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Satoyama, Plants & Nature

スゲを探して 

スゲ類は地域や環境により種分化し、スゲ属中には非常に多くの種が含まれています。にもかかわらず、確実に同定できる標本を採取できる期間は4月下旬~6月と短いものです。
この期間のうち個人で動ける時間は限られており、事前に目標と計画を建てておかないと、なんとなくスゲ類を見て終わりということになりかねません。
今年は2004年に新記載され、古い標本は残っていますが、自生の現状を確認できていない兵庫県RDB Aランクとされているサンインヒエスゲの確認と、未だ自生状態のものを見ていないハリガネスゲ、オオタマツリスゲを見ることでした。
結果的に3種とも見ることができた上、ニッコウハリスゲとコウヤハリスゲも観察でき、個人的には上々の年でした。
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開花中のヒロバスゲ
Fig.1 開花中のヒロバスゲ (兵庫県但馬地方 2017.5/22)
標高800m前後の明るい林床では、この時期はまだ開花状態でした。
アオヒエスゲやアオバスゲ、サンインヒエスゲとは葉幅が広いことにより区別できます。
周辺ではオクノカンスゲやカンスゲも開花中でした。
関連ページ 関西の花/カヤツリグサ科・ヒロバスゲ

カンスゲ群落
Fig.2 カンスゲ群落 (兵庫県北播地方 2017.5/26)
沢沿いの登山道を登っていくと、カンスゲの見事な群落がありました。
このようなまとまった群落を見たのは初めてです。
関連ページ 関西の花/カヤツリグサ科・カンスゲ

クジュウスゲ
Fig.3 クジュウスゲ (兵庫県北播地方 2017.5/26)
カンスゲ群落のある谷筋では沢沿いにクジュウスゲのマットがあちこちで見られました。
基部から匐枝を伸ばして栄養繁殖するためにマット状の群落をつくります。
関連ページ 関西の花/カヤツリグサ科・クジュウスゲ

ヒロハノオオタマツリスゲ
Fig.4 ヒロハノオオタマツリスゲ (兵庫県北播地方 2017.5/26)
県内ではやや高標高地の適湿な場所に見られ、クジュウスゲに混じって沢筋に点在していました。
果胞が熟す頃は柔らかい花茎は倒伏し、どうやっても締まりの無い画像になってしまいます。
関連ページ 関西の花/カヤツリグサ科・ヒロハノオオタマツリスゲ

ヤマテキリスゲ
Fig.5 ヤマテキリスゲ (兵庫県北播地方 2017.5/26)
開けた谷筋の撹乱された湿地状の場所に生育していました。
県内では中部から北部にかけて見られ、テキリスゲより葉の色が濃く、ほとんどざらつかないことにより区別できます。
関連ページ 湿生植物・ヤマテキリスゲ

ハリガネスゲ
Fig.6 ハリガネスゲ (兵庫県北播地方 2017.5/26)
高原地帯のオオミズゴケ群落中や開けた沢筋に多くの個体が生育していました。
低地に生育するマツバスゲに似ていますが、マツバスゲは雌鱗片と果胞がほぼ同長に対し、ハリガネスゲは雌鱗片よりも果胞が大きいことにより、おおよその区別ができます。
関連ページ 湿生植物・ハリガネスゲ

ニッコウハリスゲ
Fig.7 ニッコウハリスゲ (兵庫県北播地方 2017.5/26)
高原の草地に別の草本を目当てに訪れたところ、細流脇や湿地に点在しているのを偶然見つけました。
兵庫県内では数ヶ所でしか自生しておらず、嬉しい出会いになりました。
ハリガネスゲとは葉幅が2~3mmと幅広くて目立ち、雌鱗片が淡緑色で、雄花部が短いことにより区別できます。ふつう花茎上部はざらつきますが、この集団ではあまりざらつきは目立たず、他の地域のものとは微妙に遺伝子的な差があるかもしれません。

オオタマツリスゲ
Fig.8 オオタマツリスゲ (神戸市 2017.5/31)
以前から聞いていたオオタマツリスゲの自生地を訪ねました。
かなり大きな群落で、熟した果胞をつけた花茎は全て倒伏しており、ヒロハノオオタマツリスゲ同様、全く絵になりません。近辺には自生地はなく、かなり局所的な分布傾向のあるスゲです。

オオタマツリスゲの花序
Fig.9 オオタマツリスゲの花序 (神戸市 2017.5/31)
花茎が全て倒伏しているので、花序がわかる画像がなかなか撮影できません。
車道の溝に垂れ下がっている花茎があったので、なんとか花序が解る画像を撮ることができました。

ヒメミコシガヤ
Fig.10 ヒメミコシガヤ (神戸市 2017.5/31)
オオタマツリスゲ自生地からの帰途、保全管理されている里山に生育しているヒメミコシガヤの様子を見に立ち寄りました。兵庫県と岡山県のみに生育しており、ここでは増殖の試みがなされています。
関連ページ 関西の花/カヤツリグサ科・ヒメミコシガヤ

ヒメミコシガヤの花序
Fig.11 ヒメミコシガヤの花序 (神戸市 2017.5/31)
雄雌性の小穂が比較的密についていて、ミノボロスゲやツクシミノボロスゲの花序に似ています。

