連ページ 湿生植物・ホシクサ

Fig.23 ヌメリコウジタケ (西宮市 2016.9/28)
この日は昼の間3時間程雨がやんだので、家から車で5分、ごく近場での探査。
林内にはヌメリコウジタケが沢山出ていました。
傘は赤褐色で強い粘性があり、管孔部は鮮やかな黄色で傷つけても変色せず、解りやすい特徴を持っています。酸味があってまだ試していないが、ジュンサイなんかと組み合わせるといいかもしれません。

Fig.24 ブドウニガイグチ (西宮市 2016.9/28)
苦くて食用になりませんが、紫色を帯びた美しいイグチの仲間です。
管孔部は白色ですが、傷つけると褐色に変わり、見分けやすいキノコです。

Fig.25 若いキクバナイグチ (西宮市 2016.9/28)
赤紫色の色合いが美しく、管孔部は黄色で傷つけると青変する、これもわかりやすいイグチの仲間です。食用に利用できますが、ここでは若いものでも傘の内部まで食い荒らされ、残念ながら食べられるものはありませでした。

Fig.26 老成したキクバナイグチ (西宮市 2016.9/28)
成熟すると傘のささくれが菊花のように見えることからキクバナイグチと命名されました。
傘の裏の画像は黄色の管孔部と青変した部分を示したもの。

Fig.27 テングタケ属sp. (西宮市 2016.9/28)
シロウロコツルタケのような感じもあるし、スオウシロオニタケのような感じもあり、特定できません。傘のササクレが毛羽立たないAmanitaにフクロツルタケがありますが、肝心の根元の袋の確認をしていませんでした。

Fig.28 ヤグラタケ (西宮市 2016.9/28)
キノコの上に生える小さなキノコで、老成したクロハツの上から出ています。
注意していれば案外見つかるキノコです。

Fig.29 チョウジチチタケ (西宮市 2016.9/28)
渋い環紋を持った小さなキノコで、傷つけるとチチタケのような乳液を出します。
乾くと調味料のクローブ(丁字)のような臭いがあることから命名されました。

Fig.30 アシグロタケ (西宮市 2016.9/28)
硬いキノコで、ふつうは枯れ木上に群生していますが、1本だけが土中の枯れ木から出ていました。
乾燥させるとよい出汁が取れますが、1本だけ獲ってもしれているので、そのまま放置しました。

Fig.31 キツネノカラカサ (西宮市 2016.9/28)
キツネ絡みのキノコ3連発です。森の中でよく見かける小さなキノコ。
可食とありますが、小さいものなので手を出す気にはなれません。

Fig.32 キツネノハナガサ (西宮市 2016.9/28)
まだ幼菌で傘が開いておらず、マッチ棒が生えている感じに見えました。
2日前のものですが、もう崩れ去って無くなっているでしょう。

Fig.33 キツネノエフデ (西宮市 2016.9/28)
もうグレバは雨で流れ落ちて、子実体も倒伏していました。
よく似たものにコイヌノエフデ、キツネノタイマツ、キツネノロウソクがあってなかなか微妙です。
category: 西宮の自然
西宮の自然 2016年 5~8月
2016/09/08 Thu. 02:11 [edit]
このところHPの充実に力を入れており、ブログの更新はおろそかになっていました。身近な西宮市内の観察も怠っていなかったのですが、あまり目新しいものはなく、画像が溜まるまで置いておきました。今年に入って年始から5月はほとんど外出できず、少しの観察記録。6月後半からは田植え直後に水田に発生するカイエビ、ホウネンエビ、カブトエビの分布調査を行いました。
7月はフィールドでの感覚を取り戻すため、身近な市内のフィールドに何度か出掛けて、行動範囲を広げていきました。
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FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
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Fig.1 クサノオウ (西宮市 2016.5/15)
西宮市中北部の船坂地区でのみ見られます。兵庫県下では緑色岩地に広く分布しています。
船坂周辺では花崗岩と凝灰岩が接触している地域で、凝灰岩中の成分が接触変性して石灰分が多くなった可能性が考えられます。この場所では西宮市内ではここでしか見られないナガバノヤノネグサなども生育しています。
関連ページ 関西の花・クサノオウ

Fig.2 ヤブウツギと訪花したコマルハナバチ (西宮市 2016.5/15)
兵庫県では六甲山系では淡紅色のタニウツギのほか、濃紅色のヤブウツギが分布しています。
コマルハナバチは初夏のハナバチで、雌は黒色で腹の先は朱色となります。
クロマルハナバチは体毛が短く、低地の草原性蜂類で、近年は減少しています。
関連ページ 関西の花・ヤブウツギ

Fig.3 ハラビロトンボ (西宮市 2016.5/15)
西宮市内では中~北部にふつうに見られるトンボです。
一見するとメスのように見えますが、羽化したばかりの未成熟なオスです。
これから黒化して、さらに淡青色になっていきます。

Fig.4 クモキリソウ (西宮市 2016.6/20)
夕方、少し時間があったので西宮市内の六甲山系東部にある谷に入ってみました。
谷の本流から支谷へ入る林床にクモキリソウが点在していました。
西宮市内では2次林のやや湿った林床でよく見かけます。
関連ページ 関西の花・クモキリソウ

Fig.5 ヒメワラビ (西宮市 2016.6/20)
木漏れ日の当たる渓流畔にヒメワラビが多数生育していました。
本来は明るい場所を好むシダなので、このまま樹木が生長するとやがては消える運命です。
関連ページ 関西の花/シダ・ヒメワラビ

Fig.6 トゲヤマイヌワラビ (西宮市 2016.6/20)
ヤマイヌワラビの1型。羽軸表面のトゲが顕著なもので、小羽片は混みあってつき、六甲山系ではよく見られます。
関連ページ 関西の花/シダ・ヤマイヌワラビ

Fig.7 ルリハムシ (西宮市 2016.6/20)
砂防ダム上の川原に生育するオオバヤシャブシの葉上にルリハムシがいました。
カバノキ科の樹木を広くホストとする美しいハムシです。
Fig.8 砂防ダムの溜まり (西宮市 2016.6/20)
周辺の樹木にはモリアオガエルの卵塊が多く、水中に孵化したオタマジャクシが見られ、水面にはミズスマシが泳いでいます。ミズスマシは画像では捉えにくいので動画にしました。

Fig.9 エゴノネコアシ (西宮市 2016.6/27)
今年もいろいろな場所でエゴノネコアシが見られました。
エゴノネコアシは虫えいで、中にエゴノネコアシアブラムシの棲家になっています。

Fig.10 アカクビナガハムシ (西宮市 2016.6/27)
この時期に食痕のあるサルトリイバラをよく観察すると、アカクビナガハムシが見つかります。
シオデ、ヤマカシュウの葉上にもよく見られます。
関連ページ 関西の花・ヤマカシュウ

Fig.11 クチベニマイマイ (西宮市 2016.6/27)
西宮市内ではナミマイマイとともに分布する大型のカタツムリです。
晴天が続く中、葉にピッタリとくっつき、身体を貝殻の奥のほうに引っ込めています。

Fig.12 イチモンジカメノコハムシの幼虫 (西宮市 2016.6/27)
ムラサキシキブの葉上に特徴的な幼虫が見られました。脱皮殻や糞を背負ってゴミのようにカモフラージュしていますが、この特徴を知っていると見つけやすいものです。

Fig.13 カシルリオトシブミ (西宮市 2016.6/27)
コナラなどの葉上でふつうに見られる甲虫ですが、ここではエビヅルやヨモギの葉上で沢山見られました。小さいながらも美しいオトシブミです。

Fig.14 群生するノアザミ (西宮市 2016.6/27)
里山の田園地帯に移動すると、ノアザミが開花全盛でした。
土手では草刈りが始まっており、やがてはきれいに刈り取られてしまうのでしょう。
関連ページ 湿生植物・ノアザミ

Fig.15 訪花したトラマルハナバチ (西宮市 2016.6/27)
ふわふわの可愛いこのハチは送粉者として大活躍です。

Fig.16 ミゾカクシ (西宮市 2016.6/27)
どこにでもある雑草ですが、休耕田で群生開花する姿は美しいものです。
関連ページ 湿生植物・ミゾカクシ

Fig.17 ヒロハノコウガイゼキショウ (西宮市 2016.6/27)
休耕田にコウガイゼキショウに混じって点々と生えていました。
関連ページ 湿生植物・ヒロハノコウガイゼキショウ

Fig.18 イチョウウキゴケ (西宮市 2016.6/27)
ミズオオバコが新葉を広げつつある休耕田ではイチョウウキゴケも生育していました。
陸生状態なので、胞子嚢をつくるか期待したいものです。
関連ページ 浮遊植物・イチョウウキゴケ

Fig.19 ミズユキノシタ (西宮市 2016.6/27)
西宮市内では自生地が限られる湿生植物です。水槽で水に沈ませて育てると美しい姿となるので、アクアリウムで使われます。
ここでは多湿な旧畑作地に生育しています。隣で小さな花をつけているのはトウバナ。
関連ページ 湿生植物・ミズユキノシタ

Fig.20 フタトゲチマダニ (西宮市 2016.6/27)
シダを見にちょっとした草地に入ると、ズボンに3匹たかっていました。
付近はイノシシの多い場所なので、マダニが沢山いても不思議ではありません。
マダニ類は3回吸血すると、千~数千匹の稚ダニを生みます。
薄い色の衣服を着ていれば、たかられても発見が容易です。

Fig.21 黒穂病のクサヨシ (西宮市 2016.6/27)
麦角菌に罹災したもので、麦角アルカロイドにより毒性がありますが、薬用にもされます。
イネ科草本でよく見かけますが、スゲなどのカヤツリグサ科でも時々見かけます。
関連ページ 湿生植物・クサヨシ

Fig.22 ハイイロゲンゴロウ (西宮市 2016.6/27)
水田で最もふつうに見られるゲンゴロウの仲間です。
水面から直接飛び立ってよく飛翔し、時々翅をブーブー鳴らします。

Fig.23 ネジバナ (西宮市 2016.6/27)
水田の畦で沢山開花していました。今回はアップ画像で。
関連ページ 関西の花・ネジバナ

Fig.24 カワラマツバ (西宮市 2016.6/27)
西宮市北部の水田の土手や堤防でよく見られる草原性植物です。
ここでは農地の土手で旺盛に生育し、沢山の花をつけていました。

