ハタベカンガレイ自生地での撹乱と増殖の記録 / 撹乱依存する湿生・水生植物
2017/02/24 Fri. 00:31 [edit]
2010年に丹波地方でハタベカンガレイの自生する溜池を発見したが、水深が30cm程度と比較的浅く、水が澄んでいるうえ、沈水葉のみの若い個体も水中に見られるため、翌年の2011年の初秋に自生地の水中画像の撮影を試みた。水深は浅く見えたが、ウェーダーを履いて水中に踏み込むと、水底には軟泥が20~40cmほど堆積しており、ウェーダーの膝から股まで水中に浸かった。水温も低く、上方に隣接する谷池があり、そこからの浸出水が地下水と混じっていることを思わせた。
この水中撮影のため、水底の多くの部分を撹乱する結果となった。翌年の2012年に自生地の様子を観察しに行くと、撹乱した場所を中心にして個体数は増加し、100個体前後生育しているのを確認した。小穂をつけた成熟個体ではあるが、まだ沈水葉を伴っている個体が数多く見られた。さらに翌2013年には倍増したように見え、2014年に個体数を計測したところ300個体前後となっていた。昨年の2016年には池に密生する状態になり、ざっと見積もって500個体以上となった。
以下は2011年から年毎の画像による記録で、2015年のものをのぞいて、全て同じ場所と角度で撮影している。
*画像クリックで、別ウィンドで表示されます。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。

Fig.1 発見当初のハタベカンガレイ (兵庫県丹波地方 2010.7/15)
小穂基部からクローンを多数芽生している。
この時は大型個体が3株と、沈水葉を伴う若い成熟個体が2株生育していた。
関連ページ 抽水~沈水植物・ハタベカンガレイ

Fig.2 撹乱当年の自生地 (兵庫県丹波地方 2011.9/24)
大型個体が5個体と、若い成熟個体が数個体生育。水中には十数個体の沈水葉のみの若い個体が生育していた。開放水面の多くの部分はフトヒルムシロをはじめとして、ヒツジグサ、ホソバミズヒキモからなる浮葉植物群落によって占められている。

Fig.3 水中の様子 (兵庫県丹波地方 2011.9/24)
沈水葉を展開したヒツジグサと、その手前にハタベカンガレイの沈水葉のみの若い個体が見られる。
糸状の沈水葉を茎から互生しているものはホソバミズヒキモ。

Fig.4 大型個体周辺に散在する若い個体 (兵庫県丹波地方 2011.9/24)
大型の親株周辺の水中に、沈水葉のみの若い個体が見られる。

Fig.5 撹乱翌年の自生地 (兵庫県丹波地方 2012.10/11)
以前からあった大型個体のほか、小穂を付けているが沈水葉を伴う若い成熟個体が急増した。

Fig.6 撹乱から2年後の自生地 (兵庫県丹波地方 2013.8/14)
個体数はさらに倍増しているように見え、浮葉植物群落はかなり後退している。

Fig.7 撹乱から3年後の自生地 (兵庫県丹波地方 2014.8/14)
この年、個体数計測すると300個体前後となっていた。

Fig.8 撹乱から4年後の自生地を別の方向から撮影 (兵庫県丹波地方 2015.7/31)
溜池の浅水域を除いて高い密度で群生している。

Fig.9 撹乱から5年後の昨年撮影の自生地 (兵庫県丹波地方 2016.8/6)
大型個体が密生しざっと見て500個体はあるように見える。目視での個人による個体数計測は難しく時間と根気が必要になるだろう。周辺には沈水葉のみの若い個体も見られる。

Fig.10 倒伏した有花茎にみられる芽生 (兵庫県丹波地方 2013.8/14)
短期間によるこのような増殖は、撹乱によって泥中の深い場所で休眠していた種子が地表近くに移動して目覚めたことと、芽生したクローンが周辺に拡散されたためだろう。
ハタベカンガレイは7~8月に小穂基部にクローンを多数芽生し、有花茎が倒伏して枯れることによって接地して増殖する。多くのクローンは親株や水草に絡んで水底に定着するが、Fig.8の画像に見られる池の水際に生育しているものは、浮遊していたクローンが岸辺に吹き寄せられて定着したものだろう。
-----------------------------------------------------------------------------------------------
1年生の湿生・水生植物が世代を繋ぐには、生育条件として氾濫や耕起などの撹乱が不可欠となる例が比較的多い。衰退しつつある一部の多年生のものも、同様な撹乱によって埋土種子から回復が可能なように思われる。特に衰退の原因が水質の悪化でなければ、この手法は有効だろう。
以下に撹乱を必要とするものをいくつか挙げておきたい。

Fig.11 撹乱の翌年に出現したオニバス (兵庫県播磨地方 2015.8/6)
溜池の土堤改修の翌年に出現したが、昨年は出現しなかった。
ウェーダーを履いて池底を少し撹乱しておいたが、オニバスの場合は小規模な人力程度の撹乱では効果は少なく、重機による撹乱が必要なレベルかもしれない。
関連ページ 浮葉植物・オニバス

Fig.12 撹乱環境に生育するデンジソウ (兵庫県摂津地方 2009.10/15)
原野環境的な小湿地に生育しており、クルマのわだち周辺に生育していた。
現在は遷移が進んで見られなくなっているが、デンジソウの胞子嚢は強固で、長期にわたって胞子が保存されるという。新たな撹乱と充分な水分があれば、再び出現するだろう。
関連ページ 湿生植物・デンジソウ

Fig.13 休耕田に生育するミズネコノオ (兵庫県丹波地方 2014.9/29)
休耕された当年、ミズネコノオの大型個体が多数見られたが、翌年は高茎草本が増加して個体数はわずかとなり、さらに次の年はセイタカアワダチソウが繁茂して全く見られなくなった。
ミズネコノオは1年草であるが、このような場合でもできるだけ早い時期に春期に耕起して湛水状態とすることによって回復は可能だろう。多くの1年生の水田雑草は同様な傾向にある
関連ページ 湿生植物・ミズネコノオ

Fig.14 休耕田に生育するコホタルイ (滋賀県 2014.9/8)
2014年に近畿地方および滋賀県新産として発見・報告(「京都植物」)したが、翌年には早くも高茎草本に覆われて消失したという。
コホタルイは多年生草本であるが、このような場合は結実期を過ぎた晩秋~早春にトラクターで耕起して、水を入れることにより復旧する可能性が高い。
関連ページ 湿生植物・コホタルイ
この水中撮影のため、水底の多くの部分を撹乱する結果となった。翌年の2012年に自生地の様子を観察しに行くと、撹乱した場所を中心にして個体数は増加し、100個体前後生育しているのを確認した。小穂をつけた成熟個体ではあるが、まだ沈水葉を伴っている個体が数多く見られた。さらに翌2013年には倍増したように見え、2014年に個体数を計測したところ300個体前後となっていた。昨年の2016年には池に密生する状態になり、ざっと見積もって500個体以上となった。
以下は2011年から年毎の画像による記録で、2015年のものをのぞいて、全て同じ場所と角度で撮影している。
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Fig.1 発見当初のハタベカンガレイ (兵庫県丹波地方 2010.7/15)
小穂基部からクローンを多数芽生している。
この時は大型個体が3株と、沈水葉を伴う若い成熟個体が2株生育していた。
関連ページ 抽水~沈水植物・ハタベカンガレイ

Fig.2 撹乱当年の自生地 (兵庫県丹波地方 2011.9/24)
大型個体が5個体と、若い成熟個体が数個体生育。水中には十数個体の沈水葉のみの若い個体が生育していた。開放水面の多くの部分はフトヒルムシロをはじめとして、ヒツジグサ、ホソバミズヒキモからなる浮葉植物群落によって占められている。

Fig.3 水中の様子 (兵庫県丹波地方 2011.9/24)
沈水葉を展開したヒツジグサと、その手前にハタベカンガレイの沈水葉のみの若い個体が見られる。
糸状の沈水葉を茎から互生しているものはホソバミズヒキモ。

Fig.4 大型個体周辺に散在する若い個体 (兵庫県丹波地方 2011.9/24)
大型の親株周辺の水中に、沈水葉のみの若い個体が見られる。

Fig.5 撹乱翌年の自生地 (兵庫県丹波地方 2012.10/11)
以前からあった大型個体のほか、小穂を付けているが沈水葉を伴う若い成熟個体が急増した。

Fig.6 撹乱から2年後の自生地 (兵庫県丹波地方 2013.8/14)
個体数はさらに倍増しているように見え、浮葉植物群落はかなり後退している。

Fig.7 撹乱から3年後の自生地 (兵庫県丹波地方 2014.8/14)
この年、個体数計測すると300個体前後となっていた。

Fig.8 撹乱から4年後の自生地を別の方向から撮影 (兵庫県丹波地方 2015.7/31)
溜池の浅水域を除いて高い密度で群生している。

Fig.9 撹乱から5年後の昨年撮影の自生地 (兵庫県丹波地方 2016.8/6)
大型個体が密生しざっと見て500個体はあるように見える。目視での個人による個体数計測は難しく時間と根気が必要になるだろう。周辺には沈水葉のみの若い個体も見られる。

Fig.10 倒伏した有花茎にみられる芽生 (兵庫県丹波地方 2013.8/14)
短期間によるこのような増殖は、撹乱によって泥中の深い場所で休眠していた種子が地表近くに移動して目覚めたことと、芽生したクローンが周辺に拡散されたためだろう。
ハタベカンガレイは7~8月に小穂基部にクローンを多数芽生し、有花茎が倒伏して枯れることによって接地して増殖する。多くのクローンは親株や水草に絡んで水底に定着するが、Fig.8の画像に見られる池の水際に生育しているものは、浮遊していたクローンが岸辺に吹き寄せられて定着したものだろう。
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1年生の湿生・水生植物が世代を繋ぐには、生育条件として氾濫や耕起などの撹乱が不可欠となる例が比較的多い。衰退しつつある一部の多年生のものも、同様な撹乱によって埋土種子から回復が可能なように思われる。特に衰退の原因が水質の悪化でなければ、この手法は有効だろう。
以下に撹乱を必要とするものをいくつか挙げておきたい。

Fig.11 撹乱の翌年に出現したオニバス (兵庫県播磨地方 2015.8/6)
溜池の土堤改修の翌年に出現したが、昨年は出現しなかった。
ウェーダーを履いて池底を少し撹乱しておいたが、オニバスの場合は小規模な人力程度の撹乱では効果は少なく、重機による撹乱が必要なレベルかもしれない。
関連ページ 浮葉植物・オニバス