ヒメミコシガヤの基部の葉鞘
Fig.12 ヒメミコシガヤの基部の葉鞘 (神戸市 2017.5/31)
葉鞘の腹面には横しわがあり、ミノボロスゲやツクシミノボロスゲとの区別点となります。

アワボスゲ
Fig.13 アワボスゲ (神戸市 2017.5/31)
ヒメミコシガヤの近くには生育良好なアワボスゲの大株が繁茂しています。
草原環境の減少とともに見られなくなっているスゲですが、ここではかなりの個体が生育しています。
関連ページ 関西の花/カヤツリグサ科・アワボスゲ

アワボスゲとヤワラスゲの花序
Fig.14 アワボスゲとヤワラスゲの花序 (神戸市 2017.5/31)
アワボスゲとヤワラスゲは時に同じような環境に生えることがあり、よく似ています。
アワボスゲは果胞が丸く膨らみ、開出して嘴は短いですが、ヤワラスゲの果胞は斜上して着き、嘴は長くなります。アワボスゲは稀ですが、ヤワラスゲは様々な環境でよく見かけるスゲです。
関連ページ 湿性植物・ヤワラスゲ

ホナガヒメゴウソ
Fig.15 ホナガヒメゴウソ (神戸市 2017.5/31)
ヒメミコシガヤ、アワボスゲ、タチスゲなどが生育する休耕田に生育しています。
次のヒメゴウソに比べて自生地は少なく、その名のごとく雌小穂は長く、青味を帯びません。

ヒメゴウソ
Fig.16 ヒメゴウソ (神戸市 2017.5/31)
別名アオゴウソとも呼ばれ、草体や雌小穂は青白い。
二次的自然環境の高い場所に見られ、ここではゴウソ、オタルスゲとともにホナガヒメゴウソがある休耕田とは別の休耕田で生育しており、混生は見られません。
関連ページ 湿性植物・ヒメゴウソ(ホナガヒメゴウソ含む)

グレーンスゲ
Fig.17 グレーンスゲ (兵庫県但馬地方 2017.6/8)
夏期には放牧地となる、高原のススキ草原の小さな沢沿いに生育していました。
ややコンパクトな草体で、同じ沢沿いにはアズマナルコ、クサスゲが見られました。
関連ページ 湿性植物・グレーンスゲ

コカンスゲ
Fig.18 コカンスゲ (兵庫県但馬地方 2017.6/9)
山の頂に登ると、ブナ林の林床にミヤマカンスゲとともにコカンスゲが生育していました。
匐枝で栄養繁殖するため、湿った林床斜面で群生することの多いスゲです。
関連ページ 関西の花/カヤツリグサ科・コカンスゲ

サンインヒエスゲ
Fig.19 サンインヒエスゲ (兵庫県但馬地方 2017.6/9)
ここに登ってきたのは、県下唯一の記録のあるこの場所での生育を確認するためです。
兵庫県内ではおよそ50年振りの再確認になる兵庫県版RDB Aランク種のスゲです。
ブナ帯直下のミズナラ・アカマツ二次林の歩道脇の乾いたような半日陰地に、20個体程生育していました。来年からは同じ条件を満たすような場所を探して歩くことになります。

イソアオスゲ
Fig.20 イソアオスゲ (兵庫県但馬地方 2017.6/9)
海岸の岩場ではタイトゴメが開花し始め、その間の岩棚や岩の隙間にイソアオスゲが見られました。
匐枝を伸ばして栄養繁殖し、大きなまとまりとなっていますが、その割りに花茎は少数でした。
関連ページ 関西の花/カヤツリグサ科・イソアオスゲ

ハマアオスゲ
Fig.21 ハマアオスゲ (京都府丹後地方 2017.6/9)
砂浜に続く松林の林床に生育しているもので、イソアオスゲよりも雌小穂は太く、果胞の大きく、密に短毛が生えることにより区別できます。時に海岸の岩場(磯)であっても、表土がある場所に生えていることがありますが、上記の特徴で区別は容易です。
関連ページ 関西の花/カヤツリグサ科・ハマアオスゲ

コウボウムギ
Fig.22 コウボウムギ (京都府丹後地方 2017.6/9)
初心者であっても、まず間違えようのない特徴的で目立つスゲで、web上でも他のスゲに比べて圧倒的に多数の画像が見られます。雌雄異株で、画像のものは雌株というのも、今さら野暮な感じです。
関連ページ 関西の花/カヤツリグサ科・コウボウムギ

コウヤハリスゲ
Fig.23 コウヤハリスゲ (滋賀県湖北地方 2017.6/10)
温帯林が広がる林道脇の小湿地に生育しているもので、小穂はコハリスゲっぽく感じました。
本種の大きな特徴は地下に匍匐根茎があることで、2008年に新記載されて間もない種です。
関連ページ 湿生植物・コウヤハリスゲ

コウヤハリスゲの生育状態
Fig.24 コウヤハリスゲの生育状態 (滋賀県湖北地方 2017.6/10)
匍匐根茎によって栄養繁殖するため、マット状に広がります。
林道脇の数ヶ所で見られましたが、いずれも湧水に涵養され、浅い表水のある小湿地でした。