Fig.25 ネムノキ (西宮市 2016.6/27)
里山の土手で開花中でした。
そろそろ日も傾き、これから葉が閉じようかというところです。

Fig.26 ホウネンエビ (西宮市 2016.6/27)
カイエビやホウネンエビが沢山見られた水田が休耕田となったので、他の場所で見られないか探したところ、北部の水田5ヶ所で生息していました。谷津の奥の水田では水温が低いためか生息しておらず、谷津の下のほうの水田で見られました。
この水田ではホウネンエビ、カイエビ、チスイビル、ハイイロゲンゴロウ、コガムシが見られました。

Fig.27 タイコウチ幼生 (西宮市 2016.6/27)
一方で谷津奥の水田ではタイコウチの幼生が見られました。
この水田の素掘り排水路ではヒツジグサやヘラオモダカが生育しています。

Fig.28 ミズスギ (西宮市 2016.6/27)
棚田の土手の急で被植の少ない斜面ではミズスギが見られます。
兵庫県版RDBではCランクとされています。胞子嚢穂はまだ上がっていません。
関連ページ 湿生植物・ミズスギ

Fig.29 オミナエシ (西宮市 2016.6/27)
秋の七草として知られますが、6月の終わり頃から開花し始めます。
草地環境の遷移から減少しつつある種です。
関連ページ 湿生植物・オミナエシ

Fig.30 谷津奥の溜池 (西宮市 2016.6/27)
西宮市北部ではこのような溜池がまだ点在していて、潅漑用に機能している池もあります。
池にはご他聞に漏れずブラックバスが棲みついていますが、稀少な湿生植物も見られます。
画像手前側には浮葉植物のジュンサイが生育しています。
関連ページ 浮葉植物・ジュンサイ

Fig.31 シズイ (西宮市 2016.6/27)
シズイはカヤツリグサ科の抽水植物で、兵庫県版RDBではBランクとされ減少傾向にあります。
西宮市では2ヶ所の溜池で生育しています。
関連ページ 抽水植物・シズイ

Fig.32 オニヤンマ (西宮市 2016.6/27)
まだ複眼が緑色に色付いていない、未成熟なオニヤンマが木陰で休んでいました。
西宮市北部では比較的ふつうに見られます。

Fig.33 キイトトンボ? (西宮市 2016.6/27)
まだ色付いていないキイトトンボでしょうか?
アジアイトトンボではないので、残るはベニイトトンボかキイトトンボということになりますが・・・

Fig.34 ヤナギチビタマムシ (西宮市 2016.6/27)
アカメヤナギの低木の葉上でヤナギチビタマムシが食事中でした。
チビタマムシの中では比較的よく見かける種です。

Fig.35 ヤブカンゾウ (西宮市 2016.7/2)
谷筋の入口の土手でヤブカンゾウが開花しはじめていました。
つぼみはほんのり甘味があって美味しいので、よく献立に利用しています。
眼を付けていた群生地が開花前にさっぱり草刈りされて、悔しい思いをすることがよくあります。
関連ページ 関西の花・ヤブカンゾウ

Fig.36 オカトラノオ (西宮市 2016.7/2)
林縁ではオカトラノオが満開でした。
関連ページ 関西の花・オカトラノオ

Fig.37 マンネンタケ (西宮市 2016.7/2)
昨年に出た子実体の脇から、新しい子実体がでてきていました。
「霊芝(れいし)」と呼ばれて薬用として珍重されますが、それほど稀なものではありません。

Fig.38 ジャコウアゲハの前蛹 (西宮市 2016.7/2)
社寺境内の机の足でジャコウアゲハの前蛹を見つけました。西宮市内にはホストとなるアリマウマノスズクサが多産するので、所々でジャコウアゲハが発生しています。
関連ページ 関西の花・アリマウマノスズクサ

Fig.39 ミドリリンガ (西宮市 2016.7/2)
前翅が緑色、後翅が褐色の美しい蛾で、アラカシをホストとします。
道路の下をくぐる隧道の壁面で静止していました。

Fig.40 谷津の小さな溜池 (西宮市 2016.7/2)
小さな溜池ですが、周囲の樹木にはモリアオガエルの卵塊が沢山ぶら下がり、水中にはミナミメダカ(ニホンメダカ)が生育し、水面をフトヒルムシロとジュンサイ、ヒツジグサが覆い、ハデフラスコモの生育も確認しています。

Fig.41 ノギラン (西宮市 2016.7/2)
ノギランは水田の土手や用水路脇などの湿った場所でよく見られます。
今回は用水路に倒れこんだ花序のアップ画像で。
関連ページ 湿生植物・ノギラン

Fig.42 カイエビ (西宮市 2016.7/2)
水田を覗き込むとカイエビが沢山泳いでいました。
カブトエビやホウネンエビと違って、西宮市内の水田ではまだまだあちこちで見ることができます。
短いながら動画もUPしてみました。

Fig.43 カブトエビ (西宮市 2016.7/4)
ホウネンエビが健在なのが分かったので、ではカブトエビはどうなのか?と思い、平野部の水田を調べました。西宮市中部~南部の水田をかなり廻りましたが、確認できたのはわずか2枚の水田のみでした。平野部では水田が急速に無くなっているので、いずれ見れなくなる生き物のひとつでしょう。この水田は武庫川から水を引いており、水田内にミナミヌマエビが見られました。
画像とは別のもう1ヶ所の水田のものを動画にしました。

Fig.44 ミズハコベ (西宮市 2016.7/7)
近所の水田跡を散歩していると、水の溜まった溝の中でミズハコベが生育していました。
ミズハコベは西宮市内ではあまり見られない水田雑草で、湧水の湧くような場所に生育します。
ここも恐らく湧水がでているのでしょう。溝の中にはヤナギゴケも生育していました。
関連ページ 湿生植物・ミズハコベ

Fig.45 ミドリヒメワラビ (西宮市 2016.7/23)
西宮市ではまだミドリヒメワラビの記録が無かったので、以前見つけた里山の自生地に標本を採りに行きました。やや湿った半日陰に生育していることが多く、形は前出のヒメワラビに酷似します。
周囲にはミゾシダ、ヒメシダ、アオミズ、ミズタマソウ、ニョイスミレ、ミツバなどが生育していました。
関連ページ 関西の花/シダ・ミドリヒメワラビ

Fig.46 サトキマダラヒカゲ (西宮市 2016.7/23)
バッタにサトクダマキモドキとヤマクダマキモドキがあるように、チョウにもサトキマダラヒカゲとヤマキマダラヒカゲがあります。
サトキマダラヒカゲは丘陵や低山に、ヤマキマダラヒカゲはやや高所に生息しています。
いつも忙しく飛び回っては藪に入ってしまい、なかなか撮影させてくれないチョウです。

Fig.47 ヘラオオバコとモンキチョウ (西宮市 2016.7/23)
河川の堤防で帰化植物のヘラオオバコにモンキチョウが止まっていました。
どうも口吻が伸びている様子はなさそうで、吸蜜しているのではなさそうです。

Fig.48 コシンジュガヤ (西宮市 2016.8/10)
今年はトリゲモ類の調査に本腰を入れていて、そろそろシーズンなので西宮市内の水田を探査しました。水田の畦では真っ白で可愛い実をつけるコシンジュガヤがお出迎え。
兵庫県では珍しくも無い種ですが、多くの都府県で絶滅危惧種に指定されています。
関連ページ 湿生植物・コシンジュガヤ

Fig.49 クルマバナ (西宮市 2016.8/10)
用水路脇で草刈りに遭いながらも可憐な花を咲かせていました。
関連ページ 関西の花・クルマバナ

Fig.50 ミズオオバコ (西宮市 2016.8/10)
西宮市内でも減農薬のため数多くの水田でミズオオバコが見られるようになってきました。
この水田では畦と稲の間をびっしりと埋めるほど群生していました。
関連ページ 沈水植物・ミズオオバコ

Fig.51 ミズオオバコ群落 (西宮市 2016.8/10)
このような群落を西宮市内で見るのは初めてです。
このような水田では必ず数種のトリゲモ類が生育しているものです。

Fig.52 イトトリゲモ (西宮市 2016.8/10)
上記の水田にホッスモとともに生育していました。
イトトリゲモは環境省の準絶滅危惧、兵庫県版RDBではCランクとされています。
糸状の細い葉が5輪性状につくこと、各節に2個の果実がつくことによって、この仲間では比較的見分けやすい種です。
関連ページ 沈水植物・イトトリゲモ

Fig.53 スズメウリ (西宮市 2016.8/10)
ヨシ、ガマ、アゼナルコが茂った休耕田に、他物に絡みつくようにスズメウリが生育していました。
すでに未熟な果実を沢山つけていました。
関連ページ 湿生植物・スズメウリ

Fig.54 コヤブラン (西宮市 2016.8/18)
いつも開花を逃している西宮市内にあるコヤブランの様子を見に行ってきました。
ネザサを掻き分けてみると、あまり花茎は上がっておらず、どうもパッとしません。
画像もあまりパッとしないものになってしまいました。
自生地は少なく、兵庫県版RDBではCランクとなっています。

Fig.55 イガガヤツリ (西宮市 2016.8/22)
昨年見つけた社寺境内のイガガヤツリの様子を見に出掛けてきました。
一部草むしりされていましたが、広場の外部にも進出して生育領域が広がっており安泰でした。
関連ページ 湿生植物・イガガヤツリ

Fig.56 ウリクサ (西宮市 2016.8/22)
イガガヤツリの周りの踏み付けに遭うような場所に、広く生育していました。
ここには外来種のニワサキタネツケバナが生育していますが、時期的に休眠期なのか、ほとんど確認できませんでした。
関連ページ 湿生植物・ウリクサ

Fig.57 コヒロハハナヤスリ (西宮市 2016.8/22)
同じ境内にあるコヒロハハナヤスリも、胞子嚢穂を上げて元気に生育していました。
西宮市内では自生箇所が少ない小型のシダ植物です。
関連ページ 湿生植物・コヒロハハナヤスリ

Fig.58 市内北部の水田 (西宮市 2016.8/22)
ミズオオバコ、オモダカ、ミゾハコベがいい風情で生育し自然のビオトープになっています。
ここではかつてヒロハトリゲモが見られましたが、近年確認できていません。
水田に生育する1年性の水草は消長が極端で、ある年埋土種子から突然発生したりします。