Fig.12 撹乱環境に生育するデンジソウ (兵庫県摂津地方 2009.10/15)
原野環境的な小湿地に生育しており、クルマのわだち周辺に生育していた。
現在は遷移が進んで見られなくなっているが、デンジソウの胞子嚢は強固で、長期にわたって胞子が保存されるという。新たな撹乱と充分な水分があれば、再び出現するだろう。
関連ページ 湿生植物・デンジソウ

Fig.13 休耕田に生育するミズネコノオ (兵庫県丹波地方 2014.9/29)
休耕された当年、ミズネコノオの大型個体が多数見られたが、翌年は高茎草本が増加して個体数はわずかとなり、さらに次の年はセイタカアワダチソウが繁茂して全く見られなくなった。
ミズネコノオは1年草であるが、このような場合でもできるだけ早い時期に春期に耕起して湛水状態とすることによって回復は可能だろう。多くの1年生の水田雑草は同様な傾向にある
関連ページ 湿生植物・ミズネコノオ

Fig.14 休耕田に生育するコホタルイ (滋賀県 2014.9/8)
2014年に近畿地方および滋賀県新産として発見・報告(「京都植物」)したが、翌年には早くも高茎草本に覆われて消失したという。
コホタルイは多年生草本であるが、このような場合は結実期を過ぎた晩秋~早春にトラクターで耕起して、水を入れることにより復旧する可能性が高い。
関連ページ 湿生植物・コホタルイ
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category: 湿地・溜池
東播磨の湿地・溜池の巡回
2016/10/05 Wed. 01:25 [edit]
定期的に稀少種の自生地の巡回を行っています。9~10月はその最盛期。
個体数の変化や自生環境の変化がないかチェエクし、地元の研究者や愛好家と情報を共有してモニタリングしています。それにしても連日の降雨と台風襲来に予定が狂いまくりです。
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Fig.1 ヒメナエ その1 (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
昨年は湿地内の地下水位が高く自生箇所が水没して確認できませんでしたが、今年は数個体が生育していました。チゴザサやイヌノヒゲ、イヌシカクイに埋もれるように生育し、注意していないと踏み潰してしまうでしょう。
関連ページ 湿生植物・ヒメナエ

Fig.2 キセルアザミ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
湿原内にはキセルアザミが群生する一画があり、開花全盛となっていました。
関連ページ 湿生植物・キセルアザミ

Fig.3 訪花したオオハラナガツチバチ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
秋に訪花が目立つハチで、コガネムシの幼虫に産卵する寄生蜂です。

Fig.4 ホソバリンドウ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
湿地に適応して葉が細くなったリンドウの品種。県南部ではよく見られます。
関連ページ 湿生植物・ホソバリンドウ

Fig.5 アイナエ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
水の染み出す裸地や、粘土質の半裸地によく見られます。
アリノトウグサ、イトハナビテンツキ、センブリなどと生育していることが多いです。
関連ページ 湿生植物・アイナエ

Fig.6 ゴマクサの花 (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
今年はゴマクサの当たり年のようで、自生地では多くの個体が見られます。
関連ページ 湿生植物・ゴマクサ

Fig.7 オミナエシ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
表土の少ない荒地状の草地にヤマハギとともに群生していました。
オミナエシの群生地が多い秋の播磨地方の風物詩です。
関連ページ 湿生植物・オミナエシ

Fig.8 クロタマガヤツリ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
今年は夏場の降雨が少なかったためか、昨年の半数程度の個体数でした。
1年生草本であるため出現は不安定で、全く出現しない年もあります。
関連ページ 湿生植物・クロタマガヤツリ

Fig.9 ツルナシコアゼガヤツリ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
兵庫県では南部に行くほど本種の自生地が多くなります。
コアゼガヤツリは多年草ですが、こちらは1年草です。
関連ページ 湿生植物・ツルナシコアゼガヤツリ

Fig.10 ウキシバ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
水面にたなびくウキシバが花序を出し始めていました。
ウキシバは水面下で節間を長く伸ばし、水面に達すると節間が短くなり、花序を出します。
関連ページ 湿生植物・ウキシバ

Fig.11 ツクシクロイヌノヒゲ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
本種は兵庫県南部に広く見られ、自然度の高い溜池の指標となります。
関連ページ 湿生植物・ツクシクロイヌノヒゲ

Fig.12 ミズトラノオ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
兵庫県では播磨地方のほか、丹波地方にも記録がありますが、丹波地方で見かけたことがありません。
本来は氾濫原植物と考えられ、そのような環境が無くなってしまったからでしょうか。
関連ページ 湿生植物・ミズトラノオ

Fig.13 ヒメナエ その2 (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
Fig.1とは別の場所に自生するもので、ここもせいぜい10個体が生育している程度です。
夏場の降雨が少なかった影響だと思われます。
関連ページ 湿生植物・ヒメナエ

Fig.14 オオタニシ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
播磨地方では淡水貝類が溜池で豊富に見られます。
オオタニシは自然度の高い溜池に生息し、県下全体でもよく見かけます。
いっぽうで近郊の用水路や水田に生育するマルタニシを見かける機会は減りつつあります。

Fig.15 ヌマダイコン (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
県内での記録はそこそこあるようですが、それほど見かける機会がありません。
私は県内ではまだこの1ヶ所でしか見たことがありません。
関連ページ 湿生植物・ヌマダイコン

Fig.16 スズメノコビエ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
ぱっと見はスズメノヒエやアメリカスズメノヒエのように見えますが、生育場所は自然度の高い溜池畔とそこに付随する湿地にのみ生育しています。
兵庫県では東播磨に偏在しており、この地域でのみふつうに見られます。
関連ページ 湿生植物・スズメノコビエ

Fig.17 ヤナギヌカボ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
自生している溜池にソーラーパネルが設置されたので少し心配でしたが確認できました。
同じ池にはサイコクヌカボが沢山生育していますが、本種は1個体見られたのみでした。
花序の花はサイコクヌカボよりも密についてあまりしなだれず、葉は細長くて両縁が平行となる部分があり、葉裏にはふくらんだ明瞭な腺点があります。
関連ページ 湿生植物・ヤナギヌカボ

Fig.18 サイコクヌカボ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
ヤナギヌカボと同じ池に生育しているもので、東播磨では比較的ふつうに見られます。
サイコクヌカボの花序には花はまばらにつき、ややしなだれます。葉裏に腺点が見られることがありますが、葉肉に埋まるような形で不明瞭です。
関連ページ 湿生植物・サイコクヌカボ

Fig.19 ヌカボタデ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
サイコクヌカボに似ていますが、草体や葉はより小型、花序軸は細く、花はよりまばらにつきます。
痩果表面には光沢がありますが縮緬状の細かいしわがありますが、サイコクヌカボでは表面は平滑です。
関連ページ 湿生植物・ヌカボタデ

Fig.20 ミズネコノオ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
例年、ミズネコノオが生育する溜池はこの時期に干上がっているのですが、連日の降雨で満水状態となっていて、ミズネコノオも多くの個体が水没していました。
関連ページ 湿生植物・ミズネコノオ

Fig.21 ミズネコノオの沈水形 (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
水深のある場所のものは細長い葉を多数輪生して沈水形となっています。
沈水状態にあっても最も左のものは花芽ができていました。

Fig.22 カガシラ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
兵庫県内でも数ヶ所しか生育していませんが、ここでは大小無数の個体が生育しています。
画像のものはまだ大きいほうで、小さなものは2cmほどで花序をつけています。
1年草なので年によって増減がありますが、今年は生育領域を他の場所にも広げていました。
関連ページ 湿生植物・カガシラ

Fig.23 ヒナザサ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
本種は環境省準絶滅危惧(NT)とされ、多くの都府県で絶滅危惧種とされていますが、兵庫県では南部~中部にかけての溜池畔や湿地に広く見られます。キキョウ、スズサイコ、イヌタヌキモなども同様な種で、これは兵庫県内には流紋岩質や花崗岩質の基岩が多く、貧栄養な風化土壌が広く分布するためです。基岩が風化した薄い土壌で草地環境が残り、酸性寄りになりがちの湿地や溜池が多数残っているためです。サギスゲ、ミカヅキグサ、ヌマガヤ、ウメバチソウなどが低地の湿地に遺存的に生育しているのも同様な理由によるものです。
関連ページ 湿生植物・ヒナザサ
個体数の変化や自生環境の変化がないかチェエクし、地元の研究者や愛好家と情報を共有してモニタリングしています。それにしても連日の降雨と台風襲来に予定が狂いまくりです。
*画像クリックで、別ウィンドで表示されます。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。

Fig.1 ヒメナエ その1 (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
昨年は湿地内の地下水位が高く自生箇所が水没して確認できませんでしたが、今年は数個体が生育していました。チゴザサやイヌノヒゲ、イヌシカクイに埋もれるように生育し、注意していないと踏み潰してしまうでしょう。
関連ページ 湿生植物・ヒメナエ

Fig.2 キセルアザミ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
湿原内にはキセルアザミが群生する一画があり、開花全盛となっていました。
関連ページ 湿生植物・キセルアザミ

Fig.3 訪花したオオハラナガツチバチ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
秋に訪花が目立つハチで、コガネムシの幼虫に産卵する寄生蜂です。

Fig.4 ホソバリンドウ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
湿地に適応して葉が細くなったリンドウの品種。県南部ではよく見られます。
関連ページ 湿生植物・ホソバリンドウ

Fig.5 アイナエ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
水の染み出す裸地や、粘土質の半裸地によく見られます。
アリノトウグサ、イトハナビテンツキ、センブリなどと生育していることが多いです。
関連ページ 湿生植物・アイナエ

Fig.6 ゴマクサの花 (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
今年はゴマクサの当たり年のようで、自生地では多くの個体が見られます。
関連ページ 湿生植物・ゴマクサ

Fig.7 オミナエシ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
表土の少ない荒地状の草地にヤマハギとともに群生していました。
オミナエシの群生地が多い秋の播磨地方の風物詩です。
関連ページ 湿生植物・オミナエシ

Fig.8 クロタマガヤツリ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
今年は夏場の降雨が少なかったためか、昨年の半数程度の個体数でした。
1年生草本であるため出現は不安定で、全く出現しない年もあります。
関連ページ 湿生植物・クロタマガヤツリ

Fig.9 ツルナシコアゼガヤツリ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
兵庫県では南部に行くほど本種の自生地が多くなります。
コアゼガヤツリは多年草ですが、こちらは1年草です。
関連ページ 湿生植物・ツルナシコアゼガヤツリ