ハリスゲ節3種の小穂
Fig.25 ハリスゲ節3種の小穂
いずれも雄雌性ですが、ハリガネスゲをのぞいては、雄花部がごく短いことが解ります。

ミノボロスゲ
Fig.26 ミノボロスゲ (滋賀県湖北地方 2017.6/10)
登山道入り口の駐車場脇に見られたもので、おそらくは登山者の靴か車のタイヤの溝に運ばれてきたものでしょう。ここでは移入初期なのか3個体の生育を確認したのみですが、兵庫県の氷ノ山では登山道脇にビッシリと生育している箇所があります。
関連ページ 湿性植物・ミノボロスゲ

ミノボロスゲの花序
Fig.27 ミノボロスゲの花序 (滋賀県湖北地方 2017.6/10)
花序には雄雌性の無柄の小穂が密につき、ヒメミコシガヤに似ていますが、花茎上部がざらつくことにより区別できます。また先述のようにヒメミコシガヤの基部の葉鞘には横しわがありますが、ミノボロスゲにはありません。

ツクシミノボロスゲ
Fig.28 ツクシミノボロスゲ (神戸市 2017.6/15)
道端に10数個体が生育していますが、ゴルフ場の路傍であり、これも移入されたと考えられるものです。兵庫県内には数例の採集記録がありますが、いずれに場所のものも自生していたものかどうか疑わしいと思っています。

ツクシミノボロスゲの花序
Fig.29 ツクシミノボロスゲの花序 (神戸市 2017.6/15)
ミノボロスゲ同様、雄雌性で無柄の小穂が着きますが、その着き方はミノボロスゲよりもまばらで、花序は貧相な印象を受けます。また、ミノボロスゲの有花茎上部がざらつくのに対し、ツクシミノボロスゲでは有花茎上部は平滑となります。

ミヤマシラスゲ
Fig.30 ミヤマシラスゲ (神戸市 2017.6/15)
ふくらんだ果胞が密についた雌小穂がまるで細長いソーセジのように見える、解りやすいスゲで、撹乱を受けたような湿地で群生しているのを見かける機会が多いです。
湿地環境に広く見られ、開花期の頃はネクイハムシの仲間が雄花の花粉を漁っているのを見ることがあります。
関連ページ 湿性植物・ミヤマシラスゲ

サトヤマハリスゲ
Fig.31 サトヤマハリスゲ (神戸市 2017.6/15)
小穂の雄花、雌花部ともに短く、兵庫県南部では低山や丘陵の湿地に比較的よく見られるハリスゲ節のスゲです。ハリスゲ節はヌカスゲ節と同様、同所的に見られるアゼスゲ節やミヤマシラスゲ節に比べて開花・結実が早く、結実した果胞が落ち始めていました。
関連ページ 湿性植物・サトヤマハリスゲ


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category: カヤツリグサ科スゲ属

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今期に見たスゲ 

そろそろ初夏のスゲのシーズンも終盤。今期も沢山のスゲを見ましたが、その中から何点か選んでみました。
画像:キンキカサスゲ、タマツリスゲ、コカンスゲ、アリマイトスゲ、マツバスゲ、
   ササノハスゲ、ナルコスゲ、ミヤマジュズスゲ、ヤマジスゲ、ヤチカワズスゲ、
   エナシヒゴクサ、ヤマテキリスゲ、テキリスゲ、アワボスゲ、ケタガネソウ、
   ミセンアオスゲ、ヒロバスゲ、シラコスゲ、ヒロハノオオタマツリスゲ、ミノボロスゲ、
   グレーンスゲ、コハリスゲ、ナガミヒメスゲ
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キンキカサスゲ
Fig.1 キンキカサスゲ (兵庫県丹波地方 2014.5/7)
水田の土手の下の溝に生えていました。
カサスゲより草丈が低いことが多く、花柱は長く結実期にも宿存します。
関連ページ 湿生植物・キンキカサスゲ

タマツリスゲ
Fig.2 タマツリスゲ (兵庫県丹波地方 2014.5/7)
県内の内陸部ではあまり見かけないスゲです。
関連ページ 関西の花・タマツリスゲ

コカンスゲ
Fig.3 コカンスゲ (兵庫県阪神地方 2014.5/13)
普段は素通りするスゲですが、久々に撮影。しかし、風に揺れてピンボケを量産。
関連ページ 関西の花・コカンスゲ

アリマイトスゲ
Fig.4 アリマイトスゲ (兵庫県阪神地方 2014.5/13)
棚田の用水路脇に群生していました。
関連ページ 関西の花・アリマイトスゲ

マツバスゲ
Fig.5 マツバスゲ (兵庫県阪神地方 2014.5/13)
アリマイトスゲのそばではマツバスゲが生育。より水際に近い場所に生えています。
関連ページ 湿生植物・マツバスゲ

ササノハスゲ
Fig.6 ササノハスゲ (兵庫県阪神地方 2014.5/13)
雑木林の林床斜面でよく見かけます。
関連ページ 関西の花・ササノハスゲ

ナルコスゲ
Fig.7 ナルコスゲ (兵庫県但馬地方 2014.5/14)
渓流畔の岩上でヒメレンゲとともに生育していました。
ふつうに見られますが、美しいスゲです。
関連ページ 関西の花・ナルコスゲ

ミヤマジュズスゲ
Fig.8 ミヤマジュズスゲ (兵庫県但馬地方 2014.5/14)
ヤマジスゲに似ていますが、小穂が雄雌性で、柱頭がヤマジスゲほど長くありません。
兵庫県では山地寄りに出てきます。
関連ページ 関西の花・ミヤマジュズスゲ