Fig.59 クログワイ (西宮市 2016.8/22)
隣の水田では嫌われ者の水田雑草クログワイが小穂を上げ、雌性期を終えていました。
関連ページ 抽水植物・クログワイ

Fig.60 キカシグサとミズマツバ (西宮市 2016.8/22)
キカシグサは環境の良い水田の指標となる水田雑草です。
ミズマツバは圃場整備や除草剤などで減少傾向にあり、兵庫県版RDBではCランクとされています。
関連ページ 湿生植物・キカシグサ
関連ページ 湿生植物・ミズマツバ

Fig.61 ミソハギ群落 (西宮市 2016.8/22)
スズサイコの開花を待って、夕闇が迫るまで田園地帯を散策すると、休耕田でミソハギの大きな群落がありました。以前は点々と生育している程度でしたが、耕作放棄後の条件があっていたのか群生するようになっていました。ミソハギの名は、酒に漬けてそれを振って場所を清める「禊ぎ萩」が由来です。
関連ページ 湿生植物・ミソハギ

Fig.62 スズサイコ (西宮市 2016.8/22)
スズサイコは草原環境の減少によって絶滅が危惧されていて、環境省の準絶滅危惧、全国では兵庫県と長野県を除いた各都道府県で絶滅危惧種に指定されていますが、西宮市をはじめとした兵庫県各地で比較的ふつうに見られます。花は夕方~早朝の夜間に開花し、日中の開花は見れません。
関連ページ 関西の花・スズサイコ
7月はフィールドでの感覚を取り戻すため、身近な市内のフィールドに何度か出掛けて、行動範囲を広げていきました。
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Fig.1 クサノオウ (西宮市 2016.5/15)
西宮市中北部の船坂地区でのみ見られます。兵庫県下では緑色岩地に広く分布しています。
船坂周辺では花崗岩と凝灰岩が接触している地域で、凝灰岩中の成分が接触変性して石灰分が多くなった可能性が考えられます。この場所では西宮市内ではここでしか見られないナガバノヤノネグサなども生育しています。
関連ページ 関西の花・クサノオウ

Fig.2 ヤブウツギと訪花したコマルハナバチ (西宮市 2016.5/15)
兵庫県では六甲山系では淡紅色のタニウツギのほか、濃紅色のヤブウツギが分布しています。
コマルハナバチは初夏のハナバチで、雌は黒色で腹の先は朱色となります。
クロマルハナバチは体毛が短く、低地の草原性蜂類で、近年は減少しています。
関連ページ 関西の花・ヤブウツギ

Fig.3 ハラビロトンボ (西宮市 2016.5/15)
西宮市内では中~北部にふつうに見られるトンボです。
一見するとメスのように見えますが、羽化したばかりの未成熟なオスです。
これから黒化して、さらに淡青色になっていきます。

Fig.4 クモキリソウ (西宮市 2016.6/20)
夕方、少し時間があったので西宮市内の六甲山系東部にある谷に入ってみました。
谷の本流から支谷へ入る林床にクモキリソウが点在していました。
西宮市内では2次林のやや湿った林床でよく見かけます。
関連ページ 関西の花・クモキリソウ

Fig.5 ヒメワラビ (西宮市 2016.6/20)
木漏れ日の当たる渓流畔にヒメワラビが多数生育していました。
本来は明るい場所を好むシダなので、このまま樹木が生長するとやがては消える運命です。
関連ページ 関西の花/シダ・ヒメワラビ

Fig.6 トゲヤマイヌワラビ (西宮市 2016.6/20)
ヤマイヌワラビの1型。羽軸表面のトゲが顕著なもので、小羽片は混みあってつき、六甲山系ではよく見られます。
関連ページ 関西の花/シダ・ヤマイヌワラビ

Fig.7 ルリハムシ (西宮市 2016.6/20)
砂防ダム上の川原に生育するオオバヤシャブシの葉上にルリハムシがいました。
カバノキ科の樹木を広くホストとする美しいハムシです。
Fig.8 砂防ダムの溜まり (西宮市 2016.6/20)
周辺の樹木にはモリアオガエルの卵塊が多く、水中に孵化したオタマジャクシが見られ、水面にはミズスマシが泳いでいます。ミズスマシは画像では捉えにくいので動画にしました。

Fig.9 エゴノネコアシ (西宮市 2016.6/27)
今年もいろいろな場所でエゴノネコアシが見られました。
エゴノネコアシは虫えいで、中にエゴノネコアシアブラムシの棲家になっています。

Fig.10 アカクビナガハムシ (西宮市 2016.6/27)
この時期に食痕のあるサルトリイバラをよく観察すると、アカクビナガハムシが見つかります。
シオデ、ヤマカシュウの葉上にもよく見られます。
関連ページ 関西の花・ヤマカシュウ

Fig.11 クチベニマイマイ (西宮市 2016.6/27)
西宮市内ではナミマイマイとともに分布する大型のカタツムリです。
晴天が続く中、葉にピッタリとくっつき、身体を貝殻の奥のほうに引っ込めています。

Fig.12 イチモンジカメノコハムシの幼虫 (西宮市 2016.6/27)
ムラサキシキブの葉上に特徴的な幼虫が見られました。脱皮殻や糞を背負ってゴミのようにカモフラージュしていますが、この特徴を知っていると見つけやすいものです。

Fig.13 カシルリオトシブミ (西宮市 2016.6/27)
コナラなどの葉上でふつうに見られる甲虫ですが、ここではエビヅルやヨモギの葉上で沢山見られました。小さいながらも美しいオトシブミです。

Fig.14 群生するノアザミ (西宮市 2016.6/27)
里山の田園地帯に移動すると、ノアザミが開花全盛でした。
土手では草刈りが始まっており、やがてはきれいに刈り取られてしまうのでしょう。
関連ページ 湿生植物・ノアザミ

Fig.15 訪花したトラマルハナバチ (西宮市 2016.6/27)
ふわふわの可愛いこのハチは送粉者として大活躍です。

Fig.16 ミゾカクシ (西宮市 2016.6/27)
どこにでもある雑草ですが、休耕田で群生開花する姿は美しいものです。
関連ページ 湿生植物・ミゾカクシ

Fig.17 ヒロハノコウガイゼキショウ (西宮市 2016.6/27)
休耕田にコウガイゼキショウに混じって点々と生えていました。
関連ページ 湿生植物・ヒロハノコウガイゼキショウ

Fig.18 イチョウウキゴケ (西宮市 2016.6/27)
ミズオオバコが新葉を広げつつある休耕田ではイチョウウキゴケも生育していました。
陸生状態なので、胞子嚢をつくるか期待したいものです。
関連ページ 浮遊植物・イチョウウキゴケ

Fig.19 ミズユキノシタ (西宮市 2016.6/27)
西宮市内では自生地が限られる湿生植物です。水槽で水に沈ませて育てると美しい姿となるので、アクアリウムで使われます。
ここでは多湿な旧畑作地に生育しています。隣で小さな花をつけているのはトウバナ。
関連ページ 湿生植物・ミズユキノシタ

Fig.20 フタトゲチマダニ (西宮市 2016.6/27)
シダを見にちょっとした草地に入ると、ズボンに3匹たかっていました。
付近はイノシシの多い場所なので、マダニが沢山いても不思議ではありません。
マダニ類は3回吸血すると、千~数千匹の稚ダニを生みます。
薄い色の衣服を着ていれば、たかられても発見が容易です。

Fig.21 黒穂病のクサヨシ (西宮市 2016.6/27)
麦角菌に罹災したもので、麦角アルカロイドにより毒性がありますが、薬用にもされます。
イネ科草本でよく見かけますが、スゲなどのカヤツリグサ科でも時々見かけます。
関連ページ 湿生植物・クサヨシ

Fig.22 ハイイロゲンゴロウ (西宮市 2016.6/27)
水田で最もふつうに見られるゲンゴロウの仲間です。
水面から直接飛び立ってよく飛翔し、時々翅をブーブー鳴らします。

Fig.23 ネジバナ (西宮市 2016.6/27)
水田の畦で沢山開花していました。今回はアップ画像で。
関連ページ 関西の花・ネジバナ

Fig.24 カワラマツバ (西宮市 2016.6/27)
西宮市北部の水田の土手や堤防でよく見られる草原性植物です。
ここでは農地の土手で旺盛に生育し、沢山の花をつけていました。

Fig.25 ネムノキ (西宮市 2016.6/27)
里山の土手で開花中でした。
そろそろ日も傾き、これから葉が閉じようかというところです。

Fig.26 ホウネンエビ (西宮市 2016.6/27)
カイエビやホウネンエビが沢山見られた水田が休耕田となったので、他の場所で見られないか探したところ、北部の水田5ヶ所で生息していました。谷津の奥の水田では水温が低いためか生息しておらず、谷津の下のほうの水田で見られました。
この水田ではホウネンエビ、カイエビ、チスイビル、ハイイロゲンゴロウ、コガムシが見られました。

Fig.27 タイコウチ幼生 (西宮市 2016.6/27)
一方で谷津奥の水田ではタイコウチの幼生が見られました。
この水田の素掘り排水路ではヒツジグサやヘラオモダカが生育しています。

Fig.28 ミズスギ (西宮市 2016.6/27)
棚田の土手の急で被植の少ない斜面ではミズスギが見られます。
兵庫県版RDBではCランクとされています。胞子嚢穂はまだ上がっていません。
関連ページ 湿生植物・ミズスギ

Fig.29 オミナエシ (西宮市 2016.6/27)
秋の七草として知られますが、6月の終わり頃から開花し始めます。
草地環境の遷移から減少しつつある種です。
関連ページ 湿生植物・オミナエシ

Fig.30 谷津奥の溜池 (西宮市 2016.6/27)
西宮市北部ではこのような溜池がまだ点在していて、潅漑用に機能している池もあります。
池にはご他聞に漏れずブラックバスが棲みついていますが、稀少な湿生植物も見られます。
画像手前側には浮葉植物のジュンサイが生育しています。
関連ページ 浮葉植物・ジュンサイ

Fig.31 シズイ (西宮市 2016.6/27)
シズイはカヤツリグサ科の抽水植物で、兵庫県版RDBではBランクとされ減少傾向にあります。
西宮市では2ヶ所の溜池で生育しています。
関連ページ 抽水植物・シズイ

Fig.32 オニヤンマ (西宮市 2016.6/27)
まだ複眼が緑色に色付いていない、未成熟なオニヤンマが木陰で休んでいました。
西宮市北部では比較的ふつうに見られます。