Fig.10 ウキシバ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
水面にたなびくウキシバが花序を出し始めていました。
ウキシバは水面下で節間を長く伸ばし、水面に達すると節間が短くなり、花序を出します。
関連ページ 湿生植物・ウキシバ

Fig.11 ツクシクロイヌノヒゲ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
本種は兵庫県南部に広く見られ、自然度の高い溜池の指標となります。
関連ページ 湿生植物・ツクシクロイヌノヒゲ

Fig.12 ミズトラノオ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
兵庫県では播磨地方のほか、丹波地方にも記録がありますが、丹波地方で見かけたことがありません。
本来は氾濫原植物と考えられ、そのような環境が無くなってしまったからでしょうか。
関連ページ 湿生植物・ミズトラノオ

Fig.13 ヒメナエ その2 (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
Fig.1とは別の場所に自生するもので、ここもせいぜい10個体が生育している程度です。
夏場の降雨が少なかった影響だと思われます。
関連ページ 湿生植物・ヒメナエ

Fig.14 オオタニシ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
播磨地方では淡水貝類が溜池で豊富に見られます。
オオタニシは自然度の高い溜池に生息し、県下全体でもよく見かけます。
いっぽうで近郊の用水路や水田に生育するマルタニシを見かける機会は減りつつあります。

Fig.15 ヌマダイコン (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
県内での記録はそこそこあるようですが、それほど見かける機会がありません。
私は県内ではまだこの1ヶ所でしか見たことがありません。
関連ページ 湿生植物・ヌマダイコン

Fig.16 スズメノコビエ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
ぱっと見はスズメノヒエやアメリカスズメノヒエのように見えますが、生育場所は自然度の高い溜池畔とそこに付随する湿地にのみ生育しています。
兵庫県では東播磨に偏在しており、この地域でのみふつうに見られます。
関連ページ 湿生植物・スズメノコビエ

Fig.17 ヤナギヌカボ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
自生している溜池にソーラーパネルが設置されたので少し心配でしたが確認できました。
同じ池にはサイコクヌカボが沢山生育していますが、本種は1個体見られたのみでした。
花序の花はサイコクヌカボよりも密についてあまりしなだれず、葉は細長くて両縁が平行となる部分があり、葉裏にはふくらんだ明瞭な腺点があります。
関連ページ 湿生植物・ヤナギヌカボ

Fig.18 サイコクヌカボ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
ヤナギヌカボと同じ池に生育しているもので、東播磨では比較的ふつうに見られます。
サイコクヌカボの花序には花はまばらにつき、ややしなだれます。葉裏に腺点が見られることがありますが、葉肉に埋まるような形で不明瞭です。
関連ページ 湿生植物・サイコクヌカボ

Fig.19 ヌカボタデ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
サイコクヌカボに似ていますが、草体や葉はより小型、花序軸は細く、花はよりまばらにつきます。
痩果表面には光沢がありますが縮緬状の細かいしわがありますが、サイコクヌカボでは表面は平滑です。
関連ページ 湿生植物・ヌカボタデ

Fig.20 ミズネコノオ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
例年、ミズネコノオが生育する溜池はこの時期に干上がっているのですが、連日の降雨で満水状態となっていて、ミズネコノオも多くの個体が水没していました。
関連ページ 湿生植物・ミズネコノオ

Fig.21 ミズネコノオの沈水形 (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
水深のある場所のものは細長い葉を多数輪生して沈水形となっています。
沈水状態にあっても最も左のものは花芽ができていました。

Fig.22 カガシラ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
兵庫県内でも数ヶ所しか生育していませんが、ここでは大小無数の個体が生育しています。
画像のものはまだ大きいほうで、小さなものは2cmほどで花序をつけています。
1年草なので年によって増減がありますが、今年は生育領域を他の場所にも広げていました。
関連ページ 湿生植物・カガシラ

Fig.23 ヒナザサ (兵庫県東播磨地方 2016.10/2)
本種は環境省準絶滅危惧(NT)とされ、多くの都府県で絶滅危惧種とされていますが、兵庫県では南部~中部にかけての溜池畔や湿地に広く見られます。キキョウ、スズサイコ、イヌタヌキモなども同様な種で、これは兵庫県内には流紋岩質や花崗岩質の基岩が多く、貧栄養な風化土壌が広く分布するためです。基岩が風化した薄い土壌で草地環境が残り、酸性寄りになりがちの湿地や溜池が多数残っているためです。サギスゲ、ミカヅキグサ、ヌマガヤ、ウメバチソウなどが低地の湿地に遺存的に生育しているのも同様な理由によるものです。
関連ページ 湿生植物・ヒナザサ
category: 湿地・溜池
9月の湿地と溜池
2016/09/25 Sun. 23:46 [edit]
矢継ぎ早のようでもありますが、もう9月も後半、今月観察した湿生・水生植物の観察メモをUPします。
*画像クリックで、別ウィンドで表示されます。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。

Fig.1 オオトリゲモ (神戸市 2016.9/11)
この日はY氏とともに、神戸市西部から播磨地方にかけてトリゲモ類の探査に出掛けました。
1週間前に確認済みの平野部の溜池でオオトリゲモの特徴をおさらい。
関連ページ 沈水植物・オオトリゲモ

Fig.2 オオトリゲモの雄花 (神戸市 2016.9/11)
左は葉と葉鞘を取り除いて露出させた雄花で、長さ2.5mm程度あります。
右は苞鞘から取り出した葯室。葯室は長さ1.8mmほどあり、トリゲモのように花粉粒が透けて見えることはありません。顕微鏡下では葯室が複数あることは未熟な雄花でないと確認し辛く、ルーペで観察するほうが分かりやすいです。
一方、トリゲモは雄花が小さく、葯室も0.5mmと微小なので、顕微鏡下での観察が必須となります。
この日播磨地方の溜池で確認できたのはホッスモとオオトリゲモばかりで、新たなトリゲモの自生地は発見できませんでした。

Fig.3 アイノコイトモ (神戸市 2016.9/11)
オオトリゲモとともに同じ池に生育しているのが見られました。
イトモよりも葉が長く、ホソバミズヒキモの沈水葉ほど細くなく、ヤナギモほどの葉幅がないのが特徴。果実は不稔で、殖芽を多産して繁殖します。
関連ページ 沈水植物・アイノコイトモ

Fig.4 セスジイトトンボ (神戸市 2016.9/11)
この溜池ではヒシがよく繁茂し、その周辺で多数のセスジイトトンボが飛翔していました。
セスジイトトンボは抽水植物の多い溜池でもふつうに見られます。

Fig.5 葯が黄色のホソバヘラオモダカ (神戸市 2016.9/11)
この場所に生育しているものは花弁が淡紅色(ホソバヘラオモダカの特徴)、葯が黄色(ヘラオモダカの特徴)、植物体は大型で葉幅がやや広い(ヘラオモダカの特徴)という特徴を持っています。
このように両種の特徴を併せ持つものは、痩果の大きさによって区別するのが無難です。
この場所のものは昨年痩果の大きさを測って、ホソバヘラオモダカと確定しました。
関連ページ 抽水植物・ホソバヘラオモダカ

Fig.6 ホソバヘラオモダカとヘラオモダカの痩果の比較
ホソバヘラオモダカでは長さ2.6~3.0mm(突起部は含まない)、幅1.4~1.7mmとなり、花柱が突起となり宿存します。ヘラオモダカでは長さ2~2.5mm、幅1.5~1.7mmとなり、花柱はホソバヘラオモダカほど宿存せず、楕円状の窪みが明瞭です。

Fig.7 ヒメオトギリ (神戸市 2016.9/11)
ヒメオトギリには2つのタイプがあることは、以前から三重の花かんざしさんがブログ上で指摘しておられました。兵庫県下でも2つのタイプが見られ、ここではホソバヘラオモダカと混生しています。

Fig.8 ヒメオトギリの花 (神戸市 2016.9/11)
花の径は約1cm、花弁は倒卵形で縁が重なりあい、3脈あって中央脈が目立ち、雄蕊は少なくとも15本以上ときに30本を越えています。花かんざしさんはこのタイプを「ヒメオトギリ」とされており、兵庫県下では自然度の高い場所に稀に見かけます。県下でよく見かけるのは花かんざしさんが「Type3」とされるもので、花の径が8mmほどで、花弁は長楕円形で花弁の間には隙間が空き、雄蕊は7~12本程度です。
「ヒメオトギリ」と「Type3」は遺伝子的には全く別のものであることが分かっており、将来的には独立種として分けられることになりそうです。以下は花かんざしさんの「Type3」に言及しておられるブログページです。
「Type3の情報をお願いします。」

Fig.9 「ヒメオトギリ」と「Type3」の花の比較
フィールドで見ると両タイプには明瞭な差がありますが、標本にすると花は縮れて区別しづらくなります。関連ページとしてリンクしているメインサイトの「ヒメオトギリ」としているものは「Type3」のほうで、このページも改訂して「ヒメオトギリ」を併記する必要があります。
関連ページ 湿生植物・ヒメオトギリ

Fig.10 ゴマクサ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
溜池畔の湿地に群生しているもので、ここでは丈の低いものがカワラケツメイとともに群生していました。半寄生植物であるためか、同じ湿地内でもチガヤやヒメヒラテンツキ、メリケンカルカヤが群生する場所では枝を分けた大株となっています。
ここでは先の「Type3」のヒメオトギリが大群生していました。
関連ページ 湿生植物・ゴマクサ

Fig.11 ニオイタデ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
時期的にタイミングよく開花している花穂を見ることができました。
兵庫県版RDBではCランクとされていますが、ランクと比較するとあまり見る機会のない草本です。
関連ページ 湿生植物・ニオイタデ

Fig.12 オオホシクサ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
ニオイタデの近くではオオホシクサが点々と生育していました。
播磨地方では溜池畔でふつうに見られますが、他の地域では全く見かけない種です。
関連ページ 湿生植物・オオホシクサ

Fig.13 ヌマカゼクサ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
本種も播磨地方ではごくふつうに多産しますが、他の地域では全く見かけません。
同じイネ科のスズメノコビエも同様の偏在的な分布が見られます。
関連ページ 湿生植物・ヌマカゼクサ

Fig.14 タヌキマメ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
移動途中の小規模な湿地に、大きく育った個体の群生が見られました。
このあたりではふつうに見られますが、形態がユニークなので見つけると嬉しくなります。
ここでは同所的にタチカモメヅルも見られました。
関連ページ 湿生植物・タヌキマメ

