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Satoyama, Plants & Nature

篠山市の溜池跡湿地の蘚苔類 1 

 最近になって行きつけの湿地の蘚苔類を調べ始めたが、コケは初心者ゆえに同定がなかなか進まず、同定保留となるものも多い。もともと湿地のコケを調べはじめたのは、コケを通して湿地を見たら、これまで発見できなかった何かが見えてくるのではないかと考えたからで、まだまだ同定は心許ない。これまで、高層湿原の蘚苔類についてはよく研究がなされてきたようだが、里山の湿地、休耕田、低地の湿地についてはほとんど調べれらていないようだ。今回の複数箇所での調査では絶滅危惧種とされている蘚苔類が各所で見つかったため、今後の参考のためにメモしておきたい。
 湿生植物でもあることだが、その場所場所により種組成が変わってくるが、蘚苔類ではそれが顕著に見られるようだ。そのため場所ごとに1項にまとめて、「湿地の蘚苔類」のカテゴリにまとめていく予定だ。タイトルの末尾に数字を入れているのは、溜池跡湿地はこの1例に限らず数ヶ所あるため。湿地の定義は人により様々だと思うが、当ブログでは溜池畔、休耕田、山間の湿原、水田周辺、林間の湧水地など、比較的広い範囲を考えている。
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冬の溜池跡湿地
Fig.1 冬の溜池跡の湿地 (兵庫県篠山市 2015.3/8)
かつて溜池の底が抜けてそのまま放棄されたもので、約20年を経た現在は湿地となっているもの。
山際にあって流入する流れはなく、池底であった緩斜面から常時湧水がしみ出して、ごく浅い表水が見られる。表水の流れと底の斜面角度により、泥の堆積は堤体直下付近に見られるだけで、表面は砂礫が覆う場所が多い。
画像右の草本基部周りに見える緑色部分はナガサキテングサゴケによって覆われている。
また、画像中にはキセルアザミの小さな越冬ロゼットが点々と見られる。

初秋の溜池跡湿地
Fig.2 秋の様子 (兵庫県篠山市 2010.9/19)
Fig.1と同じ箇所を別角度から撮影したもの。湧水の流路が解る。
湿地内のこの部分はヒメカリマタガヤが優占し、白い頭花をつけたイトイヌノヒゲと小型のシロイヌノヒゲ、黄色い点として見えるミミカキグサが多く、ヤマイ、ハリイ、アオコウガイゼキショウが点在する。この箇所はキセルアザミが小さいロゼットのままで花茎を上げてないのは、表土がほとんど無く、貧栄養状態となっているからだろう。

ホソバミズゼニゴケ
Fig.3 ホソバミズゼニゴケ (兵庫県篠山市 2015.3/8)
湧水環境にふつうに出現する種で、本種がこの湿地では最も占有面積が広かった。
基物がしっかりとした場所に見られることが多く、基底が泥や腐植質の場所には生育していなかった。
関連ページ 湿生~沈水苔類・ホソバミズゼニゴケ

フジウロコゴケ
Fig.4 フジウロコゴケ (兵庫県篠山市 2015.3/8)
兵庫県の中部~南部ではかなりふつうに見られる種で、ここではホソバミズゼニゴケに次いで広い範囲を占めている。表土のない場所では直立~斜上気味に生え、濡れた腐植土上では茎を長くはわせているのが見られた。
関連ページ 湿生~沈水苔類・フジウロコゴケ

ホソバミズゼニゴケとフジウロコゴケのせめぎ合い
Fig.5 2種のせめぎ合う場所 (兵庫県篠山市 2015.3/8)
部分的に表土の薄い場所ではホソバミズゼニゴケとフジウロコゴケのせめぎ合いが見られた。

ミズゼニゴケモドキ
Fig.6 ミズゼニゴケモドキ (兵庫県篠山市 2015.3/8)
腐植土があり、かつ表水が多い場所で重なり合うように生育しており、蒴を上げはじめていた。
兵庫県ではこれまで標本が2例あったのみで、兵庫県版RDBではAランクとされているが、今回の調査では中~南部で5ヶ所の自生地が見つかった。今後さらに自生地発見が増えていくだろうと見ている。
画像には越冬中のアカバナも見られ、この箇所がやや中栄養な状態であると推測できる。
関連ページ 湿生~沈水苔類・ミズゼニゴケモドキ

ミズゼニゴケモドキ自生地の秋の様子
Fig.7 Fig.6あたりの秋の様子 (兵庫県篠山市 2010.9/19)
チゴザサが優占し、イヌノハナヒゲ、ヤマイ、イヌシカクイ、アイバソウ、サワギキョウ、サワヒヨドリなどが生育しており、これら草本が繁茂するシーズン中は地表にはあまり日射が届いていないと思われる。