Fig.33 キイトトンボ? (西宮市 2016.6/27)
まだ色付いていないキイトトンボでしょうか?
アジアイトトンボではないので、残るはベニイトトンボかキイトトンボということになりますが・・・

Fig.34 ヤナギチビタマムシ (西宮市 2016.6/27)
アカメヤナギの低木の葉上でヤナギチビタマムシが食事中でした。
チビタマムシの中では比較的よく見かける種です。

Fig.35 ヤブカンゾウ (西宮市 2016.7/2)
谷筋の入口の土手でヤブカンゾウが開花しはじめていました。
つぼみはほんのり甘味があって美味しいので、よく献立に利用しています。
眼を付けていた群生地が開花前にさっぱり草刈りされて、悔しい思いをすることがよくあります。
関連ページ 関西の花・ヤブカンゾウ

Fig.36 オカトラノオ (西宮市 2016.7/2)
林縁ではオカトラノオが満開でした。
関連ページ 関西の花・オカトラノオ

Fig.37 マンネンタケ (西宮市 2016.7/2)
昨年に出た子実体の脇から、新しい子実体がでてきていました。
「霊芝(れいし)」と呼ばれて薬用として珍重されますが、それほど稀なものではありません。

Fig.38 ジャコウアゲハの前蛹 (西宮市 2016.7/2)
社寺境内の机の足でジャコウアゲハの前蛹を見つけました。西宮市内にはホストとなるアリマウマノスズクサが多産するので、所々でジャコウアゲハが発生しています。
関連ページ 関西の花・アリマウマノスズクサ

Fig.39 ミドリリンガ (西宮市 2016.7/2)
前翅が緑色、後翅が褐色の美しい蛾で、アラカシをホストとします。
道路の下をくぐる隧道の壁面で静止していました。

Fig.40 谷津の小さな溜池 (西宮市 2016.7/2)
小さな溜池ですが、周囲の樹木にはモリアオガエルの卵塊が沢山ぶら下がり、水中にはミナミメダカ(ニホンメダカ)が生育し、水面をフトヒルムシロとジュンサイ、ヒツジグサが覆い、ハデフラスコモの生育も確認しています。

Fig.41 ノギラン (西宮市 2016.7/2)
ノギランは水田の土手や用水路脇などの湿った場所でよく見られます。
今回は用水路に倒れこんだ花序のアップ画像で。
関連ページ 湿生植物・ノギラン

Fig.42 カイエビ (西宮市 2016.7/2)
水田を覗き込むとカイエビが沢山泳いでいました。
カブトエビやホウネンエビと違って、西宮市内の水田ではまだまだあちこちで見ることができます。
短いながら動画もUPしてみました。

Fig.43 カブトエビ (西宮市 2016.7/4)
ホウネンエビが健在なのが分かったので、ではカブトエビはどうなのか?と思い、平野部の水田を調べました。西宮市中部~南部の水田をかなり廻りましたが、確認できたのはわずか2枚の水田のみでした。平野部では水田が急速に無くなっているので、いずれ見れなくなる生き物のひとつでしょう。この水田は武庫川から水を引いており、水田内にミナミヌマエビが見られました。
画像とは別のもう1ヶ所の水田のものを動画にしました。

Fig.44 ミズハコベ (西宮市 2016.7/7)
近所の水田跡を散歩していると、水の溜まった溝の中でミズハコベが生育していました。
ミズハコベは西宮市内ではあまり見られない水田雑草で、湧水の湧くような場所に生育します。
ここも恐らく湧水がでているのでしょう。溝の中にはヤナギゴケも生育していました。
関連ページ 湿生植物・ミズハコベ

Fig.45 ミドリヒメワラビ (西宮市 2016.7/23)
西宮市ではまだミドリヒメワラビの記録が無かったので、以前見つけた里山の自生地に標本を採りに行きました。やや湿った半日陰に生育していることが多く、形は前出のヒメワラビに酷似します。
周囲にはミゾシダ、ヒメシダ、アオミズ、ミズタマソウ、ニョイスミレ、ミツバなどが生育していました。
関連ページ 関西の花/シダ・ミドリヒメワラビ

Fig.46 サトキマダラヒカゲ (西宮市 2016.7/23)
バッタにサトクダマキモドキとヤマクダマキモドキがあるように、チョウにもサトキマダラヒカゲとヤマキマダラヒカゲがあります。
サトキマダラヒカゲは丘陵や低山に、ヤマキマダラヒカゲはやや高所に生息しています。
いつも忙しく飛び回っては藪に入ってしまい、なかなか撮影させてくれないチョウです。

Fig.47 ヘラオオバコとモンキチョウ (西宮市 2016.7/23)
河川の堤防で帰化植物のヘラオオバコにモンキチョウが止まっていました。
どうも口吻が伸びている様子はなさそうで、吸蜜しているのではなさそうです。

Fig.48 コシンジュガヤ (西宮市 2016.8/10)
今年はトリゲモ類の調査に本腰を入れていて、そろそろシーズンなので西宮市内の水田を探査しました。水田の畦では真っ白で可愛い実をつけるコシンジュガヤがお出迎え。
兵庫県では珍しくも無い種ですが、多くの都府県で絶滅危惧種に指定されています。
関連ページ 湿生植物・コシンジュガヤ

Fig.49 クルマバナ (西宮市 2016.8/10)
用水路脇で草刈りに遭いながらも可憐な花を咲かせていました。
関連ページ 関西の花・クルマバナ

Fig.50 ミズオオバコ (西宮市 2016.8/10)
西宮市内でも減農薬のため数多くの水田でミズオオバコが見られるようになってきました。
この水田では畦と稲の間をびっしりと埋めるほど群生していました。
関連ページ 沈水植物・ミズオオバコ

Fig.51 ミズオオバコ群落 (西宮市 2016.8/10)
このような群落を西宮市内で見るのは初めてです。
このような水田では必ず数種のトリゲモ類が生育しているものです。

Fig.52 イトトリゲモ (西宮市 2016.8/10)
上記の水田にホッスモとともに生育していました。
イトトリゲモは環境省の準絶滅危惧、兵庫県版RDBではCランクとされています。
糸状の細い葉が5輪性状につくこと、各節に2個の果実がつくことによって、この仲間では比較的見分けやすい種です。
関連ページ 沈水植物・イトトリゲモ

Fig.53 スズメウリ (西宮市 2016.8/10)
ヨシ、ガマ、アゼナルコが茂った休耕田に、他物に絡みつくようにスズメウリが生育していました。
すでに未熟な果実を沢山つけていました。
関連ページ 湿生植物・スズメウリ

Fig.54 コヤブラン (西宮市 2016.8/18)
いつも開花を逃している西宮市内にあるコヤブランの様子を見に行ってきました。
ネザサを掻き分けてみると、あまり花茎は上がっておらず、どうもパッとしません。
画像もあまりパッとしないものになってしまいました。
自生地は少なく、兵庫県版RDBではCランクとなっています。

Fig.55 イガガヤツリ (西宮市 2016.8/22)
昨年見つけた社寺境内のイガガヤツリの様子を見に出掛けてきました。
一部草むしりされていましたが、広場の外部にも進出して生育領域が広がっており安泰でした。
関連ページ 湿生植物・イガガヤツリ

Fig.56 ウリクサ (西宮市 2016.8/22)
イガガヤツリの周りの踏み付けに遭うような場所に、広く生育していました。
ここには外来種のニワサキタネツケバナが生育していますが、時期的に休眠期なのか、ほとんど確認できませんでした。
関連ページ 湿生植物・ウリクサ

Fig.57 コヒロハハナヤスリ (西宮市 2016.8/22)
同じ境内にあるコヒロハハナヤスリも、胞子嚢穂を上げて元気に生育していました。
西宮市内では自生箇所が少ない小型のシダ植物です。
関連ページ 湿生植物・コヒロハハナヤスリ

Fig.58 市内北部の水田 (西宮市 2016.8/22)
ミズオオバコ、オモダカ、ミゾハコベがいい風情で生育し自然のビオトープになっています。
ここではかつてヒロハトリゲモが見られましたが、近年確認できていません。
水田に生育する1年性の水草は消長が極端で、ある年埋土種子から突然発生したりします。

Fig.59 クログワイ (西宮市 2016.8/22)
隣の水田では嫌われ者の水田雑草クログワイが小穂を上げ、雌性期を終えていました。
関連ページ 抽水植物・クログワイ

Fig.60 キカシグサとミズマツバ (西宮市 2016.8/22)
キカシグサは環境の良い水田の指標となる水田雑草です。
ミズマツバは圃場整備や除草剤などで減少傾向にあり、兵庫県版RDBではCランクとされています。
関連ページ 湿生植物・キカシグサ
関連ページ 湿生植物・ミズマツバ

Fig.61 ミソハギ群落 (西宮市 2016.8/22)
スズサイコの開花を待って、夕闇が迫るまで田園地帯を散策すると、休耕田でミソハギの大きな群落がありました。以前は点々と生育している程度でしたが、耕作放棄後の条件があっていたのか群生するようになっていました。ミソハギの名は、酒に漬けてそれを振って場所を清める「禊ぎ萩」が由来です。
関連ページ 湿生植物・ミソハギ

Fig.62 スズサイコ (西宮市 2016.8/22)
スズサイコは草原環境の減少によって絶滅が危惧されていて、環境省の準絶滅危惧、全国では兵庫県と長野県を除いた各都道府県で絶滅危惧種に指定されていますが、西宮市をはじめとした兵庫県各地で比較的ふつうに見られます。花は夕方~早朝の夜間に開花し、日中の開花は見れません。
関連ページ 関西の花・スズサイコ
category: 西宮の自然
10月の西宮市で
2015/10/21 Wed. 20:12 [edit]
西宮市は大阪、神戸にも近いとあって、今なお開発が盛んな市域です。ここ5年のうちでも、ササバモの生育していた溝のような古い水路は暗渠化により絶滅し、ヒメミズワラビが生育していた平野部の水田は住宅地となり絶滅。イガタツナミやニオイタチツボスミレが花を咲かせていた山麓の水田も住宅街となりました。ヒルムシロの自生地は平野部から丘陵部にかけて数ヶ所あったのですが、道路拡張や暗渠化によって、今では1ヶ所でしか見ることができません。
平野部の水田は休耕されると、その次の年には宅地となり、あるいは駐車場となっていつも残念な気持ちになります。現在、平野部には水田がまだわずかに残っていますが、全て無くなってしまうのも時間の問題でしょう。当ブログでは、このような平野部の消えゆく自然もできるかぎり取り上げていきたいと思います。
秋はカヤツリグサ科やイネ科のシーズンで私にとって見るべきものが多いうえに、花のシーズンでもあります。えらく欲張ったために、今回は長い記事となってしまいました。
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Fig.1 コヒロハハナヤスリ (西宮市 2015.10/3)
この日は2時間ほどの空き時間に、久しぶりに近くの社寺を訪ねてみました。
かつてコヒロハハナヤスリが群生していた泉の傍は、環境が変わって個体数は減っていましたがまだ健在でした。胞子葉の先が何者かによって食害を受けていました。
関連ページ 湿生植物・コヒロハハナヤスリ