Fig.15 イトイヌノヒゲ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
溜池土堤直下の湿地で群生していました。
栄養状態がよいのと、ヌマガヤ、イヌノハナヒゲなどの草丈の高い競合種が多いためか、長い花茎を伸ばして群生していました。
関連ページ 湿生植物・イトイヌノヒゲ

Fig.16 イガクサ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
イガクサは湿地環境と草原環境が交錯するような裸地状の場所でよく見かけます。
このような場所ではイトイヌノハナヒゲ、イトハナビテンツキ、カキラン、ヤマトキソウ、トウカイコモウセンゴケ、イシモチソウ、ヒナノカンザシ、オミナエシなどが混生していることが多いです。
関連ページ 湿生植物・イガクサ

Fig.17 イトテンツキ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
毎年継続観察しているイトテンツキの様子を見に行くとちょうど開花期でした。
各地で注意して探していますが、まだこの場所以外では見かけたことがなく非常に稀なもののようです。そろそろ兵庫県版RDBに記載するべきものでしょう。
関連ページ 湿生植物・イトテンツキ

Fig.18 ゴマナとツリフネソウ (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
この日は初夏に自生を確認したロッカクイの標本採集と草原性植物の観察に、有志とともに但馬地方の高原地帯に。途中立ち寄った棚田の用水路脇は花盛りで、ゴマナ、ツリフネソウ、クロバナヒキオコシ、オタカラコウの花の競演が賑やかでした。
関連ページ 湿生植物・ツリフネソウ

Fig.19 オタカラコウを訪花したオオウラギンスジヒョウモン (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
昼からの活動に備えてオオウラギンスジヒョウモンがオタカラコウの花で腹ごしらえしていました。
蝶の吸蜜の撮影は午前中の早い時間が適しています。
関連ページ 湿生植物・オタカラコウ

Fig.20 マルバノサワトウガラシ (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
このあたりの水田にはマルバノサワトウガラシが比較的ふつうに見られます。
刈り取り後の水田ですでに開花は見られず、草体は寒気で紅変しています。
関連ページ 湿生植物・マルバノサワトウガラシ

Fig.21 ロッカクイ (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
野焼き直後のススキ草原を歩き回り、初夏の時点で確認していたロッカクイで、ススキ原をヤブ漕ぎして自生する湿地にたどり着きました。この地域のロッカクイは1967年以降の記録がなく、再確認が課題となっていましたが、ようやく確認・記録できました。
ロッカクイは日本全土で現状自生地が7ヶ所しかなく、うち2ヶ所が兵庫県内にあります。
関連ページ 湿生植物・ロッカクイ

Fig.22 ヒロハノドジョウツナギ (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
本種も但馬地方では1991年の記録を最後にして確認できておらず、但馬地方では絶滅したとされていたものです。特にこの地域のものは1937年以降の記録はありませんでした。
ロッカクイと同じ湿地に生育しており、最初は花茎をシカに齧られたものばかりで気づきませんでしたが、花序が完全なものを見つけて気づきました。ドジョウツナギとの雑種で同様な大きさとなるマンゴクドジョウツナギと違って、茎下方は倒伏・斜上せず、地下茎から太い茎(稈)を直立します。
同じ湿地にはオオヌマハリイも群生していますが、野生動物の撹乱が顕著でした。
関連ページ 湿生植物・ヒロハノドジョウツナギ

Fig.23 高原の撹乱の多い湿地 (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
人為的撹乱の多いスキー場内の湿地では、ゴマナ、サワヒヨドリ、オタカラコウなどの秋の草花によるお花畑が出きていました。撹乱地であるためアブラガヤやエゾアブラガヤなどのカヤツリグサ科草本も多く見られます。
関連ページ 湿生植物・サワヒヨドリ
関連ページ 湿生植物・アブラガヤ
関連ページ 湿生植物・エゾアブラガヤ
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Fig.1 オオトリゲモ (神戸市 2016.9/11)
この日はY氏とともに、神戸市西部から播磨地方にかけてトリゲモ類の探査に出掛けました。
1週間前に確認済みの平野部の溜池でオオトリゲモの特徴をおさらい。
関連ページ 沈水植物・オオトリゲモ

Fig.2 オオトリゲモの雄花 (神戸市 2016.9/11)
左は葉と葉鞘を取り除いて露出させた雄花で、長さ2.5mm程度あります。
右は苞鞘から取り出した葯室。葯室は長さ1.8mmほどあり、トリゲモのように花粉粒が透けて見えることはありません。顕微鏡下では葯室が複数あることは未熟な雄花でないと確認し辛く、ルーペで観察するほうが分かりやすいです。
一方、トリゲモは雄花が小さく、葯室も0.5mmと微小なので、顕微鏡下での観察が必須となります。
この日播磨地方の溜池で確認できたのはホッスモとオオトリゲモばかりで、新たなトリゲモの自生地は発見できませんでした。

Fig.3 アイノコイトモ (神戸市 2016.9/11)
オオトリゲモとともに同じ池に生育しているのが見られました。
イトモよりも葉が長く、ホソバミズヒキモの沈水葉ほど細くなく、ヤナギモほどの葉幅がないのが特徴。果実は不稔で、殖芽を多産して繁殖します。
関連ページ 沈水植物・アイノコイトモ

Fig.4 セスジイトトンボ (神戸市 2016.9/11)
この溜池ではヒシがよく繁茂し、その周辺で多数のセスジイトトンボが飛翔していました。
セスジイトトンボは抽水植物の多い溜池でもふつうに見られます。

Fig.5 葯が黄色のホソバヘラオモダカ (神戸市 2016.9/11)
この場所に生育しているものは花弁が淡紅色(ホソバヘラオモダカの特徴)、葯が黄色(ヘラオモダカの特徴)、植物体は大型で葉幅がやや広い(ヘラオモダカの特徴)という特徴を持っています。
このように両種の特徴を併せ持つものは、痩果の大きさによって区別するのが無難です。
この場所のものは昨年痩果の大きさを測って、ホソバヘラオモダカと確定しました。
関連ページ 抽水植物・ホソバヘラオモダカ

Fig.6 ホソバヘラオモダカとヘラオモダカの痩果の比較
ホソバヘラオモダカでは長さ2.6~3.0mm(突起部は含まない)、幅1.4~1.7mmとなり、花柱が突起となり宿存します。ヘラオモダカでは長さ2~2.5mm、幅1.5~1.7mmとなり、花柱はホソバヘラオモダカほど宿存せず、楕円状の窪みが明瞭です。

Fig.7 ヒメオトギリ (神戸市 2016.9/11)
ヒメオトギリには2つのタイプがあることは、以前から三重の花かんざしさんがブログ上で指摘しておられました。兵庫県下でも2つのタイプが見られ、ここではホソバヘラオモダカと混生しています。

Fig.8 ヒメオトギリの花 (神戸市 2016.9/11)
花の径は約1cm、花弁は倒卵形で縁が重なりあい、3脈あって中央脈が目立ち、雄蕊は少なくとも15本以上ときに30本を越えています。花かんざしさんはこのタイプを「ヒメオトギリ」とされており、兵庫県下では自然度の高い場所に稀に見かけます。県下でよく見かけるのは花かんざしさんが「Type3」とされるもので、花の径が8mmほどで、花弁は長楕円形で花弁の間には隙間が空き、雄蕊は7~12本程度です。
「ヒメオトギリ」と「Type3」は遺伝子的には全く別のものであることが分かっており、将来的には独立種として分けられることになりそうです。以下は花かんざしさんの「Type3」に言及しておられるブログページです。
「Type3の情報をお願いします。」

Fig.9 「ヒメオトギリ」と「Type3」の花の比較
フィールドで見ると両タイプには明瞭な差がありますが、標本にすると花は縮れて区別しづらくなります。関連ページとしてリンクしているメインサイトの「ヒメオトギリ」としているものは「Type3」のほうで、このページも改訂して「ヒメオトギリ」を併記する必要があります。
関連ページ 湿生植物・ヒメオトギリ

Fig.10 ゴマクサ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
溜池畔の湿地に群生しているもので、ここでは丈の低いものがカワラケツメイとともに群生していました。半寄生植物であるためか、同じ湿地内でもチガヤやヒメヒラテンツキ、メリケンカルカヤが群生する場所では枝を分けた大株となっています。
ここでは先の「Type3」のヒメオトギリが大群生していました。
関連ページ 湿生植物・ゴマクサ

Fig.11 ニオイタデ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
時期的にタイミングよく開花している花穂を見ることができました。
兵庫県版RDBではCランクとされていますが、ランクと比較するとあまり見る機会のない草本です。
関連ページ 湿生植物・ニオイタデ

Fig.12 オオホシクサ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
ニオイタデの近くではオオホシクサが点々と生育していました。
播磨地方では溜池畔でふつうに見られますが、他の地域では全く見かけない種です。
関連ページ 湿生植物・オオホシクサ

Fig.13 ヌマカゼクサ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
本種も播磨地方ではごくふつうに多産しますが、他の地域では全く見かけません。
同じイネ科のスズメノコビエも同様の偏在的な分布が見られます。
関連ページ 湿生植物・ヌマカゼクサ

Fig.14 タヌキマメ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
移動途中の小規模な湿地に、大きく育った個体の群生が見られました。
このあたりではふつうに見られますが、形態がユニークなので見つけると嬉しくなります。
ここでは同所的にタチカモメヅルも見られました。
関連ページ 湿生植物・タヌキマメ

Fig.15 イトイヌノヒゲ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
溜池土堤直下の湿地で群生していました。
栄養状態がよいのと、ヌマガヤ、イヌノハナヒゲなどの草丈の高い競合種が多いためか、長い花茎を伸ばして群生していました。
関連ページ 湿生植物・イトイヌノヒゲ

Fig.16 イガクサ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
イガクサは湿地環境と草原環境が交錯するような裸地状の場所でよく見かけます。
このような場所ではイトイヌノハナヒゲ、イトハナビテンツキ、カキラン、ヤマトキソウ、トウカイコモウセンゴケ、イシモチソウ、ヒナノカンザシ、オミナエシなどが混生していることが多いです。
関連ページ 湿生植物・イガクサ

Fig.17 イトテンツキ (兵庫県播磨地方 2016.9/11)
毎年継続観察しているイトテンツキの様子を見に行くとちょうど開花期でした。
各地で注意して探していますが、まだこの場所以外では見かけたことがなく非常に稀なもののようです。そろそろ兵庫県版RDBに記載するべきものでしょう。
関連ページ 湿生植物・イトテンツキ