ヤマジスゲ
Fig.9 ヤマジスゲ (兵庫県阪神地方 2014.5/22)
ミヤマジュズスゲよりも稀で、丘陵や低山の踏みつけのある林道や農道に出てきます。
関連ページ 関西の花・ヤマジスゲ

ヤチカワズスゲ
Fig.10 ヤチカワズスゲ (兵庫県摂津地方 2014.5/18)
貧栄養な湿地に現れる、花序が鉄条網のような特徴的なスゲ。
関連ページ 湿生植物・ヤチカワズスゲ

エナシヒゴクサ
Fig.11 エナシヒゴクサ (兵庫県丹波地方 2014.5/18)
ヒゴクサに似るが、小穂には柄がほとんどありません。ヒゴクサよりかなり稀です。
関連ページ 湿生植物・エナシヒゴクサ

ヤマテキリスゲ
Fig.12 ヤマテキリスゲ (兵庫県丹波地方 2014.5/20)
テキリスゲに似ますが、葉縁は平滑で、手を切ることはありません。
関連ページ 湿生植物・ヤマテキリスゲ

テキリスゲ
Fig.13 テキリスゲ (兵庫県阪神地方 2014.5/22)
こちらは手が切れてしまうほう。
関連ページ 湿生植物・テキリスゲ

アワボスゲ
Fig.14 アワボスゲ (兵庫県阪神地方 2014.5/22)
農道脇の草地に大きな株が見られました。
関連ページ 関西の花・アワボスゲ

ケタガネソウ
Fig.15 ケタガネソウ (兵庫県阪神地方 2014.5/22)
自宅の庭の草地斜面に、もとから生えていたものです。
自宅周辺から甲山にかけてはケタガネソウの分布域です。
関連ページ 関西の花・ケタガネソウ

ミセンアオスゲ
Fig.16 ミセンアオスゲ (兵庫県播磨地方 2014.5/27)
イトアオスゲと酷似しますが、雌小穂は互いに離れてつきます。

ヒロバスゲ
Fig.17 ヒロバスゲ (兵庫県但馬地方 2014.5/30)
長い有花茎のほか、葉に隠れるようにして短い有花茎も出します。
関連ページ 関西の花・ヒロバスゲ

シラコスゲ
Fig.18 シラコスゲ (兵庫県摂津地方 2014.6/12)
渓流畔に小さな株が点々と生育していました。
関連ページ 湿生植物・シラコスゲ

ヒロハノオオタマツリスゲ
Fig.19 ヒロハノオオタマツリスゲ (兵庫県但馬地方 2014.6/15)
ブナ林の一角に数個体が点在していました。
関連ページ 関西の花・ヒロハノオオタマツリスゲ

ミノボロスゲ
Fig.20 ミノボロスゲ (兵庫県但馬地方 2014.6/15)
登山道の両側に密生していますが、ここのものは移入とされています。
関連ページ 湿生植物・ミノボロスゲ

グレーンスゲ
Fig.21 グレーンスゲ (兵庫県但馬地方 2014.6/15)
林縁の湿った場所に密生していました。

コハリスゲ
Fig.22 コハリスゲ (兵庫県但馬地方 2014.6/15)
木漏れ日が当たるような林縁や林床に点在しています。

ナガミヒメスゲ
Fig.23 ナガミヒメスゲ (兵庫県但馬地方 2014.6/15)
ヒメスゲよりも果胞のくちばしが長いのが特徴。風衡地の低木下に生育していました。

category: カヤツリグサ科スゲ属

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スゲの季節 (後編) 

前回に続いて「スゲの季節」です。後編ではアゼスゲ節を中心に、最近見たスゲ類をご紹介します。
画像:ヤマアゼスゲ、タニガワスゲ、アゼナルコ、アズマナルコ、アズマナルコの雌小穂、
   ゴウソ、ヒメゴウソ、ホナガヒメゴウソ、ヤマテキリスゲ、カワラスゲ、ナルコスゲ、
   ジュズスゲ、シラスゲ、ヒゴクサ、エナシヒゴクサ、オニスゲ、タガネソウ、
   ケタガネソウ、タガネソウ節2種の葉裏、ササノハスゲ、ヤマジスゲ、
   ヤマジスゲの小穂
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ヤマアゼスゲ
Fig.1 ヤマアゼスゲ (京都府綾部市 2013.5/2) アゼスゲ節
アゼスゲは既に開花期のものを掲載済みなので、ヤマアゼスゲから。
アゼスゲほどどこにでもあるというものではなく、少し山地や内陸寄りの溜池畔や河原などで見かけることが多いスゲです。アゼスゲとは草体が大きめで硬く、全体的にざらつくこと、基部に糸網を生じることにより区別できます。京都府では準絶滅危惧種となっていますが、この日は由良川河畔と山間の溜池畔の2ヶ所で群生が見られ、採集する人があまりいなかっただけで、各所に生育しているものだと思います。
関連ページ 湿生植物・ヤマアゼスゲ

タニガワスゲ

Fig.2 タニガワスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/22) アゼスゲ節
山間の渓流畔で大きな株となって生育しているものをよく見かけます。
画像のものも直径1m以上広がっている巨大な株となっていました。
ヤマアゼスゲよりも果胞の嘴が長く、嘴の両側に刺状の突起があることで区別できます。
関連ページ 湿生植物・タニガワスゲ