Fig.2 イガガヤツリ (西宮市 2015.10/3)
まさかこのような場所で出会えるとは思ってもみませんでした。
西宮市では古い記録が武庫川河口でありましたが、今では環境改変のため絶滅したものと思っていました。ここでは池の水が滲み出すような場所で群生していました。
画像の出来が悪かったので翌日出直しましたが、肝心の群生箇所は草抜きがなされて前日とは様相が変わっていました。どうりで、今まで見なかった訳です。
関連ページ 湿生植物・イガガヤツリ

Fig.3 イガガヤツリの花序 (西宮市 2015.10/3)
クリのイガのように見えることから、イガガヤツリと名づけられました。

Fig.4 ハイヌメリグサ (西宮市 2015.10/3)
イガガヤツリとともに水田雑草が見られました。
このハイヌメリグサも、ふつうは水田で見かけるイネ科の草本です。
他にテンツキ、アゼガヤツリ、カワラスガナ、コケオトギリ、タネツケバナ、ウリクサなども見られ、社寺境内としては異色の一角でした。
関連ページ 湿生植物・ハイヌメリグサ

Fig.5 コミカンソウ (西宮市 2015.10/3)
これも畦や畑地に出てくる在来の雑草です。
表面に短い突起がある果実を稔らせていました。

Fig.6 オオハナワラビ (西宮市 2015.10/3)
この場所の社寺林にはオオハナワラビがこの1個体のみ生育しています。
まだ充分に生育しておらず、胞子葉は上がっていません。
オオハナワラビは西宮市内では3ヶ所で生育を確認しています。
関連ページ 関西の花/シダ・オオハナワラビ

Fig.7 オニヤブソテツ (西宮市 2015.10/3)
社寺林の一角に群生が見られます。
海岸部に多いヤブソテツの仲間ですが、市内では住宅街の石垣に着いているのも見かけます。

Fig.8 オニヤブソテツのソーラス (西宮市 2015.10/3)
葉面の光沢が強く、包膜の中心が褐色となる、判りやすい特徴を持っています。

Fig.9 イシミカワ (西宮市 2015.10/3)
林縁の用水路脇からシュロに這い登って実を付けていました。
このような場所よりも原野的な環境でよく見かける種です。
関連ページ 湿生植物・イシミカワ

Fig.10 チャガヤツリ (西宮市 2015.10/3)
さすがに社寺境内、土壌をいじらない為か、こんなものまで見つかりました。
西宮市内では稀なもので、以前有馬川の河川敷で出合って以来、8年ぶりとなります。
チャガヤツリだと思っても、大半がコチャガヤツリです。
関連ページ 湿生植物・チャガヤツリ

Fig.11 コチャガヤツリ (西宮市 2015.10/5)
この日は買い物帰りに武庫川下流の河川敷に立ち寄りました。
低水敷の砂地で早速コチャガヤツリに出会いました。

Fig.12 チャガヤツリとコチャガヤツリの小穂 (西宮市 2015.10/5)
チャガヤツリの鱗片は長さ2~2.3mm、これに対してコチャガヤツリの鱗片は長さが1.5~1.8mmとなります。そのためか、熟した小穂ではコチャガヤツリは鱗片同士の間に隙間ができ、これが大まかな区別の目安になります。
注 : チャガヤツリ、コチャガヤツリ、オオチャガヤツリの間には和名の混乱が見られます。ここでは『神奈川県植物誌 2001』の記述に準拠しましたが、和名の命名史を紐解いて、鱗片が2~2.3mmの大きなタイプを「オオチャガヤツリ(当ブログではチャガヤツリと表記)」、鱗片が1.5~1.8mmのものを「チャガヤツリ(当ブログではコチャガヤツリと表記)」とし、カヤツリグサ×チャガヤツリを「オニチャガヤツリ(『神植誌2001』ではオオチャガヤツリ)」とする見解があり、その検証過程が以下のページで閲覧することができます。
「コチャガヤツリとチャガヤツリCyperus amuricus Maxim. との、混乱の予感」
和名は分類学上それほど重要でないため放置されていますが、再検証した結果を新たに誰かがモノグラフとともに、影響力のある場で発表する必要があるように思います。和名など研究上たいしたことはないと思われても、混乱した状態が続く限り在野の観察者や愛好家からの情報を得る機会は少なくなるでしょう。ちなみに現在、カヤツリグサ科の標準となっている『日本カヤツリグサ科植物図譜』では、『神奈川県植物誌 2001』と同様な和名が当てられています。これが普及して標準となるのでしょうか。

Fig.13 ハタガヤ (西宮市 2015.10/5)
競争者のいない砂地で、きれいに放射状に有花茎を広げていました。
関連ページ 関西の花・ハタガヤ

Fig.14 クグガヤツリ (西宮市 2015.10/5)
武庫川では高水敷の遊歩道脇から、水際まで広い範囲で生育しています。
関連ページ 湿生植物・クグガヤツリ

Fig.15 低水敷の湿地 (西宮市 2015.10/5)
所々に水と泥が溜まった氾濫によって一時的に湿地となっている場所があり、このような所では水田雑草を中心とした湿生植物が見られます。

Fig.16 アオガヤツリ (西宮市 2015.10/5)
アオガヤツリは河川敷、干上がった溜池、水田の畦などに比較的よく見られるカヤツリグサです。
ヒメアオガヤツリやシロガヤツリ、オオシロガヤツリなどに似ていますが、小穂が2列で扁平なことと、痩果が倒卵形であることで区別できます。
関連ページ 湿生植物・アオガヤツリ

Fig.17 カヤツリグサsp. (西宮市 2015.10/5)
この日はかつて武庫川で採集されたカンエンガヤツリを探しにきたのですが、カンエンガヤツリは見つかりませんでしたが、代わりに見たことのないカヤツリグサ科草本が見つかりました。

Fig.18 カヤツリグサsp.の細部 (西宮市 2015.10/5)
見た目的にクグガヤツリやアゼガヤツリに少し似ていますが、葉の質感は異なり、痩果の形状は全く異なっています。基部は塊茎を脇から分けて新鞘を出しているのが特徴的です。鱗片は横から写したものです。外来種でしょうが、まだ調べ切れていません。何かご存知の方がお見えでしたらお知らせください。

Fig.19 ゴキヅル (西宮市 2015.10/5)
低水敷の高茎草本の生えている場所では、所々でゴキヅルが覆っています。
ナガエツルノゲイトウをも覆い尽くすほどの勢いで、沢山の花と果実を付けていました。
関連ページ 湿生植物・ゴキヅル

Fig.20 ミズヒマワリ (西宮市 2015.10/5)
大河川下流のご多聞に漏れず、ワンド状になった場所では特定外来生物に指定されているミズヒマワリが定着しています。ここでは一昨年までヤガミスゲが生えていたのですが、姿が見えず心配です。
他の草本に埋もれてしまっているだけかもしれませんが、来年の初夏に確認する必要があります。
関連ページ 湿生植物・ミズヒマワリ

Fig.21 訪花したアサギマダラ (西宮市 2015.10/5)
ミズヒマワリはチョウ類に人気のある花で、この日も十数匹のアサギマダラが訪花していました。

Fig.22 イヌハギ (西宮市 2015.10/5)
河川敷や堤防、溜池土堤などに見られる半ば木本状となるマメ科植物で、すでに花期は終わり閉鎖花が果実を形成中でした。低水敷から高水敷へと移行する斜面に数個体が生育していました。
関連ページ 関西の花・イヌハギ

Fig.23 カワラヨモギ (西宮市 2015.10/5)
これもイヌハギと同じような場所に生育しています。
マツヨイグサ類、オオブタクサ、セイバンモロコシなど、外来種の多い中でこのような在来の野草を見るとほっとします。
関連ページ 関西の花・カワラヨモギ

Fig.24 アブノメ (西宮市 2015.10/5)
夕方のわずかな時間に、自宅からクルマで5分ほどの体験学習水田の様子を見に行きました。
アブノメは前回久しぶりに再発見したとメモしましたが、ここでも無農薬農法により復活したようです。周辺の水田を探すと他に3枚の水田でも見つかりました。こんな足元にまあったとは!
関連ページ 湿生植物・アブノメ

Fig.25 アイナエ (西宮市 2015.10/5)
長らく市内で探していたアイナエが見つかりました。
しかしながら生えている場所が墓地で、同所的に必ず見られるアリノトウグサは無く、ウリクサ、ハタガヤ、小型のカヤツリグサ、コスミレ、アリアケスミレ、マツバウンラン、コニシキソウ、カタバミ、コミカンソウ、ウラジロチチコグサなどが見られ、どうも用土とともに入ってきたものと考えられます。
関連ページ 湿生植物・アイナエ

Fig.26 ミヤマアカネ (西宮市 2015.10/5)
昼間は忙しく飛び回るミヤマアカネも夕暮れになって草につかまって休んでいます。
西宮市内ではよく見かける種で、自宅の庭でも飛んでいるのを見かけます。

Fig.27 アカハナワラビ (西宮市 2015.10/13)
アカハナワラビは今のところ西宮市内ではこの1個体が見られるのみで、過去に記録もありません。
年々株が充実してきて、栄養葉も大きくなり、再来年あたりには胞子葉が見れるかもと期待しています。葉が紅変する前はフユノハナワラビに似ていますが、鋸歯が尖り、表面に淡色のカスリ模様があって緑白色に見える点で区別できます。
関連ページ 関西の花・アカハナワラビ

Fig.28 武庫川渓谷の説明板 (西宮市 2015.10/13)
アカハナワラビを確認した後、武庫川渓谷に向かいました。
入り口には植物の説明板とジオラマ風の生植物の展示ができていました。
兵庫県宝塚土木事務所が作ったものですが、なぜか西宮市側にあります。