Fig.18 ゴマナとツリフネソウ (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
この日は初夏に自生を確認したロッカクイの標本採集と草原性植物の観察に、有志とともに但馬地方の高原地帯に。途中立ち寄った棚田の用水路脇は花盛りで、ゴマナ、ツリフネソウ、クロバナヒキオコシ、オタカラコウの花の競演が賑やかでした。
関連ページ 湿生植物・ツリフネソウ

Fig.19 オタカラコウを訪花したオオウラギンスジヒョウモン (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
昼からの活動に備えてオオウラギンスジヒョウモンがオタカラコウの花で腹ごしらえしていました。
蝶の吸蜜の撮影は午前中の早い時間が適しています。
関連ページ 湿生植物・オタカラコウ

Fig.20 マルバノサワトウガラシ (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
このあたりの水田にはマルバノサワトウガラシが比較的ふつうに見られます。
刈り取り後の水田ですでに開花は見られず、草体は寒気で紅変しています。
関連ページ 湿生植物・マルバノサワトウガラシ

Fig.21 ロッカクイ (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
野焼き直後のススキ草原を歩き回り、初夏の時点で確認していたロッカクイで、ススキ原をヤブ漕ぎして自生する湿地にたどり着きました。この地域のロッカクイは1967年以降の記録がなく、再確認が課題となっていましたが、ようやく確認・記録できました。
ロッカクイは日本全土で現状自生地が7ヶ所しかなく、うち2ヶ所が兵庫県内にあります。
関連ページ 湿生植物・ロッカクイ

Fig.22 ヒロハノドジョウツナギ (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
本種も但馬地方では1991年の記録を最後にして確認できておらず、但馬地方では絶滅したとされていたものです。特にこの地域のものは1937年以降の記録はありませんでした。
ロッカクイと同じ湿地に生育しており、最初は花茎をシカに齧られたものばかりで気づきませんでしたが、花序が完全なものを見つけて気づきました。ドジョウツナギとの雑種で同様な大きさとなるマンゴクドジョウツナギと違って、茎下方は倒伏・斜上せず、地下茎から太い茎(稈)を直立します。
同じ湿地にはオオヌマハリイも群生していますが、野生動物の撹乱が顕著でした。
関連ページ 湿生植物・ヒロハノドジョウツナギ

Fig.23 高原の撹乱の多い湿地 (兵庫県但馬地方 2016.9/17)
人為的撹乱の多いスキー場内の湿地では、ゴマナ、サワヒヨドリ、オタカラコウなどの秋の草花によるお花畑が出きていました。撹乱地であるためアブラガヤやエゾアブラガヤなどのカヤツリグサ科草本も多く見られます。
関連ページ 湿生植物・サワヒヨドリ
関連ページ 湿生植物・アブラガヤ
関連ページ 湿生植物・エゾアブラガヤ
category: 湿地・溜池
8月の湿地と溜池
2016/09/23 Fri. 17:11 [edit]
8月中に湿地や溜池で観察した湿生・水生植物と淡水藻類です。もっとも淡水藻類に関してはなかなか手が廻らず、よほど時間のある時でないと手が出せません。細かい作業を要する蘚苔類や淡水藻類はまだまだハードルが高いと感じます。
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大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。

Fig.1 溜池で開花したイヌタヌキモ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
有志の観察会でヤマトミクリの自生する溜池に立ち寄りましたが、岸辺に群生していたものがほとんど見られなくなっていました。農家の方によるとヌートリアが侵入したとのことで、ヤマトミクリの根茎を好んで食べていたとのこと。とうとうこんな田舎の棚田にも侵入したかと茫然とする中、ヌートリアの撹乱によって濁った溜池の水面では無数のイヌタヌキモが開花していました。
関連ページ 浮遊植物・イヌタヌキモ

Fig.2 群生するハタベカンガレイ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
兵庫県内では最も北にあるハタベカンガレイの自生地で、発見当初は数個体でしたが数年前にウェーダーを履いて撹乱したところ、池全体に生育領域が広がりました。
一般に湧水のある小河川での記録が多いのですが、近畿地方では溜池で発見される例がほとんどです。
関連ページ 抽水植物・ハタベカンガレイ

Fig.3 オトコゼリ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
兵庫県内でも比較的稀な種ですが、兵庫県東部には西宮市から篠山市にわたって自生地が点在しています。キツネノボタンなどの近縁種と比べて草丈が高く、花が咲いていればすぐに分かります。
ここでは休耕田内に多数の個体が群生していました。
関連ページ 湿生植物・オトコゼリ

Fig.4 オモダカ (兵庫県三田市 2016.8/10)
休耕田に異常なほどの高密度に群生するオモダカのコロニーがありました。
他の草本の侵入を許さずほとんど純群落を形成していて、その見事さに思わず撮影してしまいました。
関連ページ 湿生植物・オモダカ

Fig.5 キカシグサとシャジクモ (兵庫県三田市 2016.8/10)
なんてこともない水中の小さな風景・・・でもこの佇まいがいいのです。
関連ページ 湿生植物・キカシグサ
関連ページ 淡水藻類・シャジクモ

Fig.6 ウキアゼナ (兵庫県三田市 2016.8/10)
帰化植物で、もとは水草として入ってきたもの。
すでに近郊ではふつうに見られるようになっています。
関連ページ 湿生植物・ウキアゼナ

Fig.7 ミツモトソウ (兵庫県但馬地方 2016.8/16)
沢の源頭部にある湿地に1花だけ咲いていました。
関連ページ 湿生植物・ミツモトソウ

Fig.8 コウヤワラビ (兵庫県但馬地方 2016.8/16)
山間湿地で胞子葉を上げ始めていました。
関連ページ 湿生植物・コウヤワラビ

Fig.9 トリゲモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
兵庫県某所の溜池にあるトリゲモsp.がトリゲモではないかとの知らせを受け、確認しに行きました。
この池のものはオオトリゲモだろうくらいに思っていましたが、結果は全てトリゲモでした。
関連ページ 沈水植物・トリゲモ

Fig.10 トリゲモの雄花 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
雄花の全長は約1mm、葯室は1室で長さ0.5mmで、中の花粉粒が透けて見えます。
これに対してオオトリゲモは雄花の全長約2mm、葯室は4室で長さ約1.5mmと大型で肉眼でも確認できます。画像のマイクロメーターの1目盛は25μmです。

Fig.11 ヒシモドキ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
今年は昨年に比べてヒシモドキの生育領域が少し狭まっており、オニバスも発生していませんでした。
ウェーダーを履いての人力撹乱に効果があるかどうか分かりませんが、底を掻き回すように歩いておきました。
関連ページ 浮葉植物・ヒシモドキ

Fig.12 ヒルムシロ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
中栄養な溜池でよく見かける浮葉植物ですが、個体数はわずかでした。
関連ページ 浮葉植物・ヒルムシロ

Fig.13 クロモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
水面上で雌花が開花していないか注意して見ましたが、見当たりませんでした。
雌雄異株タイプの雄株なのでしょう。画像の底面を覆っているのはフラスコモの仲間です。
関連ページ 沈水植物・クロモ

Fig.14 フラスコモsp. (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
前出の溜池底面を覆っているフラスコモsp.を少し持ち帰って調べてみました。
ちなみに昨年は底面を覆い隠すほど繁茂していませんでした。
第1分射枝は4本、第2分射枝は5~7本、第3分射枝は4本程度です。

Fig.15 フラスコモsp.の細部 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
最終枝は2細胞。雌器は単生~群生し螺旋は5~6本。雄器は径240μ。
卵胞子は黄褐色で長さ250μ程度、螺旋は6本。卵胞子膜はほとんど平滑に見える。
この手のフラスコモの同定は自信ありませんが、ナガフラスコモではないかと思っています。

Fig.16 カミガモソウ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
シカの多い地域でヤマビルも多いと聞いていたので、太陽の照りつける最も暑い時間帯に現地に出掛けました。山中の休耕田はシカの食害によってハイチゴザサ、ハリイ、イヌノヒゲ、ミズユキノシタなどの草丈の低い草本で占められ、そこにカミガモソウが点在していました。
数日間降雨もなく、カンカン照りだったこともあり、ヤマビルに悩まされることなくゆっくり観察できました。

Fig.17 カミガモソウの花 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
花はかなり地味で、同じオオバコ科(旧ゴマノハグサ科)のシソクサやオオアブノメに似た感じです。
他の場所にもあってよさそうなものですが、この一帯でしか見られません。

Fig.18 タヌキモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
毎年様子を見にくる場所ですが、まだ1度も開花しているのが見られません。
山間の溜池でガガブタも生育していますが、栄養分が足りないのかもしれません。

Fig.19 ホッスモとイトシャジクモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
クログワイやカンガレイが生育する浅い溜池で生育していました。
ホッスモはふつうに見られますが、イトシャジクモが見られる場所はあまりありません。
関連ページ 沈水植物・ホッスモ
関連ページ 淡水藻類・イトシャジクモ
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FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
大きな画像(1024×768)を見る時は、リンク先の画像を別のウインドかタブで表示してください。

Fig.1 溜池で開花したイヌタヌキモ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
有志の観察会でヤマトミクリの自生する溜池に立ち寄りましたが、岸辺に群生していたものがほとんど見られなくなっていました。農家の方によるとヌートリアが侵入したとのことで、ヤマトミクリの根茎を好んで食べていたとのこと。とうとうこんな田舎の棚田にも侵入したかと茫然とする中、ヌートリアの撹乱によって濁った溜池の水面では無数のイヌタヌキモが開花していました。
関連ページ 浮遊植物・イヌタヌキモ

Fig.2 群生するハタベカンガレイ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
兵庫県内では最も北にあるハタベカンガレイの自生地で、発見当初は数個体でしたが数年前にウェーダーを履いて撹乱したところ、池全体に生育領域が広がりました。
一般に湧水のある小河川での記録が多いのですが、近畿地方では溜池で発見される例がほとんどです。
関連ページ 抽水植物・ハタベカンガレイ

Fig.3 オトコゼリ (兵庫県篠山市 2016.8/6)
兵庫県内でも比較的稀な種ですが、兵庫県東部には西宮市から篠山市にわたって自生地が点在しています。キツネノボタンなどの近縁種と比べて草丈が高く、花が咲いていればすぐに分かります。
ここでは休耕田内に多数の個体が群生していました。
関連ページ 湿生植物・オトコゼリ