アゼナルコ
Fig.3 アゼナルコ (兵庫県西宮市 2013.5/23) アゼスゲ節
河川敷の常在種で、休耕田にもよく現れるふつうなスゲ。
次に紹介するアズマナルコとは、雄鱗片に長い芒があり、基部が円柱状に肥厚しないことによって区別できます。
関連ページ 湿生植物・アゼナルコ

アズマナルコ
Fig.4 アズマナルコ (兵庫県西宮市 2013.5/27) アゼスゲ節
山間の溜池畔や湿った林道脇などで見かけるやややわらかいスゲで、アゼナルコほどふつうではありません。兵庫県では北部に多いスゲですが、西宮市でも2ヶ所で生育を確認しています。
関連ページ 湿生植物・アズマナルコ

アズマナルコ雌小穂の拡大
Fig.5 アズマナルコの雌小穂の拡大 (兵庫県西宮市 2013.5/27) アゼスゲ節
雌小穂に並んだ果胞と鱗片の様子です。鱗片の芒はアゼナルコよりも短いです。
柱頭が2岐するのは、アゼスゲ節に共通する特徴です。

ゴウソ
Fig.6 ゴウソ (兵庫県丹波市 2013.5/31) アゼスゲ節
兵庫県では湿地、用水路脇、休耕田、溜池畔などで栄養条件にも左右されず最もふつうに見られるスゲです。「タイツリスゲ」の別名があり、草体の特徴がよく現れている名称だと思います。
特徴的で解りやすいスゲですが、変種に果胞に乳頭状突起のない「ホシナシゴウソ」があります。
関連ページ 湿生植物・ゴウソ

ヒメゴウソ
Fig.7 ヒメゴウソ (兵庫県三田市 2013.5/23) アゼスゲ節
ゴウソよりもかなり稀なスゲで、兵庫県では貧栄養な湿地や溜池畔に現れます。
貧栄養な湿地を好む種とともに生育していることが多く、この場所では溜池土堤直下の排水路脇でしたが、イヌノハナヒゲ、コシンジュガヤ、ミカワシンジュガヤ、ノグサ、ホソバリンドウ、スイラン、サワシロギクなどとともに生育していました。次種のホナガヒメゴウソと比較すると草体は青白く、葉や花茎は強くざらつくのが特徴です。
関連ページ 湿生植物・ヒメゴウソ(ホナガヒメゴウソ含む)

ホナガヒメゴウソ
Fig.8 ホナガヒメゴウソ (神戸市 2013.5/19) アゼスゲ節
ホナガヒメゴウソはヒメゴウソよりも稀なスゲで、兵庫県では限られた地域にしか見られず、前種が貧栄養な湿地を好むのに対して、本種は栄養状態のよい湿地に現れ、群生する傾向が見られます。ここではミヤマシラスゲ、ショウブ、ヤノネグサ、ミゾソバ、ホソバノヨツバムグラなど栄養条件のよい場所を好む湿生植物とともに生育していました。ヒメゴウソのように青みを帯びず、より大型で、有花茎の下部は平滑で、雌小穂は長く下垂し、雌鱗片の芒が果胞より長く突き出すことにより区別できます。
関連ページ 湿生植物・ヒメゴウソ(ホナガヒメゴウソ含む)

ヤマテキリスゲ
Fig.9 ヤマテキリスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/24) アゼスゲ節
六甲山地ではテキリスゲはよく見られますが、このヤマテキリスゲは見られません。
兵庫県では内陸部から北部にかけて見られ、北部の沢の源頭湿地では群生して優占種となっている場所も見られます。テキリスゲと違って草体はざらつかず、ほとんど平滑である点で容易に区別できます。
関連ページ 湿生植物・ヤマテキリスゲ

カワラスゲ
Fig.10 カワラスゲ (兵庫県三田市 2013.5/24) アゼスゲ節
マスクサ、ジュズスゲなどとともに湿った農道や林道、踏み跡などによく見られるスゲです。
草体はやわらかく、細長い小穂が下垂することにより、他種との区別は容易です。
関連ページ 湿生植物・カワラスゲ

ナルコスゲ
Fig.11 ナルコスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/22) クロボスゲ節
Fig.2のタニガワスゲの隣に生育していたもので、アゼスゲ節のスゲ類よりも果期がはやく、雄小穂はすっかり脱落し、雌小穂の果胞も熟して脱落しつつありました。ナルコスゲは降雨後に急流にさらされるような渓流畔の岩場でも、隙間にしっかり根を張ってびくともしません。こういった場所に生育するものを標本用に根から採集するのは至難の業です。
関連ページ 関西の花・ナルコスゲ

ジュズスゲ
Fig.12 ジュズスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/22) ジュズスゲ節
Fig.10のカワラスゲやマスクサなどとともに農道や林道によく現れるスゲです。
変種にオキナワジュズスゲがあり、主に果胞の大きさで区別します。
・ジュズスゲ・・・果胞の大きさ 4~5mm。基部の鞘はわずかに糸網を生じる。
・オキナワジュズスゲ・・・果胞の大きさ 3~4mm。基部の鞘は光沢がある。

関連ページ 湿生植物・ジュズスゲ

シラスゲ
Fig.13 シラスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/22) ヒメシラスゲ節
やや山地寄りの林縁や明るい林床にふつうに見られるスゲです。
ヒメシラスゲ節の果期は遅く、同じ場所のタマツリスゲの果胞が熟して脱落しつつありましたが、シラスゲのほうはまだ白い柱頭を出した開花期でした。
関連ページ 関西の花・シラスゲ