Fig.29 生植物の展示 (西宮市 2015.10/13)
看板に載っていた植物が植え込まれています。木が並んでいるのは廃線の枕木を模したものですね。
画像には写っていませんが、川の部分は青い砂が敷いてあって、思わず陶器の亀の置物を置きたくなってしまいます。

Fig.30 ケキンモウワラビ (西宮市 2015.10/13)
ヒメウラジロもいいのですが、こちらのほうが好みだったので撮影。

Fig.31 チョウセンガリヤス (西宮市 2015.10/13)
岩場や草地に生える小さなイネ科の草本で、この周辺の河岸の岩場に沢山見られます。
まだ花序が出始めたばかりでした。
関連ページ 関西の花・チョウセンガリヤス

Fig.32 オガルカヤ (西宮市 2015.10/13)
これも岩場や草地でないと生きていけないイネ科の草本です。
市内では武庫川渓谷と北部の棚田の土手などで見られます。
関連ページ 関西の花・オガルカヤ

Fig.33 メガルカヤ (西宮市 2015.10/13)
オガルカヤと較べると岩場よりも草地のほうを好むイネ科の草本です。
あまり多くはありませんが、甲山周辺の水田の土手でも生育しています。
関連ページ 関西の花・メガルカヤ

Fig.34 アゼガヤツリ (西宮市 2015.10/13)
岩場の窪みに砂と湧水が溜まっていて、そこではアゼガヤツリの小群落が見られました。
関連ページ 湿生植物・アゼガヤツリ

Fig.35 フサナキリスゲ (西宮市 2015.10/13)
大雨が降ると冠水してしまうような河岸の岩場の隙間に生えています。
ここでは水面から1m程の岩場に生育していて、最近のゲリラ豪雨で年に何度も激流に揉まれているはずです。広い葉は本種のものではなくイネ科のもので、この個体にはまともに伸びた葉が1枚もありませんでした。頻繁な冠水によって、武庫川渓谷ではアオヤギバナよりも少なくなっています。

Fig.36 アオヤギバナ (西宮市 2015.10/13)
アキノキリンソウに似た、渓流の岩上に特化したキク科の草本です。
茎は叢生して、岩の隙間にしっかりと根を這っています。
先のフサナキリスゲよりも1m以上高い位置に生えていて、それほど危機的状況にはなっていません。

Fig.37 ヒメアブラススキ (西宮市 2015.10/13)
草地環境の消失とともに減少しつつある種ですが、武庫川渓谷では群生している場所もあります。
本来の生育場所がこのような岩場の林縁部の草地だったのかもしれません。
関連ページ 関西の花・ヒメアブラススキ

Fig.38 アブラススキ (西宮市 2015.10/13)
アブラススキが遊歩道沿いに沢山見られました。
これも農地の草地土手などでよく見かけますが、やや湿った場所を好むように思います。
関連ページ 関西の花・アブラススキ

Fig.39 ヨメナ (西宮市 2015.10/13)
キク科の花が道端を飾るようになり、野菊のシーズンになりました。ヨメナはどこにでも見られる野菊ですが、川沿いのためなのか、葉が他の場所のものよりも細くなっています。
関連ページ 湿生植物・ヨメナ

Fig.40 イナカギク (西宮市 2015.10/13)
西宮市内ではよく似たケシロヨメナよりもイナカギクのほうが多く見られます。
ケシロヨメナとは葉柄がなく、葉の基部が茎を半ば抱くことにより区別できます。
関連ページ 関西の花・イナカギク

Fig.41 ヤクシソウ (西宮市 2015.10/13)
秋が深まったことを感じさせる花です。
葉身が羽状となるものはハナヤクシソウといい、ここでは混生していました。
関連ページ 関西の花・ヤクシソウ

Fig.42 ハナヤクシソウの葉 (西宮市 2015.10/13)

Fig.43 結実したフユザンショウ (西宮市 2015.10/13)
フユザンショウは西宮市内では武庫川渓谷で多く見られます。
サンショウに較べると香りが薄く、香辛料として使われることはないようです。
樹にはクロアゲハの幼虫が付いていました。

Fig.44 オオキヨズミシダ (西宮市 2015.10/13)
本種も武庫川渓谷に多く見られるもので、やや湿った林床に見られます。
どちらかというと好石灰性で、このあたりの熔結凝灰岩には多少の石灰分が含まれているようです。
関連ページ 関西の花/シダ・オオキヨズミシダ

Fig.45 平野部の休耕田 (西宮市 2015.10/13)
この日は2時間という中途半端な空き時間だったので、市内平野部の水田を巡りました。
今年も耕作放棄された水田が数枚ありました。
このような場所は翌年には住宅が建つか、駐車場となってしまいます。

Fig.46 紅葉したヒメミソハギ (西宮市 2015.10/13)
ヒメミソハギはレッドリストに入れている地方も多いのですが、西宮市内では比較的よく見かける水田雑草です。最近は外来種のホソバヒメミソハギに押されがちですが、まだまだ健在です。
関連ページ 湿生植物・ヒメミソハギ

Fig.47 オオシロガヤツリ (西宮市 2015.10/13)
西宮市内では平野部の2ヶ所の限られた水田にのみ見られます。
出現個体数は年によってまちまちで、全く見られない年もあります。
もう1ヶ所のほうは、今年は全く出現しませんでした。
左の紅葉しかかっているものは外来種のホソバヒメミソハギです。
関連ページ 湿生植物・オオシロガヤツリ

Fig.48 オオシロガヤツリの花序 (西宮市 2015.10/13)
近似種のアオガヤツリ、ヒメアオガヤツリ、シロガヤツリとは、小穂が扁平ではなく円柱状となる点で区別できます。

Fig.49 アメリカアワゴケ (西宮市 2015.10/13)
ここ数年で平野部の水田や畑地に急激に広がった外来種で、今では平野部に広く見られます。
植物体は在来種のアワゴケよりもかなり小型で、群生しているとまさにコケのように見えます。
関連ページ 湿生植物・アメリカアワゴケ

Fig.50 ウキアゼナ (西宮市 2015.10/13)
アクアリウムからの逸出により広がった外来種で、開花期が長く繁殖力旺盛です。
これも平野部の水田ではふつうに見られるようになりました。
関連ページ 湿生植物・ウキアゼナ

Fig.51 ウリカワ (西宮市 2015.10/13)
ウリカワとオモダカは市内平野部では稀な水田雑草で、オモダカがあった水田は昨年宅地化され無くなりました。ウリカワは1ヶ所の水田にのみ生き残っています。
両種ともに北部の水田ではふつうに見られます。
関連ページ 湿生植物・ウリカワ

Fig.52 コイヌガラシ (西宮市 2015.10/13)
淡路島や播磨地方では溜池畔でよく見かけますが、西宮市内では初見で過去に記録もありませんでした。イネの耕作後は冬の葉物野菜を裏作する水田に生育していました。市内の水田では稲刈り後から裏作耕起前のわずかな間にしか見つけられないのかもしれません。
関連ページ 湿生植物・コイヌガラシ

Fig.53 エビモ (西宮市 2015.10/13)
西宮市内では水路内を徹底的に底浚いして掃除している場所が多く、小河川を除いては水草があまり見られません。エビモは普通種ですが、市内の水路で見つけると嬉しくなります。
関連ページ 沈水植物・エビモ

Fig.54 ホザキノフサモ (西宮市 2015.10/13)
いつもは水量が一杯で中に入れなかった水路が減水していたので、長靴で降りて調べると本種が見つかりました。古い時代から武庫川からの水を導水している水路で、ホザキノフサモは武庫川本流ではすでに見られなくなった水草です。西宮市内では初見で、過去に記録もありませんでした。
関連ページ 沈水植物・ホザキノフサモ

Fig.55 ヤブミョウガ (西宮市 2015.10/13)
ヤブミョウガは平野部では社寺林内に生き残っています。
ここもそのような社寺林で、他にノシラン、ヤブラン、オオバジャノヒゲなどが残存していました。

Fig.56 アキノキリンソウ (西宮市 2015.10/18)
この日はシダの観察会があり県内新産を含めて珍しいシダを沢山見て、頭が飽和状態となるほどでした。帰途、まだ夕暮れまで時間があったので、見慣れた市内北部の里山に立ち寄って頭をクールダウン。アキノキリンソウは先に見たアオヤギバナに較べると株立ちしないので、素朴な花に見えます。
関連ページ 関西の花・アキノキリンソウ

Fig.57 コウヤボウキ (西宮市 2015.10/18)
コウヤボウキも林縁のあちこちで開花し始めています。
西宮市内のものは白味の強い花をつけるものが多いです。
関連ページ 関西の花・コウヤボウキ

Fig.58 キクバヤマボクチ (西宮市 2015.10/18)
里山の林縁でよく見かける草本で、花は渋い色調ながらなかなか魅力的です。
近縁のハバヤマボクチ、ヤマボクチは市内では見たことがありません。
関連ページ 関西の花・キクバヤマボクチ

Fig.59 結実したサルトリイバラ (西宮市 2015.10/18)
サルトリイバラの結実したばかりの果実は薄っすらと白い粉を吹いて、実に美しいものです。

Fig.60 リンドウ (西宮市 2015.10/18)
長く伸びて地表に倒伏したリンドウが開花し始めていました。
関連ページ 関西の花・リンドウ

Fig.61 センブリ (西宮市 2015.10/18)
リンドウが開花しているなら、センブリも開花してるはずとあたりを探すと、開花中のものがちらほらと見つかりました。よく見ると、手前の花の上にとても小さなイモムシが2匹上がって、蜜腺溝の脇に生えた毛をかじっているようです。
関連ページ 関西の花・センブリ

Fig.62 フユノハナワラビ? (西宮市 2015.10/18)
フユノハナワラビだけは確証を持てないので「?」をつけざるを得ません。
ここのものは胞子嚢が弾けはじめているようで、触ると胞子が少し飛散しました。
関連ページ 関西の花/シダ・フユノハナワラビ?

