枝状の殖芽を形成した大型のエビモ
2015/04/05 Sun. 17:15 [edit]
先日のこと、水田の畦や休耕田の蘚苔類を観察しながら歩いていると、エビモ、ヤナギモ、オオカナダモなどが混生している用水路があった。まだ水田に水を入れる時期ではないので、水量は少なく生育している水草も休眠状態のようだった。水路を見ながら歩いていると、ふつうのエビモよりも大きな葉を持ったエビモが眼に入った。水路内に降りて近くで観察してみると、周辺には通常の殖芽とは違った枝状の殖芽が見られた。葉が大きなことから、雑種の可能性も考慮し、混生するヤナギモ、通常のエビモとともに採集して持ち帰り観察してみた。
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Fig.1 生育状況 (兵庫県三田市 2015.3/27)
幅1m程度の灌漑用水路内でヤナギモ、エビモが混生している。
左下はヤナギモ。右はエビモのように見えるが、葉の長さがヤナギモの葉と同長程度に見える。

Fig.2 葉の大きなエビモ (兵庫県三田市 2015.3/27)
通常のエビモの葉は画像左上の根元近くに見えるものの程度の大きさだが、枝を張り出しているものはかなり大きな葉であることが判る。また葉は新鮮で休眠状態ではなく生育中のように見える。

Fig.3 大型エビモとその殖芽 (兵庫県三田市 2015.3/27)
中央がこの個体周辺に見られた枝状の殖芽。
屈曲した枝が肥厚しているもので、通常のエビモの殖芽とは異なる形状である。

Fig.4 ヤナギモ、通常のエビモとの比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
中央が今回の大きなエビモ。左はヤナギモ、右は通常のエビモ。
ヤナギモは休眠状態にあり、枝先には不完全な殖芽状の越冬芽を作っている。
この状態ではヤナギモの葉よりも長いように見える。

Fig.5 葉の上半部の比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
上からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
今回のエビモはヤナギモのように葉先はとがらず、葉縁には鋸歯があり、エビモの葉を大きくしたもののように見える。

Fig.6 葉先の拡大比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
左からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
葉先は通常のエビモと変わらないように見える。

Fig.7 葉縁の拡大比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
左からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
ヤナギモの葉縁には葉身とは異なった葉縁細胞と言うべきやや長い細胞層が並んでいる。
一方、エビモには葉縁部に特化した細胞はなく、1細胞からなる鋸歯が並んでいて、今回の大型のエビモも同様であった。
以上のことから、今回の大型のエビモもエビモの範疇に入りそうである。

Fig.8 枝状の殖芽例 (兵庫県三田市 2015.3/27)
大型のエビモの周辺に見られた枝状の殖芽を数個持ち帰り、観察してみた。
長さは10cm前後で、古い痛んだ葉が残存していることから、茎頂が成長しつつ次第に肥厚して殖芽となったように見える。
念のため角野先生にご報告したところ、何度かこのような殖芽を見たことがあるが、その形成要因はよくわからないとのことだった。南米を除いた世界各地に生育する汎存種に近い種なので、様々な変異があってもおかしくはないとも。

Fig.9 殖芽の上部 (兵庫県三田市 2015.3/27)
枝状の殖芽は非常に硬く、葉腋にある小さな芽も硬化していた。
上部の腋芽はすでに萌芽しはじめていた。
このような枝状の殖芽が形成される要因は何なのか。
形成時期や水位、流速などが要因として考えられそうだが、今回の個体については継続的に観察していきたい。
関連ページ 沈水植物・エビモ
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Fig.1 生育状況 (兵庫県三田市 2015.3/27)
幅1m程度の灌漑用水路内でヤナギモ、エビモが混生している。
左下はヤナギモ。右はエビモのように見えるが、葉の長さがヤナギモの葉と同長程度に見える。

Fig.2 葉の大きなエビモ (兵庫県三田市 2015.3/27)
通常のエビモの葉は画像左上の根元近くに見えるものの程度の大きさだが、枝を張り出しているものはかなり大きな葉であることが判る。また葉は新鮮で休眠状態ではなく生育中のように見える。

Fig.3 大型エビモとその殖芽 (兵庫県三田市 2015.3/27)
中央がこの個体周辺に見られた枝状の殖芽。
屈曲した枝が肥厚しているもので、通常のエビモの殖芽とは異なる形状である。

Fig.4 ヤナギモ、通常のエビモとの比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
中央が今回の大きなエビモ。左はヤナギモ、右は通常のエビモ。
ヤナギモは休眠状態にあり、枝先には不完全な殖芽状の越冬芽を作っている。
この状態ではヤナギモの葉よりも長いように見える。

Fig.5 葉の上半部の比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
上からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
今回のエビモはヤナギモのように葉先はとがらず、葉縁には鋸歯があり、エビモの葉を大きくしたもののように見える。

Fig.6 葉先の拡大比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
左からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
葉先は通常のエビモと変わらないように見える。

Fig.7 葉縁の拡大比較 (兵庫県三田市 2015.3/27)
左からヤナギモ、今回のエビモ、通常のエビモ。
ヤナギモの葉縁には葉身とは異なった葉縁細胞と言うべきやや長い細胞層が並んでいる。
一方、エビモには葉縁部に特化した細胞はなく、1細胞からなる鋸歯が並んでいて、今回の大型のエビモも同様であった。
以上のことから、今回の大型のエビモもエビモの範疇に入りそうである。

Fig.8 枝状の殖芽例 (兵庫県三田市 2015.3/27)
大型のエビモの周辺に見られた枝状の殖芽を数個持ち帰り、観察してみた。
長さは10cm前後で、古い痛んだ葉が残存していることから、茎頂が成長しつつ次第に肥厚して殖芽となったように見える。
念のため角野先生にご報告したところ、何度かこのような殖芽を見たことがあるが、その形成要因はよくわからないとのことだった。南米を除いた世界各地に生育する汎存種に近い種なので、様々な変異があってもおかしくはないとも。

Fig.9 殖芽の上部 (兵庫県三田市 2015.3/27)
枝状の殖芽は非常に硬く、葉腋にある小さな芽も硬化していた。
上部の腋芽はすでに萌芽しはじめていた。
このような枝状の殖芽が形成される要因は何なのか。
形成時期や水位、流速などが要因として考えられそうだが、今回の個体については継続的に観察していきたい。
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category: ヒルムシロ科
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