ヒゴクサ
Fig.14 ヒゴクサ (兵庫県篠山市 2013.5/22) ヒメシラスゲ節
草地、林縁、林道脇などにふつうに見られるスゲです。
匍匐根茎を横走して広がるため、群生していることの多い種です。
関連ページ 湿生植物・ヒゴクサ

エナシヒゴクサ
Fig.15 エナシヒゴクサ (兵庫県篠山市 2013.5/22) ヒメシラスゲ節
ヒゴクサよりもかなり稀で、あまり見かけないスゲです。
明るい河川堤防に群生していたり、薄日が差す林床に群生していたりと、生育環境がもう一つ絞り込めない種です。ヒゴクサと同様な環境に生育し、ただ単に稀なだけかもしれません。これまで私が見た限りでは、ヒゴクサと混生している場所はありませんでした。
関連ページ 湿生植物・エナシヒゴクサ

オニスゲ
Fig.16 オニスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/24) オニナルコ節
比較的古くからある安定した湿地や溜池畔など、2次的自然環境の高い場所に見られる湿生スゲです。絶滅危惧種に指定している地域が多いですが、兵庫県では上記のような湿地や溜池が数多く残っているため、まだまだ見る機会の多いスゲです。オニスゲの生育する場所ではふつう様々な湿生植物が見られます。ここでは、ミヤマシラスゲ、オタルスゲ、エゾハリイ、イグサ、ホソイ、ハイチゴザサ、ヒナザサ、アギスミレ、タチモ、サワギキョウ、ヌマトラノオ、ホッスモ、ミズニラなどが見られました。
関連ページ 湿生植物・オニスゲ

タガネソウ
Fig.17 タガネソウ (神戸市 2013.5/23) タガネソウ節
タガネソウ節のスゲ類は原始的なスゲと考えられており、スゲの中でも幅広い葉をもつ一風変わった仲間です(但し愛媛県でのみ知られるイワヤスゲを除く)。兵庫県東南部の低地で本種が生育する場所では、他にも面白い種が出現する傾向があります。西宮市内の当該地域ではアマナ、ノダケ、ミズユキノシタ、クサボケ、フタリシズカ、スズサイコ、シソバタツナミ、ツクバキンモンソウ、ミズタカモジ、ウシノシッペイ、ミヤマイタチシダ、ツヤナシイノデなどが見られ、都市近郊としては出現種数の多い地域となっています。
関連ページ 関西の花・タガネソウ

ケタガネソウ
Fig.18 ケタガネソウ (兵庫県西宮市 2013.3/29) タガネソウ節
自宅の草地斜面に自生しているもので、今回は開花中のものを掲載してみました。
西宮市内では六甲東南部の丘陵~低山に、開発をまぬがれた集団が点々と残っています。
関連ページ 関西の花・ケタガネソウ

タガネソウ節比較
Fig.19 タガネソウ節2種の葉の比較 (兵庫県西宮市 2013.5/27) タガネソウ節
上はケタガネソウ、下はタガネソウの葉裏面。
ケタガネソウは葉縁と脈上の毛が長く顕著であるのがわかります。
他に頂小穂に違いが見られ、ケタガネソウは雄性、タガネソウは雄雌性となりますが、稀にタガネソウでも雄性となる有花茎もあるので、葉の毛によって判断するのが無難だと思います。

ササノハスゲ
Fig.20 ササノハスゲ (兵庫県西宮市 2013.5/27) タガネソウ節
ササノハスゲは本州の近畿地方以西、四国といった特異な分布域を持つ日本固有種です。
兵庫県内では低地から高所(といっても高山はありませんが)にまで、比較的普通に見られるスゲです。冬期にも葉が残り、小穂が球状となるため、前2種との区別は容易です。
関連ページ 関西の花・ササノハスゲ

ヤマジスゲ
Fig.21 ヤマジスゲ (兵庫県三田市 2013.5/24) ヤマジスゲ節
スゲというより、一見するとイネ科草本ではないかと思えるようなやわらかいスゲです。
よほどスゲ類やイネ科に注意の向いている人でないと発見できない上、やや稀な部類に入るスゲです。長らく土壌自体が保存されている林道や農道上に雑草然と群生している例が多くみられます。
関連ページ 関西の花・ヤマジスゲ

ヤマジスゲの小穂
Fig.22 ヤマジスゲの小穂 (兵庫県三田市 2013.5/24) ヤマジスゲ節
頂小穂(上)と側小穂(下)。
頂小穂は雄性で柄があります。側小穂は雌性で、長い果胞がまばらについています。
果胞は完熟しても、長い柱頭が枯れ落ちず、残っています。
よく似たものに山地の渓流畔や林床に生えるミヤマジュズスゲがありますが、ミヤマジュズスゲの小穂は雄雌性であることで区別できます。

category: カヤツリグサ科スゲ属

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スゲの季節 (前編) 