Fig.63 ムツオレグサ (西宮市 2015.10/18)
ムツオレグサはふつう春~初夏に開花結実しますが、秋に花序を上げているのもよく見かけます。
充分に生育している個体では秋にも出穂するのでしょう。
関連ページ 湿生植物・ムツオレグサ
平野部の水田は休耕されると、その次の年には宅地となり、あるいは駐車場となっていつも残念な気持ちになります。現在、平野部には水田がまだわずかに残っていますが、全て無くなってしまうのも時間の問題でしょう。当ブログでは、このような平野部の消えゆく自然もできるかぎり取り上げていきたいと思います。
秋はカヤツリグサ科やイネ科のシーズンで私にとって見るべきものが多いうえに、花のシーズンでもあります。えらく欲張ったために、今回は長い記事となってしまいました。
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Fig.1 コヒロハハナヤスリ (西宮市 2015.10/3)
この日は2時間ほどの空き時間に、久しぶりに近くの社寺を訪ねてみました。
かつてコヒロハハナヤスリが群生していた泉の傍は、環境が変わって個体数は減っていましたがまだ健在でした。胞子葉の先が何者かによって食害を受けていました。
関連ページ 湿生植物・コヒロハハナヤスリ

Fig.2 イガガヤツリ (西宮市 2015.10/3)
まさかこのような場所で出会えるとは思ってもみませんでした。
西宮市では古い記録が武庫川河口でありましたが、今では環境改変のため絶滅したものと思っていました。ここでは池の水が滲み出すような場所で群生していました。
画像の出来が悪かったので翌日出直しましたが、肝心の群生箇所は草抜きがなされて前日とは様相が変わっていました。どうりで、今まで見なかった訳です。
関連ページ 湿生植物・イガガヤツリ

Fig.3 イガガヤツリの花序 (西宮市 2015.10/3)
クリのイガのように見えることから、イガガヤツリと名づけられました。

Fig.4 ハイヌメリグサ (西宮市 2015.10/3)
イガガヤツリとともに水田雑草が見られました。
このハイヌメリグサも、ふつうは水田で見かけるイネ科の草本です。
他にテンツキ、アゼガヤツリ、カワラスガナ、コケオトギリ、タネツケバナ、ウリクサなども見られ、社寺境内としては異色の一角でした。
関連ページ 湿生植物・ハイヌメリグサ

Fig.5 コミカンソウ (西宮市 2015.10/3)
これも畦や畑地に出てくる在来の雑草です。
表面に短い突起がある果実を稔らせていました。

Fig.6 オオハナワラビ (西宮市 2015.10/3)
この場所の社寺林にはオオハナワラビがこの1個体のみ生育しています。
まだ充分に生育しておらず、胞子葉は上がっていません。
オオハナワラビは西宮市内では3ヶ所で生育を確認しています。
関連ページ 関西の花/シダ・オオハナワラビ

Fig.7 オニヤブソテツ (西宮市 2015.10/3)
社寺林の一角に群生が見られます。
海岸部に多いヤブソテツの仲間ですが、市内では住宅街の石垣に着いているのも見かけます。

Fig.8 オニヤブソテツのソーラス (西宮市 2015.10/3)
葉面の光沢が強く、包膜の中心が褐色となる、判りやすい特徴を持っています。

Fig.9 イシミカワ (西宮市 2015.10/3)
林縁の用水路脇からシュロに這い登って実を付けていました。
このような場所よりも原野的な環境でよく見かける種です。
関連ページ 湿生植物・イシミカワ

Fig.10 チャガヤツリ (西宮市 2015.10/3)
さすがに社寺境内、土壌をいじらない為か、こんなものまで見つかりました。
西宮市内では稀なもので、以前有馬川の河川敷で出合って以来、8年ぶりとなります。
チャガヤツリだと思っても、大半がコチャガヤツリです。
関連ページ 湿生植物・チャガヤツリ

Fig.11 コチャガヤツリ (西宮市 2015.10/5)
この日は買い物帰りに武庫川下流の河川敷に立ち寄りました。
低水敷の砂地で早速コチャガヤツリに出会いました。

Fig.12 チャガヤツリとコチャガヤツリの小穂 (西宮市 2015.10/5)
チャガヤツリの鱗片は長さ2~2.3mm、これに対してコチャガヤツリの鱗片は長さが1.5~1.8mmとなります。そのためか、熟した小穂ではコチャガヤツリは鱗片同士の間に隙間ができ、これが大まかな区別の目安になります。
注 : チャガヤツリ、コチャガヤツリ、オオチャガヤツリの間には和名の混乱が見られます。ここでは『神奈川県植物誌 2001』の記述に準拠しましたが、和名の命名史を紐解いて、鱗片が2~2.3mmの大きなタイプを「オオチャガヤツリ(当ブログではチャガヤツリと表記)」、鱗片が1.5~1.8mmのものを「チャガヤツリ(当ブログではコチャガヤツリと表記)」とし、カヤツリグサ×チャガヤツリを「オニチャガヤツリ(『神植誌2001』ではオオチャガヤツリ)」とする見解があり、その検証過程が以下のページで閲覧することができます。
「コチャガヤツリとチャガヤツリCyperus amuricus Maxim. との、混乱の予感」
和名は分類学上それほど重要でないため放置されていますが、再検証した結果を新たに誰かがモノグラフとともに、影響力のある場で発表する必要があるように思います。和名など研究上たいしたことはないと思われても、混乱した状態が続く限り在野の観察者や愛好家からの情報を得る機会は少なくなるでしょう。ちなみに現在、カヤツリグサ科の標準となっている『日本カヤツリグサ科植物図譜』では、『神奈川県植物誌 2001』と同様な和名が当てられています。これが普及して標準となるのでしょうか。

Fig.13 ハタガヤ (西宮市 2015.10/5)
競争者のいない砂地で、きれいに放射状に有花茎を広げていました。
関連ページ 関西の花・ハタガヤ

Fig.14 クグガヤツリ (西宮市 2015.10/5)
武庫川では高水敷の遊歩道脇から、水際まで広い範囲で生育しています。
関連ページ 湿生植物・クグガヤツリ

Fig.15 低水敷の湿地 (西宮市 2015.10/5)
所々に水と泥が溜まった氾濫によって一時的に湿地となっている場所があり、このような所では水田雑草を中心とした湿生植物が見られます。

Fig.16 アオガヤツリ (西宮市 2015.10/5)
アオガヤツリは河川敷、干上がった溜池、水田の畦などに比較的よく見られるカヤツリグサです。
ヒメアオガヤツリやシロガヤツリ、オオシロガヤツリなどに似ていますが、小穂が2列で扁平なことと、痩果が倒卵形であることで区別できます。
関連ページ 湿生植物・アオガヤツリ

Fig.17 カヤツリグサsp. (西宮市 2015.10/5)
この日はかつて武庫川で採集されたカンエンガヤツリを探しにきたのですが、カンエンガヤツリは見つかりませんでしたが、代わりに見たことのないカヤツリグサ科草本が見つかりました。

Fig.18 カヤツリグサsp.の細部 (西宮市 2015.10/5)
見た目的にクグガヤツリやアゼガヤツリに少し似ていますが、葉の質感は異なり、痩果の形状は全く異なっています。基部は塊茎を脇から分けて新鞘を出しているのが特徴的です。鱗片は横から写したものです。外来種でしょうが、まだ調べ切れていません。何かご存知の方がお見えでしたらお知らせください。

Fig.19 ゴキヅル (西宮市 2015.10/5)
低水敷の高茎草本の生えている場所では、所々でゴキヅルが覆っています。
ナガエツルノゲイトウをも覆い尽くすほどの勢いで、沢山の花と果実を付けていました。
関連ページ 湿生植物・ゴキヅル

Fig.20 ミズヒマワリ (西宮市 2015.10/5)
大河川下流のご多聞に漏れず、ワンド状になった場所では特定外来生物に指定されているミズヒマワリが定着しています。ここでは一昨年までヤガミスゲが生えていたのですが、姿が見えず心配です。
他の草本に埋もれてしまっているだけかもしれませんが、来年の初夏に確認する必要があります。
関連ページ 湿生植物・ミズヒマワリ

Fig.21 訪花したアサギマダラ (西宮市 2015.10/5)
ミズヒマワリはチョウ類に人気のある花で、この日も十数匹のアサギマダラが訪花していました。

Fig.22 イヌハギ (西宮市 2015.10/5)
河川敷や堤防、溜池土堤などに見られる半ば木本状となるマメ科植物で、すでに花期は終わり閉鎖花が果実を形成中でした。低水敷から高水敷へと移行する斜面に数個体が生育していました。
関連ページ 関西の花・イヌハギ

Fig.23 カワラヨモギ (西宮市 2015.10/5)
これもイヌハギと同じような場所に生育しています。
マツヨイグサ類、オオブタクサ、セイバンモロコシなど、外来種の多い中でこのような在来の野草を見るとほっとします。
関連ページ 関西の花・カワラヨモギ

Fig.24 アブノメ (西宮市 2015.10/5)
夕方のわずかな時間に、自宅からクルマで5分ほどの体験学習水田の様子を見に行きました。
アブノメは前回久しぶりに再発見したとメモしましたが、ここでも無農薬農法により復活したようです。周辺の水田を探すと他に3枚の水田でも見つかりました。こんな足元にまあったとは!
関連ページ 湿生植物・アブノメ

Fig.25 アイナエ (西宮市 2015.10/5)
長らく市内で探していたアイナエが見つかりました。
しかしながら生えている場所が墓地で、同所的に必ず見られるアリノトウグサは無く、ウリクサ、ハタガヤ、小型のカヤツリグサ、コスミレ、アリアケスミレ、マツバウンラン、コニシキソウ、カタバミ、コミカンソウ、ウラジロチチコグサなどが見られ、どうも用土とともに入ってきたものと考えられます。
関連ページ 湿生植物・アイナエ

Fig.26 ミヤマアカネ (西宮市 2015.10/5)
昼間は忙しく飛び回るミヤマアカネも夕暮れになって草につかまって休んでいます。
西宮市内ではよく見かける種で、自宅の庭でも飛んでいるのを見かけます。

Fig.27 アカハナワラビ (西宮市 2015.10/13)
アカハナワラビは今のところ西宮市内ではこの1個体が見られるのみで、過去に記録もありません。
年々株が充実してきて、栄養葉も大きくなり、再来年あたりには胞子葉が見れるかもと期待しています。葉が紅変する前はフユノハナワラビに似ていますが、鋸歯が尖り、表面に淡色のカスリ模様があって緑白色に見える点で区別できます。
関連ページ 関西の花・アカハナワラビ

Fig.28 武庫川渓谷の説明板 (西宮市 2015.10/13)
アカハナワラビを確認した後、武庫川渓谷に向かいました。
入り口には植物の説明板とジオラマ風の生植物の展示ができていました。
兵庫県宝塚土木事務所が作ったものですが、なぜか西宮市側にあります。