Fig.4 オモダカ (兵庫県三田市 2016.8/10)
休耕田に異常なほどの高密度に群生するオモダカのコロニーがありました。
他の草本の侵入を許さずほとんど純群落を形成していて、その見事さに思わず撮影してしまいました。
関連ページ 湿生植物・オモダカ

Fig.5 キカシグサとシャジクモ (兵庫県三田市 2016.8/10)
なんてこともない水中の小さな風景・・・でもこの佇まいがいいのです。
関連ページ 湿生植物・キカシグサ
関連ページ 淡水藻類・シャジクモ

Fig.6 ウキアゼナ (兵庫県三田市 2016.8/10)
帰化植物で、もとは水草として入ってきたもの。
すでに近郊ではふつうに見られるようになっています。
関連ページ 湿生植物・ウキアゼナ

Fig.7 ミツモトソウ (兵庫県但馬地方 2016.8/16)
沢の源頭部にある湿地に1花だけ咲いていました。
関連ページ 湿生植物・ミツモトソウ

Fig.8 コウヤワラビ (兵庫県但馬地方 2016.8/16)
山間湿地で胞子葉を上げ始めていました。
関連ページ 湿生植物・コウヤワラビ

Fig.9 トリゲモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
兵庫県某所の溜池にあるトリゲモsp.がトリゲモではないかとの知らせを受け、確認しに行きました。
この池のものはオオトリゲモだろうくらいに思っていましたが、結果は全てトリゲモでした。
関連ページ 沈水植物・トリゲモ

Fig.10 トリゲモの雄花 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
雄花の全長は約1mm、葯室は1室で長さ0.5mmで、中の花粉粒が透けて見えます。
これに対してオオトリゲモは雄花の全長約2mm、葯室は4室で長さ約1.5mmと大型で肉眼でも確認できます。画像のマイクロメーターの1目盛は25μmです。

Fig.11 ヒシモドキ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
今年は昨年に比べてヒシモドキの生育領域が少し狭まっており、オニバスも発生していませんでした。
ウェーダーを履いての人力撹乱に効果があるかどうか分かりませんが、底を掻き回すように歩いておきました。
関連ページ 浮葉植物・ヒシモドキ

Fig.12 ヒルムシロ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
中栄養な溜池でよく見かける浮葉植物ですが、個体数はわずかでした。
関連ページ 浮葉植物・ヒルムシロ

Fig.13 クロモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
水面上で雌花が開花していないか注意して見ましたが、見当たりませんでした。
雌雄異株タイプの雄株なのでしょう。画像の底面を覆っているのはフラスコモの仲間です。
関連ページ 沈水植物・クロモ

Fig.14 フラスコモsp. (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
前出の溜池底面を覆っているフラスコモsp.を少し持ち帰って調べてみました。
ちなみに昨年は底面を覆い隠すほど繁茂していませんでした。
第1分射枝は4本、第2分射枝は5~7本、第3分射枝は4本程度です。

Fig.15 フラスコモsp.の細部 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
最終枝は2細胞。雌器は単生~群生し螺旋は5~6本。雄器は径240μ。
卵胞子は黄褐色で長さ250μ程度、螺旋は6本。卵胞子膜はほとんど平滑に見える。
この手のフラスコモの同定は自信ありませんが、ナガフラスコモではないかと思っています。

Fig.16 カミガモソウ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
シカの多い地域でヤマビルも多いと聞いていたので、太陽の照りつける最も暑い時間帯に現地に出掛けました。山中の休耕田はシカの食害によってハイチゴザサ、ハリイ、イヌノヒゲ、ミズユキノシタなどの草丈の低い草本で占められ、そこにカミガモソウが点在していました。
数日間降雨もなく、カンカン照りだったこともあり、ヤマビルに悩まされることなくゆっくり観察できました。

Fig.17 カミガモソウの花 (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
花はかなり地味で、同じオオバコ科(旧ゴマノハグサ科)のシソクサやオオアブノメに似た感じです。
他の場所にもあってよさそうなものですが、この一帯でしか見られません。

Fig.18 タヌキモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
毎年様子を見にくる場所ですが、まだ1度も開花しているのが見られません。
山間の溜池でガガブタも生育していますが、栄養分が足りないのかもしれません。

Fig.19 ホッスモとイトシャジクモ (兵庫県播磨地方 2016.8/25)
クログワイやカンガレイが生育する浅い溜池で生育していました。
ホッスモはふつうに見られますが、イトシャジクモが見られる場所はあまりありません。
関連ページ 沈水植物・ホッスモ
関連ページ 淡水藻類・イトシャジクモ
category: 湿地・溜池
水辺の植物 ’15 秋~冬
2016/01/13 Wed. 23:22 [edit]
昨年の秋から冬にかけての湿生・水生植物のメモが未掲載だったので、遅ればせながら掲載します。
西宮市内のものはすでに掲載済なので市外のもののみです。
*画像クリックで、別ウィンドで表示されます。
FC2ブログの仕様が変わったのか、リンク先で大きな画像が表示されなくなってしまいました。
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Fig.1 ヒメカンガレイ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
以前に頂いていた播磨地方採取の生体が結実し、ヒメカンガレイと確認できたので自生地を案内して頂き、生育状況を調査してきました。
かつては分水界湿地だったと思われる休耕田で100個体程度が生育し、県内では最も大きな群落と確認できました。
関連ページ 湿生植物・ヒメカンガレイ

Fig.2 ヒメカンガレイの根茎 (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
ヒメカンガレイの根茎は短く横走します。しかし、ツクシカンガレイのように節間は長くありません。
関連ページ 湿生~抽水植物・ツクシカンガレイ

Fig.3 ヒメカンガレイの花序 (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
小穂は卵形で短く、鱗片は丸く盛り上がり、葯はカンガレイよりも短く長さ0.8~1.7mm。
関連ページ 湿生~抽水植物・カンガレイ

Fig.4 ヒメカンガレイの痩果 (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
痩果表面の横皺は明瞭で、中央稜は高く盛り上がり、刺針状花披片は痩果と同長か短くなります。

Fig.5 マシカクイ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
ヒメカンガレイ自生地ではマシカクイが優占種でした。
周辺の休耕田では1面にびっしりとマシカクイが生育している所もありました。
関連ページ 湿生植物・マシカクイ

Fig.6 マシカクイ(左)・雑種?(中央)・イヌシカクイ(右3本) (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
マシカクイ群落中にはイヌシカクイが混生しており、雑種と疑われる個体も見られました。
自生地ではマシカクイよりもイヌシカクイの草丈が低く、埋もれるように混生しています。
雑種らしきものはすでに結実期で花粉の確認ができず、来年の課題となります。
関連ページ 湿生植物・イヌシカクイ

Fig.7 痩果の比較 (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
雑種らしきものは数個の痩果を結実していました。
画像は左からマシカクイ・雑種?・イヌシカクイの痩果。
雑種らしき個体の痩果はマシカクイの痩果に酷似していますが、有花茎には明瞭な稜がなく、小穂基部からはクローンの芽生が見られました。

Fig.8 イトモ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
ヒメカンガレイ自生地近隣には溜池も点在し、澄んだ小さな溜池にイトモが群生していました。
関連ページ 沈水植物・イトモ

Fig.9 ミズオオバコ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
イトモが自生する溜池ではミズオオバコも見られました。
ミズオオバコはふつうは水面まで花茎を長く伸ばして気中で開花しますが、ここでは花茎を伸ばすことなく、水中で開花・結実しているようです。
関連ページ 沈水植物・ミズオオバコ

Fig.10 オオミクリ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
県内では野生絶滅状態のオオミクリですが、過去に自生地から移植されたものが里山の環境保全地で維持育成されていました。

Fig.11 オオミクリの生育状況 (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
溜池内に広く繁茂し、多数の結実が見られました。

Fig.12 ヤマトミクリ群生地 (兵庫県神戸市 2015.10/16)
この日は神戸市RDB見直しのため、神戸市内のヤマトミクリ、シズイの自生地へ生育状況を確認に出掛けました。両種とも時期的に開花・結実は見られませんでしたが健在で、特にヤマトミクリは池全面に広がっていて生育良好でした。
関連ページ 抽水植物・ヤマトミクリ
関連ページ 抽水植物・シズイ

Fig.13 セイロンフラスコモ (兵庫県神戸市 2015.10/16)
ヤマトミクリ・シズイ自生地の池にはヒツジグサ、ジュンサイ、フトヒルムシロ、イヌタヌキモ、クログワイのほか、水底にはセイロンフラスコモが繁茂していました。
関連ページ 淡水藻類・セイロンフラスコモ

Fig.14 ツクシクロイヌノヒゲ (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
過去にオオミクリの記録のあった溜池を数ヶ所巡ってみましたが、水際までシカの食害が激しく、かつての面影は全く見られませんでした。
減水した水際にわずかにツクシクロイヌノヒゲやニッポンイヌノヒゲが見られた程度でした。
これではかつての自生地に移植してもすぐに食べられてしまいそうです。
関連ページ 湿生植物・ツクシクロイヌノヒゲ

Fig.15 フラスコモsp. (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
同じ池の水中に水草は見られませんでしたが、一部でフラスコモsp.が繁茂していました。

Fig.16 紅葉するミズユキノシタ (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
近隣の小さな溜池の縁ではミズユキノシタが紅葉していました。
関連ページ 湿生植物・ミズユキノシタ

Fig.17 水路内のバイカモ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
但馬地方のやや高所に生育するもので葉が少し大きく、ヒルセンバイカモとの中間的な集団のように思います。
関連ページ 沈水植物・バイカモ

Fig.18 ロッカクイ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
県内唯一のロッカクイ自生地ですが、今年は生育状態が悪く、花序を付けているものは小数でした。
このまま先細っていくようであれば保護対策を打たねばなりません。
関連ページ 湿生~抽水植物・ロッカクイ

Fig.19 オタカラコウ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
山々はすでに紅葉し始めていますが、オタカラコウは遅くまで開花が見られます。
画像のものは湧水の流れる水路内に生育し、新たな花序を上げつつあります。
関連ページ 湿生植物・オタカラコウ

Fig.20 サワフタギの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
湿原周辺部ではサワフタギの群落が発達し、ちょうど果実期で美しい果実を沢山つけていました。

Fig.21 ミヤマイボタの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
低地の湿地ではイボタノキが常在種ですが、高所の樹林に囲まれた湿地ではミヤマイボタが常在種となるようです。葉をほとんど落とした木にイボタノキよりも大きな果実がたわわに稔っていました。

Fig.22 紅葉するエゾシロネ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
湿原や湿地の足元ではエゾシロネが結実し、葉が黄色~紫色に紅葉しつつありました。