5月も終わりに近づき、平地~低山で見られるスゲ類がほぼ出揃いました。
今回は兵庫県を中心に今年見たスゲ類を2回に分けて掲載します。
画像:ノゲヌカスゲ、クサスゲ、アリマイトスゲ、オクノカンスゲ、マツバスゲ、ミコシガヤ、
   サトヤマハリスゲ、ヒメミコシガヤ、ヤチカワズスゲ、マスクサ、ショウジョウスゲ、
   ヤガミスゲ、タチスゲ、ミヤマシラスゲ、キンキカサスゲ、アワボスゲ、ヤワラスゲ、
   タマツリスゲ、コジュズスゲ
*画像クリックで、別ウィンドで拡大表示されます。

ノゲヌカスゲ
Fig.1 ノゲヌカスゲ (京都府福知山市 2013.3/30) ヌカスゲ節
今年、最も早い時期に結実しているのを見たスゲです。
ヌカスゲ節のものは他のスゲ類よりも早く結実しますが、それにしても早かったです。
関連ページ 関西の花・ノゲヌカスゲ

クサスゲ
Fig.2 クサスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/24) ヌカスゲ節
ヌカスゲ節の中では結実は遅いほうで、湿地~渓流畔など湿った場所にふつうに見られます。
関連ページ 湿生植物・クサスゲ

アリマイトスゲ
Fig.3 アリマイトスゲ (兵庫県西宮市 2013.4/29) ヌカスゲ節
地域限定のご当地スゲで、その名の通り有馬周辺ではごくごく普通に生育しています。
西宮市では山の斜面から水田の畦まで、どこにでも出てきます。
匐枝を出して広がり、画像のように棚田の土手を覆っている場所も見られます。
関連ページ 関西の花・アリマイトスゲ

オクノカンスゲ
Fig.4 オクノカンスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/22) ヌカスゲ節
兵庫県東部では三田市北部より北に見られ、その名のとおりミヤマカンスゲよりも奥(=北)に分布します。しかし、頭に何も付かないカンスゲは兵庫県北部にしか見られません。
関連ページ 関西の花・オクノカンスゲ

マツバスゲ
Fig.5 マツバスゲ (兵庫県西宮市 2013.5/23) ハリスゲ節
人の手が入るような里山の用水路脇や休耕田に現れるスゲで、このスゲがあると周辺に良好な草地環境が残されていることが多いように思います。
関連ページ 湿生植物・マツバスゲ

サトヤマハリスゲ
Fig.6 サトヤマハリスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/24) ハリスゲ節
兵庫県南東部では花崗岩や流紋岩質の貧栄養となりやすい基岩地域の半日陰の湿地や林床の細流脇によく見られます。クサスゲ、オタルスゲ、ヤマテキリスゲなどと生育していることが多いように思います。
関連ページ 湿生植物・サトヤマハリスゲ

ミコシガヤ
Fig.7 ミコシガヤ (大阪府淀川河川敷 2013.5/15) ミノボロスゲ節
大河川の氾濫原となるような原野環境に現れるやや大型のスゲです。
画像では増水した水溜りに生育していますが、水につかるのはあまり好まず、砂地に多く見られます。
関連ページ 湿生植物・ミコシガヤ

ヒメミコシガヤ
Fig.8 ヒメミコシガヤ (兵庫県神戸市 2013.5/19) ミノボロスゲ節
兵庫県と岡山県の限られた地域にのみ生育する稀なスゲです。
草地に生育するものとばかり思っていましたが、今回の自生地調査で湿地状の休耕田や、湧水のしみ出す農道などに生育することが確認でき、湿生植物と見なしてもよいと思うようになりました。
多湿な休耕田ではゴウソ、タチスゲを随伴し、草地化の進んだ休耕田ではタチスゲ、アワボスゲ、ヤワラスゲを随伴し、湿った農道ではマスクサ、ジュズスゲ、カワラスゲ、タチスゲを伴なっていました。
かつては西宮市内での記録もありましたが現在では確認できず、ヒメミコシガヤの多産地といえるような場所は国内でも神戸市内の限られた場所しかありません。
関連ページ 関西の花・ヒメミコシガヤ

ヤチカワズスゲ
Fig.9 ヤチカワズスゲ (兵庫県三田市 2013.5/23) カワズスゲ節
貧栄養な湿地や溜池に生育し、イヌノハナヒゲとともに貧栄養な湿生植物群落を形成する基本種となります。
ヤチカワズスゲの生育するような湿地ではトキソウ、サギソウ、カキラン、コバノトンボソウ、ケシンジュガヤ、マネキシンジュガヤ、ミカワシンジュガヤ、モウセンゴケ類、イシモチソウ、ミミカキグサ類、ヒナノカンザシなど稀少な湿生植物が出現します。
関連ページ 湿生植物・ヤチカワズスゲ

マスクサ
Fig.10 マスクサ (兵庫県篠山市 2013.5/22) マスクサ節
農耕地の草地や農道によく見られ、特にクルマはあまり通らないけど、踏みつけに遭うような農道に最もよく見られます。関西各地の農耕地周辺で最もふつうに見られるスゲ類のうちのひとつです。
関連ページ 湿生植物・マスクサ

ヤガミスゲ
Fig.11 ヤガミスゲ (大阪府淀川河川敷 2013.5/15) ヤガミスゲ節
Fig.7のミコシガヤ同様、大河川の氾濫原などの湿った原野環境に生育するやや大型となるスゲで、成熟した大株では花茎が基部を中心として放射状に倒伏し、画像でもその特徴がよく現れています。河川敷の改修や治水による氾濫の減少により、ミコシガヤとともに各地で減少傾向にあるスゲです。
関連ページ 湿生植物・ヤガミスゲ