Fig.29 生植物の展示 (西宮市 2015.10/13)
看板に載っていた植物が植え込まれています。木が並んでいるのは廃線の枕木を模したものですね。
画像には写っていませんが、川の部分は青い砂が敷いてあって、思わず陶器の亀の置物を置きたくなってしまいます。

Fig.30 ケキンモウワラビ (西宮市 2015.10/13)
ヒメウラジロもいいのですが、こちらのほうが好みだったので撮影。

Fig.31 チョウセンガリヤス (西宮市 2015.10/13)
岩場や草地に生える小さなイネ科の草本で、この周辺の河岸の岩場に沢山見られます。
まだ花序が出始めたばかりでした。
関連ページ 関西の花・チョウセンガリヤス

Fig.32 オガルカヤ (西宮市 2015.10/13)
これも岩場や草地でないと生きていけないイネ科の草本です。
市内では武庫川渓谷と北部の棚田の土手などで見られます。
関連ページ 関西の花・オガルカヤ

Fig.33 メガルカヤ (西宮市 2015.10/13)
オガルカヤと較べると岩場よりも草地のほうを好むイネ科の草本です。
あまり多くはありませんが、甲山周辺の水田の土手でも生育しています。
関連ページ 関西の花・メガルカヤ

Fig.34 アゼガヤツリ (西宮市 2015.10/13)
岩場の窪みに砂と湧水が溜まっていて、そこではアゼガヤツリの小群落が見られました。
関連ページ 湿生植物・アゼガヤツリ

Fig.35 フサナキリスゲ (西宮市 2015.10/13)
大雨が降ると冠水してしまうような河岸の岩場の隙間に生えています。
ここでは水面から1m程の岩場に生育していて、最近のゲリラ豪雨で年に何度も激流に揉まれているはずです。広い葉は本種のものではなくイネ科のもので、この個体にはまともに伸びた葉が1枚もありませんでした。頻繁な冠水によって、武庫川渓谷ではアオヤギバナよりも少なくなっています。

Fig.36 アオヤギバナ (西宮市 2015.10/13)
アキノキリンソウに似た、渓流の岩上に特化したキク科の草本です。
茎は叢生して、岩の隙間にしっかりと根を這っています。
先のフサナキリスゲよりも1m以上高い位置に生えていて、それほど危機的状況にはなっていません。

Fig.37 ヒメアブラススキ (西宮市 2015.10/13)
草地環境の消失とともに減少しつつある種ですが、武庫川渓谷では群生している場所もあります。
本来の生育場所がこのような岩場の林縁部の草地だったのかもしれません。
関連ページ 関西の花・ヒメアブラススキ

Fig.38 アブラススキ (西宮市 2015.10/13)
アブラススキが遊歩道沿いに沢山見られました。
これも農地の草地土手などでよく見かけますが、やや湿った場所を好むように思います。
関連ページ 関西の花・アブラススキ

Fig.39 ヨメナ (西宮市 2015.10/13)
キク科の花が道端を飾るようになり、野菊のシーズンになりました。ヨメナはどこにでも見られる野菊ですが、川沿いのためなのか、葉が他の場所のものよりも細くなっています。
関連ページ 湿生植物・ヨメナ

Fig.40 イナカギク (西宮市 2015.10/13)
西宮市内ではよく似たケシロヨメナよりもイナカギクのほうが多く見られます。
ケシロヨメナとは葉柄がなく、葉の基部が茎を半ば抱くことにより区別できます。
関連ページ 関西の花・イナカギク

Fig.41 ヤクシソウ (西宮市 2015.10/13)
秋が深まったことを感じさせる花です。
葉身が羽状となるものはハナヤクシソウといい、ここでは混生していました。
関連ページ 関西の花・ヤクシソウ

Fig.42 ハナヤクシソウの葉 (西宮市 2015.10/13)

Fig.43 結実したフユザンショウ (西宮市 2015.10/13)
フユザンショウは西宮市内では武庫川渓谷で多く見られます。
サンショウに較べると香りが薄く、香辛料として使われることはないようです。
樹にはクロアゲハの幼虫が付いていました。

Fig.44 オオキヨズミシダ (西宮市 2015.10/13)
本種も武庫川渓谷に多く見られるもので、やや湿った林床に見られます。
どちらかというと好石灰性で、このあたりの熔結凝灰岩には多少の石灰分が含まれているようです。
関連ページ 関西の花/シダ・オオキヨズミシダ

Fig.45 平野部の休耕田 (西宮市 2015.10/13)
この日は2時間という中途半端な空き時間だったので、市内平野部の水田を巡りました。
今年も耕作放棄された水田が数枚ありました。
このような場所は翌年には住宅が建つか、駐車場となってしまいます。

Fig.46 紅葉したヒメミソハギ (西宮市 2015.10/13)
ヒメミソハギはレッドリストに入れている地方も多いのですが、西宮市内では比較的よく見かける水田雑草です。最近は外来種のホソバヒメミソハギに押されがちですが、まだまだ健在です。
関連ページ 湿生植物・ヒメミソハギ

Fig.47 オオシロガヤツリ (西宮市 2015.10/13)
西宮市内では平野部の2ヶ所の限られた水田にのみ見られます。
出現個体数は年によってまちまちで、全く見られない年もあります。
もう1ヶ所のほうは、今年は全く出現しませんでした。
左の紅葉しかかっているものは外来種のホソバヒメミソハギです。
関連ページ 湿生植物・オオシロガヤツリ

Fig.48 オオシロガヤツリの花序 (西宮市 2015.10/13)
近似種のアオガヤツリ、ヒメアオガヤツリ、シロガヤツリとは、小穂が扁平ではなく円柱状となる点で区別できます。

Fig.49 アメリカアワゴケ (西宮市 2015.10/13)
ここ数年で平野部の水田や畑地に急激に広がった外来種で、今では平野部に広く見られます。
植物体は在来種のアワゴケよりもかなり小型で、群生しているとまさにコケのように見えます。
関連ページ 湿生植物・アメリカアワゴケ

Fig.50 ウキアゼナ (西宮市 2015.10/13)
アクアリウムからの逸出により広がった外来種で、開花期が長く繁殖力旺盛です。
これも平野部の水田ではふつうに見られるようになりました。
関連ページ 湿生植物・ウキアゼナ

Fig.51 ウリカワ (西宮市 2015.10/13)
ウリカワとオモダカは市内平野部では稀な水田雑草で、オモダカがあった水田は昨年宅地化され無くなりました。ウリカワは1ヶ所の水田にのみ生き残っています。
両種ともに北部の水田ではふつうに見られます。
関連ページ 湿生植物・ウリカワ

Fig.52 コイヌガラシ (西宮市 2015.10/13)
淡路島や播磨地方では溜池畔でよく見かけますが、西宮市内では初見で過去に記録もありませんでした。イネの耕作後は冬の葉物野菜を裏作する水田に生育していました。市内の水田では稲刈り後から裏作耕起前のわずかな間にしか見つけられないのかもしれません。
関連ページ 湿生植物・コイヌガラシ

Fig.53 エビモ (西宮市 2015.10/13)
西宮市内では水路内を徹底的に底浚いして掃除している場所が多く、小河川を除いては水草があまり見られません。エビモは普通種ですが、市内の水路で見つけると嬉しくなります。
関連ページ 沈水植物・エビモ

Fig.54 ホザキノフサモ (西宮市 2015.10/13)
いつもは水量が一杯で中に入れなかった水路が減水していたので、長靴で降りて調べると本種が見つかりました。古い時代から武庫川からの水を導水している水路で、ホザキノフサモは武庫川本流ではすでに見られなくなった水草です。西宮市内では初見で、過去に記録もありませんでした。
関連ページ 沈水植物・ホザキノフサモ

Fig.55 ヤブミョウガ (西宮市 2015.10/13)
ヤブミョウガは平野部では社寺林内に生き残っています。
ここもそのような社寺林で、他にノシラン、ヤブラン、オオバジャノヒゲなどが残存していました。

Fig.56 アキノキリンソウ (西宮市 2015.10/18)
この日はシダの観察会があり県内新産を含めて珍しいシダを沢山見て、頭が飽和状態となるほどでした。帰途、まだ夕暮れまで時間があったので、見慣れた市内北部の里山に立ち寄って頭をクールダウン。アキノキリンソウは先に見たアオヤギバナに較べると株立ちしないので、素朴な花に見えます。
関連ページ 関西の花・アキノキリンソウ

Fig.57 コウヤボウキ (西宮市 2015.10/18)
コウヤボウキも林縁のあちこちで開花し始めています。
西宮市内のものは白味の強い花をつけるものが多いです。
関連ページ 関西の花・コウヤボウキ

Fig.58 キクバヤマボクチ (西宮市 2015.10/18)
里山の林縁でよく見かける草本で、花は渋い色調ながらなかなか魅力的です。
近縁のハバヤマボクチ、ヤマボクチは市内では見たことがありません。
関連ページ 関西の花・キクバヤマボクチ

Fig.59 結実したサルトリイバラ (西宮市 2015.10/18)
サルトリイバラの結実したばかりの果実は薄っすらと白い粉を吹いて、実に美しいものです。

Fig.60 リンドウ (西宮市 2015.10/18)
長く伸びて地表に倒伏したリンドウが開花し始めていました。
関連ページ 関西の花・リンドウ

Fig.61 センブリ (西宮市 2015.10/18)
リンドウが開花しているなら、センブリも開花してるはずとあたりを探すと、開花中のものがちらほらと見つかりました。よく見ると、手前の花の上にとても小さなイモムシが2匹上がって、蜜腺溝の脇に生えた毛をかじっているようです。
関連ページ 関西の花・センブリ

Fig.62 フユノハナワラビ? (西宮市 2015.10/18)
フユノハナワラビだけは確証を持てないので「?」をつけざるを得ません。
ここのものは胞子嚢が弾けはじめているようで、触ると胞子が少し飛散しました。
関連ページ 関西の花/シダ・フユノハナワラビ?

Fig.63 ムツオレグサ (西宮市 2015.10/18)
ムツオレグサはふつう春~初夏に開花結実しますが、秋に花序を上げているのもよく見かけます。
充分に生育している個体では秋にも出穂するのでしょう。
関連ページ 湿生植物・ムツオレグサ
category: 西宮の自然