Fig.23 紅葉するシオガマギク (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
湿地周縁に生育しているシオガマギクも紅葉していました。。

Fig.24 リスアカネ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
低地から高所まで広く薄く生育しているリスアカネですが、寒さのためか少し元気がないようでした。
近づいても逃げず、日射で身体を温めるのが最優先なのでしょう。

Fig.25 ヤマラッキョウ (京都府中丹地方 2015.11/5)
良好な2次的自然環境が残っている河川堤防で群生していました。
同所的にオガルカヤ、メガルカヤ、ナンテンハギ、カワラナデシコなどの草原性植物が多数生育しており、春・夏にも再び訪れたい場所でした。
関連ページ 湿生植物・ヤマラッキョウ

Fig.26 ミゾコウジュ (京都府中丹地方 2015.11/5)
刈り取り後耕起後の水田内に越冬ロゼットを形成しているものが1個体のみ見られました。
かつての氾濫原であることから、埋土種子が偶発的に発芽したものでしょうか。
関連ページ 湿生植物・ミゾコウジュ

Fig.27 刈り取り後の水田雑草 (京都府中丹地方 2015.11/5)
中丹地方の盆地内の水田雑草を調査中ですが、画像中に見られるヒメミソハギとミズマツバはRDB種ながら比較的よく見かける種です。
同様にシソクサ、アブノメ、ヒメミズワラビ、ムツオレグサも中丹の水田ではよく見られる種です。
関連ページ 湿生植物・ヒメミソハギ
関連ページ 湿生植物・ミズマツバ

Fig.28 ヒロハスズメノトウガラシ (京都府中丹地方 2015.11/5)
丹波地方の兵庫県側ではエダウチスズメノトウガラシばかりが生育していますが、京都府側では本種のほうがよく見られ、かなり遅くまで開花しています。
関連ページ 湿生植物・ヒロハスズメノトウガラシ

Fig.28 果実期のアゼオトギリ (京都府中丹地方 2015.11/5)
兵庫県では自生地が限られる種で、京都府でも中丹地方では現状不明だったようですが、氾濫原由来の休耕田の畦で見つかりました。
サワオトギリに似ますが、葉身基部は茎を半ば抱き、果実は大きく、萼片全体に黒点が散布されることによって区別できます(サワオトギリは萼片の縁のみに黒点がある)。
関連ページ 湿生植物・アゼオトギリ

Fig.29 セイタカヨシ (奈良県 2015.11/16)
野暮用で奈良に出掛けたついでに、キタミソウを探してみましたが、水が引いている場所はなく見つけることはできませんでした。
奈良盆地ではどこに行っても河川の縁ではセイタカヨシが見られ、アシよりもふつうのようでした。

Fig.30 アンペライ群落 (三重県 2015.11/27)
この日は三重県南部にシダと湿生植物、海浜植物を見に出掛けました。
画像は海潟湖跡の湿原でびっしりと群生しているアンペライ群落。
アンペライは結実期が夏期であるため、すでに果実は見られませんでした。

Fig.31 刈り取られアンペライ (三重県 2015.11/27)
湿原周辺の農道脇で刈り取られたアンペライが束ねられて干されていました。
農家の方にどうするのかお尋ねしたところ、スイカのマルチとして使うとのことでした。
アンペライのそのような利用法があるとは思いませんでした。

Fig.32 ヒトモトススキとダンチク (三重県 2015.11/27)
湿原周縁部にはヒトモトススキが群生し、南に来た実感が沸いてきます。
ヒトモトススキと農道の間にはダンチクが密生しています。
関連ページ 湿生植物・ヒトモトススキ

Fig.33 テツホシダ (三重県 2015.11/27)
ヒメシダに似ていますがより大きく、葉質はやや革質、裂片の脈は網状となることによって区別できます。最近になって兵庫県でも自生地が見つかった南方系の湿生シダです。
海潟湖跡の湿原ではこのほかエゾミソハギ、イヌノハナヒゲなどが見られました。

Fig.34 ミズタネツケバナ (神戸市 2015.12/12)
この日は草刈りボランティアの日で、途上の水路脇でミズタネツケバナが満開となっていました。
熟した長角果も多く、アキノタネツケバナとの差異を調べるため、それらを採集して精査してみました。
関連ページ 湿生植物・ミズタネツケバナ

Fig.35 ミズタネツケバナの種子 (神戸市 2015.12/12)
熟した長角果の長さは17~25mmで、多くは20~24mm、内部に15~19個の種子を内蔵していました。種子は長さ(0.8~)1~1.2mm、107個中13個に狭い翼がありました(画像中には4個)。
この個体は倒伏気味の茎の下方の節から発根が見られましたが、葉はミズタネツケバナと変わるところがありませんでした。

Fig.36 イヌクログワイ(シログワイ) (淡路島 2015.12/14)
Iさんに兵庫県内のイヌクログワイの自生候補地を案内していただきました。
3ヶ所案内していただいたうち2ヶ所で自生が確認でき、1ヶ所では生育良好な群生が見られました。
兵庫県では自生地消滅が著しく、現在では数ヶ所にしか見られない稀少種となっています。

Fig.37 イヌクログワイの小穂 (淡路島 2015.12/14)
小穂は熟しても褐色にはならず(シログワイの名称由来)、鱗片はクログワイよりも短いため密につき、先は円頭または切形で縁の薄膜質部はごく狭く、柱頭は3岐します。
これに対してクログワイの鱗片は鈍頭で縁の薄膜質部は広く、柱頭は2岐します。

Fig.38 イヌクログワイの痩果 (淡路島 2015.12/14)
クログワイとの違いは痩果ではより明瞭で、痩果の先にははっきりした盤状付属体は見られず、表面には微細な格子模様が見られます。
クログワイの痩果上部には明瞭な盤状付属体があり、痩果表面は平滑です。

Fig.39 同時期のクログワイ群落 (淡路島 2015.12/14)
イヌクログワイとは異なり、冬期には地上部は枯死します。
関連ページ 湿生~抽水植物・クログワイ

Fig.40 クログワイの塊茎 (淡路島 2015.12/14)
地上部の枯れたクログワイの根茎の先には塊茎が形成されています。
イヌクログワイを数個体掘り上げてみましたが、まだ塊茎は形成されていませんでした。

Fig.41 ツルナシコアゼガヤツリ (淡路島 2015.12/14)
兵庫県の本土側では比較的少ない種ですが、淡路島では溜池などでふつうに見られます。
暖冬であるためか、まだ花序を上げ続けていました。
関連ページ 湿生植物・ツルナシコアゼガヤツリ

Fig.42 コモウセンゴケ (淡路島 2015.12/14)
淡路島ではトウカイコモウセンゴケは見られず、モウセンゴケも自生地は少ないとのことでした。
最近の雨で浅水に浸かっていますが、通常は乾いた粘土質の場所とのことでした。
周辺にはコイヌノハナヒゲやトラノハナヒゲなどが見られました。
関連ページ 湿生植物・コモウセンゴケ

Fig.43 ミズスギ群落 (淡路島 2015.12/14)
谷津の水田を囲むように、土手の斜面下部にミズスギの群落が見られました。
これほど広範囲の群落ははじめてで、同所的にモウセンゴケ、アリノトウグサ、コケオトギリ、リンドウなどが生育していました。
関連ページ 湿生植物・ミズスギ

Fig.44 タコノアシ (淡路島 2015.12/14)
撹乱された休耕田にタコノアシがまばらに生育していました。
暖冬のためかまだ赤化が進んでおらず、開花中のものも見られます。
関連ページ 湿生植物・タコノアシ
西宮市内のものはすでに掲載済なので市外のもののみです。
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Fig.1 ヒメカンガレイ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
以前に頂いていた播磨地方採取の生体が結実し、ヒメカンガレイと確認できたので自生地を案内して頂き、生育状況を調査してきました。
かつては分水界湿地だったと思われる休耕田で100個体程度が生育し、県内では最も大きな群落と確認できました。
関連ページ 湿生植物・ヒメカンガレイ

Fig.2 ヒメカンガレイの根茎 (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
ヒメカンガレイの根茎は短く横走します。しかし、ツクシカンガレイのように節間は長くありません。
関連ページ 湿生~抽水植物・ツクシカンガレイ

Fig.3 ヒメカンガレイの花序 (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
小穂は卵形で短く、鱗片は丸く盛り上がり、葯はカンガレイよりも短く長さ0.8~1.7mm。
関連ページ 湿生~抽水植物・カンガレイ

Fig.4 ヒメカンガレイの痩果 (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
痩果表面の横皺は明瞭で、中央稜は高く盛り上がり、刺針状花披片は痩果と同長か短くなります。

Fig.5 マシカクイ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
ヒメカンガレイ自生地ではマシカクイが優占種でした。
周辺の休耕田では1面にびっしりとマシカクイが生育している所もありました。
関連ページ 湿生植物・マシカクイ

Fig.6 マシカクイ(左)・雑種?(中央)・イヌシカクイ(右3本) (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
マシカクイ群落中にはイヌシカクイが混生しており、雑種と疑われる個体も見られました。
自生地ではマシカクイよりもイヌシカクイの草丈が低く、埋もれるように混生しています。
雑種らしきものはすでに結実期で花粉の確認ができず、来年の課題となります。
関連ページ 湿生植物・イヌシカクイ

Fig.7 痩果の比較 (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
雑種らしきものは数個の痩果を結実していました。
画像は左からマシカクイ・雑種?・イヌシカクイの痩果。
雑種らしき個体の痩果はマシカクイの痩果に酷似していますが、有花茎には明瞭な稜がなく、小穂基部からはクローンの芽生が見られました。

Fig.8 イトモ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
ヒメカンガレイ自生地近隣には溜池も点在し、澄んだ小さな溜池にイトモが群生していました。
関連ページ 沈水植物・イトモ

Fig.9 ミズオオバコ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
イトモが自生する溜池ではミズオオバコも見られました。
ミズオオバコはふつうは水面まで花茎を長く伸ばして気中で開花しますが、ここでは花茎を伸ばすことなく、水中で開花・結実しているようです。
関連ページ 沈水植物・ミズオオバコ

Fig.10 オオミクリ (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
県内では野生絶滅状態のオオミクリですが、過去に自生地から移植されたものが里山の環境保全地で維持育成されていました。