ショウジョウスゲ
Fig.12 ショウジョウスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/24) イワカンスゲ節
貧栄養、富栄養に関わらず、また水分条件にもあまり左右されずいろいろな場所に出現する神出鬼没のスゲです。
ここではキキョウやシライトソウの生育する溜池土堤の水際に多数の個体が生育していました。
この場所で生育しているものの多く個体が、雌小穂に黒穂病を罹災していました。
関連ページ 湿生植物・ショウジョウスゲ

タチスゲ
Fig.13 タチスゲ (兵庫県西宮市 2013.5/27) タチスゲ節
草地から農道上、貧栄養な湿地にまで関西地方では広くふつうに見られるスゲです。
里山でこのタチスゲとゴウソが見られないような場所では、他の目ぼしい湿生スゲは現れないといってもいいでしょう。
関連ページ 湿生植物・タチスゲ

ミヤマシラスゲ
Fig.14 ミヤマシラスゲ (兵庫県西宮市 2013.5/27) ミヤマシラスゲ節
和名に「ミヤマ」を冠しますが、山奥には見られず、里山の休耕田や用水路などやや栄養条件のよい湿地環境にふつうに見られるスゲで、群生する傾向が強く見られます。雌小穂が熟すと、ぷっくりとふくらんだ果胞が隙間なく密集します。
関連ページ 湿生植物・ミヤマシラスゲ

キンキカサスゲ
Fig.15 キンキカサスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/9) ミヤマシラスゲ節
低地の湿地に多いカサスゲに対して、やや山地よりの河畔や湿地などに群生するスゲで、丹波地方では村落内を流れる小河川の河畔をびっしりと覆うような群落を形成しているのをよく見かけます。カサスゲと違って果実期になっても長い花柱が宿存するのが大きな特徴です。
関連ページ 湿生植物・キンキカサスゲ

アワボスゲ
Fig.16 アワボスゲ (兵庫県神戸市 2013.5/19) ミヤマシラスゲ節
ヒメミコシガヤの自生地調査の際、草地状となった休耕田内に多数のアワボスゲの生育が確認できました。
アワボスゲは草刈り管理され、圃場整備などによる撹乱があまり起こらなかったような草地に生育するスゲです。このような草地環境は耕作放棄や開発によって年々減少しており、それとともにアワボスゲも稀な種となっています。画像の後方に見えている褐色の穂を上げているのはヒメミコシガヤで、このようなツーショットが見られるのは国内でもこの場所ぐらいでしょう。アワボスゲは次に紹介するヤワラスゲと良く似ており、同じような環境に生育するため注意が必要です。
関連ページ 関西の花・アワボスゲ

ヤワラスゲ
Fig.17 ヤワラスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/22) ミヤマシラスゲ節
草地にふつうに見られるスゲで、登山口の草地となった駐車場で多数の個体が生育していました。
ここではマスクサ、ヒゴクサ、タチスゲ、アオスゲ、ノゲヌカスゲ、モエギスゲなどとともに見られました。
関連ページ 湿生植物・ヤワラスゲ

アワボスゲとヤワラスゲ
Fig.18 アワボスゲとヤワラスゲの雌小穂比較 (兵庫県神戸市 2013.5/19) ミヤマシラスゲ節
よい比較画像が撮れると思い、花茎を1本ずつ頂いてきました。
両種とも果胞は完全に熟してはいませんが、それでもいくつかの違いが目につきます。
まず果胞の嘴ですが、明らかにヤワラスゲの方が長く、長さが3mmほどあるのに対してアワボスゲの嘴は1mm以下となります。またアワボスゲのほうが小さくて丸い果胞が密に多数つき、この特徴は果胞が完全に成熟した状態では、名前のとおりアワの実のように丸々とふくらんだ果胞が並ぶので、より顕著になります。
関連ページ 関西の花・アワボスゲ

タマツリスゲ
Fig.19 タマツリスゲ (兵庫県篠山市 2013.5/13) タマツリスゲ節
兵庫県では淡路島、西播、但馬に記録がある種で、内陸の丹波地方にあるとは思っていませんでしたが、木漏れ日の差す林床のラショウモンカズラの群生に埋もれるように、大株が点在していました。タマツリスゲよりもむしろオオタマツリスゲがあるのではないかと予想していたのですが、完全に予想を裏切られました。この後、篠山市内でもう一ヶ所自生地を見つけることができました。
関連ページ 関西の花・タマツリスゲ

コジュズスゲ
Fig.20 コジュズスゲ (兵庫県西宮市 2013.5/27) タマツリスゲ節
タマツリスゲ節のスゲでは最もふつうに見られ、里山の休耕田や、用水路脇、ときには湿った植林地の林床に生育していることもあります。草体は柔らかく、タマツリスゲが雄小穂が赤紫色を帯びるのに対して、緑白色で枯れても淡褐色で赤味を帯びないことで区別できます。また、タマツリスゲの基部の鞘は強く赤紫色を帯びますが、コジュズスゲは淡色となります。
関連ページ 湿生植物・コジュズスゲ

以上で「スゲの季節」(前編)は終了です。後編はアゼスゲ節やヒメシラスゲ節、タガネソウ節などのスゲ類を中心に紹介いたします。

category: カヤツリグサ科スゲ属

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