混生するフジウロコゴケとミズゼニゴケモドキ
Fig.8 混生する2種 (兵庫県篠山市 2015.3/8)
Fig.6よりも斜面上部の枯れたチゴザサを掻き分けると、ミズゼニゴケモドキとフジウロコゴケの混生が見られた。画像手前にはフジウロコゴケが、奥にはミズゼニゴケモドキが見える。

ツクシナギゴケモドキ
Fig.9 ツクシナギゴケモドキ (兵庫県篠山市 2015.3/8)
本来は渓流畔の岩上や倒木上によく見られる種で、チゴザサ群落下の礫上や枯れ木の上に点々と見られた。

オオウロコゴケ
Fig.10 オオウロコゴケ (兵庫県篠山市 2015.3/8)
やや日当たりのある砂礫上と草本の根際でところどころにマットを形成していた。
山地の渓流畔でよく見かける種であるが、フジウロコゴケとともに山間溜池の流れ込み部分でもよく見かける。
関連ページ 湿生~抽水苔類・オオウロコゴケ

オオウロコゴケの自生箇所
Fig.11 チゴザサの根際に生育するオオウロコゴケ (兵庫県篠山市 2015.3/8)
表土が少なく表水に流れがある場合は、蘚苔類の生育箇所は草本が定着する足場を提供するだろう。
画像中に見えるキセルアザミとニガナの若い個体はそのようにして定着したものかもしれない。

ナガサキテングサゴケとモウセンゴケ
Fig.12 ナガサキテングサゴケとモウセンゴケの越冬態 (兵庫県篠山市 2015.3/8)
かつて池底だった部分は湧水により表土が流失し、基岩や大きな礫が露出しているところがある。
そのような箇所では草本はほとんど見られず、ナガサキテングサゴケが群生している。
モウセンゴケは湿地内に数多く見られるが、画像のように表土のない場所ではナガサキテングサゴケを足場にして生育している箇所もある。
関連ページ 湿生~沈水苔類・ナガサキテングサゴケ

オオハリガネゴケ
Fig.13 オオハリガネゴケ (兵庫県篠山市 2015.3/8)
湿地に限らず湿った半裸地状の場所でよく眼にする蘚類。
里山や低地の湿地にはよく出現する種で、比較的撹乱を受ける場所に多く見られるように感じられる。
ときに大きな群落をつくるが、ここでは占有する面積はごく狭く、イヌノハナヒゲやアオコウガイゼキショウの株元で見られた。

オオベニハイゴケ
Fig.14 オオベニハイゴケ (兵庫県篠山市 2015.3/8)
山間の溜池畔やそれに付随する湿地によく出現する大型の蘚類で、赤味を帯びることが多く、やや光沢がある。ここではところどころで厚いマットを作っており、ときに他の蘚苔類中に混生していた。

オオベニハイゴケの生育箇所
Fig.15 オオベニハイゴケのマット (兵庫県篠山市 2015.3/8)
ここでは比較的表土の多い部分のチゴザサ、ヤマイ、チガヤ、キセルアザミが混生している場所にマットを形成している。

トヤマシノブゴケ
Fig.16 アオシノブゴケ トヤマシノブゴケ (兵庫県篠山市 2015.3/8)
この付近では山間の細流脇や湧水地、棚田の多湿な土手などに比較的ふつうに見られる大型の蘚類。
ここでは表土の多いもっとも堤体に近い場所に小さなマットが点在し、オオベニハイゴケと混生する箇所も多かった。また表土が多いため湿生植物の出現数は多く、これまで出現したものに加えてコシンジュガヤ、ノハナショウブ、ヤマラッキョウ、ノギラン、ショウジョウバカマ、ワレモコウ、オトギリソウ、ムカゴニンジンなどが加わる。
アオシノブゴケは堤体の水田側の下部に大きなマットを形成しており、そこから侵入してきたものだと思われる。
*その後、精査したところアオシノブゴケではなく、トヤマシノブゴケであると解りました(2015.4/9訂正)。

不明蘚類
Fig.17 不明の蘚類 → ソリハヤナギゴケ (兵庫県篠山市 2015.3/8)
表土と表水ともにあるチゴザサやキセルアザミの株元を狭い範囲で覆っていたが、調べても判らなかった。基部が赤褐色の蒴柄を上げはじめていたので、現在育成しているところで、蒴が成熟した時点で再度調べてみたい。種名が判り次第、追記の予定。
*その後、秋山先生を現地にご案内して見て頂いたところ、この蘚類は図鑑では詳しい記述のないソリハヤナギゴケであると教えて頂いた。秋山先生に感謝申し上げます(2015.4/9追記)。

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category: 湿地の蘚苔類

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