Fig.11 オオミクリの生育状況 (兵庫県播磨地方 2015.10/11)
溜池内に広く繁茂し、多数の結実が見られました。

Fig.12 ヤマトミクリ群生地 (兵庫県神戸市 2015.10/16)
この日は神戸市RDB見直しのため、神戸市内のヤマトミクリ、シズイの自生地へ生育状況を確認に出掛けました。両種とも時期的に開花・結実は見られませんでしたが健在で、特にヤマトミクリは池全面に広がっていて生育良好でした。
関連ページ 抽水植物・ヤマトミクリ
関連ページ 抽水植物・シズイ

Fig.13 セイロンフラスコモ (兵庫県神戸市 2015.10/16)
ヤマトミクリ・シズイ自生地の池にはヒツジグサ、ジュンサイ、フトヒルムシロ、イヌタヌキモ、クログワイのほか、水底にはセイロンフラスコモが繁茂していました。
関連ページ 淡水藻類・セイロンフラスコモ

Fig.14 ツクシクロイヌノヒゲ (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
過去にオオミクリの記録のあった溜池を数ヶ所巡ってみましたが、水際までシカの食害が激しく、かつての面影は全く見られませんでした。
減水した水際にわずかにツクシクロイヌノヒゲやニッポンイヌノヒゲが見られた程度でした。
これではかつての自生地に移植してもすぐに食べられてしまいそうです。
関連ページ 湿生植物・ツクシクロイヌノヒゲ

Fig.15 フラスコモsp. (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
同じ池の水中に水草は見られませんでしたが、一部でフラスコモsp.が繁茂していました。

Fig.16 紅葉するミズユキノシタ (兵庫県播磨地方 2015.10/26)
近隣の小さな溜池の縁ではミズユキノシタが紅葉していました。
関連ページ 湿生植物・ミズユキノシタ

Fig.17 水路内のバイカモ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
但馬地方のやや高所に生育するもので葉が少し大きく、ヒルセンバイカモとの中間的な集団のように思います。
関連ページ 沈水植物・バイカモ

Fig.18 ロッカクイ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
県内唯一のロッカクイ自生地ですが、今年は生育状態が悪く、花序を付けているものは小数でした。
このまま先細っていくようであれば保護対策を打たねばなりません。
関連ページ 湿生~抽水植物・ロッカクイ

Fig.19 オタカラコウ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
山々はすでに紅葉し始めていますが、オタカラコウは遅くまで開花が見られます。
画像のものは湧水の流れる水路内に生育し、新たな花序を上げつつあります。
関連ページ 湿生植物・オタカラコウ

Fig.20 サワフタギの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
湿原周辺部ではサワフタギの群落が発達し、ちょうど果実期で美しい果実を沢山つけていました。

Fig.21 ミヤマイボタの果実 (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
低地の湿地ではイボタノキが常在種ですが、高所の樹林に囲まれた湿地ではミヤマイボタが常在種となるようです。葉をほとんど落とした木にイボタノキよりも大きな果実がたわわに稔っていました。

Fig.22 紅葉するエゾシロネ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
湿原や湿地の足元ではエゾシロネが結実し、葉が黄色~紫色に紅葉しつつありました。

Fig.23 紅葉するシオガマギク (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
湿地周縁に生育しているシオガマギクも紅葉していました。。

Fig.24 リスアカネ (兵庫県但馬地方 2015.10/30)
低地から高所まで広く薄く生育しているリスアカネですが、寒さのためか少し元気がないようでした。
近づいても逃げず、日射で身体を温めるのが最優先なのでしょう。

Fig.25 ヤマラッキョウ (京都府中丹地方 2015.11/5)
良好な2次的自然環境が残っている河川堤防で群生していました。
同所的にオガルカヤ、メガルカヤ、ナンテンハギ、カワラナデシコなどの草原性植物が多数生育しており、春・夏にも再び訪れたい場所でした。
関連ページ 湿生植物・ヤマラッキョウ

Fig.26 ミゾコウジュ (京都府中丹地方 2015.11/5)
刈り取り後耕起後の水田内に越冬ロゼットを形成しているものが1個体のみ見られました。
かつての氾濫原であることから、埋土種子が偶発的に発芽したものでしょうか。
関連ページ 湿生植物・ミゾコウジュ

Fig.27 刈り取り後の水田雑草 (京都府中丹地方 2015.11/5)
中丹地方の盆地内の水田雑草を調査中ですが、画像中に見られるヒメミソハギとミズマツバはRDB種ながら比較的よく見かける種です。
同様にシソクサ、アブノメ、ヒメミズワラビ、ムツオレグサも中丹の水田ではよく見られる種です。
関連ページ 湿生植物・ヒメミソハギ
関連ページ 湿生植物・ミズマツバ

Fig.28 ヒロハスズメノトウガラシ (京都府中丹地方 2015.11/5)
丹波地方の兵庫県側ではエダウチスズメノトウガラシばかりが生育していますが、京都府側では本種のほうがよく見られ、かなり遅くまで開花しています。
関連ページ 湿生植物・ヒロハスズメノトウガラシ

Fig.28 果実期のアゼオトギリ (京都府中丹地方 2015.11/5)
兵庫県では自生地が限られる種で、京都府でも中丹地方では現状不明だったようですが、氾濫原由来の休耕田の畦で見つかりました。
サワオトギリに似ますが、葉身基部は茎を半ば抱き、果実は大きく、萼片全体に黒点が散布されることによって区別できます(サワオトギリは萼片の縁のみに黒点がある)。
関連ページ 湿生植物・アゼオトギリ

Fig.29 セイタカヨシ (奈良県 2015.11/16)
野暮用で奈良に出掛けたついでに、キタミソウを探してみましたが、水が引いている場所はなく見つけることはできませんでした。
奈良盆地ではどこに行っても河川の縁ではセイタカヨシが見られ、アシよりもふつうのようでした。

Fig.30 アンペライ群落 (三重県 2015.11/27)
この日は三重県南部にシダと湿生植物、海浜植物を見に出掛けました。
画像は海潟湖跡の湿原でびっしりと群生しているアンペライ群落。
アンペライは結実期が夏期であるため、すでに果実は見られませんでした。

Fig.31 刈り取られアンペライ (三重県 2015.11/27)
湿原周辺の農道脇で刈り取られたアンペライが束ねられて干されていました。
農家の方にどうするのかお尋ねしたところ、スイカのマルチとして使うとのことでした。
アンペライのそのような利用法があるとは思いませんでした。

Fig.32 ヒトモトススキとダンチク (三重県 2015.11/27)
湿原周縁部にはヒトモトススキが群生し、南に来た実感が沸いてきます。
ヒトモトススキと農道の間にはダンチクが密生しています。
関連ページ 湿生植物・ヒトモトススキ

Fig.33 テツホシダ (三重県 2015.11/27)
ヒメシダに似ていますがより大きく、葉質はやや革質、裂片の脈は網状となることによって区別できます。最近になって兵庫県でも自生地が見つかった南方系の湿生シダです。
海潟湖跡の湿原ではこのほかエゾミソハギ、イヌノハナヒゲなどが見られました。

Fig.34 ミズタネツケバナ (神戸市 2015.12/12)
この日は草刈りボランティアの日で、途上の水路脇でミズタネツケバナが満開となっていました。
熟した長角果も多く、アキノタネツケバナとの差異を調べるため、それらを採集して精査してみました。
関連ページ 湿生植物・ミズタネツケバナ

Fig.35 ミズタネツケバナの種子 (神戸市 2015.12/12)
熟した長角果の長さは17~25mmで、多くは20~24mm、内部に15~19個の種子を内蔵していました。種子は長さ(0.8~)1~1.2mm、107個中13個に狭い翼がありました(画像中には4個)。
この個体は倒伏気味の茎の下方の節から発根が見られましたが、葉はミズタネツケバナと変わるところがありませんでした。

Fig.36 イヌクログワイ(シログワイ) (淡路島 2015.12/14)
Iさんに兵庫県内のイヌクログワイの自生候補地を案内していただきました。
3ヶ所案内していただいたうち2ヶ所で自生が確認でき、1ヶ所では生育良好な群生が見られました。
兵庫県では自生地消滅が著しく、現在では数ヶ所にしか見られない稀少種となっています。

Fig.37 イヌクログワイの小穂 (淡路島 2015.12/14)
小穂は熟しても褐色にはならず(シログワイの名称由来)、鱗片はクログワイよりも短いため密につき、先は円頭または切形で縁の薄膜質部はごく狭く、柱頭は3岐します。
これに対してクログワイの鱗片は鈍頭で縁の薄膜質部は広く、柱頭は2岐します。

Fig.38 イヌクログワイの痩果 (淡路島 2015.12/14)
クログワイとの違いは痩果ではより明瞭で、痩果の先にははっきりした盤状付属体は見られず、表面には微細な格子模様が見られます。
クログワイの痩果上部には明瞭な盤状付属体があり、痩果表面は平滑です。

Fig.39 同時期のクログワイ群落 (淡路島 2015.12/14)
イヌクログワイとは異なり、冬期には地上部は枯死します。
関連ページ 湿生~抽水植物・クログワイ

Fig.40 クログワイの塊茎 (淡路島 2015.12/14)
地上部の枯れたクログワイの根茎の先には塊茎が形成されています。
イヌクログワイを数個体掘り上げてみましたが、まだ塊茎は形成されていませんでした。

Fig.41 ツルナシコアゼガヤツリ (淡路島 2015.12/14)
兵庫県の本土側では比較的少ない種ですが、淡路島では溜池などでふつうに見られます。
暖冬であるためか、まだ花序を上げ続けていました。
関連ページ 湿生植物・ツルナシコアゼガヤツリ

Fig.42 コモウセンゴケ (淡路島 2015.12/14)
淡路島ではトウカイコモウセンゴケは見られず、モウセンゴケも自生地は少ないとのことでした。
最近の雨で浅水に浸かっていますが、通常は乾いた粘土質の場所とのことでした。
周辺にはコイヌノハナヒゲやトラノハナヒゲなどが見られました。
関連ページ 湿生植物・コモウセンゴケ

Fig.43 ミズスギ群落 (淡路島 2015.12/14)
谷津の水田を囲むように、土手の斜面下部にミズスギの群落が見られました。
これほど広範囲の群落ははじめてで、同所的にモウセンゴケ、アリノトウグサ、コケオトギリ、リンドウなどが生育していました。
関連ページ 湿生植物・ミズスギ

Fig.44 タコノアシ (淡路島 2015.12/14)
撹乱された休耕田にタコノアシがまばらに生育していました。
暖冬のためかまだ赤化が進んでおらず、開花中のものも見られます。
関連ページ 湿生植物・タコノアシ
category: 湿地・溜池